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追  及

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 定期預金の「満期通知書兼計算書」の氏名欄には『佐藤大悟 様』と書かれてあった。

「高村、この佐藤大悟さんの全ての預金明細を端末から取ってくれ。そしてウチの担当が誰かを今すぐ見るんだ」
「わかりました」
 
 佐藤大悟、歯科医
支店からの借り入れはない。
預金だけのお客様で、銀行用語で言う『純預金先』だった。

高村がすべての預金明細を端末からとり、田中に渡したが、そこには定期 五百万円など存在しなかった。あるのは普通預金に十八万円程度。それに積立預金が残高八十万円だった・・・・。
「この預金者の担当は?」
「大野主任です」

支店長も早々に出勤してきた。 
これを受けて、二人は端末からのデータを分かりやすく整理して、支店長と一緒に応接室に入っていった。
二十分の時が流れた。

 しばらくして、行員の出勤時間となった。
渦中の大野も、八時半に出社してきた。そしてそのまま、二階にある営業課の自分の机に向かおうとしていた。
それを見て、田中は階段途中で大野を呼び止めた。そして、その上司の村山にも応接室に至急来るように指示した。

応接は五人座れば窮屈となる部屋だった。

「大野主任、これに見覚えはないかね」田中が言った。
営業課長の村山が覗き込んだ。しかし彼はすぐには理解できていないようで、きょとんとしていた。
一方、当の本人・大野はやや斜め上を見つめ、ふうっと息を吐いて、そしてうつむいた。
「どうなんだ、話したまえ」
「・・・・・・・・」
「じゃあ聞くが、この計算書は君が作ったのかね」
「・・・・はい」
「では、次に聞きたいのだが、五百万と言う金を、歯科医の佐藤さんから実際に預かったのか」
「・・・・預かりました」
「で、いまそのお金はどこにある。君が持っているのか」支店長が聞いた
「・・・・持っていません」
「な、なんだと・・・自分で使ったのか!」
「いいえ・・・・」
「なら何なんだ!」
田中が厳しい語調で問い詰めた。



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