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20 忘却の呪いの解き方②
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(どうしたんだろう? 疲れてるのかな?)
私が隣でじっと見つめていてもカイルは視線に気づかない。なにか考え込んでいるようだから、そっとしておこうかな。そう思った私は再び師匠の話に耳を傾けた。
「魔法陣はすぐ作れるから、それまではいっぱいカイルに聖魔力をもらっておいて――ケホッゲホッ」
話の途中で急に師匠が咳き込んだことで、私の視線がカイルから師匠に移った。しかも顔色も悪くて汗をかいている。私はあわててジャレドの元に駆け寄った。
「師匠! 大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
「……ああ。ほら、今日はみんなに責められるし、いっぱい喋ったから疲れちゃった~」
ヘラリといつもの調子で笑っているけど、やっぱりつらそうだ。私が背中をさすると、シャツが汗で濡れている。すると司教様が師匠の肩をポンと叩き、ブルーノさんたちを呼んでくれた。
「ジャレドを客室に案内してやってくれ。今日はもうみんな疲れているだろう。昼の食事もまだだったから休憩しよう」
そういえば今日はいきなり師匠が現れて、そのうえ王女たちまで来たからまだ昼食を食べてなかった。そのことに気づくと、とたんにお腹が空いてくる。思わず音が鳴りそうなお腹を押さえると、それを見た殿下がクスッと笑って立ち上がった。
「では私は王宮に帰ります。カイル、ケリーを貸してくれないか? アンジェラたちの対処をしたら、報告がてらまた教会に戻ってもらおうと思うのだが」
「わかりました。ケリー頼んだぞ」
「は!」
そのまま急ぎ足で殿下とケリーさんは部屋から出て行き、師匠も客室に案内されて行った。残った私たちは司教様の計らいで、アメリさんやブルーノさんも一緒に食事を取ることになった。
「うわ~! 教会のシチューだ! 嬉しい!」
「サクラ様はシチューがお好きなんですか? 他にどんな好物がありますか? 私知っておきたいです!」
懐かしい味を満喫していると、アメリさんとブルーノさんが興味津々の顔で私を見ていた。
(最初に召喚された時も、こうやって私の好みを知りたがってたなぁ。記憶がなくてもまたこうやって親しくなれるなら楽しい!)
「えっと、まずはこの野菜たっぷりのシチューでしょう。あとはデザートのフルーツプディング。塩味の白パンも好きだよ! あと、アメリさんも大好きな野いちごのジュースも!」
そう言うとアメリさんは目をキラキラさせて喜んでいる。
「私の好みも覚えてくださっているんですね! 料理人も喜びます!」
「ミリアさんだよね! 彼女の作るお惣菜のパンが大好きだって伝えてほしい!」
「ふふ。わかりました!」
今日はちょっと甘みのある黒パンだけど、もちろんこれも美味しい。焼き立てのパンを食べられるのは、日本で暮らしていた私には贅沢な食事だ。
「他にはありませんか? 私たちが以前していたことがあれば教えてください」
今度はブルーノさんが質問してきた。基本的に身の回りの世話はアメリさんがしていたけど、私は彼からもらって大事にしていた物があった。
「あのね、ブルーノさんが作ってくれた花のポプリが欲しいの。ブルーノさんの生まれた地方に咲く花で、枕に入れるとよく眠れるからってプレゼントしてくれたんだけど……わかるかな?」
するとブルーノさんの優しいブラウンの瞳が一気に輝き出した。
「シュリの花ですね! もちろんですとも! すぐに作ってお渡しします! うわあ……嬉しいな。サクラ様は本当に私たちと仲良くしてくれていたのですね」
二人は顔を見合わせ、本当に幸せそうにほほ笑んでいる。私もその姿を見ているだけで、まるで昔に戻ったみたいで嬉しくなってきた。
(話せるって最高! さすがに二人の恋心については聞けないけど、記憶が戻ったら根掘り葉掘り聞いちゃうからね!)
