【BL】無口漫画家さんと。

あまみや。

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編集者さんと。

7話 理都と杏里

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「改めてこの小さいのは如月理都、俺の同期」



とりあえず争いはおさまった。




「鈴鹿先生こんにちは!俺っ、如月理都って言います!」




未だに毛布にくるまって隅で怯えている杏里に自己紹介した。




「っ………ぁ……、」
「来る前何も言わなくてごめんな、無理矢理来たいって言われて」
「無理矢理は言ってないぞ!あと俺小さくない!」



「ていうかそれだと鈴鹿先生も小さいだろ」
「杏里は辛うじて170cmあるから」
「俺だってあと1cmあr」



なんてまた争いが始まりそうな時、





「っ………」





…杏里が苦しそうだった。






「あ……、ごめん、息苦しいか?薬………」

「………」





前みたいに薬を、なんて引き出しの方に振り返った途端、






「…鈴鹿先生!大丈夫、」






………理都が杏里の前に座って、手を握った。







「………ッ、」






そしてそのまま優しく微笑んで、






「大丈夫……大丈夫だから、ゆっくり息出来る?」





しっかりと杏里の目を見て、





「…っ、……はぁ…っ、」
「……心臓の音、聞くといいんだって、…俺の聞こえる?」




…俺はただ見ていることしか出来なくて、





「うん…うん、大丈夫、それで良い……、


…うん、落ち着いたな」






気付いた頃にはもう、杏里の呼吸は落ち着いていた。





「……!」
「理都……どこでそんな技を、」
「へへ、大学生の時にちょっとな、鈴鹿先生、大丈夫?」





少し嬉しそうに頬を緩ませた後、呼吸も落ち着いて驚いている様子の杏里に視線を移す。




「……、…」




杏里はこくん、と頷いて里都から目を逸らして、





「すごいな、里都がいれば薬いらないんじゃないか?」
「それは駄目…もっと酷い時は流石に薬じゃないと、」





でもとにかく、理都がいてくれて良かった。



……まあ、過呼吸の原因は理都だったりもするんだけど。






「俺鈴鹿先生と仲良くなりたくて、っあ、でも無理にとは言ってないぞ!」




「あのなー……」なんて呑気な声を出しては自分の荷物をゴソゴソと漁って、






「…はいっ!鈴鹿先生、甘いもの好きだって聞いて!」





……来る前にコンビニに寄って買ってきてたコンビニスイーツを取り出した。






「…!」
「あ、鈴鹿先生栗食べれる?モンブラン美味しいぞ」




理都なりに距離を縮めようとしてくれているんだろう。





(担当になるのは嫌だなんて言っておいて……結構優しいんだな)







…なんて思ってにこにこしてた。







「………っ、」





杏里も甘いものには逆らえないらしく恐る恐る手を伸ばしては小動物みたいに、




「はいどうぞ!」



「……っ、…ぁ……あの、




………ぁ…ぁり、…がと、………」








………ずっと理都から目を逸らしていた杏里の視線が、初めて理都の目に向いた。







「ううん、一緒に食べよ!」







ーーー




「鈴鹿先生って甘いもの以外で何が好きなの?」
「……ぇ…えっと、…オムライスとか……ハンバーグ………とか…、」




…杏里が会話してる。俺以外の奴と………





「あ、俺も好き!子供の頃よく食べてたなぁ」
「杏里味覚が完全に成長してないから……、…酒は飲めるの?」





…お酒、杏里と飲んでみたい。






「………少しだけなら」
「へぇ…誰が一番強いかな、試してみよっか」





「飛雅……大丈夫なのか?」
「うん?俺買ってくる、すぐ戻ってくるから」





理都の言葉を深くは考えず、杏里を待たせないよう急いでコンビニに買いに行った。






「大丈夫かなぁ……飛雅」
「…?」

「……あ、何回か一緒に飲んだことあるんだけどさ、…飛雅………その、」







ーーー



「コンビニで買ってきた!好きなの選んで!」



体育会系の全力ダッシュー…☆




「……2分くらいしか経ってないな」
「杏里と理都2人にするの、杏里可哀想かなって!」
「俺の扱い………」




それぞれ好きなお酒を手に取る。




「…飛雅はこっちの弱いのでいいんじゃないか?」
「え……それじゃ俺がお酒弱いみたいじゃん」
「……いや………」




でも言われた通りに貰った。





「杏里は?レモンサワーあるよ」
「……ん…、これでいい。」




杏里もそこまでアルコールの入っていないもの。




「俺はこれでいいかな…あんまり酔うと帰るの大変だし、軽いので」

「よし、じゃあ乾杯しよ!」





……乾杯して、それぞれ飲み始める。







(…嬉しいな……、…杏里とお酒飲めるなんて)





飲めるだなんて、思っていなかったから。






……叶うならこのまま、ずっと一緒にいられたら、







…………









(あれ…………)









………なんか、








「…飛雅………?」






ふらふらする………、意識が、






「っ………」
「飛雅…大丈夫か?もう、「…~~」…え?」





………ッ、











「…ッ杏里、好きだ!!!」












…………






………







「……飛雅…?」
「………」







…2人のぽかんとした顔、それでも続けていた。







「杏里っ…、俺の杏里……ッ、めちゃくちゃ可愛い俺の天使……ッ」
「飛雅、大丈夫か?水飲む?」


「…ッ、なんでそんなに可愛いんだよ前世で何したらそんなに可愛くなれるの?!!もはや大罪ッ」
「………水、飲めほら」



「あ"ぁ"ぁ天使ッ天使超えて神、今すぐにでも結婚したいていうかもう子供欲しいッ」
「落ち着いて…まず恋人からな?」






………






「す…鈴鹿先生、助けて………」
「………



…………ふぇ……?」







そしてまた理都を困らせる者。







「お願い…飛雅を止めて、こいつそのうち子供は何人が良い?とか言い出しますよ、」
「杏里ッ、俺はサッカーチーム作れるくらいでm」
「………」





……なんかもう記憶が、






「………飛雅……、




…えへへ……、いいよ、結婚しよ、?」








………そして更なる爆弾投下。








「…あ駄目だこっちも酔うと豹変するタイプだ」
「よしっ、そうと決まれば早速指輪ッ、婚姻届も必要だな!!」
「あ、いいよまだ……酔いが覚めてからにしなよ」






…………








(飛雅……お酒めちゃくちゃ弱い癖に酔うと本音が出ちゃうんだよな………)









その後も酔い続けた。







ーーー


おまけ…



「杏里って甘いものあげれば懐くの?案外チョロい?」
「…飛雅の知り合いじゃなかったら、こんなにチョロくは…ない…はず……多分。」




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