ゆうみお R18 お休み中

あまみや。

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早苗優馬

後悔

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郁人×優馬
優馬と澪付き合ってる
郁人side



ーーー



「………ただいま」



家にはもう帰りたくない。



だってあの人がいるから、もう僕はあの人の顔も見たくないのに。




それでも課題もやらなきゃいけないしお腹だって空いた。その欲求を満たす所はここしか無いから。




「んーーッ、んん"!!」
「……あぁ…ごめん、先に手を洗わないといけないから」



着替えたいしご飯も作りたい。……先に風呂に入っておけばまたつなぐ手間が省けるかも。



「あと1時間……、いや1時間半待ってて?ていうか床汚したなら後で自分で片付けてね?」



尿とか精液とか、床にカーペットを敷いて、さらにその上にダンボール。新聞紙も何枚も敷いておかないと下の部屋の人に迷惑がかかるかもしれない。



でももうダンボール無かったっけ、明日買ってこないと。





ーーー



1時間半が過ぎた。



「さて……そろそろ解いてあげるか」



まだ濡れて水が落ちてくる髪をタオルを首からかけることによって防いで、目の前の男の手錠を外した。



猿轡と目隠しも玩具も外すと、あんなに綺麗だった顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。



「っ………はぁ、はぁ」
「随分辛そうだね、途中から電池切れてたしそこまで苦しくはないでしょ?」



冷え切った目で目の前の男を見下ろした。

いつからこんなに冷めてしまったのかは覚えていない。




「………」
「ねぇ、おかえりは?僕帰ってきたんだけど」



俯いて目を合わせないから、躾も含めて頬を叩いた。




「あ"……ッ、やめ"、やめて、ごめんなさい」
「……ただいま。優馬」




すごく震えた「おかえりなさい」という声。



「ご飯食べよっか」
「……はい」




今日はハンバーグ。



「優馬ハンバーグ好き?好きかと思って作ったんだけど」
「あ……えっと、」



ずっと下を向いて僕と目を合わせようとしない。その態度が嫌い。




「………生意気なフリしてた癖にちょっと壊せば本性現すんだね、つまんない」



こんなにつまんない奴だとは思わなかった。


なんで監禁なんてしてるんだろう、するんじゃ無かった。





「……澪達が心配してたよ」
「………」
「何その目……」




目つきが生意気だったからまた叩いた。





「ッ………やだ」
「ビビるくらいなら最初から反抗なんかしなきゃいいじゃん!!」




………馬鹿、馬鹿だ、どうしてこんな奴





「なんでお前なんかが澪と付き合ってるの?なんで僕じゃなくて優馬なんだよ…ッ!!」





僕はずっと好きだったのに、




「死ね……優馬なんか死ねばいい!!!」




それを軽々と奪ってきては幸せそうに、







……………大嫌い。









ーーー



「優馬……大丈夫かな」
「きっと大丈夫だよ、今日もお見舞い行ってくるから」



毎日毎日学校ではそう嘘をついて、家に帰ったら優馬に当たる日々。



それが今では当たり前になっていた。





「………今日なんか反応悪いね」



でもそれも続くわけが無い。



どう考えても初めに優馬が壊れていく。





「もうちょっと太めのバイブにするか………、……これでいいや」



明らかに合わないサイズのバイブを力尽くでいれた。

裂けて血が零れてきて、猿轡してるにしろ痛そうな声が漏れている。




「………近所迷惑にならないようにしてね」




とりあえずそれをセットして、後はご飯を作り始めた。




「ん"ッ…、ん、んん"、ん"ーー………」




目隠しが涙で濡れていて、手錠の音がガシャガシャと部屋中に響く。



(さっさと壊しちゃお………下手に壊れてたりすると逆に危ないし)




明日はもっと酷いことをしよう。






ーーー


そんなある日のこと。


「ねぇ……昨日さ、優馬の家に行ったんだけど」



気まずそうに俯きながら澪がそう言った。



「うん?」
「その……優馬、行方不明らしくて」




…………面倒臭い事になった。





「郁人……いつも一体どこに「ねえ、澪」」





きっと澪は不安なんだと思う。


その不安を取り除いてあげることもきっと澪の幼なじみの僕の役目。




「優馬、今入院してるんだよ、前に階段から転げ落ちたって言ったでしょ?」




長期休暇の理由はそれでいいかな、と前に伝えておいたことがあった。


生憎優馬には親はいないし、小さい妹達でどうにか出来るはずもない。




「…………あ、そうだったんだ」




澪が安堵したようにほっと息を吐く。


単純な性格で本当に良かった。





(…………でも、むかつくな)






