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強いのにキモい能力
しおりを挟む「ヴァリアンさん! 攻撃きます!」
「了解! 任せて!」
魔法使いの女の子の掛け声に返答し、襲いかかってくる攻撃へと備える。
いいねぇ、こういうの。連携って感じ、パーティープレイしてる感じがすごい良い。
ちなみに、相手はEランクモンスターのオーク。そこまで強いモンスターではないが、油断せず行くぞ。
今回、俺はタンクの役割を担っているので、しっかりと敵の攻撃を受け止めて味方が敵に攻撃できる隙を作ることが重要だ。
しっかり受け止められて、かつ拘束できる能力を選んで使うことにする。……ここは無難にあれで良いかな。
使用する能力を決めた俺は、オークのパンチの軌道に集中する。そして、そのパンチが俺に直撃する数秒前、能力を発動させた。
【岩石ゴーレム】
能力を発動させると、俺の両腕がボコボコと膨れ上がり、やがて手の形をした岩石となった。これは、岩石ゴーレムの腕である。
岩石ゴーレムの頑丈さを生かし、オークのパンチを正面から右腕で受け止める。そして、左手も合わせてオークの腕を掴み、動きを阻害した。
これは、大きなチャンスである。すぐに味方に攻撃してもらおうと、声をかけた。
「よし! 今のうちに攻撃を……」
「キャー! 気持ち悪い!」
「うそ、なにあれありえない。」
「岩……?むり……」
今のうちに攻撃だ! と声をかけようとしたが、それを遮るように帰ってきたのは、了承ではなく3つの拒絶反応だった。
そして、3人は俺のことを視界にも入れたくないと言わんばかりに顔を背けると、配信中にも関わらず全員揃って駆け出していく。
「はぁ……また結局こうなるのか」
また結局逃げられてしまったな。何で俺の能力って、こんなに見た目が悪いんだろ。強いし万能だと思うんだけどなぁ。
「おっと」
ショックのあまり、いつのまにかオークから手を離してしまっていたようだ。
こちらが1人になったからか、先程よりも威勢よく攻撃を仕掛けてくるオーク。完全にこちらを舐めている。
「くそぅ。俺は、魔物にまで舐められて……」
悔しい。このオークめ、連携を取るためにわざと手加減しておいてやったのに勘違いしやがって。
【氷霊】
再び能力を発動させると、今度は左腕が氷に変化した。その腕をオークに向けて振るうと、腕を振った直線上へと、先端の尖った巨大な氷柱が高速で走る。
氷柱は勢いを落とすことなく突き進み、やがてオークの弱点である肉棒を貫いた。
少々オーバーキルだったようで、氷柱は後ろの木々を何本か伐採した後消滅した。
「はぁ……災難だったなぁ……」
確かに、能力の見た目が悪いのは自覚しているし、今までも何度も罵倒されることはあった。でも、流石に戦闘中に逃げられたのは初めてだ。
冒険者のマナーとしてそれはあり得ないし、人間としてもどうかと思う。
なにより、配信を見ている視聴者からの証拠が残っているからそんなことしたら絶対にバレるし、ギルドからの罰則もあるのに。
「そんなに嫌だったのかよ……」
仕方ないが、ギルドへ報告に行こう。オークを軽く解体し、討伐証明と魔石や睾丸などの高く売れる部位を剥ぎ取ると、重い足取りでギルドへと向かった。
「配信を見てくれる人が増えて、名声ランクが上がれば空間収納機能が使えるのになぁ~。いつになったら有名になれるんだろ」
いちいち剥ぎ取るのも面倒だし、全てを持っていける場合と比べて報酬もガクンと減る。だからと言って荷物運び荷物を雇う金もないし……はぁ。
あとがき
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