81 / 174
Ⅸ.体から伝わる愛【合歓綢繆、楚夢雨雲】
Ce que femme veut, Dieu le veut.
しおりを挟む「王、子……」
「今日は、居ないはずじゃ……!?」
扉の前に立っていた彼は、
男の影から見えた霰も無い私の姿に
大きく目を見開き、ドスの効いた声で彼らを咎めた。
「貴様ら、余程死にたいようだな」
出合え、とたったの一言で憲兵を呼び寄せた彼は
私を陵辱していた男達をひっ捕らえて。
焦るように駆け寄ってきた彼は
私を苦虫を噛み潰したような顔で見下ろした。
「アリア……っ」
「はぁっ……」
私の口の布を外してくれた刹那、
苦しかった息が大きく漏れた。
「悪い、俺が、傍にいなかったせいで」
「貴方の、せいじゃ……ない、から」
今にも泣きそうな声色で私を強く抱きしめてくれた彼に
ゆっくりと手を回せば一層強まった腕の力に吟声を漏らす。
とりあえず、と傍にいたメイドに私の入浴世話を任せた彼は
自室で待つ旨を告げ、気まずそうに視線を逸らした。
いくら洗っても、どれだけ流しても。
消えない感触に、止まらない体の震え。
拭えぬ嫌悪感をそのままに部屋へ戻れば、
待っていた彼は何も言わずに私をまた抱き締めた。
「……いて」
「え……?」
「抱いて、レオ」
「!!」
無自覚にも漏れた私の声を聞いたレオは
体をビクつかせて、ゆっくりと私の体を離した。
あの男たちの、匂いも、感触も。
全部全部、貴方で無くして欲しい。
潤んだ瞳のまま伝えれば
私の顔を見つめた彼は私より泣きそうで。
「いい、のか」
「お願い、消して欲しいの、全部、消して」
貴方で、“上書き”して――――
いつかに言われたそれを震える声で告げた。
【女が欲することは、神が欲する】
Ce que femme veut, Dieu le veut.
(他に言うことなんて、沢山あったのに)
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる