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◇新着◇
【その他】来年も
しおりを挟む今年は思うように書けなかったので来年こそ……………
ーーー
(澪side)
「お疲れ様でした。来年もよろしくお願いします。」
12月28日。
(仕事納め………)
今年の仕事が終わり、挨拶をして会社を出て、
「……双葉、来年は4日からだからな、出勤忘れるなよ」
「大丈夫、ちゃんと起きる………、…来年もよろしくね、中野。」
同期と途中まで一緒に帰っては分かれ道で別れて、
(帰り買い物行かないと………美優におつかい頼まれてたんだ)
1人でスーパーに寄って、
「…………あ、」
外に出たら雪が降っていた。
(雪降ってきちゃった…早く帰らないと………)
家まで少し距離がある。
買い物袋と会社の鞄を持って、少し駆け足で家に向かった。
ーーー
「……っはぁ…、」
しばらく走っていたら体力の限界が来てしまった。
(疲れた………歩こう)
荷物が重くて疲れるのも早く、とぼとぼ歩いていたら、
「………!」
携帯の通知が鳴った。
「…ぁ、」
それは…優馬からのLimeで、
(そういえば皆年末帰ってくるんだった…………)
もう帰ってくるのかな、なんて思いトーク画面を見てみて、
『今大丈夫?電話しない?』
…電話のお誘いだった。
買い物袋と鞄を片方の肩にかけてもう片方は開けておいて、『大丈夫』と返して電話をかけてみると、
『もしもし!』
…………1コールもしないうちに繋がった。
「あ………もしもし、優馬…?」
『澪、今何してるの?』
聞き慣れた声に何故か少し安心していて、ゆっくりと夜道を歩く。
「仕事帰り…、寒い………」
『そっか、大丈夫…?』
「大丈夫」と頷いて街灯の灯りを頼りに道を歩いて、
『もうすぐ今年も終わるなぁ…、今年はあんまり会えなくて寂しかった』
「…ん……僕も仕事、忙しかったから。」
…僕は仕事、優馬は専門学校、
高校生の頃は当たり前のように毎日顔を合わせていたのに、進路が別れてしまえばこんなにも会えないものなんだと、
(寂しい、か………)
……そんなこと、無いと思ってたけど。
(言葉に出して言われてみると、…意外と)
………………
…………
「優馬」
『ん?』
……意外と…、
「…僕も………寂しかった、…かも。」
……………なんだか恥ずかしくて、声が小さくなってしまった。
…聞こえるか聞こえないか、ギリギリのところだったけど、
『ッッう"』
「優馬?」
なんか汚い声が聞こえた。
『ッ…ごめんごめん、ちょっと吐血しただけ………』
「え……大丈夫、?なんで…………?」
たまに優馬が怖い……………
「早く会いたいな……優馬にも、皆にも。」
『………、…そうだな、』
……………本当は、少しだけあの頃に戻りたい。
毎日色んな事があって、辛い事もあったけど何よりも楽しかったあの時に、
………仕事とか、社会人とか、2年目になっても全く慣れなくて
今着ているスーツですら、自分のものではないような気がしていて、
(生きづらい……………)
………本当は…今すぐにでも、
「……………会いたい…………………」
………雪の降る夜に、白い息と同時にそんな事を呟いてみた、次の瞬間。
…当然、目の前が真っ暗になった。
「……………!」
どうやら、角を曲がる人とぶつかったみたいで、
お互いぶつかってしまっては自分よりも高い背に負けてしまい、僕の方が後ろに倒れてしまった。
「………っ!」
……………でも、その人は転びそうな僕の手を掴んで、
ぐいっと、自分の方へ引き寄せた。
「……………!」
……………どうしてか、その人物には見覚えがあって、
「ぁ……………、
………優馬…………………」
………僕の手を取ったのは、今ちょうど電話をしていた恋人だった。
優馬もそれに気付いてはそのまま僕の体ごと引き寄せ、抱き締めて、
「……ッ、久しぶり…!!澪……………
ッ!!」
……息も出来なくなるくらい強く抱き締められてはよく響く声で僕の名前を呼んだ。
