ゆうみお R18 お休み中

あまみや。

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雪島真冬

再アップ 薬

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以前書いたものを再アップしたものです。
個人的にオチが微妙なのでラインをはっておきます。
※李世のキャラ崩壊 クズ サイコパス



ーーー


夢だと思いたかった。

夢であって欲しかった。

「…っ。」

出されたミルクティーを飲んだ直後、何も考えられなくなって、恐ろしい快楽に襲われた。

動揺で平常を隠すことが出来なくなって、思わず手にしていたカップを落としてしまう。

「……ぅ」

「真冬?大丈夫?」

友人……李世の声が聞こえにくい。
視界も霞んでいって、モヤが見えた。

(……あ、これ………)




まずい、と思った時には遅かった。
床に倒れ込んで、けど意識が飛ぶことは無かった。





「…!、……っ…」

気持ちが良い、おかしくなるくらいに。
寒気がした……。



「……真冬、大丈夫?」
「……っん…」

鼻血……?

「あ……ようやく薬が効いてきたね。」

……?

「……り……せ」

意識が……飛びそうになる。

「………っ…!!?」

ビクン、と体が勢いよく跳ねた。



「あ……もしかしてもうイッちゃった?それにしてもなかなか声出さないねー。」

倒れたまま動けない僕の前にしゃがんで李世は見下ろしてきた。

「……っ、ぁ…た…すけ、て……」
「ふふ、ベッド行こっか?」








……りせ?


無理矢理手首を掴まれて、そのままベッドに投げられる。


「っ……!」

りせが…………怖い。

「今飲ませたのは、いわゆる違法ドラッグってやつ……?美味しかった?」

いほう、どらっく………




………





「え…………」

李世は笑った。
けど、目は笑えていなかった。






「ボクね……1回やってみたかったんだ、『キメセク』。」

………






嘘だ。嘘に決まってる。
冗談がきつすぎる………

「ってわけだし、いいよね?」

いいわけない、やだ、やだやだ、助けて。

誰か………………






「~~~っ!!」






ーーーーー




目が覚めると……僕は李世の部屋のベッドの上だった。
「…!」

あの後、無理矢理襲われて、気を失うまで………

「……!」
「おはよ、真冬。」

そこには、さっきまで僕を………

「っ…、あ……」
しかし、彼はきょとんとした。

「どうかしたの?」






……あれ

(…………夢、だったのかな)

……安心、した。




「………かえ、る。」


安心したのに、怖くなった。
「え、うん……またね?」






ーーー




「あーあっ、見事に騙されちゃって…ほんと馬鹿だな、真冬は………。」








ーーー


次の日。




「真冬ー!実は今日の朝本屋で新しいやつ買ってきたんだ!年下受けだから、一緒に読も?」
「……」コク
「決まりーっ!じゃあ、放課後ボクの家ね!」

「……っ、…」コクン





ーー

「……ぁ」
「ん?飲まないの?真冬好きだよね?ミルクティー。」

昨日今日と出されたミルクティー。
これを飲んだ途端、意識が………朦朧として、途絶えてしまった。

「……っ」
「ん?まあいいや、ちょっとコンビニ行ってくるね!」
「……」コクン









………今だ、と思った。


怪しまれないために、僕は中身を……トイレに流した。

ーー




「ただいま!あっ、良かった、飲んでくれたんだね、不味いかと思って心配しちゃったよ~……」
「……」コクン


夢だと分かってるけど、李世が……怖い。


そもそも、本当にあれは夢………なのかすら、分からない。



(こんな怖いことばかりで……来るんじゃ、なかった……。)

もう、具合悪いって言って帰ろうかな………




『りせ、僕、もう帰る』
「え?なんで筆談………」






感じが悪いと分かってはいたけど、逃げてしまった。

いや……逃げようとした。


「……ッ!!」
「真冬……おかしいよ、本当に飲んだの?」




尋常じゃない強さで、手首を掴まれた。
「っ…、は、はなして」
「ねえ」




……っ!!






