俺様奴隷と美しい恋をする為に茨の道を参ります

Ⅴ.形を変えても愛は変わらず【海誓山盟、青天霹靂】

Bon sang ne peut ne saurait mentir.

「な、なんの、真似を……答えなさいオオトリ！！」



　ここまで私と同様、
唖然として見守っていた母様が声を荒らげた。



「なんの真似、とはどういう意味でしょうか」

「しっ、しらばっくれるな！！
私の憲兵に剣を向けた挙句、
奴隷の言いなりになるなんて……恥を知りなさい！！」

「……御言葉ですが、奥様。
恥を知れと仰るのであれば、それは貴女様の方です」

「は……！？」



　目を見張ったまま動かなくなった母様を前に
レオは確かに口角をあげた。


そして、



「ハッ……ハァーッハッハッハッ！！」



天を仰いで、高笑う。



「……ざまぁねぇなぁ。
侯爵家の名が泣いて呆れてるぜ」

「なっ……！！　何様のつもりなの貴方！！」

「貴様こそ口の利き方に気をつけろ、莫連女」



　人が変わったように母様へ圧をかける彼は
今確かに、母様を見下した。


自分に向かって汚い言葉を吐いた
レオの顔を見据えながら母様は口を噤んで。


一度大きく深呼吸をしたオオトリが
意を決したように口を開いた。



「……彼は国民皇帝が父。

第一王子は
アレクサンドラ・レオ＝シャルル・リルベート様にあられます」

「第一、王子……っ！？」



　母様が目を剥いたのと同じように
目を見開いてゆっくりと彼の顔を見た。


第一王子は、ここまでその顔を明かさないとして
謎めいていたせいで気付く由もなかった。



それが、まさか彼だったとは。



　そして、痛感する。

彼の捨てきれない気品や高貴さは
ここから来るものだったのだと、全てを嚥下した。



「そ、んな……嘘よ！！　だって、お前は……」



　途中まで言いかけて声を震わせた母様を見たオオトリは
小さくため息を吐いてレオに跪く。



「……だ、そうですが。
どうなさいますか、レオ様」



　オオトリが、跪いたまま声を落とせば、
彼は青い瞳を妖しく光らせて。



「殺せ」



　冷淡にも、言い放った。






【良い血は嘘をつけない】
Bon sang ne peut ne saurait mentir.

(あぁ、なんて神は残酷なのでしょう)