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終電を逃したらオオカミおじさんと一緒に寝る羽目になった件2
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背中からじんわりと伝わる温もり。頭頂部をブラシでくすぐられる感触。1/fゆらぎが僕を優しく抱きしめる。
このままずっと眠っていたい、そう思いながら自らの胸に手をやると、わしゃっという見慣れない感触がした。
え。なにこれ。疑問符を浮かべながら、手の中のミンクの手触りを確かめる。少し骨ばっているが、やわやわと揉みしだくとそれは解れていって、イソギンチャクのように花を開かせる。
「うえっ!?」
弛緩しきっていたイソギンチャクが、明確な意思をもって僕の手を捕食しようと食らいつく。
「ふふ、おはよう」
頭上15センチから届いたオオカミの声。ああそうだった。シナプスが電気回路を形成し、ビデオレコーダーの再生ボタンを押した。ベンチに座って寝ていたオオカミ。くたびれたスーツに人の好さそうな目尻の下がった笑顔。中年太りなのか少したるんだお腹と、その下には……
「お、大上さん!」
反射的にその名前を叫んだ。大上さんはというと、欠伸を噛み殺しながら呑気な声でもう一度僕におはようと声をかける。
「いや、あの、そうじゃなくて!」
「花房くんも今日休みでしょ? まだ早いからゆっくりしていこうよ」
そうなんです、僕も土日はバイト休みなんですよね。昨日ホテルに向かう道すがら、そんなことも話したなぁ。
「って! 違うくて……」
握られたままの右手の表面が噴出した汗で湿っていく。
「なっ、なんで裸……しかも抱き合っ、てるんですか」
昨夜の痴態を思い出すと、体温が急上昇して手汗のみならず全身の汗腺が開いていく。大上さんに勃起したちんぽを見せつけて、見られながら射精してしまった。腹の上には僕の精液と大上さんのそれが混じり合った水たまりを作って、そのほんのりとした温もりに安らぎさえ覚えた。
そうだ、精液。依然握られたままの右手を諦めて左手で自分の下腹部を探る。初めて夢精した日の、陰毛にこびりついてガビガビになったあの感触はしなかった。鼻をつく栗の花の匂いもしない。
「綺麗にしておいたから大丈夫だよ」
心の声を見透かしたように大上さんがそう言った。
「こうしていると落ち着くなぁ」
僕を抱きくるめたまま、大上さんはうなじの辺りに鼻を寄せてすぴすぴと匂いを嗅ぐ。湿った鼻先の冷たい感触に一瞬身体を強張らせるが、すぐに全身を包む温かさでそれも解れていった。
まずい、勃ってきた……
勃起を悟られまいと腰を引きながら、拘束から逃げ出そうと身体をよじってみるも思いのほか僕を捕らえるその力は強い。
「ごめん、嫌だった?」
「そうじゃなくて、その、えと」
僕の顔は今、茹蛸のように真っ赤になっているだろう。耳の先にひりひりとした疼痛。
「花房くんは元気だね」
目ざといオオカミの声に心臓が大きく跳ね上がる。ちんぽは痛いくらいに勃起して、先端からとろりと蜜が垂れる。穴があったら入りたい。このまま昨日のように……浮かんだよこしまな考えを頭を振って追い払う。
「しゃ、シャワー、浴びてきますっ!」
そう言って勢いよく身体を起こすと、鎖を断ち切って浴室へと向かう。背後からは大上さんが少し不満そうに鼻を鳴らす音。歩くたびに股間のちんぽが揺れて、カーペットに先走りが零れた。
大上さんへの罪悪感と、ちょっぴりの期待をかき消すように無心でシャンプーを泡立てた。
『こんばんは。今日はだいぶん暖かかったですね』
晩御飯を食べた後、スマートフォンのメッセージングアプリを開いてテキストを打ち込む。
『そうだね、僕らみたいなのはそろそろ半袖でもいいぐらいかな』
さすがにまだ4月初旬。冗談のつもりなのだろうか。でもあれだけ毛に覆われている獣人の事だから、本気で言っている節もある。どう返したものか考えあぐねた挙句、話題を変えることにした。
