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どうやら俺は男色らしい
5:ナシェルの処分
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オレリア嬢との面会を午後に控え、近衛騎士団本部へ除籍の手続きに訪れると、ナシェルとオット男爵令嬢の処分が決定したと報告された。
「臣籍降下でなく、処分ですか?」
「これだけの騒ぎを起こしたんだ。お咎め無しとはいかないだろ。ナシェル殿は王族廃籍の上でボーエン辺境騎士団入り。令嬢もオット男爵が勘当を言い渡した。貴族籍は剥奪され、下働きとしてボーエン辺境伯領へ行く事になった」
「辺境伯領へ…」
「あの令嬢。王族になれないのならナシェル殿に結婚しないと言い出したらしい。令嬢はナシェル殿ではなく、王族の地位が目当てだった様だ。真実の愛だと疑わず、廃太子まで申し出たナシェル殿には気の毒だったな。デュバル公爵令嬢と比べるまでもないが、あれは妃の器ではない。あんなのが王族に加わったら王家は失墜する」
余りにも身勝手な令嬢の話しに呆れてしまう。
「2人は今どこに?」
「ナシェル殿は廃籍の手続きが終わるまでは塔で幽閉、令嬢は明日移送される事が決まり、今は地下牢だ」
「明日?随分早いですね…」
「地下牢で出す食事も王国民の血税だ。王国を混乱に陥れた罪人に、ただ飯を食わせる義理はない」
サルビア国と反対側に位置する隣国ローザ帝国は、統治する皇帝が継承順ではなく実力で決められる為、常に争いが絶えず、内紛のどさくさに紛れてボーエン辺境伯が治める国境が攻撃を受ける事も多々あり、常に緊張状態だと聞く。
ナシェルは剣もマナも優秀だが、戦場で通用するかは別。令嬢も辺境で過酷な下働き。
オット男爵家は多額の賠償金の支払いを課せられた。貴族籍は残るが今後の社交は絶望的だろう。
「ナシェル殿は子を成せない様に処置される。令嬢も辺境でいつまで正気を保っていられるか…」
本人達は自業自得だが、伯父上達を思うとやるせない気持ちになる。
ーーー
「除籍の手続きは終了した。王族への復籍手続きは済んだのか?」
「ええ、今朝済ませてきました」
「であれば敬語は不要。暫くはやりにくいだろうが慣れろ」
「そう…ですね。気をつけま…気をつける」
昨晩まで上司だった人に、敬語を使うなと言われても、直ぐに順応出来るほど器用じゃない。
敬語だけではない、人に世話をされることも、社交に出る事も、剣をペンに持ち替え執務をする事も、いつか慣れる日が来るのだろうか。
「そういう団長は敬語を使って下さい。フラン殿下、宰相閣下から護衛の人選に助力して欲しいと要請がありましたが、ご希望はありますか?」
副団長のジークが含み笑いで聞いてきた。
急転した生活に不安を抱いてる場合ではない。昨晩の伯父上の話は、立太子以上の衝撃だった。
国のトップが噂を鵜呑みにするなんて、放置してきた事を棚に上げる訳ではないが、そんなに信憑性があったのか…
「ジーク副団長…適当でいいです。今朝も侍女を減らして侍従と従者を多く付けると言われて一悶着あって疲れてるんですよ」
伯父上と父から、笑顔で特例だと告げられた人事に、佩てもない剣を抜剣しそうになった。
「それはお疲れ様です。護衛リストはさて置き、これからどうするんです?随分と面白い事になってるみたいですけど」
脳筋のイアン団長を補佐するジーク副団長は、フランが男色でないと知っている人物の1人。癖のない長い黒髪を後ろで束ね、榛色の瞳を持つ近衛騎士団のブレイン。
キリング侯爵の弟で現在31歳。前侯爵の持つ爵位の一つ、クローゼル伯爵を継いでいる。
因みに母ディアンヌの弟で俺の叔父に当たる人物。
「…甥を揶揄って面白いですか?叔父上」
「今朝早く宰相閣下と義兄上が来てな。フランを良く知る俺に好みのタイプを聞いてきた。人事の参考にしたいとな。キツイ匂いと濃い顔が苦手だと答えといた」
