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危険な夏休み編
クセモノたち【前編】
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「夏休み取るからな」
竹城が部屋に入った途端、彰吾が言った。
「なんですかいきなり。何日休まれるつもりですか?」
「一ヶ月」
「却下です」
竹城が即答した。彰吾は不機嫌な顔で睨む。
「せめて十日は休ませろ」
「旅行にでも行かれるんですか?」
「プライベートを一々詮索するな」
「女性と逢引するのに、十日も必要ありません。仕事をしたほうがよっぽど有意義です」
「…俺が休んだら、お前も休めるじゃねえか」
「この暑い中、何が楽しくて十日も自宅に籠もらなきゃいけないんですか。電気代が無駄にかかるだけです。それなら会社で仕事したほうがよっぽどマシです」
竹城がハッキリと言った。
ー倹約の鬼と仕事の鬼が同居してるな。
竹城本人がワーカホリックなのは構わない。
しかし、雇用主の自分にまで、それを要求するのは迷惑極まりない。
本気で説得しないと、と彰吾が思った時だった。
彰吾の部屋を誰かがノックした。
「どうぞ」
竹城が答えると、松倉が入ってきた。
「あぁ、ここは涼しいですねえ」
松倉は額に汗を滲ませながら、笑顔で言った。
「若、例の人物の資料です」
封筒に入った資料を彰吾に手渡すと、ハンカチで顔を拭く。
彰吾は資料を素早く捲っていった。
例の人物。それは飯塚 雷のことだ。
「飯塚雷、年齢29歳。大阪出身。母親は既に死亡。父親は健在で、定年退職してますが元警察官。飯塚本人も半年前までは警察官だったそうです」
「退職した理由は?」
「一身上の都合、となっておりますが、噂では上司と一悶着あったとか。退職後はフリーランスの身辺警護人をしているようです」
松倉が説明する。
「その男、雇われるんですか?」
事情をしらない竹城が聞いた。
「雇えるならそうしたいねえ。警察学校でも優秀だったみたいだし」
「ヤクザが元警官なんか雇ってみろ。有る事無い事でっち上げらて警察にチクられる。ム所送りはごめんだ」
彰吾は資料を机の上に放り投げた。
「それならなぜ、その人物を調べる必要が?」
竹城は彰吾に聞いた。しかし、彰吾は答えない。
「まさか、また柚子さんがらみで、松倉さんを動かしたんじゃないでしょうね?」
彰吾も、そして松倉も答えない。
竹城は眼鏡をクイっと上げた。
「前にも言いましたが、松倉さんを私的な用件で動かすのは止めてください。松倉さんには他にも大切な仕事があるんです」
「別にいいじゃねえか。少しくらい…」
「いやいや、竹城君。これは私が勝手にやってることだから…」
彰吾と松倉が言い訳をしたが、竹城は二人に鋭い視線を向ける。
「若、女に入れ込むのは、あなたの勝手ですが、程々になさってください。それに松倉さんも、若を甘やかさないように。お二人共、公私混同が過ぎます」
彰吾も松倉も、何も言い返さなかった。
代わりに彰吾はため息をつく。
仕事はできるが、効率優先で、人間らしさが皆無の竹城。
そして、人当たりのいい笑顔を見せつつも、腹の中では何を考えているのかわからない松浦。
そんな一癖も二癖もある人間に四六時中、囲まれているのだ。
喜怒哀楽がわかりやすい柚子に癒しを求めるのも当然だろう。
ーさっさと、仕事を終わらせるとするか。
そして癒されに行こう、と彰吾は固く決意した。
竹城が部屋に入った途端、彰吾が言った。
「なんですかいきなり。何日休まれるつもりですか?」
「一ヶ月」
「却下です」
竹城が即答した。彰吾は不機嫌な顔で睨む。
「せめて十日は休ませろ」
「旅行にでも行かれるんですか?」
「プライベートを一々詮索するな」
「女性と逢引するのに、十日も必要ありません。仕事をしたほうがよっぽど有意義です」
「…俺が休んだら、お前も休めるじゃねえか」
「この暑い中、何が楽しくて十日も自宅に籠もらなきゃいけないんですか。電気代が無駄にかかるだけです。それなら会社で仕事したほうがよっぽどマシです」
竹城がハッキリと言った。
ー倹約の鬼と仕事の鬼が同居してるな。
竹城本人がワーカホリックなのは構わない。
しかし、雇用主の自分にまで、それを要求するのは迷惑極まりない。
本気で説得しないと、と彰吾が思った時だった。
彰吾の部屋を誰かがノックした。
「どうぞ」
竹城が答えると、松倉が入ってきた。
「あぁ、ここは涼しいですねえ」
松倉は額に汗を滲ませながら、笑顔で言った。
「若、例の人物の資料です」
封筒に入った資料を彰吾に手渡すと、ハンカチで顔を拭く。
彰吾は資料を素早く捲っていった。
例の人物。それは飯塚 雷のことだ。
「飯塚雷、年齢29歳。大阪出身。母親は既に死亡。父親は健在で、定年退職してますが元警察官。飯塚本人も半年前までは警察官だったそうです」
「退職した理由は?」
「一身上の都合、となっておりますが、噂では上司と一悶着あったとか。退職後はフリーランスの身辺警護人をしているようです」
松倉が説明する。
「その男、雇われるんですか?」
事情をしらない竹城が聞いた。
「雇えるならそうしたいねえ。警察学校でも優秀だったみたいだし」
「ヤクザが元警官なんか雇ってみろ。有る事無い事でっち上げらて警察にチクられる。ム所送りはごめんだ」
彰吾は資料を机の上に放り投げた。
「それならなぜ、その人物を調べる必要が?」
竹城は彰吾に聞いた。しかし、彰吾は答えない。
「まさか、また柚子さんがらみで、松倉さんを動かしたんじゃないでしょうね?」
彰吾も、そして松倉も答えない。
竹城は眼鏡をクイっと上げた。
「前にも言いましたが、松倉さんを私的な用件で動かすのは止めてください。松倉さんには他にも大切な仕事があるんです」
「別にいいじゃねえか。少しくらい…」
「いやいや、竹城君。これは私が勝手にやってることだから…」
彰吾と松倉が言い訳をしたが、竹城は二人に鋭い視線を向ける。
「若、女に入れ込むのは、あなたの勝手ですが、程々になさってください。それに松倉さんも、若を甘やかさないように。お二人共、公私混同が過ぎます」
彰吾も松倉も、何も言い返さなかった。
代わりに彰吾はため息をつく。
仕事はできるが、効率優先で、人間らしさが皆無の竹城。
そして、人当たりのいい笑顔を見せつつも、腹の中では何を考えているのかわからない松浦。
そんな一癖も二癖もある人間に四六時中、囲まれているのだ。
喜怒哀楽がわかりやすい柚子に癒しを求めるのも当然だろう。
ーさっさと、仕事を終わらせるとするか。
そして癒されに行こう、と彰吾は固く決意した。
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