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農民の子供が甘えてくる
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あの日以降、農作業という名の筋トレと狩猟が日課に加わったセクシャル。
6歳児の日課に狩猟ってなんなん?って感じではあるが、余った肉は氷室に置いておくことである程度保存が効くし、保存食にすることもできるので、毎日バカみたいな量の獲物を乱獲していた。
馬鹿みたいな量とは言っても、ハラスメント領に広がる広大な土地からすれば微々たるもので、このままのペースで狩りを続けて行っても獲物が取れなくなるようなことはないだろう。
ちなみに、セクシャルが狩ってきた獲物の解体や掃除や加工は農民や貧民たちの仕事となっており、その対価として大量の肉が提供されている。肉以外の部分はセクシャルのお小遣い行きだ。
そんな感じで日々肉体労働に励むセクシャルではあるが、しっかりと趣味である筋トレも欠かさず行っていた。
これだけの運動をしてもオーバーワークにならないのがこのセクシャルという肉体の優れたところであり、セクシャルの日々の行動から得られる筋肉への刺激と栄養を糧に、肉体はまだまだ成長を続けていた。
最近もいつも通り暇なので1、2時間トレーニングをしてから農作業に行き、その後狩りに行くというのがすっかりルーティーンになっている。
そんなセクシャルは、今日も筋トレ終わりに農耕地帯に来ていた。
「カタボリック! 今日も手伝いに来たぞ」
「おお! セクシャル様、いつもありがとうございます」
セクシャルに農作業を教えた農民ことカタボリックは、セクシャルを見ると途端に恭しく頭を下げた。
そして、それに続いて他の農民たちも次々と頭を下げ始める。
まるでどこかの教祖と、それを囲む信者のような図。あまり見ていていい気分になるような光景ではないが、貴族への対応というのはこんなものだ。
むしろ狂っているのは、貴族……それも公爵家の人間なのにも関わらず、農民に混ざって畑を耕しているセクシャルの方だろう。
あ、そうそう。ちなみにだが、セクシャルが富豪やら豪商の息子であるという誤解は既に解けている。
例の焼肉パーティーの最中に、セクシャルが帰らないことを心配して狭い領内を探し回っていたパワー・ハラスメント公爵が登場し、セクシャルが公爵家の令息だということが露見したのだ。
お偉いさんの息子だとは思っていたが、まさか公爵家の子息だとは思ってもいなかったようで、カタボリックたち農民はかなり驚愕していた。
ちなみに、6歳だということについてはバレていない。どちらかと言うとそっちを知った時の方が驚くであろうことは想像に容易い。
身長170センチの細マッチョ6歳児(精神年齢おじさん)ってめちゃくちゃキモいよね。ほぼ魔物。
そんなまるでモンスターのような肩書きを持つセクシャルであるが、頭を下げる農民たちを放っておき、手慣れた様子で畑を耕していく。
そんなセクシャルをみて、農民たちも仕事を再開した。
仕事をしている姿をこうして見てみると、農民たち全員が前と比べて活気が強く、効率的に仕事をこなしているように見えた。
男達は少しがっしりしてきたような気がするし、女性たちも女性らしい少し肉のついた体型になってきている。
やはり、食事をまともに摂取できないことの弊害はそれだけ大きかったということだろう。みんな食べれるようになってよかった。
「ねぇねぇセクシャルさま! また甘いの飲みたい!」
「私も!」
「僕も飲ませて!」
農作業がひと段落すると、ソワソワしながらタイミングを見計らっていた子供達がセクシャルに駆け寄って行った。
そして、まさかのプロテインをおねだりしたのである。
貧しい暮らしをしていた中で初めて飲んだ甘い飲み物なのだ。また欲しくなってしまう気持ちはすごくわかるし、おねだりする姿はすごく可愛いものなのだが、大人たちはビックリ。
まさか自分たちの子供が貴族にそんな気安くものを強請るとは考えていなかったようで、不安気な眼差しでセクシャルと子供たちの会話を見守っていた。
「ん? 甘いの……ああ、プロテインのことだな? いいだろう」
そんな大人たちの心配など知らず、あっさりと許可するセクシャル。
きっとこいつは「図々しいガキ共だ」「貧民のくせに貴族の俺様におねだりだと!?」などということは微塵も考えていないだろう。
それどころか「運動後30分前後にプロテインを要求してきた……だと……!? この年にして本能的にゴールデンタイムを悟る圧倒的なセンス! 恐ろしい……」とでも思っているのではないだろうか。
もう6.7年間セクシャルをジロジロ見続けているわけなのでわかってきたが、この男、本当に貴族としての自覚など1ミリもないし、本当に頭の中が呑気なのだ。
貴族の自覚がないにしては喋り口調が偉そうなのが気になるところではあるが、多分カッコつけているだけ。
モデルは、キン・ニクオが昔やっていた格ゲーのムキムキキャラとかその辺だろうな。
「ほら! もっと早くシェイクしろ! このシェイクが早ければ早いほど、プロテインは俺たちを強くするのだぁぁぁぁぁぁ!(嘘)」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
嘘である。遅筋くらい真っ赤な嘘である。
セクシャルの嘘に騙されて、必死にプロテインをシェイクする子供達が可愛いので許すが、ありえないほど大嘘である。
大人だって甘いものを飲みたい! と参戦した奴らもシェイク合戦に参加し、少し良くなったハラスメント領の1日が過ぎていった。
6歳児の日課に狩猟ってなんなん?って感じではあるが、余った肉は氷室に置いておくことである程度保存が効くし、保存食にすることもできるので、毎日バカみたいな量の獲物を乱獲していた。
馬鹿みたいな量とは言っても、ハラスメント領に広がる広大な土地からすれば微々たるもので、このままのペースで狩りを続けて行っても獲物が取れなくなるようなことはないだろう。
ちなみに、セクシャルが狩ってきた獲物の解体や掃除や加工は農民や貧民たちの仕事となっており、その対価として大量の肉が提供されている。肉以外の部分はセクシャルのお小遣い行きだ。
そんな感じで日々肉体労働に励むセクシャルではあるが、しっかりと趣味である筋トレも欠かさず行っていた。
これだけの運動をしてもオーバーワークにならないのがこのセクシャルという肉体の優れたところであり、セクシャルの日々の行動から得られる筋肉への刺激と栄養を糧に、肉体はまだまだ成長を続けていた。
最近もいつも通り暇なので1、2時間トレーニングをしてから農作業に行き、その後狩りに行くというのがすっかりルーティーンになっている。
そんなセクシャルは、今日も筋トレ終わりに農耕地帯に来ていた。
「カタボリック! 今日も手伝いに来たぞ」
「おお! セクシャル様、いつもありがとうございます」
セクシャルに農作業を教えた農民ことカタボリックは、セクシャルを見ると途端に恭しく頭を下げた。
そして、それに続いて他の農民たちも次々と頭を下げ始める。
まるでどこかの教祖と、それを囲む信者のような図。あまり見ていていい気分になるような光景ではないが、貴族への対応というのはこんなものだ。
むしろ狂っているのは、貴族……それも公爵家の人間なのにも関わらず、農民に混ざって畑を耕しているセクシャルの方だろう。
あ、そうそう。ちなみにだが、セクシャルが富豪やら豪商の息子であるという誤解は既に解けている。
例の焼肉パーティーの最中に、セクシャルが帰らないことを心配して狭い領内を探し回っていたパワー・ハラスメント公爵が登場し、セクシャルが公爵家の令息だということが露見したのだ。
お偉いさんの息子だとは思っていたが、まさか公爵家の子息だとは思ってもいなかったようで、カタボリックたち農民はかなり驚愕していた。
ちなみに、6歳だということについてはバレていない。どちらかと言うとそっちを知った時の方が驚くであろうことは想像に容易い。
身長170センチの細マッチョ6歳児(精神年齢おじさん)ってめちゃくちゃキモいよね。ほぼ魔物。
そんなまるでモンスターのような肩書きを持つセクシャルであるが、頭を下げる農民たちを放っておき、手慣れた様子で畑を耕していく。
そんなセクシャルをみて、農民たちも仕事を再開した。
仕事をしている姿をこうして見てみると、農民たち全員が前と比べて活気が強く、効率的に仕事をこなしているように見えた。
男達は少しがっしりしてきたような気がするし、女性たちも女性らしい少し肉のついた体型になってきている。
やはり、食事をまともに摂取できないことの弊害はそれだけ大きかったということだろう。みんな食べれるようになってよかった。
「ねぇねぇセクシャルさま! また甘いの飲みたい!」
「私も!」
「僕も飲ませて!」
農作業がひと段落すると、ソワソワしながらタイミングを見計らっていた子供達がセクシャルに駆け寄って行った。
そして、まさかのプロテインをおねだりしたのである。
貧しい暮らしをしていた中で初めて飲んだ甘い飲み物なのだ。また欲しくなってしまう気持ちはすごくわかるし、おねだりする姿はすごく可愛いものなのだが、大人たちはビックリ。
まさか自分たちの子供が貴族にそんな気安くものを強請るとは考えていなかったようで、不安気な眼差しでセクシャルと子供たちの会話を見守っていた。
「ん? 甘いの……ああ、プロテインのことだな? いいだろう」
そんな大人たちの心配など知らず、あっさりと許可するセクシャル。
きっとこいつは「図々しいガキ共だ」「貧民のくせに貴族の俺様におねだりだと!?」などということは微塵も考えていないだろう。
それどころか「運動後30分前後にプロテインを要求してきた……だと……!? この年にして本能的にゴールデンタイムを悟る圧倒的なセンス! 恐ろしい……」とでも思っているのではないだろうか。
もう6.7年間セクシャルをジロジロ見続けているわけなのでわかってきたが、この男、本当に貴族としての自覚など1ミリもないし、本当に頭の中が呑気なのだ。
貴族の自覚がないにしては喋り口調が偉そうなのが気になるところではあるが、多分カッコつけているだけ。
モデルは、キン・ニクオが昔やっていた格ゲーのムキムキキャラとかその辺だろうな。
「ほら! もっと早くシェイクしろ! このシェイクが早ければ早いほど、プロテインは俺たちを強くするのだぁぁぁぁぁぁ!(嘘)」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
嘘である。遅筋くらい真っ赤な嘘である。
セクシャルの嘘に騙されて、必死にプロテインをシェイクする子供達が可愛いので許すが、ありえないほど大嘘である。
大人だって甘いものを飲みたい! と参戦した奴らもシェイク合戦に参加し、少し良くなったハラスメント領の1日が過ぎていった。
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