怖いけど勇気をだしてキッと李世を睨んだ。
すると一瞬、力が緩んだ。





「……!」





その瞬間、手をはらって廊下に出た。

急いで逃げようと階段を降りようと1歩降りた、その瞬間………









「………っ」





トン、と背中を押される感触があった。

「ぁ……」


足を踏み外して、そのまま………








落ちていく時、本当に一瞬だけ、

「………ばーか。」






と、不敵に笑う李世が見えた。






ーーー



「………っ、…え」


目を覚ますと同時に上半身を勢いよく起こす。
頭痛がして、部屋も暗くなっていた。

「っ……」





そして手首には、手錠……。
プラスチック製の誰でも壊せるようなおもちゃだった、でも……




「ああ、起きたの?真冬。」

部屋の机に添えられた椅子に座りながら本を読む李世、李世は僕が起きたことに気が付いてこっちを見た。




読んでいたページを開いて机に置き、ベッドまで歩いてくる。


「………真冬って面白い本読むよね、今回は監禁もの?本当にいつも…ハードなもの読んでるね?」
李世が読んでいたのは……僕がいつも学校で読んでいる本。
リュックの中から取り出したのか、自分のリュックサックのチャックが開きっぱなしになっている。

部屋の様子は……それだけじゃない。

(くす、り……?それに、注射器………)

床中に散らばる見たことも無い薬と、病院なんかによくある注射器。
なんでこんな物が………

「……ねえ、この本面白い?大人しい主人公が友達に監禁されて色んなことされて、壊れちゃう話………真冬もこんな風にされたいのかな?」

読んでいた本の内容……好きなだけで、実際にしてもらいたい願望なんて勿論あるわけない。



「…っ、ちが……」
「へー、されたいんだ!」

話が通じない。
(このままじゃ………)

改めて本の内容を思い返すと、これを現実でされてしまったら、明らかに死に至るレベル。

そんなの………






「っ……!」

その時だった……。

「あ、薬が効いてきたかな?」

(鼻血……?)


ハンカチで拭き取ってもらったけど、どうしていきなり出たのか分からない。

「あははっ、どう?変な感じする?」
「……?」




よく分からなかったけど、昨日の夢を思い出して………しかも、








「………っあ"ぁぁ"ッ…!!!」





突然、今までに感じたことの無いような快楽に襲われた。

「わあ、その薬だとイく時はかなり声が出るんだけど……さっすが真冬!でも、そんな真冬も少しは声、出ちゃうんだぁ………。」





混乱……頭がおかしくなりそうだった。






怖い、何が起こったのか分からない、なんで拘束されているのか分からない、李世がなんでこんなことをしているのか分からない、分からない、分からなくて………怖い。




「……は、はぁ…、ぁ……っ、ぁぅ"…ッ!?」





また……全身を襲う快楽。



呼吸もまともにさせて貰えない……数秒ごとに来る快楽。






「あ……っ、は、や、だ、り……せ、ぃ"…っ、あ"ぁ"………ッ!!」






もう、無理だ。

意識を手放そうと目を閉じたけど、なかなか意識は手放せない。





まさか………


「あっ、そんな簡単に落ちれると思わないでね?さて、何回イったら壊れるかなー」

……!!







むり、むりだ、こんなの………

(ぼくが……なに、したって………)






あやまれば






あやまれば……ゆるしてくれる?







「り…せ、…っう"、ご、めん……なさ…」
「え?なんで?」




ベッドの横で座って楽しそうににこにこしながら僕を見る李世。





「あ、やまる……から、も……ゆる、ひ、ぇ……」





……?
呂律、が………


回ん、な………い?





「……?や、ぁ"、っ…~~~っっっ!!!」


だめだ……たえられない


にげなきゃ………






力なんて入らないけど、必死で手錠を外そうと腕を動かした。

プラスチックなら早く壊れてと、必死で。





(はやくしないと、むり、おかしく、なる………!!)

「……ん?何?逃げようとしてる?」

気付かれた……?






「……駄目、だよ。」

「………?」





パンッ…と、音がして、頬が痛かった。
激痛が走ったみたいな痛さ。

李世が……僕を叩いた。






「…逃げるなんて許さないよ、それに逃げたところで結局薬の効果が切れるまではどうすることも出来ない、諦めなよ。」






言葉が……出ない。

その後も、李世はベッドの上に上がって暴行を続けた。


数秒おきにくる快感と、殴られる痛み。







……夢だと思いたかった。



夢であって欲しかった。







けど………これは紛れもなく現実。

きっと昨日のことも、現実。








夢と現実の区別すら、つかなくなった気がした。

ーーー






「………」

目が覚めた。

薬が切れて……ようやく眠れていた、らしい。




手首には相変わらず手錠。
(あぁ、現実なんだ……)

何故か、ひどく冷静でいられた。




「おはよ、真冬!」
「……」ビク

冷静でいられたのは、1人だったから。
李世を見た途端、ゾッと背筋が凍った。

体中が重くて痛い。




「痣だらけだねー、まあいいや、どうせ学校も行かないんだし。」
「……え」






李世はふっと笑って、顔を近付けた。

「……っ」ビク



「…あのね、真冬。真冬は、いなくたっていい存在なんだよ?」





……?




「だってそうでしょ?誰からも認知されず、隅で本ばっか読んで……ボクがいなきゃろくに人と話せない、頭はいいのに馬鹿だし無能だし。運動も出来なくて、誰の役にも立てなくて、そんな人間、いると思う?」





何…それ






「真冬なんていらないんだよ、けどボクがそんな真冬を可哀想だと思って一緒にいてあげてた。もういらない人間にボクが存在価値を与えた、ボクが生きがいを与えた……それならさ、恩人のボクが自由にしていいんだよね?」







なにいってるの……?
わかんない、わかんないわかんない






「ボクが…恩人がもう真冬をこの世から消すって言ったの。所有物は所有者に何も言わずに従う、それが普通でしょ?


真冬は…………ただの「物」なんだから。」








声が……言葉が




なにも、なにも………


声が全て空気に変わったみたいに、何も出ない。




何も、なにも、ナニ、モ………







気付いたら、涙が頬をつたってた。
殴られたあとがしみる。
けどそんなこと、どうでもよくて




「……物が泣いちゃ駄目だよ?変なの…っ」





この人は、悪魔だと。





いや……それ以上の存在かもしれない。







ーーー




数日後

「雪島……は、今日も無断で休みか。」

真冬が無断欠席になってもうすぐ1ヶ月。

「……なあ、高山。大丈夫か?」
「………」
「…っ、高山!」
「…えっ、あ…ごめん、何?」

友人が不安そうにボクを見ていた。

「その……雪島、どうしたんだ?」
「え…っ?」

「その、さ、俺達何気に心配なんだよ……雪島の無断欠席のこともだけど、お前が……弱っていってることも。」

不安そうな目でこっちを見ていた。

「………っ、心配かけてごめんね、真冬も……家に行ってもいなくて、真冬のお母さん達が疲れきってるだけで、辛くて…「っ…!高山、もういいから……」」

ボクが気を病んでいることに気付いたのか、友人は「何かあったらすぐに教えてくれ」と言って去っていった。





去っていく後ろ姿を見て……ボクは思わず、笑ってしまった。

だって………





ーーー




「ただいま、真冬。」
「……っ、あ"、ぁ"ぁ"ぁ!!!」






皆が心配してる…探してる「雪島」は、ここに居るんだからさ。

「あはは、目隠し取ってあげるね、薬は……あと1時間で切れるか……ご飯作ってくるね?」





学校に行く時は必ず薬を飲ませた。

薬が切れたら晩御飯にして、それが終われば今度は別の薬を飲ませる。
その薬は、……まあ、後で分かるかな。






「り……りせ、たす、ぇ……あ…、ぁ、やだ、ぁ"ぁ"ぁあ"っ……!!!」





普通ならこんな、1時間に何百回もイかされたら耐えられずに気絶するだろう。
けど、あの薬には……眠る事が出来ない成分が入ってるからね。





(ほんと、馬鹿………)