含み笑いをしながら隣に座るカイルを見ると、また彼の表情は落ち込んでいるように見えた。
「カイル? さっきからどうしたの? 体調が悪いの?」
そっと服を引っ張り様子をうかがうと、カイルは心配する私を苦笑いして見つめ返した。
「……いや、そんなことはない。ただ今日はいろいろあったから情報を整理するのが大変だったんだ。そうだ、サクラ。食べ終わったようだから少し散歩しないか?」
「うん! 行きたい!」
(そうだよね。混乱してるのは私だけじゃない。いきなり犯罪者だと思ってた私が聖女で、しかも過去に一緒に過ごしてたなんて聞いたら驚いて当たり前だよ)
「中庭にでも行こうか。今の時期なら花が綺麗だと思う」
「そうだね。ちょっと外の空気を吸いたいし」
食堂から外に出ると私たちは一階に降り、中庭に向かって歩きだした。教会は召喚されてからずっと過ごしてきた場所だ。私が迷いもせずスイスイ歩いていくので、カイルは「やっぱりサクラは聖女なんだな」と呟いている。
「懐かしいな~! あれ……あそこ」
目に入ってきたのは、中庭とは逆方向に進む廊下だ。一度目の召喚でよく通ったその先にある場所を思い出し、胸がドクンと跳ね上がる。あそこは、あの先には。心臓がトクトクと早鐘を打ち、気づいたら私はカイルの手をつかんでいた。
「カイル! こっちに来て!」
「え? どうしたんだ急に?」
(お庭も良いけど、もっと素敵なところがあったの思い出した!)
私は戸惑うカイルをぐいぐい引っ張り、その場所に連れて行く。その行動さえすごく懐かしくて、ほんの少し目の奥が熱くなってきた。
「ここは……?」
「ここは私が瘴気の浄化を練習してた場所なの。それとカイルとの思い出の場所!」
初めてカイルと会った日、私が聖女だと証明するために浄化を見せた練習場。この場所はあの時とまったく変わりなく、カイルと一緒にいるとまるで時間が戻ったようにすら思える。
私はくるりと振り返ると、少し照れくさそうに微笑むカイルに昔話をすることにした。
私が隣でじっと見つめていてもカイルは視線に気づかない。なにか考え込んでいるようだから、そっとしておこうかな。そう思った私は再び師匠の話に耳を傾けた。
「魔法陣はすぐ作れるから、それまではいっぱいカイルに聖魔力をもらっておいて――ケホッゲホッ」
話の途中で急に師匠が咳き込んだことで、私の視線がカイルから師匠に移った。しかも顔色も悪くて汗をかいている。私はあわててジャレドの元に駆け寄った。
「師匠! 大丈夫ですか? 顔色が悪いですよ」
「……ああ。ほら、今日はみんなに責められるし、いっぱい喋ったから疲れちゃった~」
ヘラリといつもの調子で笑っているけど、やっぱりつらそうだ。私が背中をさすると、シャツが汗で濡れている。すると司教様が師匠の肩をポンと叩き、ブルーノさんたちを呼んでくれた。
「ジャレドを客室に案内してやってくれ。今日はもうみんな疲れているだろう。昼の食事もまだだったから休憩しよう」
そういえば今日はいきなり師匠が現れて、そのうえ王女たちまで来たからまだ昼食を食べてなかった。そのことに気づくと、とたんにお腹が空いてくる。思わず音が鳴りそうなお腹を押さえると、それを見た殿下がクスッと笑って立ち上がった。
「では私は王宮に帰ります。カイル、ケリーを貸してくれないか? アンジェラたちの対処をしたら、報告がてらまた教会に戻ってもらおうと思うのだが」
「わかりました。ケリー頼んだぞ」
「は!」
そのまま急ぎ足で殿下とケリーさんは部屋から出て行き、師匠も客室に案内されて行った。残った私たちは司教様の計らいで、アメリさんやブルーノさんも一緒に食事を取ることになった。
「うわ~! 教会のシチューだ! 嬉しい!」
「サクラ様はシチューがお好きなんですか? 他にどんな好物がありますか? 私知っておきたいです!」
懐かしい味を満喫していると、アメリさんとブルーノさんが興味津々の顔で私を見ていた。
(最初に召喚された時も、こうやって私の好みを知りたがってたなぁ。記憶がなくてもまたこうやって親しくなれるなら楽しい!)