『大上さんはまだお仕事ですか?』
あれから、連絡先を交換した僕たちは時々こうして他愛のない話をする。初めのうちは、お互いの趣味だとか出身地、好きなテレビ番組の事なんかを夜遅くまで話したものだけど、最近は天気だとかニュースだとか、当たり障りのない会話になっていた。それでも、大上さんは律儀に返事を返してくれるのだった。
『今日はもう家だよ。花房くんもお家かな?』
『はい、ご飯も食べてベッドでゴロゴロしているところです』
その発言が既読になった後、会話が途絶えた。こういう時、もっと上手く話しを広げられればいいのだけれど。このままアプリを閉じて寝てしまうのもやぶさかでは無かったが、頭の中で大上さんを、あの日の出来事を思い出すと、欲望が鎌首をもたげ始める。
アレはお互いに勢いで、なんというか変な空気に飲まれてそういう事をしただけだ。獣人は全身毛に覆われているから裸になる事にそこまで抵抗も無いと聞くし、男同士のノリというのもあるだろう。だから、別に大上さんは性的な感情でああいう事をした訳では無いだろう。
だから、もしかしたら気持ち悪がられるかもしれない。スルーされるかもしれない。それでも、指先から滲み出た欲望が震えながら送信ボタンを押した。
『暇な時ってムラムラしちゃったりしますよね』
これぐらいなら普通、普通の会話のはずだ。
『あーわかる。授業中に立ったりしちゃったりね』
若かりし頃の大上さんが、勃起を隠そうと腰を引いている姿を想像すると少し可笑しかった。
『休みの日なんて1日3回抜くとかザラだったなぁ』
その追撃に、じわりと下腹部が疼いた。ただの下ネタ、よくある話ではあるけど大上さんが言っているのだと考えると鼓動が早くなる。
『僕も十代の頃はそれぐらいでした』
緊張で胃酸が過剰に分泌されてむかつきを覚える。
『今もちょっとムラムラしちゃって、これから抜こうかななんて』
その言葉に偽りは無い。現に僕のちんぽはズボンを押し上げて、恐らくはパンツに染みを作っている。しかしいくらなんでも、これからオナニーをするなんて宣言は不味かっただろうか。
今ならまだ、ただの冗談、バカ話にできる。引き返すことができる。その考えとは裏腹に、僕はやおらズボンを脱ぎ去ってトランクス一枚となる。押し上げられた布地に腫れあがった亀頭が張り付いてその形を強調している。
『さすが元気だね ^_^』
顔文字にジェネレーションギャップを感じながらも、先日勃起している所を見られた時に同じ台詞を言われた事を思い出して興奮が高まっていく。
トランクスの上からちんぽを揉みしだくと、指先にニチャリと先走りが絡みついた。頭の中が性欲に支配されていく。大上さんにまた勃起を見られたい。大きなちんちんだね。真面目そうなあのオオカミの口から放たれたその言葉が何度も何度も頭の中で反響して、きゅっと心臓が痛くなる。
大上さんはいい人だ。年の離れた知り合いというよりかは、友人のような。僕のくだらない世間話やちょっとした悩みにも真摯に向き合ってくれる。きっと大人から見ると、僕みたいな若造の悩みなんてくだらない事なんだろう。誰もが一度は通る道を、まるで自分だけが味わう苦難のように騒ぎ立てる僕に、否定するでも叱咤する訳でもなく同じ目線で向き合ってくれる。この半月にも満たない短い期間だけれども、僕の中で彼の存在は着実に大きくなっていた。だからこうして、大上さんを自分の欲望のために、性のはけ口として利用しようとしている事に罪悪感を感じる。
頭の中で高尚な事を考えているふりをしながら、指先は性欲という寄生虫に乗っ取られて僕の意思と無関係に動き出す。
カメラマークをタップすると、画面いっぱいに僕の股間が写し出された。息が苦しい。手振れ補正なんてまるで無意味なくらいに手が震える。画面の中の、湿って色が変わったトランクスの山の頂上をタップすると、一拍おいてからぼやけていた視界が鮮明に布地を捕らえた。
カシャッ
喉がヒリヒリと渇く。眩暈がする。込み上げた胃酸をぶちまけそうになりながら、僕は送信ボタンを押した。
