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桜木郁人
夢の中でなら
しおりを挟む早苗優馬side
ーーー
夢を見た。
俺は、特にそいつが好きなわけでも、特別だと思っている訳でもない。
そんな奴が、俺の夢に出てきては言った。
「好きだよ……、何でもするから、僕の事好きって言って?」
現実のように余裕のある笑みで、けど少し………眉を下げて。
俺は特に、こいつ……郁人のことなんて、好きでもなんでもない。
むしろ、俺が本当に好きな子の事を好きだから、ライバルだとしか思っていなかった。
いくら夢とはいえ、そんな奴が俺にこんなこと言うなんて、有り得ない。
でも……命令待ちなのか、にこにこしながらずっと俺を見ている郁人がどこか気持ち悪くて、
「じゃあ………お手」
犬のような扱いをしてしまった。
夢の中の郁人は楽しそうに右手を差し出した俺の左手の上に置いて、ふにゃ、と笑った。
それが何故か楽しくなって、
「お座り、てか正座」
正座させて、
「首輪つけて……って、さすがに無理か」
そう言った途端、いきなり首輪がぽんと現れた。
「あと……あ、鳴き声はワンだけな」
「わん……!」
…………楽しい。
普段こんな事を言ったら、即「何言ってんの早く死ねば」って睨まれるんだろうけど、従ってくれるなら可愛いものだった。
嫉妬していた自分より2センチ高い背丈も、座ってしまえばなんの問題も無い。
現実でもこうだったら……と、苦笑いしてしまった。
「……わん」
あとは?
………………まだ、命令していいんだ。
(じゃあ…………)
魔が差してしまった。
「そこで、しゃがんだままおしっこしてよ」
ーーー
「っ……う、」
まさか……本当にやってくれるなんて。
ズボンと下着だけを脱いで、しゃがんだまま…………、本当にやってくれるとは思わなかった。
いや、少しだけ期待はしていたかもしれないけど…………
「……、っ……」
びくびくしながら、強く目を閉じて、色白な頬が少しだけ赤くなっている。
(俺にも……こんな顔、してくれるんだ………)
………………………………あれ……………………?
ーーー
「はぁ…?普通に気持ち悪いんだけど」
どうして現実のこいつに話してしまったんだろう。
「お、俺だって見たくてみたわけじゃねえよお前の犬のモノマネなんか!!」
「教えるだけ教えといて何それ?!本当に気持ち悪い、だから変態なんだよ」
そうだった……俺と郁人は、いわゆる犬猿の仲だった。
「2人とも……仲良いね、相変わらず」
「「仲良くない!!」」
誰がこんな奴と…………!!
ーーー
その日の夢。
「え…………」
また、同じ光景だった。
「優馬のこと好きだから、何でも言う事聞くよ?」
目の前で、さっきまで喧嘩していたはずの友人が………愛おしそうな目で、こちらを見つめていた。
昼間の事もあって少しキレていた俺は、
「じゃあ……沢山のキモデブおやじが現れて、輪姦されろ」
なんて、自分が考えた精一杯ひどい仕打ちを命令した。
「え……」
郁人は少しだけ顔が青ざめて、けどすぐに………
「っ……!」
沢山のキモデブおやじが現れた。
そいつらは郁人と目が合って、気持ち悪い程に興奮して、
「や、やだ……、嫌だ……ッ、」
一斉に飛びかかった。
足首や手首を強く掴まれて、着ていたベストは肩からずり下げられて、
ズボンを脱がされて髪を強く掴まれて、とにかくひどかった。
「や……やだ、優馬じゃないと……やだ」
郁人は泣きながら、声にならない声でそう言って、俺の方に手を伸ばしていた。
…………まあ、夢だから、助けなくてもいいんだけど。
ーーー
現実の本人には言わないようにした。
言って喧嘩になるのは分かるし、その度に夢の中のあいつが酷い目にあうのも何か違うと思ったから。
郁人は「今日は気持ち悪い夢見てないよね」なんて睨んでくるけど、
まあ…………かれこれ、一週間は見てます。
ーーー
酷い目にあうのは違うなんて言った癖に、あれから五日間、ずっとそんな事をしている。
気持ち悪い男を沢山呼んで、拘束やらイキ地獄やら、フィストファックで内臓を突破ったこともあった。
夢だからいい、夢だから。
…………ちょっとやそっと死にかけても、構わない。
「っ………優馬……お願い、お願いだから……こういうのは、やめて……」
何でもするなんて言った癖に、根性は弱かった。
俺以外に汚されるのが嫌で、終わった後は目元を真っ赤にして泣きじゃくって、俺に頼んでいた。
それでも…………変わらなかったけど。
ーーー
段々、区別がつかなくなっていった。
現実も夢も、どちらも一緒に見えてきた。
そして…………そんなある日、
「…………あれ、寝てるのか……?」
学校の中で居眠りをしている郁人を見つけた。
教室に1人で、寝ている間は寝顔は少し幼くて、とても無防備な格好。
(犯してくれって、言ってるようなもんだろ)
…………………………そうだ。
『優馬以外は嫌だ……』
つまり……………………俺なら、いいんだよな?
俺なら、こいつを何しようが構わない。
それなら……………………
教室の鍵を閉めて、寝ている郁人の所まで来た。
そして、意地悪く微笑んだ。
「なんでも言うこと聞くなら…………いいんだよな?」
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