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16 アンジェラ王女と聖女の魔力③
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瞬く間に検査板からは虹色の光が浮かび上がり、部屋中に金色の粒が舞い始める。幻想的なその光景はまさに私が召喚された時と同じで、懐かしさに胸が締め付けられそうだった。
(魔力が戻ってる……?)
「おお! やはりあなたこそが、聖女様! この美しい虹色の光。まるで神が降臨したかのような――」
「ジャレド」
「まあ、そういうことです。王女様。彼女が聖女だということ、わかってもらえましたでしょうか?」
いい加減にしろと言わんばかりの司教様の呼びかけに、師匠はあわてて口調を戻すと王女のほうを振り返った。
するとガタンと椅子を乱暴に倒し、王女が叫びだす。
「そんなわけないわ! 魔術師ジャレド! あなた、この検査板に細工をしたのでしょう?」
わなわなと震えながら師匠を睨みつけ、今にも飛びかかりそうなほど怒っている。しかしそんな鬼気迫る表情に動じることもなく、王女を見つめるジャレドの瞳は氷のように冷たくなっていく。
「おや? アンジェラ王女はこの検査板に、そのような不正ができる方法をご存じで?」
「わ、わたくしが知るわけないでしょう?」
やはり彼女は子供だ。突然質問を返され目が泳ぎ始めた。するとその姿をかばうようにエリックが前に出てくる。王女と違ってまったく動揺はしておらず、堂々と師匠のほうに歩いていく。
「きっとその検査板には、人がふれると虹の光が出るよう細工してあったのでしょう。ジャレド氏があらかじめ魔法陣を仕込んでいたのなら簡単ですよね?」
そう言ってエリックはせせら笑うと、王女のほうを振り返った。アンジェラ王女はホッとした顔で「エリックの言うとおりよ!」と叫んでいる。
(たしかに私たちが奥に隠れてから時間はあったから、検査板になにかすることはできたと思う。じゃあ、これはその場しのぎの策なのかな……)
二人のやり取りに心臓がバクバクといっている。しかし師匠は挑戦的に睨みつけるエリックを見て、ニヤリと笑った。待ってましたと言わんばかりの表情に、目の前のエリックは気づかない。
「なら君がこの検査板にふれてみればいい。君の魔力の色は?」
「……青だが」
「さあ、どうぞ」
検査板を差し出され、エリックは戸惑いながらも手を置いた。するとすぐに板は青く光を放ち、ジャレドは満足そうにほほ笑んだ。
「青ですね。では他の者でも試してみましょうか。ブルーノ! アメリ!」
外で控えていた二人の魔力の色は緑と白。申告通りの色が光り、エリックは苦々しい顔でうつむいている。
「ほら、本物でしょう? 細工などするわけがない。エリックといったかな? 君が間違っていたようだね?」
クスクスと笑うジャレドの言葉にも、エリックは何も答えない。ただギリッと歯を食いしばる音だけが、部屋に響いた。そんな黙り込む彼の横を通り、師匠はアンジェラ王女に検査板をスッと差し出した。
「さあ、アンジェラ王女。この検査板に手を置いて証明してください。あなたもサクラと同じ聖女だというのなら、先ほどのようにこの部屋が虹色の光で満たされるでしょう」
「――っ!」
師匠はそう言うと、彼女を追い詰めるように一歩前に出た。
「わ……わたくしは……」
王女の顔は青ざめ、何も言えずに黙っている。エリックも同じだ。屈辱にまみれた顔でジャレドを睨み、拳を握りしめていた。
「わ、わたくしは、もう王宮に帰らせていただくわ!」
叫ぶようにそう言うと、王女は足早に扉に向かっていく。しかし王女が部屋を出ようと扉に手をかけた瞬間、今まで黙って様子を見ていた司教様が突然話し始めた。
「おお! それならちょうど良い! そろそろ迎えが来るころでしょうから」
「む、迎え……?」
アンジェラ王女は意味がわからないといった様子だ。確認するようにエリックの顔を見ているけれど、彼も首を横に振っている。
するとカチャリと扉が開き、一人の男性が入ってきた。
「おお、時間どおりですな!」
司教様はニコニコと笑いながら立ち上がると、両手を広げその男性を歓迎した。反対にその人の顔を見た瞬間、アンジェラ王女は顔が真っ青になり、後ずさりし始める。
「ようこそ、アルフレッド殿下」
部屋に入ってきたのは、まぎれもなくこの国の王太子である、アルフレッド殿下だった。
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