無限の時間が経過した後、既読という文字が小さく表示された。その瞬間頭からサアッと血の気が引いていく。嫌悪の言葉を投げつけられるだろうか、それともこのままブロックされるだろうか。
『こんなになってます』
この期に及んで言い訳にもならない言葉を並べた。また既読という文字が表れて、世界が凍り付く。瞬きの仕方を忘れてしまって角膜が乾燥していく。視界が滲んでぐるりと回転し始めた頃、画面が僅かにスクロールした。
『先っちょ濡れちゃってるね』
思わず射精したのかと思う程の電撃が背中を貫く。脳に過剰に送り込まれた酸素が視界を狭めて暗闇を作る。豚のように鼻の穴を広げ、荒い息を吐きながら僕は熱に浮かされたようにトランクスを脱ぎ去った。空気に晒されたちんぽはビクビクと脈動し、トランクスに散々先走りを吸い取られたというのに次から次へと先走りを垂らして先端を光らせる。
2回目のシャッター音。1200万画素で記録された赤黒い勃起ちんぽ。もし、これを送ったらもう言い逃れは出来ない。深呼吸をして、冷蔵庫から取り出したお茶を一口飲んで、またベッドに腰掛ける。目をつぶって神託を待ち望む群衆の気持ちでそのボタンを押した。
『またちんちん見せてくれるんだね』
その言葉が腹を撫でる。僕が犬だったら、尻尾を千切れんばかりに振って涎を垂らしていただろう。
『すみません、こんなもの見せてしまって』
悪いなんて微塵も思っていない、上っ面の謝罪。大上さんならきっと僕の欲望を受け止めてくれる。そんな放漫な考えで信頼を汚していく。
『綺麗なちんちんだよ』
無意識のうちに左手でちんぽをしごきだす。先走りがローションとなってチュクチュクと音を立てる。大上さんにちんぽを見られている。きっと今までそんなモノを映した事が無いであろう、大上さんのスマートフォンの画面が勃起したちんぽで埋め尽くされている。
気を抜けば射精してしまいそうな快楽をこらえながら、今度はスマートフォンをちんぽの正面に置く。インカメラに切り替えてから、位置とピントを調整してからシャッターを切る。ちんぽを正面から見上げるようなアングルで、目の前に先走りの垂れる亀頭が迫る構図。
もはや送信に躊躇は無かった。僕は目をつぶり、僕の前に跪いてちんぽを見上げる大上さんを想像した。つう、と垂れた先走りが大上さんの真っ黒な鼻に落ちる。ちんぽから発せられる焼けるような熱で気化したものも相まって、大上さんの嗅細胞はちんぽの匂いで支配されているだろう。
『わ、すごいエッチだね』
くんくんとちんぽを嗅いでから、恍惚の表情で大上さんが呟いた。上目遣いに僕を見るその目は、欲望にギラつきながらも寛容さを持って僕を受け入れる。ちんぽを扱き上げる度に先走りが白く泡立つ。
『ちんちん気持ちいいです』
大上さんの目に僕の腫れあがったちんぽを焼き付けたい。ちんぽを扱いて気持ちよくなっている所を見られたい。目の前で射精したい。そして、もし、もし可能なら……
『大きくてエッチなちんちんだね』
思わず喘ぎ声が漏れる。大上さんのスマートフォンの予測変換すらも汚していくことに背徳と悦びを感じる。指先は粘度の高い液体に濡れ、ちんぽは根本までそれにコーティングされている。
僕は空いた方の手で大上さんの後頭部を掴み引き寄せる。抵抗も無くちんぽに導かれた鼻先が亀頭にピタリと触れる。その冷たさに一瞬腰を引くものの、更に押し付けるようにして大上さんのマズルの上を滑らせるようにちんぽを乗せる。
オオカミの太いマズルの上で、勃起したちんぽが脈を打つ。大上さんは寄り目気味になりながらも僕のちんぽを凝視し、だらしなく開けた口から舌をはみ出させてじっとりとしたため息を吐く。生暖かい風がキンタマの毛を揺らして、射精感が込み上げてくる。
『いきそうです』
そう送った後、ちんぽを擦る手の動きが加速させる。快楽の波が身体を上り、秒読みの段階に入る。僕は素早くビデオモードを起動させて録画アイコンを押した。ポンという小さな音とともに、画面の左上で時間が刻まれていく。
