王国の彼是

紗華

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どうやら俺は男色らしい

14:腹黒い提案

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「オレリア嬢から手紙が届いた」

「なんだ、自慢か?腹立たしい顔しやがって」

「腹立たしい顔とはなんだ!これはだ。ついでに、どう返事を書けばいいのか相談してるんだ」

早朝の鍛錬を終え、オレリア嬢から届いた手紙の相談を持ちかけたのだが、どうやら相談相手を間違えたらしい。

「毎日、花にカードを添えて送ってただろ」

「カードに一言書くのと、手紙を書くのは違うだろう。この間の謝罪もしていないのに、軽々しく返事を書けない」

抱きついて、愛称で呼んでたじゃねえか」

「~~っだからっ、相談してるんだろ!」

「ネイト…そのくらいにしてやれ。殿下、オレリア様の手紙には何と?」

俺とネイトの進展のない応酬に苦笑いしながら、ウィルが話しに入ってきた。

「先日の謝罪と快復報告。それから、お見舞に贈った花とドレスのお礼…かな」

面会は中止となったが、婚約は無事に成立。
立太子と婚約の儀を同時に執り行われる事が決まり、オレリア嬢にドレスをを贈る事を公爵家に伝えた。

ナシェルは婚約期間中、一度もドレスを贈った事がなく、伯母上が代わりに贈っていたと聞いて驚いたのだが、女性にドレスなど贈ったことがない俺も困難を極めた。
伯母上と母に何度も相談して何とか間に合わせ…今はお披露目の夜会用のドレスに悩んでいる。

「儀式の前に、お会いする時間を作ってはいかがですか?ナシェル殿が滞らせていた執務の処理も終えたのでしょう?」

「ナシェルの残務処理は終えている。他の執務も急ぎはないが、警備計画がな…」

慶事ではあるが事情が事情なだけに、伯父上と話し合い、国外には報告の使者を送るに留め、招待はしない事にした。

国賓の招待もなく、何かあっても自身の身は守れる。であれば、警備はナシェルの時より縮小してもいいのではと思っていたが、騎士の感覚で考えるな、唯一と心得、護られる立場に在ると理解しろ、婚約の儀も同時に執り行うのだから厳重にと、王宮騎士団のラヴェル騎士団長とイアン団長に諌められ縮小の案は却下された。

ウィルの提案は魅力的だが、警備計画の指揮を執る立場として任せきりには出来ない。

「1日位いいのでは?儀式を終え、オレリア様々が復学したら、それこそ会う時間がなくなります」

「ウィルさんの言う通りだな。返事に悩む前に、破廉恥な行いを五体投地で謝罪しろ」

「五体投地は大袈裟ですが…謝罪はした方がいいですね」

「……オレリア嬢の都合を聞いて、日程を調整する。カイン、手紙を公爵家に届けてくれ」

「かしこまりました。ウィル殿、ネイト殿、助かりました。これでフラン様を休ませる時間を確保出来ます」

侍従のカインはキリング侯爵家の次男で俺とは従兄弟同士。3歳上で王宮の文官職に就いていたのを引き抜いた。
王太子に仕えるなど畏れ多いと断られたが、退っ引きならない状況を説明したら、呆れながらも承諾してくれた貴重な人物。

「カイン、お前は母親か?休みなど必要ない。時間も不規則で、身体にかかる負担も大きい騎士だった頃に比べ、今は体力が余ってるくらいだ」

「自覚がないとは重症ですね。フラン様は心労という言葉をご存知ですか?慣れない執務に、男色を疑われながら過ごすストレスが日々積もっているんです。オレリア様への所業が、の現れです」

「カイン殿の言う通りだ。それから、フランの疑惑が晴れない限り、俺の身が清らかな証明も出来ない事も忘れるなよ」

カインとは幼い頃からの仲ではあるが、文官の特徴なのか、公と私をきっちり分けており、又、従兄弟同士の気安さから、王太子を諌められる人物でもあり、ネイトとの連携も抜群で容赦ない。

「ネイトは自分から宰相閣下に宣言したと、副団長から聞いてるが?」

「ウィルさん…それは副団長の陰謀のせいです」

「叔父上の事は気の毒でしたが、侍女殿達のウィル殿や私に向ける眼差しに、よからぬものを感じます。私達の名誉の為にも、オレリア嬢との仲をしっかり周りに示して下さい」

「カイン…俺の事を心配してるんじゃないのか?」

「もちろん心配していますよ。フラン様の休息が、我々の名誉を守る事に繋がるのですから」

腹黒い提案だが、会わないまま儀式を迎える事が気になっていたのは確か。

お披露目の夜会で、大勢の貴族達に他人行儀な2人を見せては、男色の噂に信憑性を持たせるだろう。
不純な動機なのは否めないが、抜き差しならない状況から脱するには、言葉で否定するだけでは足りないのだと己に言い聞かせ、初めて、母以外の女性に手紙を送った。











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