30 / 60
第6章 思惑/思う気持ち
4
しおりを挟む
加奈が帰った後で、お風呂にも入らずに自慰に耽《ふけ》っていたさゆりは終えてぐったりとしている、メールが着信する、遠藤多恵子からだ、「お疲れさまでした。今度の土日のどちらか空いてれば会えませんか、話を聞いて欲しいです」、「お疲れ様でした。日曜日なら大丈夫、空いてます」「じゃあ日曜日で、10時に新座駅北口前で、ドライブしながらでお願いします」「了解しました」。
さゆりは実家に戻ってから近所と池袋それに藤崎智子と会った新宿ぐらいしか出歩いていない、免許はあるし地方では車が必須だったので普通に運転していたのだが東京では父親の車を借りれるが行く所もない、新座駅は分かる、遠藤多恵子はそこから通っている、だいたい30~40分か。
シャワーを浴びてパソコンに向かい天気予報をチェック、日曜日に着ていく服装を考える。
翌朝8時、村善建設の全体朝会で健太郎から障害者中央センターの改修工事を受注した旨の報告がなされた、誰もが7時過ぎには出勤しているので受注の話は既に伝わっている、健太郎が続ける「地域貢献と従業員の満足度向上を社長就任2年目の重点課題としたい、4月から始業時間8時40分の30分前、8時10分、これを通常の出社時間にしようと思う、会長の賛同は得ている、終業時間は今まで通り17時とする、各人そのつもりで4月から今まで以上に頑張って欲しい。この勤務体系で業績を落とさないでやっていく、いまここに居ないメンバーにも伝えて欲しい、それとこの実質出社時間の変更は絶対に他言無用でお願いします、変な誤解を同業他社に与えかねないからです、静かに進めていきたいと思います、以上」、社内が一斉にざわつく、このあと各部の朝会で社長の考えをかみ砕いて部長達が伝えることになる、営業、設計、技術工事、総務の各部長は前もって聞かされている。
総務部の朝会が始まる、加奈から「昨日はお疲れ様でした、また折を見てやりましょう。社長の考えを簡単に言うとホームページに載せていることと実態は同じでなければならない、と言うことです。今の時代、そうは言うけれど、は通用しなくなっているという認識が社長にはあります。まだ先の事ですが、会社のさらなる成長が見込める場合は従業員を相当数増やす考えもあります、その場合は法人カードを各人に持たせてクラウド会計に移行し事務の効率化を図ります、総務の仕事の中で事務処理が減った分は労務と福利厚生に回します、今すぐと言う話ではないです、数年単位の話ですので驚かないで下さい。以上が、社長の考えです、それでは仕事を始めます」
吉田由奈が「法人カードにクラウド会計ですか、イメージできないです」、加奈が「けっこう前から銀行から提案されているのよ、すべての経費、例えばお客様用のお茶菓子を買った場合に法人カードで決済すると総務のパソコン内で自動仕分けされるんですって」「私たち要らなくなりますね」「そんなことないわよ、ここはいくらでも仕事あるから」、「確かに」と遠藤多恵子、「さぁ期末を乗り越えましょう」と加奈が締める。
この日の村善建設は終日にわたり社内の至る所で会話が見られた、実際は4月に入ってみないと分からないが期待だけでなく疑心暗鬼の意見も多い、会長の賛同を得ていると言うのがその根拠だ、会長の口癖を誰もが知っている「俺は日の出と共に働いて来た」というものだ、昔々の飲み会で誰かが「縄文時代から転生してきたんじゃないか」と言ったことで陰で会長のことを「縄文人」と呼んでいる村善で、社長の決定が実施されても、もし業績が足踏みでもすれば会長が口を出して元に戻す、この見方が大半を占めて週末金曜日の退社時間を迎えている。
2日後、3月13日(日)、新座《にいざ》駅北口。
