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VI.新たな世界の幕開け【心機一転、一新紀元】
À vieille mule, frein doré.
しおりを挟むびしゃっ。
次の日も薔薇園でティータイムを謳歌していると、
そんな効果音と共に冷たい水が足元を汚した。
突然のことに目を丸くして
じんわりとドレスの裾を濡らしていく足元を
呆然と見つめていると。
「ごっ、ごめんなさい!
まぁ、どうしましょう、素敵なドレスが……」
声を荒らげたのは水差しを持った、一人の女の子。
私と同い歳くらいだろうか。
栗毛色の髪をふんわりと巻いた、
赤茶の瞳を持つ、愛らしい女性にぼうっと見惚れた。
顔を歪めて不安そうにする彼女にハッとして声を返す。
「いえ。お気になさらないで。
洗えば落ちますから」
「マリア!」
大丈夫だと言ったのに何故か私の声を無視して、
彼女はメイドと思われる女性を呼び寄せる。
「彼女をお部屋にお連れして。別のお召し物を」
「あ、いや、本当に私は、」
「いけません。このくらいさせてください」
その言葉の強さにぐっと押し黙った。
そして、その有無を言わさぬ圧力に察する。
……この方も、きっとどこかの御令嬢ね。
「……ありがとう、ございます」
「いえ。こちらこそ、本当にごめんなさい。
私が前を見ていなかったばかりに」
「とんでもない……」
圧力に弱い私は、
まんまと彼女のお召し物をお借りした訳だが。
別に、部屋に戻ればあるというのに。
気を悪くさせるのもなと変に気を遣って礼を申し上げた。
「お名前を、教えて頂けますかしら?」
「あ、私は……アリア、と申します」
「アリア……?」
私の名を告げると、
彼女は柔らかく笑っていた表情を崩してすんと笑みを消した。
……何か、変なこと言ったかしら。
「あの、何か……?」
「あ、いえ。なんでもないの」
「そ、そう……失礼ですが、貴女は?」
お名前を伺うと、
彼女は笑みを取り戻し凛としてドレスの裾を持ち上げた。
「私は、アリシア。
ハリス・アリシア=ミラノ・ハウべルと申します」
どうぞ、仲良く、してくださいね。
彼女は、美しく笑った。
【老いた牝らばに金の轡】
À vieille mule, frein doré.
(彼女の笑みが、真っ直ぐ見られないのは何故かしら)
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