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違和感と完璧令嬢
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「はあ、疲れた……」
ちゃぽんとお湯を手ですくい顔にかける。グレッグお手製のローズオイルの香りがふわりと立ち上がり、今日の疲れを癒やしてくれた。はあ、今日はいろんな場所に行って、すごく疲れたわ。お風呂に入った後はもう寝ることにしよう。
身支度をし大きなあくびをしながらベッドに向かうと、何か違和感を感じる。なんだろう? 少しぼうっとした頭であたりを見回すと、ベッド横にあるチェストの引き出しがほんの少し開いていた。
(あら? いつもきっちり閉まってるのに。そういえばこのチェスト、閉めるのにコツがいるんだったわ)
お祖母様から譲ってもらったアンティークのチェスト。2段目の引き出しだけ閉めるのにコツがあったけど、最近は使っておらずもっぱらテーブル代わりになっていた。確認のため開けてみても、何も入っていない。
(なにも盗られているものも無いし、気のせいね)
ベッドに入り横になると急激に睡魔が襲ってくる。やっぱりふかふかのベッドで寝るのは、最高だわ。
「明日の午後は カレン様のお屋敷でお茶会か。きっとケイティ様もいるわね……」
カレン様とケイティ様はどういうわけか、私をよくお茶に誘ってくれる優しい人達だ。お2人の家の領地で、品質の良い綿が栽培できるようになってからというもの、ベッドの寝心地が格段に良くなった。それまでは他国からの輸入がほとんどで、高かったものね。
本当にこの寝心地を味わえるのは、カレン様とケイティ様の領地のおかげだわ。グレッグがいない社交は苦手でちょっと不安だけど、お2人とのお茶会だからなんとかなるでしょう。ぐう……。
朝起きて顔を洗っていると、メイドがニコニコして私に手紙を渡してきた。
「グレッグ様からです!」
「まあ……分厚いわね」
メイド達は「昨日お会いしたばかりですのに、あんな熱烈なお手紙が!」と喜んでいるが、この手紙はただの感想文だ。
でもこの感想文のおかげで、私は完璧な淑女の仮面をかぶっていられる。お茶会の話題を提供してくれる情報源だと思えば、この大量の感想文も感謝しかない。私は早速グレッグからの感想文、もとい手紙を読み始める。
「あら、昨日の舞台以外に、乙女の誓いの内容も書いてあるわ。ありがたいわね」
手紙には他にも、最近流行りのお茶の種類や刺繍の技なども書いてあった。分厚いと思ったらハンカチも同封してあったのね。手紙には急な事で箱を用意できなくてすまないと書いてあったけど、私は全然気にしない。ハンカチには私の家の紋章が刺繍されていた。手紙に書いてあった最近流行の刺繍の技で、3色の刺繍糸を使ったものだった。
「きれい……! 素敵だわ」
このハンカチはお守り代わりとして持っていくことにしましょう。しかし、ありがたいと思う反面、自分のニセモノ加減に少し不安を覚える。グレッグは好きでやっているとはいえ、私はこのままでいいのかしら……。
以前は全く気にしていなかったのに、最近はチクチクと不安が心を刺激する。理由はわかっている。私達は10歳から婚約しているけど、20歳になった今も婚約者のままだからだ。結婚式の話も進んでいない。それに昨日はあんなに顔が近づいていたのに、キスもしなかった。
「……結婚する気あるのかしら?」
少し前お父様に結婚の進み具合を確認するよう頼んだはず。帰ったら聞いてみよう! そう決意して私はハンカチをバッグにしまった。
「ごきげんよう、レイラ様」
「ごきげんよう、カレン様」
「レイラ様、今日はレイラ様がご療養中に友人になった方を、ぜひご紹介させてください」
今日のお茶会は顔見知りばかりだから大丈夫だと思っていたけど、1人だけ知らない方がいるみたいだわ。一気に不安がおそい、緊張してくる。庭のガゼボに案内されて行くと、そこにはケイティ様ともう1人知らない令嬢が談笑していた。
カレン様に紹介され挨拶をしたのは、見事な金色の髪に青い目をした、人形のように可愛らしい令嬢だった。
ちゃぽんとお湯を手ですくい顔にかける。グレッグお手製のローズオイルの香りがふわりと立ち上がり、今日の疲れを癒やしてくれた。はあ、今日はいろんな場所に行って、すごく疲れたわ。お風呂に入った後はもう寝ることにしよう。
身支度をし大きなあくびをしながらベッドに向かうと、何か違和感を感じる。なんだろう? 少しぼうっとした頭であたりを見回すと、ベッド横にあるチェストの引き出しがほんの少し開いていた。
(あら? いつもきっちり閉まってるのに。そういえばこのチェスト、閉めるのにコツがいるんだったわ)
お祖母様から譲ってもらったアンティークのチェスト。2段目の引き出しだけ閉めるのにコツがあったけど、最近は使っておらずもっぱらテーブル代わりになっていた。確認のため開けてみても、何も入っていない。
(なにも盗られているものも無いし、気のせいね)
ベッドに入り横になると急激に睡魔が襲ってくる。やっぱりふかふかのベッドで寝るのは、最高だわ。
「明日の午後は カレン様のお屋敷でお茶会か。きっとケイティ様もいるわね……」
カレン様とケイティ様はどういうわけか、私をよくお茶に誘ってくれる優しい人達だ。お2人の家の領地で、品質の良い綿が栽培できるようになってからというもの、ベッドの寝心地が格段に良くなった。それまでは他国からの輸入がほとんどで、高かったものね。
本当にこの寝心地を味わえるのは、カレン様とケイティ様の領地のおかげだわ。グレッグがいない社交は苦手でちょっと不安だけど、お2人とのお茶会だからなんとかなるでしょう。ぐう……。
朝起きて顔を洗っていると、メイドがニコニコして私に手紙を渡してきた。
「グレッグ様からです!」
「まあ……分厚いわね」
メイド達は「昨日お会いしたばかりですのに、あんな熱烈なお手紙が!」と喜んでいるが、この手紙はただの感想文だ。
でもこの感想文のおかげで、私は完璧な淑女の仮面をかぶっていられる。お茶会の話題を提供してくれる情報源だと思えば、この大量の感想文も感謝しかない。私は早速グレッグからの感想文、もとい手紙を読み始める。
「あら、昨日の舞台以外に、乙女の誓いの内容も書いてあるわ。ありがたいわね」
手紙には他にも、最近流行りのお茶の種類や刺繍の技なども書いてあった。分厚いと思ったらハンカチも同封してあったのね。手紙には急な事で箱を用意できなくてすまないと書いてあったけど、私は全然気にしない。ハンカチには私の家の紋章が刺繍されていた。手紙に書いてあった最近流行の刺繍の技で、3色の刺繍糸を使ったものだった。
「きれい……! 素敵だわ」
このハンカチはお守り代わりとして持っていくことにしましょう。しかし、ありがたいと思う反面、自分のニセモノ加減に少し不安を覚える。グレッグは好きでやっているとはいえ、私はこのままでいいのかしら……。
以前は全く気にしていなかったのに、最近はチクチクと不安が心を刺激する。理由はわかっている。私達は10歳から婚約しているけど、20歳になった今も婚約者のままだからだ。結婚式の話も進んでいない。それに昨日はあんなに顔が近づいていたのに、キスもしなかった。
「……結婚する気あるのかしら?」
少し前お父様に結婚の進み具合を確認するよう頼んだはず。帰ったら聞いてみよう! そう決意して私はハンカチをバッグにしまった。
「ごきげんよう、レイラ様」
「ごきげんよう、カレン様」
「レイラ様、今日はレイラ様がご療養中に友人になった方を、ぜひご紹介させてください」
今日のお茶会は顔見知りばかりだから大丈夫だと思っていたけど、1人だけ知らない方がいるみたいだわ。一気に不安がおそい、緊張してくる。庭のガゼボに案内されて行くと、そこにはケイティ様ともう1人知らない令嬢が談笑していた。
カレン様に紹介され挨拶をしたのは、見事な金色の髪に青い目をした、人形のように可愛らしい令嬢だった。
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