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まずは昇格!
しおりを挟む「いやぁ……助かったぜ。あんなんじゃろくに休めねえ」
ザインさんは今、私の家のソファに座っている。そして、私はザインさんの膝に頭を乗せて横になっていた。いわゆる膝枕という状態だ。
(一体なんでこんなことになったんだろう……?)
そんなことを考えてみるが、全く分からなかった。なぜ彼が私の家に来たのかもそうだが、どうして膝枕をされることになったのかも分からないのだ。
(でも……結構気持ちいいな……)
彼の頭を優しく撫でてあげると彼は猫のように身体を丸めて甘えるように頭を擦りつけてきた。その仕草が可愛くてついクスッと笑ってしまう。
「……ん?どうした?」
「いえ、なんでもありません」
「そうか……」
(うーん……どうしよう……)
私はこの状況について頭を悩ませる。だが、いくら考えても答えが出ないので、とりあえず彼に話を聞くことにした。
「ところでザインさんはどうしてここにいらっしゃったのですか?」
そう尋ねると彼は少し恥ずかしそうにしながら理由を教えてくれた。どうやら彼がケーキ屋に行ったのは私に差し入れをするためだったらしい。
どうやら、冒険中に私がお金が貯まったらケーキを食べたいと言っていたのを覚えてくれていたようだ
「そうなんですね……ありがとうございます」
私は感謝の気持ちを込めて彼に言う。すると、ザインさんは照れたように笑った後、少し間を置いてから呟いた。
「でもまさかマリアがあんなにいっぱい食べるとはな!」
「えっ?私そんな食べますか?」
(確かに美味しくてつい1ホールも食べちゃったけど……)
私が困惑していると、彼は笑いながら続けた。
「いや!いっぱい食べるのは悪いことじゃないぞ!むしろ良いことだ!」
「えっ……?そうなんです……か?」
(なんか話が嚙み合ってないような……)
私が首を傾げていると、ザインさんが更に言葉を続けた。
「うん!そうだぜ!」
「それは良かったです」
(もしかして……ザインさんは私がたくさん食べる女の子でも引かない人なのかな?)
だとしたら、嬉しいことではある。せっかく仲良くなれたのだから、彼との関係が崩れてしまわないように気をつけなければ。そんなことを考えていると、今度は彼が私に尋ねてくる。
「なあなあ、マリアはどこ出身なんだ?」
「私は……」
◇◇◇◇◇◇◇
あの日以降さらに仲良くなった私たちは、たまに一緒に依頼を受けたりしながらも基本はソロで冒険者活動をする日々を過ごしていた。
神聖力のおかげでどんどん簡単に依頼をこなすことができたおかげで、私の冒険者ランクはどんどん上昇。
1ヶ月も経つ頃には、Dランクの冒険者へと格上げされていた。最初は1ヶ月もあればAランクくらい余裕だろうとナメていたのだが、全然無理でした。反省します。
と、そんなわけでDランクになった私だが、かなり異例の速度でランクを上げているらしく、少し注目されているのを感じる。たまに指名の依頼なんかもあったりするくらいで、Dランクに指名依頼が来るのは少し珍しいことなのだそう。
(って言っても、殆どが治療の依頼なんだけどね……)
とあることがきっかけに治癒能力が使えることがバレてから、たまに指名の依頼が入るのだ。実際に今も、依頼主の屋敷に向かっているところである。なんでも、魔獣に襲われて怪我を負ったらしく、急いで治して欲しいとのことだ。
(それにしても……どんな人なんだろう?)
私は依頼主の顔を思い浮かべるが、まだ一度も会ったことがない。そのためどんな人物なのか少し不安だった。でもまあ、会ってみれば分かるだろうと割り切って歩みを進めることにしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇
「ああ、君がマリアくんだね?よろしく頼むよ」
(えっ!?ちょっと待って!!この人ってまさか……)
その姿を見て私は驚いてしまう。なぜなら、目の前にいる人物は、貴族の間でもかなり有名な人物だったからだ。
(まさかとは思っていたけど、当主本人が……)
そう……私の目の前に現れたのは、この伯爵家の当主であるグイード・フォン・シュティーム伯爵。そして、私に治療を依頼した相手でもあるのだ。
(……この人って本当に凄い人なんだよね?)
私は彼の評判について思い出していた。彼はその優しい性格と紳士的な振る舞いから貴族だけでなく庶民からも慕われているという話を聞いたことがある。しかも、この国の騎士団団長を務めるほどの実力者で、その実力は折り紙付きなのだそうだ。
(そんな人がなんでわざわざ私に指名を?)
私は不思議に思うが、とりあえず依頼をこなしてしまおうと治癒を始めることにする。
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