「えっと、まずはこの野菜たっぷりのシチューでしょう。あとはデザートのフルーツプディング。塩味の白パンも好きだよ! あと、アメリさんも大好きな野いちごのジュースも!」
そう言うとアメリさんは目をキラキラさせて喜んでいる。
「私の好みも覚えてくださっているんですね! 料理人も喜びます!」
「ミリアさんだよね! 彼女の作るお惣菜のパンが大好きだって伝えてほしい!」
「ふふ。わかりました!」
今日はちょっと甘みのある黒パンだけど、もちろんこれも美味しい。焼き立てのパンを食べられるのは、日本で暮らしていた私には贅沢な食事だ。
「他にはありませんか? 私たちが以前していたことがあれば教えてください」
今度はブルーノさんが質問してきた。基本的に身の回りの世話はアメリさんがしていたけど、私は彼からもらって大事にしていた物があった。
「あのね、ブルーノさんが作ってくれた花のポプリが欲しいの。ブルーノさんの生まれた地方に咲く花で、枕に入れるとよく眠れるからってプレゼントしてくれたんだけど……わかるかな?」
するとブルーノさんの優しいブラウンの瞳が一気に輝き出した。
「シュリの花ですね! もちろんですとも! すぐに作ってお渡しします! うわあ……嬉しいな。サクラ様は本当に私たちと仲良くしてくれていたのですね」
二人は顔を見合わせ、本当に幸せそうにほほ笑んでいる。私もその姿を見ているだけで、まるで昔に戻ったみたいで嬉しくなってきた。
(話せるって最高! さすがに二人の恋心については聞けないけど、記憶が戻ったら根掘り葉掘り聞いちゃうからね!)
含み笑いをしながら隣に座るカイルを見ると、また彼の表情は落ち込んでいるように見えた。
「カイル? さっきからどうしたの? 体調が悪いの?」
そっと服を引っ張り様子をうかがうと、カイルは心配する私を苦笑いして見つめ返した。
「……いや、そんなことはない。ただ今日はいろいろあったから情報を整理するのが大変だったんだ。そうだ、サクラ。食べ終わったようだから少し散歩しないか?」
「うん! 行きたい!」
(そうだよね。混乱してるのは私だけじゃない。いきなり犯罪者だと思ってた私が聖女で、しかも過去に一緒に過ごしてたなんて聞いたら驚いて当たり前だよ)
「中庭にでも行こうか。今の時期なら花が綺麗だと思う」
「そうだね。ちょっと外の空気を吸いたいし」
食堂から外に出ると私たちは一階に降り、中庭に向かって歩きだした。教会は召喚されてからずっと過ごしてきた場所だ。私が迷いもせずスイスイ歩いていくので、カイルは「やっぱりサクラは聖女なんだな」と呟いている。
「懐かしいな~! あれ……あそこ」
目に入ってきたのは、中庭とは逆方向に進む廊下だ。一度目の召喚でよく通ったその先にある場所を思い出し、胸がドクンと跳ね上がる。あそこは、あの先には。心臓がトクトクと早鐘を打ち、気づいたら私はカイルの手をつかんでいた。
「カイル! こっちに来て!」
「え? どうしたんだ急に?」
(お庭も良いけど、もっと素敵なところがあったの思い出した!)
私は戸惑うカイルをぐいぐい引っ張り、その場所に連れて行く。その行動さえすごく懐かしくて、ほんの少し目の奥が熱くなってきた。
「ここは……?」
「ここは私が瘴気の浄化を練習してた場所なの。それとカイルとの思い出の場所!」
初めてカイルと会った日、私が聖女だと証明するために浄化を見せた練習場。この場所はあの時とまったく変わりなく、カイルと一緒にいるとまるで時間が戻ったようにすら思える。
私はくるりと振り返ると、少し照れくさそうに微笑むカイルに昔話をすることにした。
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