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ダンベルがバズりすぎたので委託します
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あれからしばらくの間、毎日王都に通って筋トレパフォーマンスをして金と知名度を稼ぎ、領地に帰ってからは狩りに行きたまに魔物を捕まえるという日々が続いた。
およそ、3.4ヶ月ほどの期間だったかな。長くて短いようなこの期間のうちに【王都オリンピアで毎日トレーニングをするイケメンマッチョセクシャル】の噂と【そのセクシャルの素晴らしい肉体を作ったトレーニング器具が販売されている】という噂が国外にまで拡散され、セクシャルの作ったトレーニング器具は今や予約しないと買えないほどの希少品となっていた。
それほどまでに有名になると、もちろんコピー品や模倣品のようなものも出てくる。しかし、セクシャルのダンベルなどは重石と呼ばれる重くて硬いため加工が難しい石で作られているため、完全に模倣することは今のところできていない。
その代わりに最近では加工しやすい軽石などを使ったダンベルがよく売られているが、こちらは重さの割に大きいのでトレーニング器具としては扱いにくいのだ。
それに、保存にもスペースを取るし流通もしにくい。そのため、セクシャルの作るダンベルというものの特別性や希少性は失われていなかった。
前世の記憶から引用するデザインなどがカッコいいということもあり、トレーニングにあまり興味のなかった層にまでその影響は及んでいるらしい。
そもそも、こんなにもトレーニング器具が広まったのは、イイヒト公爵の影響が大きい。
ここオリンピア王国では、数ヶ月に一度貴族達の私有軍を争わせるという娯楽のような闘技大会があるのだが、その大会にてイイヒト公爵の私有軍が無双したのだ。
それまでの大会では、ハラスメント公爵家を除く3公爵家と王族の私有軍の実力はトントンというところだった。
それぞれの軍に強みと弱みがあり、イイヒト軍はパワー不足が弱みだったらしいのだ。しかし、圧倒的なパワーを誇っていたワルイヒト軍に今大会では力の面でも上回り、圧倒的な勝利を見せたのだという。
そうなるともちろん、どうしていきなりパワーが強くなったのかという疑問が出てくる。
そして、たくさんの貴族に質問攻めされたイイヒト公爵はこう答えたのだそうだ。
『セクシャル・ハラスメントにトレーニングを教わった』と。
それが原因で、セクシャルの器具は大バズり。おかげで大儲けである。
そんなセクシャルは今や、有名になりすぎて器具を作るのに時間が取られすぎて、まともにいつもの日課をこなせないことに不満を持っていた。
生産の仕事が忙しすぎるという、嬉しい悲鳴である。セクシャルの第一優先は、あくまで筋トレのはず。それが阻害されてしまっては、意味がないというものだ。
ここ数週間、壊れたロボットのように働き続けるセクシャルを見ていると、流石にそろそろ解放してやってほしいと思えてくる。
そして、ようやくセクシャルはその小さい脳みそをフル回転させ、この仕事を別の人間に委託するという名案を思いついたのである。
「はっ! やはり、俺は天才なのだな」
そこからのセクシャルの行動は、恐ろしく早かった。生産スキルや加工スキルが使える人間をかなりの高待遇で雇い、器具の作り方やポイントを教え込む。
そうして数週間が経つころには、セクシャルなしでほとんどの器具が製造できるようになった。
セクシャルが作ったものほど精巧ではないが、これでもトレーニングに使う分には十分な代物だと言える。
「よくやったみんな! これからもよろしくね!」
あまりの喜びに口調が素に戻っているセクシャル。しかし、周囲の人々はそれを気にすることなく答えた。
「はい! セクシャル様! 俺たちのような貧民を拾ってくださった恩を返すためにも、命をかけて働かせていただきますぅ!」
「セクシャルさま! 俺も命をかけて……」
「私も!……」
セクシャルは他の貴族達とは違い、迫害されている外国人や亜人、貧民などまで身分や立場を問わずに雇っていった。
それは慈悲などではなく、自分の代わりに働いてくれるなら、なんでもよかったからである。
彼らを雇うことについて一部選民意識のある消費者たちから苦情はあったが、そういった意見を言う奴は合トレに持ち込んで無理矢理ねじ伏せた。
例のパンプさせたったwwwである。
そうしてやれば、文句を言っていた奴らも筋トレ愛に目覚め、喜んで亜人達が作った器具を買っていくようになっていく。洗脳完了である。
※合トレ……合同トレーニングのこと
そうして、セクシャルにとって地獄の生産工程は完全に委託が完了したのであった。
ちなみに、流通と販売も既に委託の準備が完了している。これもまた、セクシャルが雇った亜人達に行わせていた。
「あぁ……やっと終わった……。よかった……。これで明日から、また好きに筋トレできるな……」