遠藤多恵子と合流した工藤さゆりは駐車場に止めてあるミニバンに乗り込む、後部座席を見たさゆりが折りたたみ椅子やテーブル、タープなどが置かれているのを目にして「アウトドア好きなんですね」と口にする、「キャンプが好きでよく行くんで、この車去年買い換えた中古なんだけど、ひとつ前のタイプで3万キロも走ってないのに150万ちょっとだった、見た時にやったぁって思って」「キレイに使ってるの分かりますよ」「ありがとう、今日は近場の荒川沿いにある運動公園に行きますね、30~40分で着くんで」「はい、キャンプもその辺りなんですか」「ないない、キャンプ出来ないから。よく行くのは長瀞《ながとろ》渓谷、荒川の上流部にあるんだけど、新座からだと私の運転で1時間半、混んでると2時間ってとこ」
駐車場を出て車を走らせる。
さゆりが「キャンプは家族とか、お友達とかとですか」と聞き、「ほぼ、妹と弟夫婦と行く」と答える多恵子、あらっと言ったさゆりが「3人兄弟だったんですか」と尋ねる、「そう3人、去年弟が結婚したんでそれまで乗っていた軽からミニバンに変えた」、それを聞いたさゆりが「羨ましいです」と一言。
目的地に着くまでで、遠藤多恵子が聞いて欲しいと言っていた愚痴を口にしたのは一つだけだった、吉田由奈のケアレスミスの有無を毎日こっそりとチェックしているという、由奈が落ち込んでる様子で出勤した時は要注意だと、村善が契約している税理士の推奨で入れたソフトの入力を再度チェックするのだが加奈にも言ってない、さゆりは「うんうん」と聞いているだけで特にアドバイスをすることも無く目的地に着いてしまっている。
車を駐車場に止めて遠藤多恵子が魔法瓶からコーヒーを注ぐ。
「ありがとう」
嬉しそうな顔を見せるさゆり、多恵子の気遣いというか事前準備が嬉しいのだろう。
「いつからなの」
「えっ」
えっ、と言ったまま口を少し開けて固まるさゆり。
「踊ってる時のことよ、私が今度誘いますねって言った時に工藤さんは二人だけで、すぐにでもいいですって答えて、そのあとのことよ。忘れたとは言わせない」
さゆりは実家に戻ってから近所と池袋それに藤崎智子と会った新宿ぐらいしか出歩いていない、免許はあるし地方では車が必須だったので普通に運転していたのだが東京では父親の車を借りれるが行く所もない、新座駅は分かる、遠藤多恵子はそこから通っている、だいたい30~40分か。
シャワーを浴びてパソコンに向かい天気予報をチェック、日曜日に着ていく服装を考える。
翌朝8時、村善建設の全体朝会で健太郎から障害者中央センターの改修工事を受注した旨の報告がなされた、誰もが7時過ぎには出勤しているので受注の話は既に伝わっている、健太郎が続ける「地域貢献と従業員の満足度向上を社長就任2年目の重点課題としたい、4月から始業時間8時40分の30分前、8時10分、これを通常の出社時間にしようと思う、会長の賛同は得ている、終業時間は今まで通り17時とする、各人そのつもりで4月から今まで以上に頑張って欲しい。この勤務体系で業績を落とさないでやっていく、いまここに居ないメンバーにも伝えて欲しい、それとこの実質出社時間の変更は絶対に他言無用でお願いします、変な誤解を同業他社に与えかねないからです、静かに進めていきたいと思います、以上」、社内が一斉にざわつく、このあと各部の朝会で社長の考えをかみ砕いて部長達が伝えることになる、営業、設計、技術工事、総務の各部長は前もって聞かされている。
