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二人のなれそめ編
報復【中編】
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高林は再会を祝して、柚子に一緒に食事をしたいと言い出した。
柚子は作り笑顔を浮かべながら、コクリと頷く。
食事中、高林は得意満面で今までのことを話した。
すごーい、さすがですねえ、とバイト時のお決まりのセリフを連呼すると、高林は更に饒舌になる。
ーこんなとこで役立つなんて。
柚子は心の中で苦笑する。
食事が終わると、席を立ち、柚子は化粧室に向かった。
携帯を確認すると、電池がほとんどなくなっていた。あわててモバイルバッテリーをつなぐ。
そして、テーブルに戻り、飲み物を口にした時、手が止まった。
ー味がなんだか…
何かを入れられた?
柚子は冷静を装い、飲み物を飲んだふりをし、トイレに向かった。
さっき飲んだものを吐き、柚子は息を整える。
「はあ、はあ…」
心無しか、頭が朦朧としてきた。柚子は自分の顔を叩き、活を入れる。
ー絶対に大丈夫。
そして、携帯に向かって呟いた。
「動きます」
柚子の合図に、彰吾は奥歯をかみしめた。
そして、イヤホンに意識をさせる。
柚子の『少し気分が…』という声と『大丈夫?』だの『どうしたの?』という男の声が聞こえた。
彰吾は首を伸ばし、柚子がいるテーブルを確認すると、高林と柚子が、ちょうど席を立ったところだった。彰吾も二人を目で追いながら、ゆっくりと立ち上がる。
ーこれからだ。
会計を済ませ、少し離れて彰吾が後からついていく。
柚子は高林にもたれ掛かって、足元がおぼつかない。
彰吾は嫌な予感がした。
飲み物に何か混入さるかもしれないから注意しろ、と前もって言っておいた。
彰吾の胸は不安で一杯になる。
二人は繁華街を通り過ぎ、いかがわしい通りに入った。
高林は馴れ馴れしく柚子の腰に手を回している。
そしてあるホテルに二人は入っていった。
ーやっと本性あらわしやがったな。
彰吾は、けばけばしい電飾で彩られたホテルを睨みつける。
鉢合わせしてはまずい。彰吾は少し外で待つことにした。
その間イヤホンに全神経を集中させていると、電波が悪いのか、よく聞き取れない。
『やめて!』
一瞬、柚子の叫び声が聞こえた。
彰吾は、いてもたってもいられなくなり、ホテルの中に入る。
ゴソゴソと激しく動く音と、とぎれとぎれに柚子の嫌がる声が聞こえた。
ー無事でいてくれ!
彰吾はエレベータのボタンを押した時だった。
ドサッ、と何が倒れるような大きな音が、イヤホンから聞こえた。
エレベーターはまだ降りてこない。焦って何度もボタンを押していた時だった。
「...ごさん。彰吾さん!」
柚子の声が携帯から聞こえた。彰吾はほっとして電話に出る。
「無事か!」
「な、なんとか...」
「何階にいる?」
「えっと...」
彰吾は降りてきたエレベータに飛び乗り、柚子の元へと急いだ。
フロアに着くと、真っ先に目に飛び込んできたのは、倒れている男と、そばにいる柚子だった。
「柚子!」
「部屋に運ぼうと思ったんですけど、重くて…」
「俺が運ぶ。何号室だ」
彰吾は倒れている高林を担ぎ、部屋に向かった。
柚子は少しふらつきながらも、ちゃんと歩いている。
部屋につくと、彰吾はベットに気絶している高林を乱暴に投げた。
高林は少しうめくが眼を覚まさない。
「何されたか?」
「エレベータの中で、いきなり抱きつかれて...そのう...キスを...」
「......」
「だ、大丈夫です!ちゃんと抵抗しました。思いっきり突き飛ばして、倒れたところをこれで...」
柚子は持っていたスタンガンを見せた。彰吾から護身用に渡されていたものだった。
「よくやった」
彰吾はホッとして柚子を抱きしめた。柚子もまた彰吾の背に手を回し、しっかりと抱きつく。
二人が抱き合っていると、高林がうめき声をあげ、体を起こし始めた。柚子の肩が震えると同時に、彰吾がすぐさま高林の顔面に蹴りを入れた。
「寝てろ」
ぐっ、とくぐもった声が聞こえ高林はまたベットに倒れこんだ。
彰吾は、携帯を取り出し電話をかける。
「松倉、すぐに来い。場所は...」
柚子は作り笑顔を浮かべながら、コクリと頷く。
食事中、高林は得意満面で今までのことを話した。
すごーい、さすがですねえ、とバイト時のお決まりのセリフを連呼すると、高林は更に饒舌になる。
ーこんなとこで役立つなんて。
柚子は心の中で苦笑する。
食事が終わると、席を立ち、柚子は化粧室に向かった。
携帯を確認すると、電池がほとんどなくなっていた。あわててモバイルバッテリーをつなぐ。
そして、テーブルに戻り、飲み物を口にした時、手が止まった。
ー味がなんだか…
何かを入れられた?