おめでとうセクシャル。だけど、まだ終わってないよ。すっかり開拓のこと忘れてると思うけど、まだまだやることは山積みだよぉ(暗黒微笑)
およそ、3.4ヶ月ほどの期間だったかな。長くて短いようなこの期間のうちに【王都オリンピアで毎日トレーニングをするイケメンマッチョセクシャル】の噂と【そのセクシャルの素晴らしい肉体を作ったトレーニング器具が販売されている】という噂が国外にまで拡散され、セクシャルの作ったトレーニング器具は今や予約しないと買えないほどの希少品となっていた。
それほどまでに有名になると、もちろんコピー品や模倣品のようなものも出てくる。しかし、セクシャルのダンベルなどは重石と呼ばれる重くて硬いため加工が難しい石で作られているため、完全に模倣することは今のところできていない。
その代わりに最近では加工しやすい軽石などを使ったダンベルがよく売られているが、こちらは重さの割に大きいのでトレーニング器具としては扱いにくいのだ。
それに、保存にもスペースを取るし流通もしにくい。そのため、セクシャルの作るダンベルというものの特別性や希少性は失われていなかった。
前世の記憶から引用するデザインなどがカッコいいということもあり、トレーニングにあまり興味のなかった層にまでその影響は及んでいるらしい。
そもそも、こんなにもトレーニング器具が広まったのは、イイヒト公爵の影響が大きい。
ここオリンピア王国では、数ヶ月に一度貴族達の私有軍を争わせるという娯楽のような闘技大会があるのだが、その大会にてイイヒト公爵の私有軍が無双したのだ。
それまでの大会では、ハラスメント公爵家を除く3公爵家と王族の私有軍の実力はトントンというところだった。
それぞれの軍に強みと弱みがあり、イイヒト軍はパワー不足が弱みだったらしいのだ。しかし、圧倒的なパワーを誇っていたワルイヒト軍に今大会では力の面でも上回り、圧倒的な勝利を見せたのだという。
そうなるともちろん、どうしていきなりパワーが強くなったのかという疑問が出てくる。
そして、たくさんの貴族に質問攻めされたイイヒト公爵はこう答えたのだそうだ。
『セクシャル・ハラスメントにトレーニングを教わった』と。
それが原因で、セクシャルの器具は大バズり。おかげで大儲けである。
そんなセクシャルは今や、有名になりすぎて器具を作るのに時間が取られすぎて、まともにいつもの日課をこなせないことに不満を持っていた。
生産の仕事が忙しすぎるという、嬉しい悲鳴である。セクシャルの第一優先は、あくまで筋トレのはず。それが阻害されてしまっては、意味がないというものだ。
ここ数週間、壊れたロボットのように働き続けるセクシャルを見ていると、流石にそろそろ解放してやってほしいと思えてくる。
そして、ようやくセクシャルはその小さい脳みそをフル回転させ、この仕事を別の人間に委託するという名案を思いついたのである。
「はっ! やはり、俺は天才なのだな」
そこからのセクシャルの行動は、恐ろしく早かった。生産スキルや加工スキルが使える人間をかなりの高待遇で雇い、器具の作り方やポイントを教え込む。
そうして数週間が経つころには、セクシャルなしでほとんどの器具が製造できるようになった。
セクシャルが作ったものほど精巧ではないが、これでもトレーニングに使う分には十分な代物だと言える。
「よくやったみんな! これからもよろしくね!」
あまりの喜びに口調が素に戻っているセクシャル。しかし、周囲の人々はそれを気にすることなく答えた。
「はい! セクシャル様! 俺たちのような貧民を拾ってくださった恩を返すためにも、命をかけて働かせていただきますぅ!」
「セクシャルさま! 俺も命をかけて……」
「私も!……」
セクシャルは他の貴族達とは違い、迫害されている外国人や亜人、貧民などまで身分や立場を問わずに雇っていった。
それは慈悲などではなく、自分の代わりに働いてくれるなら、なんでもよかったからである。
彼らを雇うことについて一部選民意識のある消費者たちから苦情はあったが、そういった意見を言う奴は合トレに持ち込んで無理矢理ねじ伏せた。
例のパンプさせたったwwwである。
そうしてやれば、文句を言っていた奴らも筋トレ愛に目覚め、喜んで亜人達が作った器具を買っていくようになっていく。洗脳完了である。
※合トレ……合同トレーニングのこと
そうして、セクシャルにとって地獄の生産工程は完全に委託が完了したのであった。
ちなみに、流通と販売も既に委託の準備が完了している。これもまた、セクシャルが雇った亜人達に行わせていた。
「あぁ……やっと終わった……。よかった……。これで明日から、また好きに筋トレできるな……」
おめでとうセクシャル。だけど、まだ終わってないよ。すっかり開拓のこと忘れてると思うけど、まだまだやることは山積みだよぉ(暗黒微笑)
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