呂律があまり回らないけど、聞き取れるのは「助けて」や「嫌だ」、そんな言葉をずっと繰り返してる。
ボクに助けを求めてるのか「りせ」って言ってくるけど……ボクが助ける訳ないのに。





「……でも、なぁ」

もう充分だ。





充分面白いところまで壊した。




これは…………学校に復帰させるべき、かな。






じゃあ…これが最後だね。







「……はぁ、はぁ…ぁ………」
「おつかれー、ご飯出来たよ、今日はクリームシチューです!」




ちなみに……今ボクの両親は夫婦旅行。
結構旅行するお金があるらしくて……けど、明日帰ってくる。
何にせよ、今日が最後になるんだな。




「はい、口開けて?」
「……」





真冬は、箸を持つことが出来なくなった。
スプーンやフォークも、持つと落としてしまう。





夜も眠れなくなって、今じゃ睡眠不足でクマがすごい。
最初は薬を飲むことにもひどく抵抗していたけど、今はもう抵抗なんてしてこない。
面白いくらい壊れてしまった。



「……美味しい、かな?」
「……」コク




元々寡黙だったけど、今はもう、薬が切れた時は一言も話さなくなった。
反応しないと殴られるから頷いてはくれるけど。





「……真冬、明日は学校に行こうね。」
「…?」






真冬はきょとんとしていた。
「学校だよ、勉強したり運動したり……楽しいとこだよ。」
「……」


まだピンときていないみたいだった。



「……行こうね?」
「……っ!」コク、コク





「いい子いい子、馬鹿だけど言うことは聞けて偉いね、はい、今日の薬。」
「……」




渡された薬を水なしで噛んで飲んだ。

「………っ、ぁ…」


薬を飲んでしばらくすると、段々真冬の口角が上がってきた。
目もどこかチカチカしていて、明らかに様子がおかしい。





「っ…あ、は、は、あは、なにこれ……」
「大丈夫?どうかしたの?」



いつもは寡黙な真冬がおかしいくらいに喋り出した。

「な、なんか、ぁ……あたま、ふわふわして……ぇ、おかしく、なっひぇ……る…?」




何もわからなくなる。

ひたすらふわふわして、気持ちがよくておかしくなる。





覚醒剤。






「そうなんだ。」
「も、もっと、くすり……くすり、くらさ…ぁ…」
「あははっ、そんなんで学校行ける?大丈夫?」


まあ、本当は行かせたくないよ。
でも……







(今までずっと関わってこなかったくせに、いなくなった途端に心配なんてしてんじゃねーよ……)



「あーゆー」奴がいるから、仕方ない。








ーーー






次の日。


「……」ガタガタ

あー………

学校はいろんな人がいるって教えたら、ボクに抱きついて泣き止んでくれない。

……行きたくないのは分かる、ボクだって行かせたくない。




けど、ここを克服しないと計画が進まない。



「……遅刻しちゃうよ」
「……い、いかな、いき…たく、な、い」


珍しく薬なしで喋ってくれた。
息切れ激しいけど……過呼吸とか起こさないだろうな……?