ーーー



「っあ"!!やめ、やめてッ、やだ!!ごめんなさい……………!!」



そのストレスのはけ口は優馬。


殴って蹴って、服に火をつけた。




「やだぁ…ッ!!消して、お願いします!!!」



火災報知器が鳴る前に消したけど、




「…………ぅ"……あ、」




その後の放心状態から絶望した目で泣く優馬に、また腹が立った。




「優馬が悪いんじゃん…………あの時死ねば良かったのに」





階段から突き落としたあの時に。




直前まで嬉しそうに澪の事を話していたあの表情が忘れられない。



後ろから突き落とした途端の一瞬驚いた表情も、一段一段転がって頭を打って、傷だらけになって、下の踊り場で動けずぐったりしていた時の表情も、




全部忘れられない。





(あの時死ねば良かったのに…………優馬も、僕も)




そうすればこんな苦しい思い、もうしなくて済んでたのに。





「…………馬鹿」







ーーー



数ヶ月後。



優馬はもう何も喋らなくなった。


僕も飽きてしまって、今では手錠だけして後は何もせず、放置してる。


髪も伸びたし前までの雰囲気は無くなって、可哀想なくらい虚ろな目をして隅に座っている。


……まぁ、たまに漏らすからダンボールはまだ必要だけど。




「今日のご飯どうしよ………」
「…………ぁ"、」



考えていたら、久しぶりに優馬の声を聞いた。




「うわ、どうしたの?いきなり」
「……の、……おれ"」




声がだいぶ枯れている。

風呂に入れているのにどこか汚さすら見える。




「リクエストある?何でもいいよ」



リクエストなんて今までされたことも無いけど、



少しだけ目に光が入った。




「あ…………、……じゃ…




ハンバーグ………」






………………






「好きなの?」
「……うん」
「そうなんだ」



じゃあそれでいいか、と冷蔵庫を確認して、材料もあったので作ることにした。



ーーー



「美味しい?」
「うん、美味しい」



きっと今の優馬は本性。


前に仙台で話してくれた中学までの気弱な方だと思う。



(こんな感じだったんだ………本当は)




初めからこれだったら、きっと澪も奪われなくて済んだ。



そう考えるとやっぱり腹が立つ。




「澪が心配してたよ、ずっと」
「……そうなんだ」




…………





「……つまらないね」




それには何も答えてくれなかった。







ーーー



「…………何見てんの?」




部屋の中でなら自由に歩き回れるようにした。

逃げる様子も無いし、もう演技もしてない。




「……外」
「家と道路だけじゃん、……何、出たいの?」



少し脅えた様子で首を振った。




「…あ”、……澪は、平気?」




初めて質問された。





「優馬なんかに教える価値ない、優馬はここで死ぬんだから関係ないよ」




きっと優馬はここで死んでく。


誰にも見つけられず、勝手に。





「…………」
「……何か、大丈夫?」
「……何が…?」




大丈夫なんて聞かれると思わなかった。




「なんか……疲れてる」
「…別に、疲れてなんかないよ」






見抜かれてるとも、思わなかった。








ーーー






……………………





…………………………








(あれ………僕、なんで)




「優馬……待って、なんで外なんか見てるの?」
「………別に…?」




おかしい。




何日も何日もこの部屋で優馬と過ごして、段々こっちまで壊れてきた。




「何…?俺がいなくなるの、怖い?」
「ちが……、そんなわけ」
「じゃあ、俺が怖い?」






……………………





(…………そうなのかな)






段々主導権を奪われていく感覚がした。







ーーー



「郁人、俺今日はシチュー食べたい」
「あ……うん、分かった、買ってくるね」



言われるがままに外に出た。



それが試されているとも知らずに、






数時間後帰った時、部屋に優馬はいなかった。




「うそ……まさか、」




ベランダの窓は開いていない。玄関の鍵も閉まっていた。



きっとどこかにいる。隠れているだけ。





それなのに…………分かっていたのに怖くて、必死に探していた。






「優馬……どこ…………?」







探せるところは探した。



寝室も、ロフトも、風呂も、台所もリビングも。


後は…………




(…………あ)





ーーー


「ごめん……お腹痛くて」



トイレを探していなかった。

気付いた途端、トイレのドアが開いて優馬の姿が見えた。




「……うそ」
「は?」
「………してなかったでしょ、流してない」
「……」




ずっと隠れていた。


それが怖くて、




「なんで隠れたの…?!優馬がいなくなったら僕、「僕?」……ッ?」




おかしい。












「あ…………えぅ……、」





肩が震える。





「うそ、こんなはずじゃ、なんでどうして、」
「怖い?俺が怖いの?郁人。」



膝をついて俯く僕を、優馬は上から冷たい目で見ていた。




「ちが……そんなんじゃ、」



顔を上げて優馬の目を見て、綺麗な目に思わず体が動かなくなった。






「あーあ………こんなものかぁ」
「…?優馬、何、」






今の優馬は違う。



昔の気の弱い優馬でも、僕達の前で作っていた高校での優馬でも無い。







……………違う人。








「お前は俺には勝てないんだよ、ばーか」








嘘だ。違う。




優馬は僕が…………………








「………………つまんないね。」









絶望する僕を見て、優馬が笑った。













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