上 下
7 / 21
編集者さんと。

4.5話 過去の悪夢【※】

しおりを挟む


【R18】スキップ可

痴漢、胸糞注意。



ーーー


(杏里side)




あの頃の感覚が忘れられない。





ある日の登校中の事だった。








「…………ぇ………?」





電車の中で、つり革を掴んで立っていたら、後ろから誰かに触れられる感覚があった。






その感覚は気の所為では無くて、







「静かにしててねぇ……、って声出せないか」






…知らない男の声だった。




背筋が凍るような、体が動かなくなってしまって、








「…トイレ行こっか?」









抵抗するすべもなく、電車を降りてすぐにトイレに連れて行かれた。








学校の最寄り駅で、他の生徒も沢山いて、







誰か助けてって、何度も声を出したのに、








「……っ……れか…、……けて、」








それまでもずっと自分を苦しめていた自分の声は、こんな時ですら苦しめてきて、







僕の声は誰にも届かなかった。










ーーー


人気の無い駅の中のトイレに無理矢理連れてこられて、個室の鍵を閉められた。




助けてなんて、今更言っても遅くて、





掴まれた腕も、触られた体も、





全部全部気持ち悪くて、








「………ッ嫌…、」








誰かが助けてくれるなんてことは無くて、







………現実は、物語みたいに上手くいかないから。







「言う事聞いたらちゃんと生徒手帳返すからさぁ………」







…本当に、上手くいかなくて、









助けてくれる主人公なんて居ない、









「……ひッ、」

「杏里君、初めてだよね…?言う事聞けば酷くしないから」






酷くしないなんて、そんな訳なくて、







「ぇ…、まって………痛い、」







十分に慣らしてくれる訳でもない、







逆らったら頬を殴られた。








「は…入んない、……いや…やめて、」






触ったことも無いから入る訳ないのに、無理矢理、こじ開けるように、







…痛くて、









血、止まらなくて、









「杏里君は大人しくていいね……ずっと見てたんだよ、こんな事出来る日が来るなんて」






何も聞こえなかった。






ただ………痛くて、気持ち悪くて、怖くて、








無意識で今はもう会えない幼馴染の名前を何度も呼んだ。







…その度に殴られた。








ーーー




「はーい、それじゃあ自己紹介して?」

「…ッもうやだ……家に、……ッ!!」





動画を撮られて、嫌だと言えば髪の毛を掴まれて頬を殴られた。






「はぁ……ッ、はぁ、」

「あれ…もうこんな時間。完全に遅刻だねぇ」






「じゃあもういくら遅くなってもいいよね」なんて、






「はい自己紹介!しないともっと痛くするよ?」






の瞬間を動画に撮られた。








「……ッ……、…ずか………ん…り、」

「はぁ?!何聞こえないんだけどッ」






男の怒鳴り声に思わず肩が跳ねた。







「す…鈴鹿杏里、……ッ」

「杏里君、年齢は?」






…怖くて素直に言う事しか出来なかった。







「じゅ………17、」

「いいね~、今から何するのかな?」







もう、壊れてしまいそうで、








「………ッ…ぁ……、」







男のソレが触れた時、恐怖で吐いてしまいそうだった。






入る訳ない、裂けるに決まってる。







「ぃ…嫌ッ!!入んない、お願い、やだ、…ッ!!」






弱音を吐いたらまた殴られた。







(どうしていつも……僕ばっかり、)







虐められるのも、声が出ないのも、









なんで、なんで全部、…僕ばっかり、








助けて欲しかった……誰かに、










(飛雅…………に、)












……でも、叶わなかった。










「……すずか…あんり、17歳、



今から、この人と………、…せ…っくす、します……。」








………上手く、声が出なかった。






震えていて、小さくて、








「………ぃ"ッ、」







…入ってくる、気持ち悪いのが、冷たいのが、






はち切れそうで苦しくて、でも弱音を吐いたら殴られるから、







(なんで……僕、いつもこうなんだろう)






気が弱いから?力が無いから?







………声が、出ないから?










…劣っている自覚はある。誰よりも、僕に下なんていなくて、






誰にも逆らえなかった、殴られてしまえばすぐ、何も言えなくなるから。







従順で誰にとっても都合の良い存在だった。







「ずっと大事にするね……勿論、誰かにバラしたらこれもバラすからね?」






何だかもう全部どうでも良くて、







………でも、それでも、







(きっと許してくれない……は)









…壊れてしまいそうだった。









ーーー




「………ッ嫌!!」







今でもたまに、あの時の夢を見る。







触れられた場所、全部、汚くて、








寝ても起きていても、何も変わらなかった。







鳴り響く電話の音に怯えて、










今日も部屋の隅、ただ震えている事しか出来なかった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Siūlas

胃の中
BL
Siūlas-シューラス きっともう出会うことのない、ふたりの話。

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

処女姫Ωと帝の初夜

切羽未依
BL
αの皇子を産むため、男なのに姫として後宮に入れられたΩのぼく。  七年も経っても、未だに帝に番われず、未通(おとめ=処女)のままだった。  幼なじみでもある帝と仲は良かったが、Ωとして求められないことに、ぼくは不安と悲しみを抱えていた・・・  『紫式部~実は、歴史上の人物がΩだった件』の紫式部の就職先・藤原彰子も実はΩで、男の子だった!?というオメガバースな歴史ファンタジー。  歴史や古文が苦手でも、だいじょうぶ。ふりがな満載・カッコ書きの説明大量。  フツーの日本語で書いています。

叔父さんと一緒♡

らーゆ
BL
叔父とショタ甥がヤッてるだけ。ガチのヤツなので苦手なひとは回避推奨。

ひとりぼっちの180日

あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。 何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。 篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。 二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。 いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。 ▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。 ▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。 ▷ 攻めはスポーツマン。 ▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。 ▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

イケメンリーマン洗脳ハッピーメス堕ち話

ずー子
BL
モテる金髪イケメンがひょんな事から洗脳メス堕ちしちゃう話です。最初から最後までずっとヤってます。完結済の冒頭です。 Pixivで連載しようとしたのですが反応が微妙だったのでまとめてしまいました。 完全版は以下で配信してます。よろしければ! https://www.dlsite.com/bl-touch/work/=/product_id/RJ01041614.html

騎士団長が民衆に見世物として公開プレイされてしまった

ミクリ21 (新)
BL
騎士団長が公開プレイされる話。

処理中です...