「……ボク、行くよ?」
「…っ、い、や、おいてか…ないで……」




泣いちゃったし……


「……けどもう着替えちゃったでしょ?大丈夫、ボクが隣に居るから。」

そう言うと安心したのか、泣き止んだ。




(……馬鹿。)








ーーー



「…!雪島!!」
「……っ!!」

教室入る前に職員室に寄った。
担任の先生が驚いてこっちへ来る。




「ぶ、無事だったか…!?今までどこに……いや、怪我は……」
「だ、大丈夫です先生!なんか……家出しちゃってたみたいです。」






先生に肩を掴まれてまた泣き出す真冬をトイレに連れていった。


「……いい?真冬、学校では泣いちゃ駄目、薬も駄目、喋っちゃ駄目、ボクから離れちゃ駄目、他の人と話すのも駄目、もし破ったら……分かるよね?」
「……っ」コクコク

2回返事をして、涙を拭いた。







ーーー




「雪島だー!」
「っ…!」

教室に入ると、クラス中の男子がこっちへ来た。
「…っ」
俯いて鞄の紐を強く握って、ボクの後ろに隠れた。
(決まり、守ってるな。)




群がる男子達に事情を話して、なんとか散ってもらった。

「……あ、1時限目保体だ、HR終わったら着替えな………い、と。」






気付いた。





(煙草の火の痕とか痣とか……半袖になる機会なければ大丈夫、だよね?)






想定外だった……。

休ませるか?いやでも、離れちゃいけないって言ったんだし………






参加させるしかないか……







ーーー




「病気だから休みたい?」
「はい……いいですよね?」

しまった……
1年の保健体育の教師は、サボりを許さない古い石頭………


「ふざけるな、熱もないし、咳もしてない。サボるな、出なさい。」
「…っ」





また、真冬は隣で俯いた。

「…わかりました」


代わりに返事をした。
先生はそんな様子を見て呆れていた。




「……はぁ、そもそも喋れないなんて、甘えるのも大概にしろ。」
「…っ!」








……!





「………ご、めん…なさ……い。」

「……!」





小さな声、消えてしまうかと思った。





けど、はっきり聞こえた。




喋るなって、言ったのに………










ーーー





「っ…!!」



今日に限って腕を使うバトミントン。
真冬にとっては地獄だと思う。

1ヶ月の監禁生活で体力は急激に落ち、痣だらけの腕と足は使い物にならない。

シャトルを追いかけるだけでもしんどいのに、打ち返すとなると………

「雪島!!大丈夫か?!」
「……は、はぁ…はぁ………」



躓いて、ころんで、おきれなくなった。




「……っ」

なんとか立てたけど、ふらふらだった。




「……」
先生はそんな真冬を見ても何も言わない。







どうして………って思ったけど、そんなの、ボクと同じ理由だ。







ーーー



なんとか放課後になった。

「……っ!真冬………!!!」
「っ…!」

家に着くと、真冬のお母さんは真冬に抱きついた。
「……家族となら、いいよ。」
母親に聞こえないようにそう言うと、真冬は少しだけどほっとした顔をした。

「ごめんなさい……ただいま。」






……また、謝った。
気に触るんだ、その言葉。




ーーー




その日の夜、1人でご飯を食べていたら両親が馬鹿みたいににこにこしながら帰ってきた。
寂しくない……はずなのに、寂しい。







真冬が…………いない。



(このクリームシチュー、美味しくない。)







ーーー






しばらく学校生活は順調だった。


けど……問題が1つ。




「高山、少し……雪島と一緒にいすぎじゃないか。」
「はい?」

担任の先生。





「…っ」
「少し、雪島と話したいことがあるんだ。」
「じゃあ、ついていきます、どうせボクがいないと会話にならないんですから。」
「……分かっ、た。」




本当は二人きりで話したかったよね。
まあ、そんなの関係ないけど。





職員室。





「雪島は……本当に1ヶ月も家出していたのか?」
「そうだって言ってるじゃないですか」
「…高山、お前には聞いてない。悪いな。」



ムカつく………






「…」チラ
真冬がこっちを不安そうに見ていた。
会話する許可を得るためかな。
先生に気付かれないように頷いた。




「……」コク


「そうか……じゃあその痣はなんだ」






…!!
バレてた……長袖で隠してたのに………

「……ぁ」




本当のことを言うべきか、嘘をつくか、後者に決まってる。
なのに……どうして迷ってるの?




