【BL】無口漫画家さんと。

編集者さんと。

１７話 病院

（飛雅side）



翌日。




｢…まあ、そうはなるよな………｣






風邪移った。







｢３８度か……病院、行った方がいいかな………｣






そこまででは無いんだろうけど、薬貰いたい。




会社に休みの連絡をして着替えた。





（いや俺が悪いよな……拒むべきだったんだ、いくら杏里が可愛くて天使だからって………）





…あんな長時間一緒にいたら、仕方ない………





（杏里になんて言おう）






色々考えながらマスクをして病院へ向かった。








ーーー




｢ありがとうございましたー｣




少し寝れば治る風邪というので、薬だけ貰ってきた。





（…それにしても、） 






もう帰ろうかと思ったけど、一度ふりかえって顔を上げる。






（このクリニック、…大学病院の敷地内にあるんだよな………）






この辺りで一番大きい大学病院。





俺が来たのはその中の小さなクリニックで、大学病院の方に用はなかったけど、




敷地の中にはクリニックだけじゃなく、公園とか噴水広場なんかもある。





（…ちょっとふらふらするし、少しだけ休んでから帰ろうかな………）






…本当なら早く帰るべきなんだろうけど、無事帰れる気もしない。





公園の隅のベンチに座らせてもらった。







（……のどか………）








…天気が良くて、外では子供が遊んでいる。






（大学病院の、小児科の子達かな）







服装を見てはそんなことを考えつつ遠くからぼーっと眺めていると、








（…あの中心にいる白衣の人は、……先生か何かだろうか）








なんとものどか、平和を感じていたら、段々眠くなってきた。








（帰って寝たい………瞬間移動…したい）








……うとうとしていたら、









｢ごめん、ちょっと休憩……先生疲れちゃった｣








…さっきまで遠くにいた白衣の人が、何やらこっちに来た。







（ん………？）









………なんでこっちに、







不思議に思っていたら、











｢…………こんにちは。｣










……声を、かけられた。













｢………んぇ、？｣











ーーー




｢こんにちは。隣いいかな。｣





…声をかけられた。白衣の人に。






（……わ、顔が良い）







眠くてそんな事しか考えられなかった。




腰まである長い黒髪を一つに結んで、目は片目だけ少し前髪で隠れているようなちらちら見えるような、…とんでもなく美人。





（…でも、男の声だ）









……………ぁ、







｢あ…どうぞどうぞっ｣








聞かれてるんだった。




長髪の男は微笑むと、隣に座った。






｢子供って元気だよね……、流石に僕の体力じゃ追いつけないや｣







…僕っ子。ていうか話しかけてきた………







｢そ…ですね、…あ、すみません俺ちょっと風邪気味で、移るかも………｣

｢…そうみたいだね、じゃあ少しだけ距離を取ろうか。｣







……取られた。仕方ないけどちょっと残念。








（………それに、しても）









こんな美人、どこかで………………









…何となく見覚えがあって考えていたら、首からかけた職員証の名前が見える。










｢……………え、｣









…もしかしてこの人、









『鈴鹿』








……………











｢……ッ、杏里のお兄さん……………？！｣