登録者0人の底辺配信者だった俺が、魔界で配信を始めてみたら人気者になった件

タバスコ

文字の大きさ
上 下
96 / 111

美人魔族受付嬢と作戦

しおりを挟む
「ヴァリアンさん、遅かったですね?」

 全力で駆けること1分。ようやく冒険者ギルドに到着した。

 遅刻した分際で堂々と入っていくのもなんだか気まずかったので、裏口からこっそり侵入しようと考えていたのだが……美人魔族受付嬢ことリリアさんに見つかってしまった。

「あはは……実は狼達とトラブルがありまして」

「10分ほど前には到着の知らせが来ていましたが……遅かったですね?」

 この人、相変わらず真顔で怖いんだよなぁ。街のみんなとはだいぶ打ち解けることが出来てきたが、この人だけは未だに苦手だ。

 表情が全く動かないため何を考えているのか全くわからないし、顔が整っているせいか威圧感を感じる。

 今はなんとなく怒っているような雰囲気を感じたので誤魔化そうとしたのだが……失敗した。

 そりゃそうだよな。一応俺もSランクだし、あんな目立つ登場の仕方をすれば報告の一つくらい入るよなぁ。

「ははは……少し話し込んでしまいまして。それより、他の皆さんはどこに?」

「……はぁ。ご案内いたします」

 話をすり替えると、呆れたような雰囲気に変わった。うぅ……申し訳ねえ……。

「……ありがとうございます」

 うぅ……気まずい。ほんと、この人だけには見つかりたくなかったんだけどなぁ。蝙蝠系の魔族だと聞いているので、音による感知能力にでも優れているのだろうか。

「お、ヴァリアン! よく来たな! 助かるぜぇ」

 リリアさんの案内の元、作戦会議の行われている部屋に到着した。

 入った途端に声をかけてきたのは、冒険者ギルド魔法都市カステル支部ギルドマスターのケンさん。

 スキンヘッドが似合う豪快な性格をしていて、見た目もかなりごつい。肩とかメロンみたいだし、流石は元Sランクの冒険者である。

「いえ、遅れてしまってすみません」

「ん? 間に合ったんだからいいじゃねえか。もしかして、リリアに怒られちまったか? ウァッハッハ!」

「ははは……」

 遅刻してしまったので一応謝罪をすると、全く気にしていないような口ぶりでそう言った。

 遅刻を笑い飛ばしてくれるのはありがたいんだが……リリアさん本人の前でそういうことを言われるとさらに気まずいのでやめていただきたい。

「それじゃ、全員配置についてくれ! ヴァリアンへの説明は俺がしておく」

 気まずさに耐えかねているとケンさんが冒険者達に指示を飛ばし始めた。配置につけ……と言うことは、もう結構近くまで魔物は迫ってきているんだろうか?

「じゃ、軽く作戦を説明していくぜ。今回の危険度がSSなのは知っているな? 通常通りの作戦じゃ幾つ命があっても足りねぇ。そこで、今回は都市の壁を最大限に活用して戦っていくこととなった。配置と役割はこうだ……」

 なるほど。通常のスタンピートでは、冒険者達が打って出て魔物を討伐していくのだが、今回は街の壁を犠牲にすることによって、冒険者達の被害を抑える作戦に決めたようだ。実に懸命な作戦だと思う。

 この作戦を実行するための役割は主に4つあり、壊れた壁を修復する土系魔法使いの部隊、遠距離攻撃部隊、壊れた壁から侵入してくる敵を倒す近接部隊、物品の補給などを行う補助部隊。

 今回俺はどの部隊にも配置されず、全体を見て手がまわっていなさそうなところを助けるようにと指示を与えられた。

 それから、トパーズウルフは壁の修復部隊へ。

 ルビー、サファイア、アメジストウルフは遠距離攻撃部隊へ。

 鉄、銅、銀、金狼は近接と補助部隊へ。

 ダイヤとエメラルドウルフは全部隊に適当に配置し、バフによって支援をしてもらうことにした。

 スタンピートの到着予想まであと10分。すでに、大地の揺れが伝わってくるようになった。やれるだけのことは準備しておこうか。

 大量の魔力ポーションを抱え、南口へ向かった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...