総務部の朝会が始まる、加奈から「昨日はお疲れ様でした、また折を見てやりましょう。社長の考えを簡単に言うとホームページに載せていることと実態は同じでなければならない、と言うことです。今の時代、そうは言うけれど、は通用しなくなっているという認識が社長にはあります。まだ先の事ですが、会社のさらなる成長が見込める場合は従業員を相当数増やす考えもあります、その場合は法人カードを各人に持たせてクラウド会計に移行し事務の効率化を図ります、総務の仕事の中で事務処理が減った分は労務と福利厚生に回します、今すぐと言う話ではないです、数年単位の話ですので驚かないで下さい。以上が、社長の考えです、それでは仕事を始めます」
吉田由奈が「法人カードにクラウド会計ですか、イメージできないです」、加奈が「けっこう前から銀行から提案されているのよ、すべての経費、例えばお客様用のお茶菓子を買った場合に法人カードで決済すると総務のパソコン内で自動仕分けされるんですって」「私たち要らなくなりますね」「そんなことないわよ、ここはいくらでも仕事あるから」、「確かに」と遠藤多恵子、「さぁ期末を乗り越えましょう」と加奈が締める。
この日の村善建設は終日にわたり社内の至る所で会話が見られた、実際は4月に入ってみないと分からないが期待だけでなく疑心暗鬼の意見も多い、会長の賛同を得ていると言うのがその根拠だ、会長の口癖を誰もが知っている「俺は日の出と共に働いて来た」というものだ、昔々の飲み会で誰かが「縄文時代から転生してきたんじゃないか」と言ったことで陰で会長のことを「縄文人」と呼んでいる村善で、社長の決定が実施されても、もし業績が足踏みでもすれば会長が口を出して元に戻す、この見方が大半を占めて週末金曜日の退社時間を迎えている。
2日後、3月13日(日)、新座《にいざ》駅北口。
遠藤多恵子と合流した工藤さゆりは駐車場に止めてあるミニバンに乗り込む、後部座席を見たさゆりが折りたたみ椅子やテーブル、タープなどが置かれているのを目にして「アウトドア好きなんですね」と口にする、「キャンプが好きでよく行くんで、この車去年買い換えた中古なんだけど、ひとつ前のタイプで3万キロも走ってないのに150万ちょっとだった、見た時にやったぁって思って」「キレイに使ってるの分かりますよ」「ありがとう、今日は近場の荒川沿いにある運動公園に行きますね、30~40分で着くんで」「はい、キャンプもその辺りなんですか」「ないない、キャンプ出来ないから。よく行くのは長瀞《ながとろ》渓谷、荒川の上流部にあるんだけど、新座からだと私の運転で1時間半、混んでると2時間ってとこ」
駐車場を出て車を走らせる。
さゆりが「キャンプは家族とか、お友達とかとですか」と聞き、「ほぼ、妹と弟夫婦と行く」と答える多恵子、あらっと言ったさゆりが「3人兄弟だったんですか」と尋ねる、「そう3人、去年弟が結婚したんでそれまで乗っていた軽からミニバンに変えた」、それを聞いたさゆりが「羨ましいです」と一言。
目的地に着くまでで、遠藤多恵子が聞いて欲しいと言っていた愚痴を口にしたのは一つだけだった、吉田由奈のケアレスミスの有無を毎日こっそりとチェックしているという、由奈が落ち込んでる様子で出勤した時は要注意だと、村善が契約している税理士の推奨で入れたソフトの入力を再度チェックするのだが加奈にも言ってない、さゆりは「うんうん」と聞いているだけで特にアドバイスをすることも無く目的地に着いてしまっている。
車を駐車場に止めて遠藤多恵子が魔法瓶からコーヒーを注ぐ。
「ありがとう」
嬉しそうな顔を見せるさゆり、多恵子の気遣いというか事前準備が嬉しいのだろう。
「いつからなの」
「えっ」
えっ、と言ったまま口を少し開けて固まるさゆり。
「踊ってる時のことよ、私が今度誘いますねって言った時に工藤さんは二人だけで、すぐにでもいいですって答えて、そのあとのことよ。忘れたとは言わせない」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる