15 / 206
どうやら俺は男色らしい
14:腹黒い提案
しおりを挟む
「オレリア嬢から手紙が届いた」
「なんだ、自慢か?腹立たしい顔しやがって」
「腹立たしい顔とはなんだ!これは悩んでいる顔だ。ついでに、どう返事を書けばいいのか相談してるんだ」
早朝の鍛錬を終え、オレリア嬢から届いた手紙の相談を持ちかけたのだが、どうやら相談相手を間違えたらしい。
「毎日、花にカードを添えて送ってただろ」
「カードに一言書くのと、手紙を書くのは違うだろう。この間の謝罪もしていないのに、軽々しく返事を書けない」
「軽々しく抱きついて、愛称で呼んでたじゃねえか」
「~~っだからっ、相談してるんだろ!」
「ネイト…そのくらいにしてやれ。殿下、オレリア様の手紙には何と?」
俺とネイトの進展のない応酬に苦笑いしながら、ウィルが話しに入ってきた。
「先日の謝罪と快復報告。それから、お見舞に贈った花とドレスのお礼…かな」
面会は中止となったが、婚約は無事に成立。
立太子と婚約の儀を同時に執り行われる事が決まり、オレリア嬢にドレスをを贈る事を公爵家に伝えた。
ナシェルは婚約期間中、一度もドレスを贈った事がなく、伯母上が代わりに贈っていたと聞いて驚いたのだが、女性にドレスなど贈ったことがない俺も困難を極めた。
伯母上と母に何度も相談して何とか間に合わせ…今はお披露目の夜会用のドレスに悩んでいる。
「儀式の前に、お会いする時間を作ってはいかがですか?ナシェル殿が滞らせていた執務の処理も終えたのでしょう?」
「ナシェルの残務処理は終えている。他の執務も急ぎはないが、警備計画がな…」
慶事ではあるが事情が事情なだけに、伯父上と話し合い、国外には報告の使者を送るに留め、招待はしない事にした。
国賓の招待もなく、何かあっても自身の身は守れる。であれば、警備はナシェルの時より縮小してもいいのではと思っていたが、騎士の感覚で考えるな、唯一と心得、護られる立場に在ると理解しろ、婚約の儀も同時に執り行うのだから厳重にと、王宮騎士団のラヴェル騎士団長とイアン団長に諌められ縮小の案は却下された。
ウィルの提案は魅力的だが、警備計画の指揮を執る立場として任せきりには出来ない。
「1日位いいのでは?儀式を終え、オレリア様々が復学したら、それこそ会う時間がなくなります」
「ウィルさんの言う通りだな。返事に悩む前に、破廉恥な行いを五体投地で謝罪しろ」
「五体投地は大袈裟ですが…謝罪はした方がいいですね」
「……オレリア嬢の都合を聞いて、日程を調整する。カイン、手紙を公爵家に届けてくれ」
「かしこまりました。ウィル殿、ネイト殿、助かりました。これでフラン様を休ませる時間を確保出来ます」
侍従のカインはキリング侯爵家の次男で俺とは従兄弟同士。3歳上で王宮の文官職に就いていたのを引き抜いた。
王太子に仕えるなど畏れ多いと断られたが、退っ引きならない状況を説明したら、呆れながらも承諾してくれた貴重な人物。
「カイン、お前は母親か?休みなど必要ない。時間も不規則で、身体にかかる負担も大きい騎士だった頃に比べ、今は体力が余ってるくらいだ」
「自覚がないとは重症ですね。フラン様は心労という言葉をご存知ですか?慣れない執務に、男色を疑われながら過ごすストレスが日々積もっているんです。オレリア様への所業が、フラン様の心労の現れです」
「カイン殿の言う通りだ。それから、フランの疑惑が晴れない限り、俺の身が清らかな証明も出来ない事も忘れるなよ」
カインとは幼い頃からの仲ではあるが、文官の特徴なのか、公と私をきっちり分けており、又、従兄弟同士の気安さから、王太子を諌められる人物でもあり、ネイトとの連携も抜群で容赦ない。
「ネイトは自分から宰相閣下に宣言したと、副団長から聞いてるが?」
「ウィルさん…それは副団長の陰謀のせいです」
「叔父上の事は気の毒でしたが、侍女殿達のウィル殿や私に向ける眼差しに、よからぬものを感じます。私達の名誉の為にも、オレリア嬢との仲をしっかり周りに示して下さい」
「カイン…俺の事を心配してるんじゃないのか?」
「もちろん心配していますよ。フラン様の休息が、我々の名誉を守る事に繋がるのですから」
腹黒い提案だが、会わないまま儀式を迎える事が気になっていたのは確か。
お披露目の夜会で、大勢の貴族達に他人行儀な2人を見せては、男色の噂に信憑性を持たせるだろう。
不純な動機なのは否めないが、抜き差しならない状況から脱するには、言葉で否定するだけでは足りないのだと己に言い聞かせ、初めて、母以外の女性に手紙を送った。
「なんだ、自慢か?腹立たしい顔しやがって」
「腹立たしい顔とはなんだ!これは悩んでいる顔だ。ついでに、どう返事を書けばいいのか相談してるんだ」
早朝の鍛錬を終え、オレリア嬢から届いた手紙の相談を持ちかけたのだが、どうやら相談相手を間違えたらしい。
「毎日、花にカードを添えて送ってただろ」
「カードに一言書くのと、手紙を書くのは違うだろう。この間の謝罪もしていないのに、軽々しく返事を書けない」
「軽々しく抱きついて、愛称で呼んでたじゃねえか」
「~~っだからっ、相談してるんだろ!」
「ネイト…そのくらいにしてやれ。殿下、オレリア様の手紙には何と?」
俺とネイトの進展のない応酬に苦笑いしながら、ウィルが話しに入ってきた。
「先日の謝罪と快復報告。それから、お見舞に贈った花とドレスのお礼…かな」
面会は中止となったが、婚約は無事に成立。
立太子と婚約の儀を同時に執り行われる事が決まり、オレリア嬢にドレスをを贈る事を公爵家に伝えた。
ナシェルは婚約期間中、一度もドレスを贈った事がなく、伯母上が代わりに贈っていたと聞いて驚いたのだが、女性にドレスなど贈ったことがない俺も困難を極めた。
伯母上と母に何度も相談して何とか間に合わせ…今はお披露目の夜会用のドレスに悩んでいる。
「儀式の前に、お会いする時間を作ってはいかがですか?ナシェル殿が滞らせていた執務の処理も終えたのでしょう?」
「ナシェルの残務処理は終えている。他の執務も急ぎはないが、警備計画がな…」
慶事ではあるが事情が事情なだけに、伯父上と話し合い、国外には報告の使者を送るに留め、招待はしない事にした。
国賓の招待もなく、何かあっても自身の身は守れる。であれば、警備はナシェルの時より縮小してもいいのではと思っていたが、騎士の感覚で考えるな、唯一と心得、護られる立場に在ると理解しろ、婚約の儀も同時に執り行うのだから厳重にと、王宮騎士団のラヴェル騎士団長とイアン団長に諌められ縮小の案は却下された。
ウィルの提案は魅力的だが、警備計画の指揮を執る立場として任せきりには出来ない。
「1日位いいのでは?儀式を終え、オレリア様々が復学したら、それこそ会う時間がなくなります」
「ウィルさんの言う通りだな。返事に悩む前に、破廉恥な行いを五体投地で謝罪しろ」
「五体投地は大袈裟ですが…謝罪はした方がいいですね」
「……オレリア嬢の都合を聞いて、日程を調整する。カイン、手紙を公爵家に届けてくれ」
「かしこまりました。ウィル殿、ネイト殿、助かりました。これでフラン様を休ませる時間を確保出来ます」
侍従のカインはキリング侯爵家の次男で俺とは従兄弟同士。3歳上で王宮の文官職に就いていたのを引き抜いた。
王太子に仕えるなど畏れ多いと断られたが、退っ引きならない状況を説明したら、呆れながらも承諾してくれた貴重な人物。
「カイン、お前は母親か?休みなど必要ない。時間も不規則で、身体にかかる負担も大きい騎士だった頃に比べ、今は体力が余ってるくらいだ」
「自覚がないとは重症ですね。フラン様は心労という言葉をご存知ですか?慣れない執務に、男色を疑われながら過ごすストレスが日々積もっているんです。オレリア様への所業が、フラン様の心労の現れです」
「カイン殿の言う通りだ。それから、フランの疑惑が晴れない限り、俺の身が清らかな証明も出来ない事も忘れるなよ」
カインとは幼い頃からの仲ではあるが、文官の特徴なのか、公と私をきっちり分けており、又、従兄弟同士の気安さから、王太子を諌められる人物でもあり、ネイトとの連携も抜群で容赦ない。
「ネイトは自分から宰相閣下に宣言したと、副団長から聞いてるが?」
「ウィルさん…それは副団長の陰謀のせいです」
「叔父上の事は気の毒でしたが、侍女殿達のウィル殿や私に向ける眼差しに、よからぬものを感じます。私達の名誉の為にも、オレリア嬢との仲をしっかり周りに示して下さい」
「カイン…俺の事を心配してるんじゃないのか?」
「もちろん心配していますよ。フラン様の休息が、我々の名誉を守る事に繋がるのですから」
腹黒い提案だが、会わないまま儀式を迎える事が気になっていたのは確か。
お披露目の夜会で、大勢の貴族達に他人行儀な2人を見せては、男色の噂に信憑性を持たせるだろう。
不純な動機なのは否めないが、抜き差しならない状況から脱するには、言葉で否定するだけでは足りないのだと己に言い聞かせ、初めて、母以外の女性に手紙を送った。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる