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第7章 せめぎ合い
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晴香が枕を抱えて戻って来る、パジャマ姿に着替えている。
ベットの上で向き合う。
「お母さんと寝るの小学校3年の時以来だね」
「よく覚えているわね。中学に入ってからの晴香はろくに口も聞いてくれなくなってたから、お母さん寂しかったのよ」
さゆりが晴香の手を取り自分の膝に置いて来る。
「ゴメン、誤解してたから、でも、お母さんだって。わたし見たんだから」
さゆりの手の上に晴香の手が重なる。
「な、なにを見たっていうの」
「小学校3年の時、お母さんが他の女の人と抱き合ってた」
手を放し座り直すさゆり。
「そんな、知ってたんだ」
「だから、中学に入ってからお母さんと距離を置いた、先生とそうなったから。なのに横取りするなんて、死ぬほどお母さんを恨んだし、嫉妬した」
「そんな、晴香を苦しめていたんだね、知らなかった。今の晴香はどうなの、私のせいで女の人しか愛せなくなったの、それとも男の人でも大丈夫なの」
「それは」
「聞くの少し怖いんだけど、教えて欲しい」
「その前に、お母さんはどうだったの、聞かせて」
さゆりが自分のことを話す、男性は友也しか知らないことも話し「結婚が間違っていたとは思っていない、だって、拓海と晴香を授かったから、結婚生活には失敗したけど」、そう言ったさゆりが晴香から目をそらして下を向く。
「離婚したのはお母さんの女性関係が原因なんでしょう、薄々気付いてた」
「拓海は、拓海も気付いているの、もしそうだったらどうしよう」
急にうろたえるさゆり、目の焦点が合っていない。
「お兄ちゃんはまったく気づいていないから、安心して」
ふぅーと息を吐くさゆり。
「スナックの人でしょ」
晴香がまっすぐにさゆりの目を見てくる。
「・・・」
声が出ないさゆり、なんでって感じで固まっている。
「お母さんが飲みに出かけてたなんてぜんぜん知らなかったんだけど」
「晴香、なんで知ってるの。お母さん、怖い」
疑問から恐怖に至るさゆり、なんで知られたのか想像もつかないのだろう。
「家でなんかするからよ」
「えっ」
「わたしがいつも遅く帰るから、お母さんはお兄ちゃんの帰宅時間だけ気を付けてたんだと思うけど。友達のバイクで送ってもらった日があってあの人が家から出て来て、後を付けた。そしたら、大きな家の前で車を横づけしたんですぐ出てくると思って、それから繁華街に、友達と別れて車から出て来たあの人の後を追ったら雑居ビルに入ってスナックに、鍵を開けて入ったんでここで働いてるんだと分かった。もっと綺麗な人かと思ったら普通の人だった」
「そうだったんだ、お母さん恥ずかしい」
「いまさら?」
「もう、晴香ったら。飲みに行って知り合ったわけじゃない、平日の昼間にあのスナックでカラオケやる会があってそこにお母さんは参加してたのよ」
友也の勤め先、大津軽建設会長夫婦が平日に主催するカラオケの集いに役職者達の婦人十数人が参加する、建前上は自由参加だが出席率は異常に高い、月一回で朝の10時から夕方4時までの長丁場、友也に頼まれてさゆりも出席している、その店のママと関係を持って既に7年近く経つのだが、昨年の晩夏に自宅でヤッている現場を友也に見つかり年末に離婚している。
「お母さんの話はしたわよ、さっきの晴香の答え教えて」
「わたしは男の人が好き、女の人は怖い。あの先生を選んだのお母さんだよね、わたし虐められないと感じない躰に躾けられていてもうそこから抜け出せないの、お母さんのせいよ、恨んでる」
「晴香、ゴメンなさい、すべてお母さんが悪い。許して」
「さっきだって、あそこまでするなんて、終わって枕を取りに出ようとした時にお母さんを軽蔑してる自分がいた。これが本音」
晴香の言葉で泣き出すさゆり、とめどなく涙が出ている。
今度は晴香がテッシュを取りに行く。
「自分の娘に軽蔑されるなんてザマないよね」
「晴香はお母さんみたいにならないで、本当に男の人が好きで間違いないのね」
「間違いないって、男が好き」
安堵するさゆり、もう遅いし寝よ、晴香の一言で部屋の明かりを消す。
仰向けになっていたさゆりが晴香に背を向ける、寝付けない様子がうかがえる。
晴香が後ろから抱きついてくる。
「寝れないんでしょ」
さゆりの耳元でそう囁いた晴香がさゆりのうなじに舌を這わせる。
「あぁ」
ダメとは言わない、体勢も変えない、じっとしてされるがままのさゆり。
「娘に軽蔑されて泣いてたくせに、なに受け入れてんのよ、恥ずかしいのがいいんでしょう、たまらないんでしょう」
「・・・」
