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少女と野獣1
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彰吾は目的地であるマンション近くの道で車を降り、二人に帰るように促した。
「いいんですか、松倉さん」
「何が?」
「若を一人にして」
「大丈夫でしょ。変な車、ついてきてなかったし」
若も自分の身ぐらい自分で守れるさ、と松倉はエンジンを止め、バックミラーに映る彰吾を見る。深夜ということもあり、彰吾以外歩いている人はいなかった。
彰吾が角を曲がり、姿が見えなくなる。松倉は携帯を取り出し、何かを調べ始めた。その画面に地図が映し出され、赤いマークがゆっくり動いている。そしてある建物で止まった。
「無事、マンションについたみたいだよ。若」
松倉は画面を竹城に見せた。竹城は画面をチラリとみると、ため息をついた。
「それにしても、困ったもんだな。若の女遊びには」
「そう?いつもの事じゃない」
「まあ、そうなんですが。それにしても、今回の女にはえらくご執心のようだ」
それは3か月のことだった。
彰吾が突然、自分の所有するマンションに、女性を住まわせ始めたのだ。
「どんな女か知らないが、若はすぐ飽きるからなあ。半年もたたないうちに、出ていけ、なんて言われたら、女も可哀想だ」
「それはないと思うよ」
松倉はエンジンをつけた。
「どうしてそう思うんです?若の女性関係については、付き合いの長い松倉さんのほうが、詳しいでしょう?」
「詳しいからだよ」
逆に若の方が捨てられなきゃいいけど、と松倉は笑い、アクセルを踏んだ。
彰吾はマンションに着くと、周辺を確認し中に入る。暗唱番号を入力すると自動ドアが開いた。
エレベーターに乗り込みボタンを押す。肩から力が抜けた。
職業柄、一人になるということは殆どない。常に人の気配を感じながら生活する日々は、もう慣れた。
ただ、柚子の家に向かう時だけが、一人の「槇村彰吾」という人間になれる貴重な時間だった。
エレベータが止まり、ドアが開いた。
彰吾は静まり返った廊下を歩き、目的の部屋の前に着く。
チャイムを押そうとしたが、ふと時計を見る。深夜1時を少し過ぎていた。
多分、柚子はもう寝てるはずだ。彰吾はポケットからキーケースを取り出し鍵を開ける。
扉を開けると、意外なことに部屋に電気が灯っていた。
まだ起きているのか、と靴を脱ぎ部屋に入る。
そして彰吾は台所の机に、突っ伏している女性を見つけた。
「柚子!」
彰吾は驚き、肩をゆする。
「ん…」
柚子と呼ばれた女性は目をこすり、ゆっくりと頭を上げる。
「あれえ、彰吾さん?」
気の抜けた声が聞き、彰吾はホッとした。机を見ると、何冊もの本やノートが開いている。
どうやら勉強しているうちに寝てしまったようだ。
「お前なあ、寝るならベットで寝ろって、何度も言ってるだろう」
「はあい」
柚子は返事をしたが、よっぽど眠いのか、また目を閉じてしまった。
「まったく」
世話が焼ける、彰吾は柚子を抱き上げた。小柄な柚子は彰吾の腕の中に抱かれ、すやすやと眠っている。
彰吾はその寝顔をじっと見つめた。
「お守りをしに来たわけじゃないんだぞ」
そう言いながらも、彰吾は口元に穏やかな笑みを浮かべ、寝室に向かった。
「いいんですか、松倉さん」
「何が?」
「若を一人にして」
「大丈夫でしょ。変な車、ついてきてなかったし」
若も自分の身ぐらい自分で守れるさ、と松倉はエンジンを止め、バックミラーに映る彰吾を見る。深夜ということもあり、彰吾以外歩いている人はいなかった。
彰吾が角を曲がり、姿が見えなくなる。松倉は携帯を取り出し、何かを調べ始めた。その画面に地図が映し出され、赤いマークがゆっくり動いている。そしてある建物で止まった。
「無事、マンションについたみたいだよ。若」
松倉は画面を竹城に見せた。竹城は画面をチラリとみると、ため息をついた。
「それにしても、困ったもんだな。若の女遊びには」
「そう?いつもの事じゃない」
「まあ、そうなんですが。それにしても、今回の女にはえらくご執心のようだ」
それは3か月のことだった。
彰吾が突然、自分の所有するマンションに、女性を住まわせ始めたのだ。
「どんな女か知らないが、若はすぐ飽きるからなあ。半年もたたないうちに、出ていけ、なんて言われたら、女も可哀想だ」
「それはないと思うよ」
松倉はエンジンをつけた。
「どうしてそう思うんです?若の女性関係については、付き合いの長い松倉さんのほうが、詳しいでしょう?」
「詳しいからだよ」
逆に若の方が捨てられなきゃいいけど、と松倉は笑い、アクセルを踏んだ。
彰吾はマンションに着くと、周辺を確認し中に入る。暗唱番号を入力すると自動ドアが開いた。
エレベーターに乗り込みボタンを押す。肩から力が抜けた。
職業柄、一人になるということは殆どない。常に人の気配を感じながら生活する日々は、もう慣れた。
ただ、柚子の家に向かう時だけが、一人の「槇村彰吾」という人間になれる貴重な時間だった。
エレベータが止まり、ドアが開いた。
彰吾は静まり返った廊下を歩き、目的の部屋の前に着く。
チャイムを押そうとしたが、ふと時計を見る。深夜1時を少し過ぎていた。
多分、柚子はもう寝てるはずだ。彰吾はポケットからキーケースを取り出し鍵を開ける。
扉を開けると、意外なことに部屋に電気が灯っていた。
まだ起きているのか、と靴を脱ぎ部屋に入る。
そして彰吾は台所の机に、突っ伏している女性を見つけた。
「柚子!」
彰吾は驚き、肩をゆする。
「ん…」
柚子と呼ばれた女性は目をこすり、ゆっくりと頭を上げる。
「あれえ、彰吾さん?」
気の抜けた声が聞き、彰吾はホッとした。机を見ると、何冊もの本やノートが開いている。
どうやら勉強しているうちに寝てしまったようだ。
「お前なあ、寝るならベットで寝ろって、何度も言ってるだろう」
「はあい」
柚子は返事をしたが、よっぽど眠いのか、また目を閉じてしまった。
「まったく」
世話が焼ける、彰吾は柚子を抱き上げた。小柄な柚子は彰吾の腕の中に抱かれ、すやすやと眠っている。
彰吾はその寝顔をじっと見つめた。
「お守りをしに来たわけじゃないんだぞ」
そう言いながらも、彰吾は口元に穏やかな笑みを浮かべ、寝室に向かった。
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