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XII.嘘つきも愛は本物【虚実混交、巧偽拙誠】
Loin des yeux, loin du cœur.
しおりを挟む「……そう」
彼の視線から逃れて俯きがちに頷けば、
彼は驚きを隠せない様子で声を震わせた。
「何も、言わないのか」
「それはどういう意味?」
質問を質問で返すと、
視界の中にいる彼は未だ動揺しているようだ。
「逆に聞くけど、私に何を言って欲しいの」
そう問えば、彼は口を噤んだまま。
「なんて惨いことを、最低、
この悪魔、貴方が死ねば良かったのに。
……とでも言えば満足?」
冷たく述べても、鋭く睨んでも。
彼は口を開こうとしないまま、私をまじまじと見据えているだけ。
「あぁそれとも。
私は貴方を信じてる、優しい貴方の事だもの、
きっと何か理由があったに違いないわ。
……かしら」
終わったことを、掘り返して何の意味があるというの。
そんなこと言っても、もう何も変わらない。
「消えたものは、二度と取り返せない。
私が貴方を蔑もうが、認めようが。
私の家族が、消えたことに、変わりはない」
その理由がどうであっても、
孤独になった私の気持ちは、貴方には分からない。
私は本当に、血も涙もない女だ。
たったの一雫落としただけで、もう涙なんて出やしない。
ただ、それは彼とて同じ。
悪魔を気取る彼は睨むようにしてその青い瞳に私を映し出した。
「……なら、何故聞いた?」
声のトーンを落としたレオは、
何も答えない私に更に声低く表立たせた怒りをぶつけた。
「俺を悪者にして、“家族”を取り戻そうとしたかったのか?
酌量の余地を見出したかったのか?
利己だけを求めて、俺に聞いたのか」
「……だったら、どうする?」
この上なくハッキリとした問いかけに
私は、この上なく曖昧な返しをした。
そして目を見開いたレオは
当てどころの見つからない怒りを唇を噛み締める力と、
「今すぐ、ここを去れ。
お前には、俺の正妻どころか、
公妾すら名乗りをあげる資格は無い」
言葉の剣に変えて私を再び貫いた。
【目から遠くに、心から遠くに】
Loin des yeux, loin du cœur.
(母様は正しかった。愛なんて、くだらない。)
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