「それは、女性の香水と化粧のことじゃないですか!変な煽り方をしないでください!」
とんだ腹黒だ。
「臣籍降下でなく、処分ですか?」
「これだけの騒ぎを起こしたんだ。お咎め無しとはいかないだろ。ナシェル殿は王族廃籍の上でボーエン辺境騎士団入り。令嬢もオット男爵が勘当を言い渡した。貴族籍は剥奪され、下働きとしてボーエン辺境伯領へ行く事になった」
「辺境伯領へ…」
「あの令嬢。王族になれないのならナシェル殿に結婚しないと言い出したらしい。令嬢はナシェル殿ではなく、王族の地位が目当てだった様だ。真実の愛だと疑わず、廃太子まで申し出たナシェル殿には気の毒だったな。デュバル公爵令嬢と比べるまでもないが、あれは妃の器ではない。あんなのが王族に加わったら王家は失墜する」
余りにも身勝手な令嬢の話しに呆れてしまう。
「2人は今どこに?」
「ナシェル殿は廃籍の手続きが終わるまでは塔で幽閉、令嬢は明日移送される事が決まり、今は地下牢だ」
「明日?随分早いですね…」
「地下牢で出す食事も王国民の血税だ。王国を混乱に陥れた罪人に、ただ飯を食わせる義理はない」
サルビア国と反対側に位置する隣国ローザ帝国は、統治する皇帝が継承順ではなく実力で決められる為、常に争いが絶えず、内紛のどさくさに紛れてボーエン辺境伯が治める国境が攻撃を受ける事も多々あり、常に緊張状態だと聞く。
ナシェルは剣もマナも優秀だが、戦場で通用するかは別。令嬢も辺境で過酷な下働き。
オット男爵家は多額の賠償金の支払いを課せられた。貴族籍は残るが今後の社交は絶望的だろう。
「ナシェル殿は子を成せない様に処置される。令嬢も辺境でいつまで正気を保っていられるか…」
本人達は自業自得だが、伯父上達を思うとやるせない気持ちになる。
ーーー
「除籍の手続きは終了した。王族への復籍手続きは済んだのか?」
「ええ、今朝済ませてきました」
「であれば敬語は不要。暫くはやりにくいだろうが慣れろ」
「そう…ですね。気をつけま…気をつける」
昨晩まで上司だった人に、敬語を使うなと言われても、直ぐに順応出来るほど器用じゃない。
敬語だけではない、人に世話をされることも、社交に出る事も、剣をペンに持ち替え執務をする事も、いつか慣れる日が来るのだろうか。
「そういう団長は敬語を使って下さい。フラン殿下、宰相閣下から護衛の人選に助力して欲しいと要請がありましたが、ご希望はありますか?」
副団長のジークが含み笑いで聞いてきた。
急転した生活に不安を抱いてる場合ではない。昨晩の伯父上の話は、立太子以上の衝撃だった。
国のトップが噂を鵜呑みにするなんて、放置してきた事を棚に上げる訳ではないが、そんなに信憑性があったのか…
「ジーク副団長…適当でいいです。今朝も侍女を減らして侍従と従者を多く付けると言われて一悶着あって疲れてるんですよ」
伯父上と父から、笑顔で特例だと告げられた人事に、佩てもない剣を抜剣しそうになった。
「それはお疲れ様です。護衛リストはさて置き、これからどうするんです?随分と面白い事になってるみたいですけど」
脳筋のイアン団長を補佐するジーク副団長は、フランが男色でないと知っている人物の1人。癖のない長い黒髪を後ろで束ね、榛色の瞳を持つ近衛騎士団のブレイン。
キリング侯爵の弟で現在31歳。前侯爵の持つ爵位の一つ、クローゼル伯爵を継いでいる。
因みに母ディアンヌの弟で俺の叔父に当たる人物。
「…甥を揶揄って面白いですか?叔父上」
「今朝早く宰相閣下と義兄上が来てな。フランを良く知る俺に好みのタイプを聞いてきた。人事の参考にしたいとな。キツイ匂いと濃い顔が苦手だと答えといた」
「それは、女性の香水と化粧のことじゃないですか!変な煽り方をしないでください!」
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