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02 聖女は再び召喚される②
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しかも幸運なことに、カイルも同じ気持ちでいてくれたのだ。旅の終わりが近づき、瘴気が出ている最後の町に着いた日の夜。二人で街の宝石店に行き、お互いの聖魔力を込めたネックレスを交換した。
「この任務が終わったら、王都に帰れる。サクラ、俺と結婚してほしい」
「嬉しい……! 私もカイルと結婚したい!」
それなのに、その後のことが全く思い出せないのだ。気づけば私はこの部屋に戻ってきていて、呆然としたのを覚えている。
なんで戻ってきてしまったのか? 魔法陣を踏んだ覚えもなく、ただ目覚めたら日本に戻っていた。もしかしてすべて私の妄想だったのかと考えたけど、胸元にあるカイルの聖魔力が入ったネックレスが、現実にあったことだと示していた。
カイルに会える気がして、何度もさわったネックレス。蓋のついた瓶がチャームになったそれを、私は日本にいても肌身離さず身につけていた。
「一年か……なんで戻れないの?」
どんなにそのネックレスに願っても、カイルのもとに戻ることはなかった。それでも諦められない私は、今日もこのネックレスをさわって、眠りについた。
「や、やばい! 寝過ごしちゃった! しかも昨日、帰ってきたままで寝ちゃってるし!」
急いでシャワーを浴び、身支度をして家を出る。駅までは五分。会社までは電車で十五分か。
(ギリギリ間に合わないかも。今日はスニーカーだから、近道して行こう!)
数分の遅れで電車に乗れなかったら遅刻してしまう。私はいつもは通らない裏道に入って行った。その時だった。
誰もいない民家と民家の隙間のような路地の景色が、ぐにゃりと曲がり始める。
「え? これって……」
足元には見覚えのある、光る魔法陣。その光景に私は迷わず立ち止まり、次の展開を待った。
(もしかして、カイルに会えるの? オズマンド国に戻れる?)
心臓の音が激しくなり、口の中がカラカラだ。やがてその魔法陣の光は、私の全身を包み始めた。
(前と一緒だ! 嬉しい! やっとカイルに会えるんだわ!)
そして私の視界はすべて真っ白になり、ガクンと力が抜けた。次の瞬間、私の体は一瞬宙に浮き、そしてすぐに地面に叩きつけられる。
(あれ? おかしいな。前は瞬間移動みたいな感じだったのに)
「きゃああ!」
「誰だこの女は!」
なんだかものすごく騒がしい。ここは教会じゃないのだろうか? するとあっという間に私のまわりに人が集まり、後ろ手に縛られてしまった。
(ど、どういうこと? ここは、オズマンド国じゃないの?)
「おまえは誰だ! どうやってこの王宮に入ってきた!」
(え? 王宮? ここ王様がいるお城なの?)
それなら私の顔があまり知られていないのも当然だ。きっと何かの手違いで、教会ではなく王宮に召喚されてしまったのだろう。説明して調べてもらえば、私が聖女だとわかってもらえるはず!
「ぐう……うううう!」
しかし聖女だと説明しようと口を開いた瞬間、喉に強烈な痛みが襲いかかる。まるで高温の油を飲んだように、ねっとりとまとわりつく熱い痛み。
ゲホゲホと咳き込む私に、まわりの男たちは「動くな!」と叫びだす。それでも説明しなきゃと口を開くと、またあの痛みが襲ってきた。
「動くなと言っているだろう。顔を上げろ!」
気づけば私の目の前には、ギラリと光る鋭い剣が向けられていた。しかしそれより私を驚かせたのは、その声だ。
(この声……、この人は……!)
私はそろそろと顔を上げ、声の主を確かめる。目の前にいる男は、青みがかった黒髪に、深い藍色の瞳。しかしそこに私を優しく見つめる色はない。
(カイル……!)
鋭い剣先を向け、私を睨みつけるその人は、まぎれもなく結婚の約束をした、私の恋人「カイル」だった。
「この任務が終わったら、王都に帰れる。サクラ、俺と結婚してほしい」
「嬉しい……! 私もカイルと結婚したい!」
それなのに、その後のことが全く思い出せないのだ。気づけば私はこの部屋に戻ってきていて、呆然としたのを覚えている。
なんで戻ってきてしまったのか? 魔法陣を踏んだ覚えもなく、ただ目覚めたら日本に戻っていた。もしかしてすべて私の妄想だったのかと考えたけど、胸元にあるカイルの聖魔力が入ったネックレスが、現実にあったことだと示していた。
カイルに会える気がして、何度もさわったネックレス。蓋のついた瓶がチャームになったそれを、私は日本にいても肌身離さず身につけていた。
「一年か……なんで戻れないの?」
どんなにそのネックレスに願っても、カイルのもとに戻ることはなかった。それでも諦められない私は、今日もこのネックレスをさわって、眠りについた。
「や、やばい! 寝過ごしちゃった! しかも昨日、帰ってきたままで寝ちゃってるし!」
急いでシャワーを浴び、身支度をして家を出る。駅までは五分。会社までは電車で十五分か。
(ギリギリ間に合わないかも。今日はスニーカーだから、近道して行こう!)
数分の遅れで電車に乗れなかったら遅刻してしまう。私はいつもは通らない裏道に入って行った。その時だった。
誰もいない民家と民家の隙間のような路地の景色が、ぐにゃりと曲がり始める。
「え? これって……」
足元には見覚えのある、光る魔法陣。その光景に私は迷わず立ち止まり、次の展開を待った。
(もしかして、カイルに会えるの? オズマンド国に戻れる?)
心臓の音が激しくなり、口の中がカラカラだ。やがてその魔法陣の光は、私の全身を包み始めた。
(前と一緒だ! 嬉しい! やっとカイルに会えるんだわ!)
そして私の視界はすべて真っ白になり、ガクンと力が抜けた。次の瞬間、私の体は一瞬宙に浮き、そしてすぐに地面に叩きつけられる。
(あれ? おかしいな。前は瞬間移動みたいな感じだったのに)
「きゃああ!」
「誰だこの女は!」
なんだかものすごく騒がしい。ここは教会じゃないのだろうか? するとあっという間に私のまわりに人が集まり、後ろ手に縛られてしまった。
(ど、どういうこと? ここは、オズマンド国じゃないの?)
「おまえは誰だ! どうやってこの王宮に入ってきた!」
(え? 王宮? ここ王様がいるお城なの?)
それなら私の顔があまり知られていないのも当然だ。きっと何かの手違いで、教会ではなく王宮に召喚されてしまったのだろう。説明して調べてもらえば、私が聖女だとわかってもらえるはず!
「ぐう……うううう!」
しかし聖女だと説明しようと口を開いた瞬間、喉に強烈な痛みが襲いかかる。まるで高温の油を飲んだように、ねっとりとまとわりつく熱い痛み。
ゲホゲホと咳き込む私に、まわりの男たちは「動くな!」と叫びだす。それでも説明しなきゃと口を開くと、またあの痛みが襲ってきた。
「動くなと言っているだろう。顔を上げろ!」
気づけば私の目の前には、ギラリと光る鋭い剣が向けられていた。しかしそれより私を驚かせたのは、その声だ。
(この声……、この人は……!)
私はそろそろと顔を上げ、声の主を確かめる。目の前にいる男は、青みがかった黒髪に、深い藍色の瞳。しかしそこに私を優しく見つめる色はない。
(カイル……!)
鋭い剣先を向け、私を睨みつけるその人は、まぎれもなく結婚の約束をした、私の恋人「カイル」だった。
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