「わたしはレズビアンにはならない、おやすみなさい」
晴香が離れていっても動かない、硬直したままのさゆり、あまりにも情けない姿を娘に晒したせいであろう。
ベットの上で向き合う。
「お母さんと寝るの小学校3年の時以来だね」
「よく覚えているわね。中学に入ってからの晴香はろくに口も聞いてくれなくなってたから、お母さん寂しかったのよ」
さゆりが晴香の手を取り自分の膝に置いて来る。
「ゴメン、誤解してたから、でも、お母さんだって。わたし見たんだから」
さゆりの手の上に晴香の手が重なる。
「な、なにを見たっていうの」
「小学校3年の時、お母さんが他の女の人と抱き合ってた」
手を放し座り直すさゆり。
「そんな、知ってたんだ」
「だから、中学に入ってからお母さんと距離を置いた、先生とそうなったから。なのに横取りするなんて、死ぬほどお母さんを恨んだし、嫉妬した」
「そんな、晴香を苦しめていたんだね、知らなかった。今の晴香はどうなの、私のせいで女の人しか愛せなくなったの、それとも男の人でも大丈夫なの」
「それは」
「聞くの少し怖いんだけど、教えて欲しい」
「その前に、お母さんはどうだったの、聞かせて」
さゆりが自分のことを話す、男性は友也しか知らないことも話し「結婚が間違っていたとは思っていない、だって、拓海と晴香を授かったから、結婚生活には失敗したけど」、そう言ったさゆりが晴香から目をそらして下を向く。
「離婚したのはお母さんの女性関係が原因なんでしょう、薄々気付いてた」
「拓海は、拓海も気付いているの、もしそうだったらどうしよう」
急にうろたえるさゆり、目の焦点が合っていない。
「お兄ちゃんはまったく気づいていないから、安心して」
ふぅーと息を吐くさゆり。
「スナックの人でしょ」
晴香がまっすぐにさゆりの目を見てくる。
「・・・」
声が出ないさゆり、なんでって感じで固まっている。
「お母さんが飲みに出かけてたなんてぜんぜん知らなかったんだけど」
「晴香、なんで知ってるの。お母さん、怖い」
疑問から恐怖に至るさゆり、なんで知られたのか想像もつかないのだろう。
「家でなんかするからよ」
「えっ」
「わたしがいつも遅く帰るから、お母さんはお兄ちゃんの帰宅時間だけ気を付けてたんだと思うけど。友達のバイクで送ってもらった日があってあの人が家から出て来て、後を付けた。そしたら、大きな家の前で車を横づけしたんですぐ出てくると思って、それから繁華街に、友達と別れて車から出て来たあの人の後を追ったら雑居ビルに入ってスナックに、鍵を開けて入ったんでここで働いてるんだと分かった。もっと綺麗な人かと思ったら普通の人だった」
「そうだったんだ、お母さん恥ずかしい」
「いまさら?」
「もう、晴香ったら。飲みに行って知り合ったわけじゃない、平日の昼間にあのスナックでカラオケやる会があってそこにお母さんは参加してたのよ」
友也の勤め先、大津軽建設会長夫婦が平日に主催するカラオケの集いに役職者達の婦人十数人が参加する、建前上は自由参加だが出席率は異常に高い、月一回で朝の10時から夕方4時までの長丁場、友也に頼まれてさゆりも出席している、その店のママと関係を持って既に7年近く経つのだが、昨年の晩夏に自宅でヤッている現場を友也に見つかり年末に離婚している。
「お母さんの話はしたわよ、さっきの晴香の答え教えて」
「わたしは男の人が好き、女の人は怖い。あの先生を選んだのお母さんだよね、わたし虐められないと感じない躰に躾けられていてもうそこから抜け出せないの、お母さんのせいよ、恨んでる」
「晴香、ゴメンなさい、すべてお母さんが悪い。許して」
「さっきだって、あそこまでするなんて、終わって枕を取りに出ようとした時にお母さんを軽蔑してる自分がいた。これが本音」
晴香の言葉で泣き出すさゆり、とめどなく涙が出ている。
今度は晴香がテッシュを取りに行く。
「自分の娘に軽蔑されるなんてザマないよね」
「晴香はお母さんみたいにならないで、本当に男の人が好きで間違いないのね」
「間違いないって、男が好き」
安堵するさゆり、もう遅いし寝よ、晴香の一言で部屋の明かりを消す。
仰向けになっていたさゆりが晴香に背を向ける、寝付けない様子がうかがえる。
晴香が後ろから抱きついてくる。
「寝れないんでしょ」
さゆりの耳元でそう囁いた晴香がさゆりのうなじに舌を這わせる。
「あぁ」
ダメとは言わない、体勢も変えない、じっとしてされるがままのさゆり。
「娘に軽蔑されて泣いてたくせに、なに受け入れてんのよ、恥ずかしいのがいいんでしょう、たまらないんでしょう」
「・・・」
「わたしはレズビアンにはならない、おやすみなさい」
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