世界の意思にさようなら

ラゲク

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第一章 災害からの脱出

第12話 思いの伝え方と初めてそして鬼殺しの香り

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 僕たちがいた区画から少し離れた距離、歩いて2,30分程くらいの所に別の区画がある。

災害から無事だった小学校を中心にその区画はあった。

「ここの区画は無事の様ね!」

「ああ、もしかしたらドラゴンの化け物がこっちに来ているのじゃないかと……」



 とりあえず一安心だ……

 

だが区画の中はどうやら騒がしそうだ。理由はすぐに分かった。見知った顔……僕たちがいた区画の人、つまりあの場から逃げ延びた生存者のようだ。

「よかった ちゃんと生き延びていたんだ。」

もしかしたら、皆食べられたんじゃないかと……悪い考えをしていた自分にとって、

このニュースはとても嬉しい。

「おお、トガ君にユズキちゃん! 無事だったんだね!」

向こうの方から小太りのおじさんがやってきた。同じ区画にいたゴトウさんだ。どうやらほかの人たちと一緒に、今日会ったことについて説明している最中だったようだ。

「ゴトウさんもご無事で何よりです。」

「うんなんとかね! 隣にいる人は確か世界樹対策課? だったよね! すまないが 私たちと一緒に来てくれないか? 化け物のことと、今後について話さないといけないんだ。こんなに死者も出たんだ。君たち対策課が知っていること、全て話してほしい。」

「わかりました説明します。ただ対策課も、まだまだ捜査中のことばかりですので……」

「わかっていることだけでいいんだ。」

「申し訳ありません。」

ハイノメはそういうと後ゴトウさんたちと一緒に奥へと進んでいった。 

 

 僕とミナさんはシャワーを浴び、新しい服に着替えた。汚れを落とすだけでこんなにも気分が良くなる。学生時代、汗でベタベタになった身体をシャワーで洗い流す感じとは違うが。ミナさんもこれで少しは気分が良くなっているはず……

「トガさん! トガさん! 来てくださいよ! ビールですよ! ビール!」

僕の目の前には今まで見たこともない笑顔をした天使が

「かぁぁ~~うまいですぅ トガさんも飲みましょう!」

前言撤回 僕の目の前には両手にビールを持った堕天使の姿がそこにいた。



 

 太陽はもう柿のような色になって一日の役目を終えようとしている。



 あまりにも赤く染まった一日だった……



 今日の出来事を嫌でも思い出してしまう。そんな時は、隣にいるミナさんを見ると気が楽になる。今日一日、色々とつらいことがあり、やけ酒して泥酔した堕天使を……

「お疲れ様、ここにいたのね。 て! 彼女どうしたの? 顔真っ赤じゃない」

「ああ、彼女は天界から追放されました。」

「そ、そう……まあ、それは置いといて 今後の流れをざっと説明するわ。」

そういうとハイノメは淡々と説明し始めた。



「とりあえず今日の夜はここの区画で越すことにするわ。夜は危険だし、体も休めないといけないし! ほんで出発は早朝! 目的地は、世界樹対策課日本支部! 早起きしないといけないからもう寝なさい。」

「お前はぼくのお母さんか!」

「あと、彼女はここに残していくわ。行くのはわたしとあなた2人、ここの人たちにも話してあるわ。」

「え! ミナさん一緒に行けないのか。」

僕がそう言うとハイノメが口をとがらせる。

「当たり前でしょ! 能力者でもない人を連れていけないわ。」

「それもそうだけど……でも……」

「あなたの思っていることはわかる。ここより対策課の方が安全だろうと思っているんでしょ。申し訳ないけどそんな余裕はないのよ。」

彼女はそう言い残し、この場を去った。



 「ミナさんともここでお別れか……」



静けさの中にどこかぴりついている空気感……

サバンナの様な夜に、ぼくのため息が夜空を埋める。



出来れば一緒に行きたい ちょっと下心はあるがそれ以上に不安だ。なんせ一日で僕たちの区画は壊滅したんだから、まあ、武器も戦える人も全くいない状況なんだし当たり前なんだが……

ここの区画も、自衛隊数人ぐらいしかまともに戦える人がいない、

いつまたあの怪物が現れてもおかしくないのに……



 「眠れないんですか?」



隣で泥酔していたミナさんが起きて、僕の顔を伺いながら心配そうに声をかけてきた。

いや、一番心配なのは今のあなたなのだが……



「大丈夫ですよ、ミナさんこそ大丈夫ですか? まだ顔色悪そうですが……」

「あはは、でもかなりよくなりました。」



 伝えないと……今日でお別れだということ

  

だめだ何故か変に考えて思うように言い出せない! 

僕が必死に頭の中で戦っている最中、彼女は懐に隠してあった鬼殺しを手に持ち、飲み始めた。

「ああ! またお酒飲んでる!」

「えへへ 迎え酒ですよ~」



 まさかこんな酒好きの人だったとは……



僕がそう思った次の瞬間、赤い果実のような柔らかいものが僕の口に接触した。

何が起きたのか一瞬わからなかったが、すぐに理解できた。



「すみません こんな状態で……でもどうしても、もう会えないと思って……」



これが僕のファーストキス!



ああ、なんて神秘的なんだろう 



でもひとつ残念だ。 アルコールの香りがキツイ……
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