 




まさか……









「……ぁ…の、先生……」


真冬が一歩前に出た。



ボクより……前に。







「ぼく、りせに………」

……!!






言わせない。





「真冬」
「……っ!!」
「!」






先生も驚いていた。
口止めしようと名前を呼んだだけなのに、出た声は思ったよりも低いトーン。






「……分かるよね」





けど、続けた。





「……ぁ…」







真冬は言葉にならないような声を出した。







「…っ」

居ずらくなったのか、真冬は走って職員室を出ていった。






「雪島……!!」
「……ボクも失礼します」







先生は追ってこなかった。







ーーー






次の日。



「……おはよう、真冬。」
「…」コク






機嫌は治らない。
いつもみたいに作り笑顔じゃなくて、感情のないロボットみたいな顔になってたと思う。

学校につくなり、真冬の腕を強く掴んで壁に叩きつけた。
早く来たので幸い人はいなかった。






「……ねぇ、なんで言おうとした?どうして余計なことを話した?話したら救われると思ったの?ねぇ、ねぇ ねぇ ねえ!!!」





怯える真冬の腹を力強く殴った。







「……う、げほ…ッ」

腹を抑えてしゃがみこむ真冬の髪を掴む。

「立てよッッ!!!!」






その時。

「あ、高山……」



運悪く、階段を上がってきた男子と目が合ってしまった。







「っ……!」
「あっ…」






真冬が…最後の力を振り絞ってボクから逃げた。




ボクから、離れた………













「………だ、め」




  


ーーー







「……はぁ、はぁ………」








たすけて、たすけて、たすけて



はしれば、どこかにいけば、





だれかが、たすけてくれる………






ポケットに入れておいたICレコーダー。





昨日……先生が家に来た。





「雪島、明日はこれを持っていろ、高山に襲われそうになったら録音できる。」





先生………気付いててくれたんだな。




職員室まで走った。





でも……体力はもう、残ってなくて。








「捕まえた………」
「ぁ………」




「これ…何」







手に持っていたICレコーダーが、奪われる。




「まって、かえし「ふーん、ICレコーダー……ね、こんなもの……」」




李世はレコーダーを床に落として、その後。












―――バキッ






「―――っ…!!!!!」







もう、どうだっていい。

もう………夢じゃなくてもいいや。








ーーー




あの後、学校から抜け出して散々に真冬を殴った。
蹴ったし、骨折もさせた。



その次の日……


「雪島、ちょっといいか。」

隣の席で、光のない目で骨折した腕には周りにバレないように、包帯をしていた。
ただ虚ろな目で、下を向いている。






先生に呼ばれるとボクを置いて立ち上がって歩き始めたから、「ちょっと待ってよ」と言って立ち上がった。
すると先生が



「高山……〇〇先生が呼んでる、お前提出してない課題があるだろ」





と、真冬からボクを突き放すように言った。







ーーー






「……あ、真冬。」
たまたま職員室から出てきた真冬と角で遭遇する。
「……」
「っ、ねぇ、返事くらい………、あっ…」






腕をつかもうとしたその時、職員室から先生と……真冬の母親が出てきた。




「高山、雪島は今日は体調が悪くて早退する。お見舞いなんかは先生が行くから大丈夫だ。」










………ナニソレ











ーーー






その次の日から、真冬はこの学校から姿を消した。









ーーー



一応ここまでが胸糞エンドになります。
この先の話はハッピーエンドではないですがとても微妙なオチなので、ここでバックしてくださって構いません。オマケ的なものです。



ーーー





――2年後。



今年でボクは高校3年。
それにもうすぐ……卒業だ。

真冬が転校してから2年、ようやくボクも落ち着いてきた。
今は進路のことについて考えてる途中で、将来は………














なんて、そんなことはない。



今ボクは、学校をやめている。




そして家を出て、彼を探してる。





見つけたら絶対殺してやる、なんて思いながら。




「……………あっ」






ミツ、ケタ

やっと見つけた、この2年間、ずっと探した、彼を………

ケド









「………は……?」





真冬の隣には、背の高いスポーツ系の男、もう片方の隣には小柄で小さい女。




……真冬は楽しそうに、笑ってた。

(え……普通に喋ってる?ありえない、でも………)





あれは間違いなく真冬。
両方の触覚に×ともう1つアメピンをつけた、白髪でコバルトブルーの目。










ニガシタクナイ






「…っわ…」









手首を掴んだ時、真冬は声なんて出さなかった。
それなのに……







「…………り、せ……?」





こいつは………真冬だ。





その時。

「っ…真冬に触んな!!!」
真冬の隣にいた男に、手を振り払われた。



「そうよ!あんたが李世……?あんなことして………二度と真冬の…いや、うちらの前に顔出すな!!」






一見気の弱そうな女も、気が強かったらしく、真冬を庇いながらボクに怒鳴った。





ナン、デ





「っ……」








ーーー






「真冬……大丈夫か?!…すごい汗……」
「大丈夫?うち、なんか水買ってくるね…!」






「は……はぁ、はぁ、はぁ…う"……









あ"ぁ"ぁ"ぁああぁ"あぁぁあ"あ"ぁあ"ぁっっっっ!!!!!」










………嘔吐した。




「真冬!!」





「は、は…かは、ぁ、ぁ"…!!」

過呼吸も起こした。






「…っ、真冬、もう帰ろう?買い物なんてまた出来るから……」
「買ってきた!…!ちょっと……救急車…!!」







ーーー

「……ごめん」
「ごめんじゃないよ!大丈夫…か、真冬。」



落ち着いた僕は、ベッドから上半身を起こした。
「……うん」


僕が転入した高校は寮生。
もう一度新しく始めるために、2回目の1年生から始めた。
だから今は高校3年…だけど、2年生ってことになってる。
先生方は事情も分かっるしここは元フリースクールだったから、相談に乗ってくれる先生ばかりのいいところ。



新しく出来た友達も……僕と同じような事情があって、意気投合してる。
1歳年上な事も僕の昔の話も教えた。
そのかわり2人も昔の辛かったことを話してくれて、より仲良くなれた。

「ココア飲めるか?ちょっと冷めたけど……」
「うん…ありがと。」





おかげで、少しだけど声を出せるようにもなった。
今日は3人で久々に買い物……だったのに、「あの人」が現れた。




せっかく忘れられてたのに………




「……なあ、明日散歩に行こっか!2人で!」
「…でも、あの人がいたら……」
「近くだから大丈夫だよ!それに……絶対離れたりしない。」








……あの人に言われても怖いだけだったのに




安心する………








ーーー






絶対離さない




もう、他の人間には触らせない


知らない中学校の野球部の倉庫に入って、バッドを手に入れた。







「………見つけた。」

まあ………昨日からずっと見てたけどね。





「……あ、飲み物買ってくるな。ほんとにすぐ戻る!」
「うん…。大丈夫だよ、焦んなくて。」







2、3分でいい。

お前さえいなければ………












「………あは、真冬ってほんと馬鹿、馬鹿で馬鹿で……。」







ベンチでうとうとしている真冬に、後ろから近付いた。











「こんどは、はなれないでね。」











「……………………………え………」











ーーー







「ただいまー!っ……て、まふ、ゆ………?」







もう二度と離さないって誓った。







「…………ぁ"、たすけ、て…だれ…か……」







真冬が助けてって頼むのはボクだけ。








「うん、助けるよ…早く家に帰ろう、真冬。」










ーーー



李世の好感度が下がっちゃうので近々真冬→李世でもこういう話書きます……時間があれば………







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