柚子は冷静を装い、飲み物を飲んだふりをし、トイレに向かった。
さっき飲んだものを吐き、柚子は息を整える。
「はあ、はあ…」
心無しか、頭が朦朧としてきた。柚子は自分の顔を叩き、活を入れる。
ー絶対に大丈夫。
そして、携帯に向かって呟いた。
「動きます」
柚子の合図に、彰吾は奥歯をかみしめた。
そして、イヤホンに意識をさせる。
柚子の『少し気分が…』という声と『大丈夫?』だの『どうしたの?』という男の声が聞こえた。
彰吾は首を伸ばし、柚子がいるテーブルを確認すると、高林と柚子が、ちょうど席を立ったところだった。彰吾も二人を目で追いながら、ゆっくりと立ち上がる。
ーこれからだ。
会計を済ませ、少し離れて彰吾が後からついていく。
柚子は高林にもたれ掛かって、足元がおぼつかない。
彰吾は嫌な予感がした。
飲み物に何か混入さるかもしれないから注意しろ、と前もって言っておいた。
彰吾の胸は不安で一杯になる。
二人は繁華街を通り過ぎ、いかがわしい通りに入った。
高林は馴れ馴れしく柚子の腰に手を回している。
そしてあるホテルに二人は入っていった。
ーやっと本性あらわしやがったな。
彰吾は、けばけばしい電飾で彩られたホテルを睨みつける。
鉢合わせしてはまずい。彰吾は少し外で待つことにした。
その間イヤホンに全神経を集中させていると、電波が悪いのか、よく聞き取れない。
『やめて!』
一瞬、柚子の叫び声が聞こえた。
彰吾は、いてもたってもいられなくなり、ホテルの中に入る。
ゴソゴソと激しく動く音と、とぎれとぎれに柚子の嫌がる声が聞こえた。
ー無事でいてくれ!
彰吾はエレベータのボタンを押した時だった。
ドサッ、と何が倒れるような大きな音が、イヤホンから聞こえた。
エレベーターはまだ降りてこない。焦って何度もボタンを押していた時だった。
「...ごさん。彰吾さん!」
柚子の声が携帯から聞こえた。彰吾はほっとして電話に出る。
「無事か!」
「な、なんとか...」
「何階にいる?」
「えっと...」
彰吾は降りてきたエレベータに飛び乗り、柚子の元へと急いだ。
フロアに着くと、真っ先に目に飛び込んできたのは、倒れている男と、そばにいる柚子だった。
「柚子!」
「部屋に運ぼうと思ったんですけど、重くて…」
「俺が運ぶ。何号室だ」
彰吾は倒れている高林を担ぎ、部屋に向かった。
柚子は少しふらつきながらも、ちゃんと歩いている。
部屋につくと、彰吾はベットに気絶している高林を乱暴に投げた。
高林は少しうめくが眼を覚まさない。
「何されたか?」
「エレベータの中で、いきなり抱きつかれて...そのう...キスを...」
「......」
「だ、大丈夫です!ちゃんと抵抗しました。思いっきり突き飛ばして、倒れたところをこれで...」
柚子は持っていたスタンガンを見せた。彰吾から護身用に渡されていたものだった。
「よくやった」
彰吾はホッとして柚子を抱きしめた。柚子もまた彰吾の背に手を回し、しっかりと抱きつく。
二人が抱き合っていると、高林がうめき声をあげ、体を起こし始めた。柚子の肩が震えると同時に、彰吾がすぐさま高林の顔面に蹴りを入れた。
「寝てろ」
ぐっ、とくぐもった声が聞こえ高林はまたベットに倒れこんだ。
彰吾は、携帯を取り出し電話をかける。
「松倉、すぐに来い。場所は...」
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