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XVI.疑惑を追い求める【追根求底、真相究明】
La vérité sort de la bouche des enfants.
しおりを挟む「カイン」
「……お前は、アリア、だったか」
次の朝、書庫に向かえば
やはりいた彼の姿に少しだけ気が落ち着いた。
オオトリはもちろん、シャルもアリシアも。
私が知る人物が消え失せていく中
顔見知りに会うというのはとてつもなく安堵を覚える。
「ええ。覚えててくれたのね」
「フン。当たり前だ。俺様の記憶力を見誤るな」
私から視線を外したカインは相変わらず偉そうだ。
変わったのは、レオただ一人。
「で、俺様に何の用だ」
「貴方に、聞きたいことがあるの」
本に目を向け続けるカインの横に腰を下ろす。
彼は、ソファの揺れで私をちらりと見た。
その目が、その顔つきが本当にレオによく似ていて。
小さく震えそうになる体を抑えつつ話しかけた。
「貴方は、レオとよく話す?」
「……前まではな」
「前までは? 最近は話してないの?」
「あぁ」
「そうなの? 何故?」
理由を問いかけると、カインが少し間をもって黙りこくる。
そして彼は、どことなく不審な視線の泳がせ方をして
独り言のように呟いた。
「俺様が尊ぶ兄様じゃないからだ」
それを聞いて思い返されるは、アリシアのあの言葉。
「“レオ”は“レオ”じゃない」
正面を見つめて負けじと、独り言のように呟くと
視界の端でカインが驚いたように私を見たのが分かった。
「それと、何か関係あり?」
「お前……知ってるのか?」
「え?」
“知ってるのか”
きっとそれは、レオが隠しているものと同義で。
アリシアも、オオトリも。
彼らが握っている秘密を
カインも知っているのだと確信に近づける。
ただ、聞き返してしまった以上
私は知らないと伝えてしまったようなものだ。
彼は急いで顔を逸らして。
不貞腐れに近い形で低い声を出した。
「知らぬなら、もう話せることは無い」
「……お願い。どうしても知りたいの」
「……俺を、打首にさせる気か貴様」
とにかく、話せることは無い。
再三に渡って忠告した彼は、
本を閉じて書庫を後にした。
【真実は子供の口から漏れるもの】
La vérité sort de la bouche des enfants.
(もう一度、オオトリに会えれば分かりそうなのに)
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