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転倒とクリーニング
しおりを挟む夢中になって食べていると、もう食べきってしまった。うん、すっかり満腹だな。量も多くて美味くて大満足だ、また来よう。
「すいません、お会計お願いします!」
「はーい! 少々お待ちください!」
お会計をお願いすると、すぐに返事が返ってきた。
「きゃ!」
よく頑張るなぁと眺めていると、1人の客の荷物に足を引っ掛けてコケてしまった。
それと同時、荷物にぶつかったことで机が倒れ、熱々のシチューが並々に入った皿も落下している。
このまま放置しては、店員さんに熱々のシチューが掛かり、火傷してしまうだろう。
【小天狗の足】【熱鉄人の胴】
Cランクモンスターの小天狗に変化し、店員さんとシチューの間に瞬間的に移動した。
店員さんが地面とぶつかる寸前に抱き止め、背中だけ熱耐性のあるゴーレムに変化させ、熱々のシチューに備える。
全身を魔物に変化させると、流石に魔物が現れたと勘違いされるかもしれない。いろいろとリスクがあるが、部分変化でどうにかなってよかった。
「え……?」
「大丈夫ですか?」
何が起きたのか理解できず、混乱している店員さんに声をかけ、ゆっくりと地面に立たせてあげる。
「あ、ありがとうございます! あ、いやだ! 服にシチューが!」
ペコっとお辞儀をした後、怪我をしなくて一安心かと思いきや、俺の服に着いたシチューを発見して慌てている。かわいいしいい子だなぁ。
「いえいえ。それよりも、新しいシチューを用意してあげてはどうですか?」
「あ! 申し訳ございません! すぐにお持ちしますので!」
「あ、あぁ。こっちこそすまねえな嬢ちゃん。荷物が幅とってよぉ、足引っ掛けさせちまった。」
ふむ。客も穏便に済ませてくれてよかった。あの子が戻ってくる前に、落ちた皿やこぼれたシチューはこちらで処理しておこうか。
【粘液の腕】
スライムの消化能力でシチューを消化し、お皿も床も綺麗になった。あとは俺の服に着いたシチューを消化するだけだ。
「あ、あの。お客様! お洋服の代金は弁償させていただきますので!」
申し訳ございませんでした!と、頭を大きく下げた。
「いえ、構いませんよ。ほら、キレイにできますから」
スライムで服についたシチューをしっかりと消化し、キレイにするところを見せてあげる。
「え! すごい! 新品みたいにキレイになった!」
手がスライムになっていることにまず驚きそうなものだが、それよりも服の汚れが取れたことに驚いたようだ。
「ふふ、実はこの服、3年間くらい着ている服なんですけどね。このスキルでキレイに保ってるんです」
「あぁ、そうだったんですね。新品の服を汚させてしまったと思って、内心ドキドキだったんです! よかったぁ」
本当にありがとうございます!それと、お怪我はありませんか?と続けて言った。
「一応これでも冒険者なので、あれくらいの熱はどうってことありませんよ。安心してください」
一件落着し、この子もすっかり安心できたようだ。よかった。
「兄ちゃんのスキルすげえな! 金払うからよぉ、俺の服もピカピカにしてくれねえか?」
目立ちすぎてしまったのでそろそろお会計をして店を出ようとしたところ、先程の客にそう話しかけられた。
改めてその客を観察すると、冒険者のようだな。とても汚れた装備を着けている。
「構いませんよ。どんな汚れでも、1つ1000ゴールドで落として差し上げます」
1000ゴールドといえば、GやFランクの魔物を狩っていても1日で稼げる金額だ。新品の服を買おうとしたら数万ゴールドはするだろうし、1000ゴールドくらいなら安いものだと思う。
「じゃあ、これとこれと、あとこれも頼む」
「はい、じゃあいきますよ?」
「お、おう。頼む」
注文にあった通り、装備全身と中に着ている服をスライムで包み込み、汚れだけを消化していく。
「すげえ! ほんとにピッカピカになりやがったぜ! はい、7000ゴールド! また頼むぜ!」
「すげえ! 俺たちのも頼む!」
「私たちも!」
「アタシもお願いしようかねえ」
返り血や土などが染み込み、相当汚れていた冒険者の装備が新品になったのがよほど驚いたようだ。
食べながらこちらをみていた客たちや、騒ぎを聞きつけて降りてきた店主までも、服をキレイにしてくれと頼んでくる事態になってしまった。
服以外、身体までもキレイにできることを伝えてしまった結果、ものすごい数の色々なものをキレイにすることになってしまった。
まさか数時間で、30万ゴールド近くも稼いでしまうとは……スライム恐るべし。
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