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第89夜 シミ

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私は古着屋巡りが趣味で、その白いコートを買ったのは3年ほど前のことでした。
そのコートは有名なブランドものだったのですが、内側に小さなシミがあるとのことで破格の値段で売られていました。
シミは醤油がはねたような茶色っぽいもので少し目立ちましたしたが、外からは全く分からなかったし、その他は状態もすごく良いものだったので、初めはとても気に入って着ていました。
しかし、私はだんだんとそのコートを着るのが嫌になっていきました。
なぜかって?
日を追うごとにシミが大きくなっていくような気がしたからなんです。
最初は数ミリくらいの大きさだったシミが、最終的には握りこぶしくらいの大きさになっていました。
私はさすがに持っているのも気持ち悪くなり、親戚の紹介で有名な祈祷師さんの元にコートを持っていきました。
「あー、これは凄まじいものを持ってきたね」
祈祷師さんはそう言って、コートを引き取ってくれました。
祈祷師さんの話によると、そのコートの最初の持ち主は既に亡くなっていて、とても強い恨みを持って亡くなったので、持ち物に念が染み込んだんだそうです。

今も古着屋にはよく行っているのですが、実は数日前にある古着屋でそのコートが売られているのを見たんです。
同じ商品なだけかなと思ったのですが、
『内側にシミ有りの為、値下げ対応可』
と書かれたポップが付けられていたので、あのコートだと確信しました。

何故あのコートがまた売りに出されていたのかは分かりませんが、内側に小さなシミのある白いコートには、皆さん気をつけてくださいね。
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