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アズール遠征
92:発作と暴発 ネイト
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「結婚証明書…いよいよか」
昼はジーク副団長の理不尽な八つ当たり、夜はエルデの寝顔を眺めながら、下の俺を宥める。初夜は結婚式までお預けだから、この結婚証明書を出したところで俺の苦行は変わらないが、エルデ・ファン・ソアデン=アズール。
この名前になる事に大きな意味がある。
これからも変わらず、エルデがそばに居てくれれば、この先も続く苦行の日々にも耐えられる。
そう、俺は耐えられる…
「…ただ今、戻りました…」
「エルデ丁度よかった、荷物はこれで全部か?他になければ馬車に積んでくるよ」
明日からのアズール遠征に備えて荷支度をしているところに、浴場から戻った風呂上がりのエルデ…今日も目に毒。
「……ネイト様」
「ん?…どうした?」
「…ネイト様、お願いがあります」
「いいよ、俺の鞄に余裕があるから、他にも荷物があるならーー」
「脱いで下さい」
「分かった、脱げばいい………え?…脱ぐ?」
荷物を纏める手が止まる。脱ぐとは…?何を?俺の聞き間違いかもしれない、振り返って再度確認する。
「エ、エルデ?俺の聞き間違いかな?」
「聞き間違いではありません。ネイト様、お願いだから脱いで下さい」
「……っいやっ…何故?!」
思わずシャツの胸元を手繰り寄せて、後ずさってしまったが、エルデよ…その上気した頬と潤んだ瞳は、下の俺には凶器となってしまう。
「お願いしますネイト様。わ、私にネイト様の発作を鎮めさせて下さい!」
「え?ほ、発作?…何の?」
「と、殿方は、夜に発作が起きると聞きました…苦しくて、夜も眠れない程に辛いと…」
確かに夜は眠れない…寝返りを打ったエルデが抱き着いてきた日には、ジーク副団長の顔を思い浮かべながら団規を唱えて夜を明かしている。だが、それは男の性であって身体は至って健康。
「いや、俺は特に何もーー」
「嘘を付かないでっ!早くしないと…重い病気になる前に…私の手なら治せるんです!」
「手?………?!まさか…」
『お疲れ様です』
『ネイト様、エルデに聞いたわ。本当にお疲れ様ね…』
『若いのに偉いわ、うちの主人だったら間違いなく病んでるわよ』
『ええと…一体何のーー』
『何も言わなくてもいいの、大丈夫。エルデさんは素直で、手つきも良くて、覚えがいい子だったから…全て解決したわ』
『今夜はぐっすり眠れるわね。明日からのアズール遠征、頑張って』
『気を付けて行ってらっしゃい』
『……はい、失礼します』
「お願いします!…私、その為にバナナで練習もしてきたんです!」
さっきの会話はこれだったのかー!
夕食をとりに行った食堂で、テーブルに着いてお茶を飲んでいた、シシリア王女殿下の専属侍女殿達に挨拶をした。
彼女達から憐れむ様な視線で、労いと励ましの言葉をかけられ、最後まで内容を理解出来ないまま話を終えて食事をとって戻ったが、なんて事をしてくれてんだ…純真無垢なうちのエルデに、下世話な事を吹き込むだけに飽き足らず、エルデの穢れを知らない清い手に、バナナなんぞを握らせるなんて…
「………っ……ぅ……」
信じ難い話と共に、今の俺を何より貶めているのは、エルデのバナナの一言に俺のバナナが暴発しているという事実…
「………たった今、発作は治ったよ…」
「…え?」
「すまないが、少しの間扉の外で待っていて欲しい」
「?…分かりました」
しゃがんでてよかった。とりあえず着替えて、ズボンは燃やす。
齢10を迎えた年にデュバル公爵家に入ったエルデは、そのままオレリア様の下に付き、そばで癒し、慰めた。
中等学園に入学してからも寄り道せずに真っ直ぐ帰り、高等学園に進学してからも、オレリア様が登城する日は、寮から戻り必ず付き添った。
そう…人生の半分をオレリア様と共に過ごしてきたエルデは生粋の箱入り、宰相の妨害工作で、閨の教育は例の小説の知識のみと言っても過言ではないだろう。
昼間の訓練場でフランから話を聞いた時は、俺にこんな苦行を強いた宰相に、殺意が覚えたのは仕方のない事。
ーーー
「エルデ、改めて聞くが、いつ、何処で、誰から、俺が病気だと聞いたんだ?」
「ゆ、夕方、営舎に戻って食堂で、侍女の皆さんに…」
『び、病気?』
『そう、病気よ…男の人はね、好きな人に触れられないと重い病にかかるのよ』
『で、でもネイト様は朝からとても元気で、今日だって昼間に殿下と訓練をーー』
『昼間はいいのよ、仕事や遊びなんかで色々紛れるからね…問題は夜よ。どうにもならない発作に苦しんで、まんじりともしないんだから』
『発作…なら、宮医に診てもらわないと…』
『大丈夫よ、エルデさんが治せるから』
『私が?…発作を?治せるんですか?』
『そう、そのその手でね』
「それで、食堂にあったバナナで練習をーー」
「待てっ!待て、分かったから、頼む、みなまで言わないでくれ…」
「ネイト様…もしかして、苦しいのですか?やっぱり私がーー」
続く言葉を唇を重ねて塞ぐ。これ以上は言わせない。俺のバナナがまた暴発する。
舌を絡めて強く吸い、離した舌で上顎をなぞれば、呼吸を求める喘ぎ声と共に、エルデの力が抜けていく。
エルデの首筋を伝う、飲み込み切れなかった唾液を舌で舐めとると小さく震えた。
「はぁっ…ふ…っ…ネイ…ト様っ…」
「エルデ…」
喘ぎ開いた唇を再び塞ぎ、竦む舌を追い絡める。小さな拳が背中を叩くが、そんな弱い力じゃ俺は止まれない。
下がりそうになる顔を逃すまいと、指で撫でる様に耳を挟み、そのまま両手を後頭部に差し入れて更に深く口付けると、背中を叩いていた手でシャツを掴んできた。
静かな部屋に響く、吐息と水音が腰にくる…
「…んっ、ふぅ…」
絡めた舌裏をなぞって解放し、唇を二度三度と啄んで、目尻に溜まった涙を吸い、そのまま抱き締める。
今、あの蕩けた顔を向けられたら、俺の理性も自制もバナナも爆発する。
「エルデ、気持ちは嬉しいが治してもらう必要はない」
「ネイト様…」
「その代わり、初夜は逃がさない。俺の手で、舌で、エルデの身体を余す事なく存分に愛でる…エルデの身体をトロトロに溶かして、最後に俺のバナナで……うっ…く…っ…」
「?!ネイト様っ!」
己の言葉に興奮して再びの暴発…
蹲る俺を見て、涙目で慌てふためくエルデに、最後の力を振り絞って声をかける。
「……エルデ嬢…再び扉の外で待機して欲しい…いや、サロンで待っていてくれ…迎えに行く」
「……はい」
明日のアズール遠征は早朝の出発。
脳筋は屋敷に帰らず、詰所に泊まると言っていた。
「今日は、脳筋の所に泊まるか…」
よもや、エルデより兄と過ごす夜を望む日がくるとは…だが、背に腹は変えられない。
昼はジーク副団長の理不尽な八つ当たり、夜はエルデの寝顔を眺めながら、下の俺を宥める。初夜は結婚式までお預けだから、この結婚証明書を出したところで俺の苦行は変わらないが、エルデ・ファン・ソアデン=アズール。
この名前になる事に大きな意味がある。
これからも変わらず、エルデがそばに居てくれれば、この先も続く苦行の日々にも耐えられる。
そう、俺は耐えられる…
「…ただ今、戻りました…」
「エルデ丁度よかった、荷物はこれで全部か?他になければ馬車に積んでくるよ」
明日からのアズール遠征に備えて荷支度をしているところに、浴場から戻った風呂上がりのエルデ…今日も目に毒。
「……ネイト様」
「ん?…どうした?」
「…ネイト様、お願いがあります」
「いいよ、俺の鞄に余裕があるから、他にも荷物があるならーー」
「脱いで下さい」
「分かった、脱げばいい………え?…脱ぐ?」
荷物を纏める手が止まる。脱ぐとは…?何を?俺の聞き間違いかもしれない、振り返って再度確認する。
「エ、エルデ?俺の聞き間違いかな?」
「聞き間違いではありません。ネイト様、お願いだから脱いで下さい」
「……っいやっ…何故?!」
思わずシャツの胸元を手繰り寄せて、後ずさってしまったが、エルデよ…その上気した頬と潤んだ瞳は、下の俺には凶器となってしまう。
「お願いしますネイト様。わ、私にネイト様の発作を鎮めさせて下さい!」
「え?ほ、発作?…何の?」
「と、殿方は、夜に発作が起きると聞きました…苦しくて、夜も眠れない程に辛いと…」
確かに夜は眠れない…寝返りを打ったエルデが抱き着いてきた日には、ジーク副団長の顔を思い浮かべながら団規を唱えて夜を明かしている。だが、それは男の性であって身体は至って健康。
「いや、俺は特に何もーー」
「嘘を付かないでっ!早くしないと…重い病気になる前に…私の手なら治せるんです!」
「手?………?!まさか…」
『お疲れ様です』
『ネイト様、エルデに聞いたわ。本当にお疲れ様ね…』
『若いのに偉いわ、うちの主人だったら間違いなく病んでるわよ』
『ええと…一体何のーー』
『何も言わなくてもいいの、大丈夫。エルデさんは素直で、手つきも良くて、覚えがいい子だったから…全て解決したわ』
『今夜はぐっすり眠れるわね。明日からのアズール遠征、頑張って』
『気を付けて行ってらっしゃい』
『……はい、失礼します』
「お願いします!…私、その為にバナナで練習もしてきたんです!」
さっきの会話はこれだったのかー!
夕食をとりに行った食堂で、テーブルに着いてお茶を飲んでいた、シシリア王女殿下の専属侍女殿達に挨拶をした。
彼女達から憐れむ様な視線で、労いと励ましの言葉をかけられ、最後まで内容を理解出来ないまま話を終えて食事をとって戻ったが、なんて事をしてくれてんだ…純真無垢なうちのエルデに、下世話な事を吹き込むだけに飽き足らず、エルデの穢れを知らない清い手に、バナナなんぞを握らせるなんて…
「………っ……ぅ……」
信じ難い話と共に、今の俺を何より貶めているのは、エルデのバナナの一言に俺のバナナが暴発しているという事実…
「………たった今、発作は治ったよ…」
「…え?」
「すまないが、少しの間扉の外で待っていて欲しい」
「?…分かりました」
しゃがんでてよかった。とりあえず着替えて、ズボンは燃やす。
齢10を迎えた年にデュバル公爵家に入ったエルデは、そのままオレリア様の下に付き、そばで癒し、慰めた。
中等学園に入学してからも寄り道せずに真っ直ぐ帰り、高等学園に進学してからも、オレリア様が登城する日は、寮から戻り必ず付き添った。
そう…人生の半分をオレリア様と共に過ごしてきたエルデは生粋の箱入り、宰相の妨害工作で、閨の教育は例の小説の知識のみと言っても過言ではないだろう。
昼間の訓練場でフランから話を聞いた時は、俺にこんな苦行を強いた宰相に、殺意が覚えたのは仕方のない事。
ーーー
「エルデ、改めて聞くが、いつ、何処で、誰から、俺が病気だと聞いたんだ?」
「ゆ、夕方、営舎に戻って食堂で、侍女の皆さんに…」
『び、病気?』
『そう、病気よ…男の人はね、好きな人に触れられないと重い病にかかるのよ』
『で、でもネイト様は朝からとても元気で、今日だって昼間に殿下と訓練をーー』
『昼間はいいのよ、仕事や遊びなんかで色々紛れるからね…問題は夜よ。どうにもならない発作に苦しんで、まんじりともしないんだから』
『発作…なら、宮医に診てもらわないと…』
『大丈夫よ、エルデさんが治せるから』
『私が?…発作を?治せるんですか?』
『そう、そのその手でね』
「それで、食堂にあったバナナで練習をーー」
「待てっ!待て、分かったから、頼む、みなまで言わないでくれ…」
「ネイト様…もしかして、苦しいのですか?やっぱり私がーー」
続く言葉を唇を重ねて塞ぐ。これ以上は言わせない。俺のバナナがまた暴発する。
舌を絡めて強く吸い、離した舌で上顎をなぞれば、呼吸を求める喘ぎ声と共に、エルデの力が抜けていく。
エルデの首筋を伝う、飲み込み切れなかった唾液を舌で舐めとると小さく震えた。
「はぁっ…ふ…っ…ネイ…ト様っ…」
「エルデ…」
喘ぎ開いた唇を再び塞ぎ、竦む舌を追い絡める。小さな拳が背中を叩くが、そんな弱い力じゃ俺は止まれない。
下がりそうになる顔を逃すまいと、指で撫でる様に耳を挟み、そのまま両手を後頭部に差し入れて更に深く口付けると、背中を叩いていた手でシャツを掴んできた。
静かな部屋に響く、吐息と水音が腰にくる…
「…んっ、ふぅ…」
絡めた舌裏をなぞって解放し、唇を二度三度と啄んで、目尻に溜まった涙を吸い、そのまま抱き締める。
今、あの蕩けた顔を向けられたら、俺の理性も自制もバナナも爆発する。
「エルデ、気持ちは嬉しいが治してもらう必要はない」
「ネイト様…」
「その代わり、初夜は逃がさない。俺の手で、舌で、エルデの身体を余す事なく存分に愛でる…エルデの身体をトロトロに溶かして、最後に俺のバナナで……うっ…く…っ…」
「?!ネイト様っ!」
己の言葉に興奮して再びの暴発…
蹲る俺を見て、涙目で慌てふためくエルデに、最後の力を振り絞って声をかける。
「……エルデ嬢…再び扉の外で待機して欲しい…いや、サロンで待っていてくれ…迎えに行く」
「……はい」
明日のアズール遠征は早朝の出発。
脳筋は屋敷に帰らず、詰所に泊まると言っていた。
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