上 下
3 / 12

迅さんと電話

しおりを挟む
『こんばんは』

とだけ返すことにした、そっけなく感じるかもしれないがこれ以外考えられなかった。

「どうかな…」

彼も仕事は終わっていたのだろう、すぐにラインが返ってくる。

『うん、こんばんは。今いいかな』
『はい、大丈夫です』
『じゃあ少し電話でもどう?嫌だったかな?』

電話か…変な人ではありそうだけど嫌な人ではないししようかな…

『はい、大丈夫ですよ』

そのラインに既読が付くとすぐに彼から電話がかかってくる。

「はい、奏です」
「あぁ、奏さん、限りなく似ている電子音だとしても君の声はかわいらしいね」
「いきなり口説くのはどうかと思いますが…」

これも海外暮らしが長い影響なのかなぁ

「嫌だった?。レオが女は口説けって教えてくれたんだけどな…」

私じゃなくて亜子だったらもう落ちてるんだろうなぁ…

「いえ、あんまりそうやって出会う女の人全員にしてるのかなぁって」
「そんな事ないよ。惚れてる奏さんにだけだって」

ほんとかなぁ…

「それで、なんで急に電話なんて?」
「そうそう、その事なんだけどさ。もっとお互い知り合いたいんだ」
「確かに私達まだ名前くらいしか知りませんもんね」

どうせ気が無くなったら忘れる事だろうしいっそ話してみようかな

「じゃあまず私からでいいですか?あんまり話す事ないですけど」
「えぇ、奏さんの話はたくさん聞きたいですからね」
「えっとじゃあ…私は1997年生まれの25歳。大学を出て今の会社に入社しました」

何処かムズムズするのはこういう話をするであろう合コンとかに出たことが無いからだろうか

「へぇ、じゃあ僕の方が年上なんだ」
「迅さんは何歳なんですか?」
「27だよ、おっと話が脱線しそうだ。続けて」
「はい、大学以前の事だと小中高と音楽をしてました。コンクールとかはあんまりでしたが楽しい12年間でしたね」

話をしていると昔の事を思い出すなぁ…

「へぇ、何の楽器をしてたの?」
「ユーフォニウムを、わかります?」
「あぁ、チューバを小さくしたような楽器だろう?」
「凄いですね、大体の人は知らないのに」

ユーフォを知っているのは素直にうれしい、あんまり知っている人が居ないからな…

「芸術は一通り齧らされてるんだ」
「そうなんですね、それで音楽以外だと…特に話すことが無いですね。勉強も平凡な成績でしたし、恋愛とかも興味が無かったので」

振り返ってみると波風の立たない人生だなぁ。それなりに楽しめてるからいいけど

「よかった、初キスはまだなんですね」
「えぇ、楽器とは数えきれないほどしましたが」
「楽器はノーカンだろう?次は僕の番かな」
「お願いします」

迅さんの人生か、きっと面白いんだろうなぁ…

「まず歳はさっき言った通り27だ、生まれは日本だけど育ちはイタリアだね」

確かに女は口説けっているお友達はイタリア人のイメージ通りだ。

「それだから正直日本語よりイタリア語の方が得意なくらいだ」
「へぇ、何かイタリア語で話してみてくださいよ」
「Ti amo dal profondo del mio cuore」
「なんて言ったんですか?」
「秘密」

まぁ、愛して増すみたいな事かな?

「話を戻そう、それで日本に帰ってきたのは高1、高校は日本の高校に行ったんだ」
「日本語は大丈夫だったんですか?」
「いーや全く、最初はボディランゲージと電子辞書のお世話だったよ」
「それでもここまでうまく喋れるようになったんですね、凄いと思いますよ」

純日本人って言われても違和感がない位だ

「結構頑張ったからね、奏さんみたく12年間も頑張れる気はしないけどね」
「そんな、私なんて…とっ、とにかく続きを聞かせてください」
「ごめんごめん、次は部活の事でいい?」
「はい」
「部活は英会話サークルに入ってたな。イタリア語と同時で英語も教えさせられたからね」

英会話か…迅さんは文系なのかな?

「ディベート大会とかにも出たっけ…懐かしいな」
「楽しそうな高校生活ですね」
「あぁ、今考えると一瞬にも永遠にも感じる高校生活だったな。大学はもっとそう感じるけど」

確かにあのキラキラとした日々は永遠にも感じたし、今考えると一瞬とも感じたな。

「大学ではアメリカの方に留学したな、大学では勉強一色だったからあんまり話すことはないんだ。ごめんね」
「いえいえ、大丈夫ですよ。私も大学では勉強しかしてないので。何を学んでいたんですか?」
「商業だね、財閥の子会社でインターンみたいな物をしながら一流の経営術を学ばせてもらったよ。まだまだ修行中だけどね」
「勉強熱心なんですね。そういう人、私好きですよ」
「一歩前進かな、へへっ」

その後も好きな食べ物の事だったり、趣味の事だった理を話してるうちに時刻は11時近くになっていた。

「そろそろお開きにするかい?」
「そうですね、明日も平日ですし」
「それじゃあ、また時間が出来たら連絡するよ。おやすみなさい」
「おやすみなさい」

迅さんとの電話…結構楽しかったな。

「少し…信じてみようかな」

迅さんの好意を、こんな平凡ОLでも好きになってくれたという事を
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

【R-18】私を乱す彼の指~お隣のイケメンマッサージ師くんに溺愛されています~【完結】

衣草 薫
恋愛
朋美が酔った勢いで注文した吸うタイプのアダルトグッズが、お隣の爽やかイケメン蓮の部屋に誤配されて大ピンチ。 でも蓮はそれを肩こり用のマッサージ器だと誤解して、マッサージ器を落として壊してしまったお詫びに朋美の肩をマッサージしたいと申し出る。 実は蓮は幼少期に朋美に恋して彼女を忘れられず、大人になって朋美を探し出してお隣に引っ越してきたのだった。 マッサージ師である蓮は大好きな朋美の体を施術と称して愛撫し、過去のトラウマから男性恐怖症であった朋美も蓮を相手に恐怖症を克服していくが……。 セックスシーンには※、 ハレンチなシーンには☆をつけています。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

大事な姫様の性教育のために、姫様の御前で殿方と実演することになってしまいました。

水鏡あかり
恋愛
 姫様に「あの人との初夜で粗相をしてしまうのが不安だから、貴女のを見せて」とお願いされた、姫様至上主義の侍女・真砂《まさご》。自分の拙い閨の経験では参考にならないと思いつつ、大事な姫様に懇願されて、引き受けることに。  真砂には気になる相手・檜佐木《ひさぎ》がいたものの、過去に一度、檜佐木の誘いを断ってしまっていたため、いまさら言えず、姫様の提案で、相手役は姫の夫である若様に選んでいただくことになる。  しかし、実演の当夜に閨に現れたのは、檜佐木で。どうも怒っているようなのだがーー。 主君至上主義な従者同士の恋愛が大好きなので書いてみました! ちょっと言葉責めもあるかも。

【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。

雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。 ——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない) ※完結直後のものです。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

処理中です...