4 / 12
4
小料理 うおはな (3)
しおりを挟む
西村佳奈子・・・彼女の父親はこの銀行の取締役 営業本部長を最後に、おととし定年退職し、今はグループ会社の社長をやっていた。
その昔は『鬼の営業本部長』と呼ばれ、支店長会議などではテンションが上がって来ると、ひな壇の机をこぶしでバンバン叩きながら二百数十人もの支店長を前に『やらねばならぬのだ!今期のこの数字は!支店長諸君には今までの倍の仕事をしてもらいたい!』
を連発していたとの伝説があった。
「あの娘と間違いでも起こそうものなら・・・・」 松尾は右手を空手チョップのように首にあてスライドさせながら
「これだよ・・・はい、さよなら、だ」
「(・・・確かにそうなる)」彰司はそう思った。
なお、松尾からの追加情報によると、定例の人事異動発表の時に西村が東郷に『お祝いメール』を送って来ていた件は、単にこの父親から教育を受けた銀行内での世渡り術の一つであり、他意はないようだった。
「(優秀でやる気がある女性なんだろうが、面白い娘だ・・・)」彰司はその時そう思った。
◇
「たとえば、私なんかもう五年も銀行員をやっているんだけど、もし、明日にでも私の昔の知り合いが、『俺さぁ、三年前にIT関連の会社を始めたんだよ。で、月々の運転資金がいるのだけど・・・・君のところの銀行で五百万円くらい貸してもらえないかな。できれば二週間後くらいに・・・』なんて言われても、どう対応したらいいかわからないんですよね・・・・。そんな時は『なにそれ・・へえ・・・で、担保はあるの?』って聞くんですかね、普通は・・・」
ビールを彰司と自分のグラスに注ぎながら佳奈子は真顔でそう切り出した。
「なるほど、今日の勉強会のテーマはそういう場面を想定しての事か・・・。但し、そういう相談を受けて、君が言う『担保は?』と問うのは・・・金融業の人間としてはド素人だな」
「えっ、そうなんですか・・・」
佳奈子は意外そうな顔をして彰司をチラッと見た。
彰司は続けた
「加えて言うと・・・、こういう話が来た場合に、スルーしたり、忘れたり、その後の対応を間違ったりすれば、自分に火の粉が降りかかって来てどうにもならなくなるってことも、重々、肝に銘じておくべきだ」
彰司はビールを軽く口に含んだ。・・・そして、昔の記憶を呼び起こした。
その昔は『鬼の営業本部長』と呼ばれ、支店長会議などではテンションが上がって来ると、ひな壇の机をこぶしでバンバン叩きながら二百数十人もの支店長を前に『やらねばならぬのだ!今期のこの数字は!支店長諸君には今までの倍の仕事をしてもらいたい!』
を連発していたとの伝説があった。
「あの娘と間違いでも起こそうものなら・・・・」 松尾は右手を空手チョップのように首にあてスライドさせながら
「これだよ・・・はい、さよなら、だ」
「(・・・確かにそうなる)」彰司はそう思った。
なお、松尾からの追加情報によると、定例の人事異動発表の時に西村が東郷に『お祝いメール』を送って来ていた件は、単にこの父親から教育を受けた銀行内での世渡り術の一つであり、他意はないようだった。
「(優秀でやる気がある女性なんだろうが、面白い娘だ・・・)」彰司はその時そう思った。
◇
「たとえば、私なんかもう五年も銀行員をやっているんだけど、もし、明日にでも私の昔の知り合いが、『俺さぁ、三年前にIT関連の会社を始めたんだよ。で、月々の運転資金がいるのだけど・・・・君のところの銀行で五百万円くらい貸してもらえないかな。できれば二週間後くらいに・・・』なんて言われても、どう対応したらいいかわからないんですよね・・・・。そんな時は『なにそれ・・へえ・・・で、担保はあるの?』って聞くんですかね、普通は・・・」
ビールを彰司と自分のグラスに注ぎながら佳奈子は真顔でそう切り出した。
「なるほど、今日の勉強会のテーマはそういう場面を想定しての事か・・・。但し、そういう相談を受けて、君が言う『担保は?』と問うのは・・・金融業の人間としてはド素人だな」
「えっ、そうなんですか・・・」
佳奈子は意外そうな顔をして彰司をチラッと見た。
彰司は続けた
「加えて言うと・・・、こういう話が来た場合に、スルーしたり、忘れたり、その後の対応を間違ったりすれば、自分に火の粉が降りかかって来てどうにもならなくなるってことも、重々、肝に銘じておくべきだ」
彰司はビールを軽く口に含んだ。・・・そして、昔の記憶を呼び起こした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる