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Ⅸ.体から伝わる愛【合歓綢繆、楚夢雨雲】
【R-18】Ne jetez pas vos perles devant les pourceaux.
しおりを挟む「……はッ、あ……ッ」
「どう?」
「今、喋、んな……!」
相変わらず眉根を力ませる彼に問えば、
喋るなと叱咤されてしまった。
王子に言われたら、喋る訳にはいかないわね。
そう思いつつ、
「ちゃんと言ってくれないと分からない」と
イタズラ心で口を動かすと頭を抑え込まれた。
ぐうっと、喉の奥を刺激したのは、
昨日まで私のナカを犯していた彼のソレで。
何を隠そう、オオトリが
白々しくお教えしますなんて言ってきたのはこの事だった。
上手くやれば、本番より快感らしいですよ。
そうニヤリと笑ったオオトリに私は頭を抱えたのだが。
しゃくる様な気息を繰り返しながら
顔を歪める彼の表情を見れば、
オオトリの言っていたことはなかなか的を得ていたのだろう。
どこまでも使える男と認めざるを得ない。
そして確かに、これなら腰は痛くない。
しかし、痛む場所が変わっただけで
顎と喉が悲鳴をあげ始めている。
その上、それと引き換えに
何かを失っていく気がするのは気の所為では、ない。
コワレモノを扱うかのように丁寧に舌を這わせて、
ソレに添えた手を零れた唾液を纏わせるように動かして。
私の中の大切な何かが、すり減っていく音がする。
道徳心というのか、自尊心というのか。
名も分からぬ感情が消え失せていく。
そんなことを言っていても、
彼が欲を吐くまでは辞めてやる訳にはいかない。
手は動かしつつも顎の休憩という名目で口からソレを抜いて、
舌を伸ばし先端をチロッと舐めてみた瞬間。
「……ッんん!」
増して喘いだ彼は、首筋を仰け反らせた。
同時に生温い何かが飛んで、
べっとりと私の顔にへばりつく。
「……ねぇ、ちょっと」
「……お前が、口、離すからだろ」
「……イけないんじゃ、無かったの」
「お前の顔が、厭らしすぎた」
そう言ってありもしないはずの責任を彼は私に押し付けた。
不快だ、この上なく。
頬やら、鼻やら。
顔中に散らばった粘着気質の液体が、私を荒ませる。
目元についたソレを人差し指の背で拭って。
指先についた白い液体を、興味本位で舐めてみると
苦いんだが、腥いんだか。
初めての味に顔を顰めながら、
舌をべぇっと外に突き出した。
そういえば何も言わない彼は何を考えているのだろうか。
「レオ……?」
その名を呼びながら彼の顔を脚の間から見上げれば、
恍惚としたように私を見る彼とバッチリ目が合ってしまった。
ろくなことにならない気がして、
急いで視線を落としたものの
再び熱を帯び始めているソレに気づいてしまって。
もう、視線の行き場がない。
見て見ぬふりで顔を洗いに行こうとした私の体が
彼の腕によって無理矢理ベッドに引き戻される。
彼はベッドのスプリングを軋ませながら
背を打ち付けた私に向かって、
「次、腰か顎、どちらか選べ」
偉そうに命令をした。
【豚に真珠を投げるな】
Ne jetez pas vos perles devant les pourceaux.
(もう二度と、しない)
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