負け犬令嬢日本探遊記

那珂田かな

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プロローグ

異世界へ

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「『伝説の魔女マリー』ですって?!」
アンリエットは声を上げた。

『伝説の魔女マリー』
この国で知らぬ者はいない。
50年前に一人の少女がシオン学園に何処からともなく現れた。
そして瞬く間に、最強に成り上がった。
それだけではない。
当時学生だった国王を誑かし、国庫の金を根こそぎ盗んだ悪名高き魔女でもある。

「魔女は、当時の国王と、四代侯爵家が封印したはず。その人物に会うなんて、そんなこと…」
「できるんだよ、俺なら」
ユーリはハッキリと言った。
「冗談はよして。あなたは魔法が使えないじゃない。どうやって封印された魔女に会うって言うの!」
「今は詳しくは言えないけど。なあアン、君はマリエに勝ちたいんだろ?」
「そうよ!だから勉強しないと」
「今のまま勉強しても勝てない」
「なんですって?!」
「マリエの呪文は特殊だ。それは知ってるだろ」
アンリエットは認めたくなかった。マリエの呪文は自分が勉強してきた本には載っていないものばかりだった。
「あれは異世界の古の言葉だ。だから、マリエに勝つためには、その異世界の呪文で対抗しないといけない」
「異世界ですって、冗談はよして!そんな世界あるわけが…」
「あるんだよ、俺はそこから来た」
「はあ?!」
「マリエも多分そこから来たんだ。そして魔女マリーも、今その世界にいる」
「…ユーリ、前からバカだと思ったけど、そこまでバカたとは思わなかったわ」
アンリエットはため息をつく。
こんな男に貴重な時間を使ったのかと思うと、悲しくなってきた。
「信じたくないならそれでいい。だけどこのままではマリエに勝てない、絶対に」
「じゃあ、あなたを信じて、その伝説の魔女とやらに会いに行けば、私が勝てるようになるっていうの?」
「俺が保証する」
ユーリの目は真剣そのものだった。
アンリエットは嘘には敏感だ。幼い時より、虚飾にまみれた世界で暮らしていたのだから。
ユーリは魔法も使えず、そのうえバカだ。だが唯一の長所は嘘つきではない、ということ。
賭けるしかない、この男に。
「わかったわ。あなたを信じましょう」
アンリエットは答えた。
「でも、その異世界とやらにどうやって行くの?」
「大丈夫。今からあっちと連絡とるから」
ユーリはにこやかに微笑むと、制服の胸元から何かを取り出した。それは掌にのるぐらいの大きさの板だった。
ユーリはそれを耳につけ話始める。
「もしもし、俺だけど、今からそっちに帰るから、準備お願い」
ーやっぱり、頭がおかしいわ、この男。

アンリエットが逃げ出そうと思った瞬間、何処からともなく扉が現れた。
それは格子状の木の枠で出来ていて、取っ手はなく、ガラスが埋め込まれている。
「な、何?あなたが出したの?」
「違うよ」
ユーリは今度は胸元か鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。そして扉を横に引くとカラカラと音がした。

「狭い家だけど…」
「何が狭い家やねん!」
ユーリが中に入った途端、怒号が聞こえユーリの頭を誰かが殴った。
アンリエットが身構える。
「痛ってえなあ。相変わらず乱暴だなあ」
「フン!帰ってきて早々、人んちの悪口言うたからや!ん?なんやこの子?」
その人物はアンリエットに気づいた。
「なんや、その子が例の子かいな?」
「うん、アンリエットっていうんだ」

ユーリを殴った人物は身長は白髪の初老の女性だった。
アンリエットより少し低く、杖を突いているが、背はピンとしている。
眼光は鋭く、しわが寄った口元はいかにも頑固そうだ。
一番気になるのは、この女性が来ている服が虎の顔が書かれているということだ。

ーこの人、この異世界の王なのかしら。とにかくただ者ではないわ!


その人物は、戸惑っているアンリエットにガハハと笑い、肩を乱暴に叩いた。

「話はユーリから聞いとるで。まあ、楽しい修行にしたるさかい!!」






















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