「優馬………!どうして…、」
「今帰ってきたんだぁ……、びっくりさせたくて、でもまさかここで会うなんて……………」
………………
「びっくり……した」
「えへへ、ごめん…、ひさしぶ………、」
………咄嗟だった。
「……!」
「寂しかった…会いたかった………」
………優馬を強く抱き締めていた。
「澪……………」
「…っ……ぁ、」
すぐ我に返って恥ずかしくなって、
ばっと離れて逃げようとしたら捕まって今度は優馬から抱き締めてきた。
「っや……、待ってここ外、」
「好き…大好き、俺もずっと会いたかった………」
………っ、
「恥ずかしいから………!!」
………こんなの、耐えられない……………
雪で寒かったはずなのに、どうしてか今は身体中が暑くなってしまっていた。
ーーー
31日夜。
「今年も皆で集まれて良かったな!」
今年は僕の家集合だった。
「皆さんお久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」
「美優さんも元気そうで何よりです、髪伸びましたね!」
妹の美優も今年で高校2年生。
「美優さんは来年受験ですよね、頑張って下さい!」
「ありがとうございます優馬さん、…優馬さんも、」
…僕に聞こえないところで、美優が優馬に耳元で何か言ってた。
「……っ、美優さんそれは…、まだ学生ですし、」
「卒業してからですか?楽しみにしてます。」
……何話してるんだろう。
「澪、澪はまだお酒飲めないよね」
「郁人…、……うん。3月までは。」
早生まれあるある、この年は同級生と一緒にお酒を飲めない。
「だよね…、来年は一緒に飲もうね」
「うん、やくそ」
「一緒に飲んで酔い潰れてピ-ッでアピ-ッなことしようn「やっぱりしない………」……えー……………」
……………
ちなみに僕と海斗(と美優)が飲めないから、他の3人も飲んではいない。
なので今年は美優と優馬、郁人が作ってくれた美味しい料理を食べて、年越しまでの時間を過ごしてる。
「海斗、これ食べてみて!すっごく美味しいぞ!」
「…ん、ほんとだ、美味しい………!」
…あの2人は本当に仲が良くて、
「未来斗、大学楽しい?」
「…ん?楽しいぞ!海斗といつも一緒にいられるし!」
「……いつもでは無いけど、まあほとんど一緒だよな…………」
未来斗は今年、一年遅れで受験をして今年から大学生になった。
海斗と同じ大学で、毎日楽しい…らしい。
「でも勉強難しい………全然分からない…………」
「…大丈夫、俺と同じ学科なんだし、分からないところは教えるから」
………本当に…仲が良い……………
「皆さん、そろそろ年越しそばはいかがですか?」
「あ、もうそんな時間か………俺手伝います」
………あと30分。
出てきたえび天入り年越しそばを食べながら、少しそわそわした気持ちで年越しを待っていた。
……食べ終わった頃、優馬が隣に来て、
「澪、来年もよろしくな」
「…ん、うん。………っ、」
………突然、手に何かが触れる感じがして驚いた。
「……優馬………」
「…ごめん、もう少しだけこのままがいいなー………」
……………っ………、
コタツの毛布に隠れた誰にも見えないような場所で、重ねるように手を繋いできて、
「……嫌?」
「…っ……………嫌じゃ……ない、けど」
……少しだけ、…いや、かなり恥ずかしい。
周りにバレたら笑われてしまうだろうか、からかわれてしまうだろうか、
………そんな事無いとは分かっていても、やっぱり恥ずかしくて、
(落ち着け……落ち着け、)
顔がすっごく暑い………、
………でも、
(不思議と、嫌では無い…かも)
………少しだけ、居心地が良かった。
僕ももう少しだけこのままでいたいって、それはまだ言えなかったけど。
「…っ、来年もよろしく」
「……!うん、よろしくな!」
まだ冷めやまない居心地の良いこの熱が、来年もまた、続いてくれる事を願った。
ーーー
来年もよろしくお願いします!
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