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XIX.心無い人間はいない【翻邪帰正、呑刀刮腸】
Patience et longueur de temps font plus que force ni que rage.
しおりを挟む「ねぇ、レオ」
「なんだ?」
「なんで、アリシアが十六になったら帰ってくるって言ったの?」
疑問その一。
まずは、彼の言動を洗うことから始めようと
キースよろしく寝転ぶ私を後ろから抱き寄せる彼へ問いかけた。
身じろいで振り返った先に見えた彼は
嫌そうに顔を歪めながら私を見ていて。
「お前のその情報源は誰だ?」
「……それは、言えないけど」
私がどこまで知っているのか、不安になってしまったようだ。
ただ、「シャルとアリシアから聞いたの」
なんて言えたものではなく。
下手に打首にはさせたくないと言葉を濁した。
「世継ぎを作る為だ」
「え……?」
すると、彼がすんなりと答えたことに驚いて、
無自覚にも聞き返す。
私の阿呆みたいな声を聞いたレオは鼻で笑いながら、
少し間をおいて声を出した。
「皇帝は、キースでも代わり気取れるが、
子供は後々俺の子じゃねえってバレたら面倒だろう」
「……なるほど」
「本当はやることだけやって、
また消えるつもりだったんだよ」
お前がいたせいで予定が狂っちまったがな、と
何故か私に責任を押し付けるレオは
言葉とは裏腹に私を抱き締めた。
この国に、素直な王子様はいないのだろうか。
まぁ、それはおいておくとしても。
シャルもアリシアも彼が帰ってくる理由を
勘違いしていた、ってわけね。
……結局は最低なことに、変わりないかもしれないけれど。
責任を放棄して、キースに押し付けて
自分だけ逃げ出そうとしたのだから。
煮え切らない思いを頭内で浮かべていると
なにやら厭らしく這いずり出した手の存在に気づく。
曝けた太腿を撫でるその手つきは、
まるで行為の前と同じ。
「レ、オ」
「……触るくらい、いいだろ」
……この男は本当に。
どうやら煩悩が振り払いきれていないようだ。
「あらそう、分かった」
そう言って辞めようとしないレオに
ぐるんと向き直って。
わざとらしく無防備に四肢を投げ出してやった。
「どうぞお好きになさって」
「……チッ!!」
大きく舌打ちをかましたレオは
少しばかり悔しそうにまた私を後ろから抱き締めて。
行き場の無くなった欲を愛に変えて
私の背にぐりぐりと頭を押し付けた。
【忍耐と長い時間は、力よりも怒りよりも多くのことをする】
Patience et longueur de temps font plus que force ni que rage.
(あぁもう。なんだか愛おしくなってきてしまった)
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