ちゅこちゅこちゅっ、くちゅ
「あぁ、いっちゃう……」
にゅち、くちゅっちゅぴっ
「大上さん……ちんちんいっちゃうっ」
びゅっ、ぷびゅっ
「あっ、あ、イクとこ見られてる」
びゅびゅっ、びゅーっ、ぱたたっ
深呼吸を繰り返していると、頭の中に理性が徐々に帰ってくる。背筋に張り付いた悪寒を押しとどめながら、録画を停止して思い切って送信ボタンを押すと、電源ボタンを軽く押して画面を消す。
ベッドのシーツの上で大きな水たまりを作る精液を眺めながら、僕は死にたい衝動に駆られていた。萎えたちんぽから糸を引くように精液が垂れる。ため息を吐いてから、ティッシュを4、5枚手繰り寄せて精液の池に被せると急速に水分が吸い取られていく。シーツは明日洗濯しよう……
すっかり萎え切ったちんぽをティッシュで拭くとまるで恥垢のように張り付いて、萎えたちんぽを一層情けなく見せた。僕はなんて事をしでかしたんだろう。こんなの丸っきり変態じゃないか。
このまま何もかも忘れ去って眠りたい気持ちと、大上さんに一言謝りたいという気持ちがぐるぐると回る。謝るなら早いほうがいい。このまま気まずくなって疎遠になるなんて嫌だ。意を決してスリープを解除する。画面を見るのが怖い。
『すごい、たくさん出たね!』
その言葉に続いて画像が一枚。
大きな手のひらの上でだらりと萎え切ったオオカミのちんぽと、肉球まで染め上げる精液。
『僕も出ちゃった』
簡素なメッセージと、それに続く照れた顔のスタンプ。
自分でも驚くくらいに素早い動きで画像を保存した後、もう一度画像を開く。ちんぽに血流が送り込まれて芯を持っていくのがわかる。
『保存しました』
『もう、恥ずかしいから……』
拒否はしないんだな。思わず顔がにやけてしまう。
それから、大上さんの射精画像をオカズにしてもう一発抜くと、結構いい時間になっていた。
『そろそろ寝ますね』
『うん、おやすみ』
少しだけ迷った後、最後にもう一言メッセージを送る。
『もしよかったら、今度の休みに会いませんか?』
画面の中のクマがサムズアップをしていた。
このままずっと眠っていたい、そう思いながら自らの胸に手をやると、わしゃっという見慣れない感触がした。
え。なにこれ。疑問符を浮かべながら、手の中のミンクの手触りを確かめる。少し骨ばっているが、やわやわと揉みしだくとそれは解れていって、イソギンチャクのように花を開かせる。
「うえっ!?」
弛緩しきっていたイソギンチャクが、明確な意思をもって僕の手を捕食しようと食らいつく。
「ふふ、おはよう」
頭上15センチから届いたオオカミの声。ああそうだった。シナプスが電気回路を形成し、ビデオレコーダーの再生ボタンを押した。ベンチに座って寝ていたオオカミ。くたびれたスーツに人の好さそうな目尻の下がった笑顔。中年太りなのか少したるんだお腹と、その下には……
「お、大上さん!」
反射的にその名前を叫んだ。大上さんはというと、欠伸を噛み殺しながら呑気な声でもう一度僕におはようと声をかける。
「いや、あの、そうじゃなくて!」
「花房くんも今日休みでしょ? まだ早いからゆっくりしていこうよ」
そうなんです、僕も土日はバイト休みなんですよね。昨日ホテルに向かう道すがら、そんなことも話したなぁ。
「って! 違うくて……」
握られたままの右手の表面が噴出した汗で湿っていく。
「なっ、なんで裸……しかも抱き合っ、てるんですか」
昨夜の痴態を思い出すと、体温が急上昇して手汗のみならず全身の汗腺が開いていく。大上さんに勃起したちんぽを見せつけて、見られながら射精してしまった。腹の上には僕の精液と大上さんのそれが混じり合った水たまりを作って、そのほんのりとした温もりに安らぎさえ覚えた。
そうだ、精液。依然握られたままの右手を諦めて左手で自分の下腹部を探る。初めて夢精した日の、陰毛にこびりついてガビガビになったあの感触はしなかった。鼻をつく栗の花の匂いもしない。
「綺麗にしておいたから大丈夫だよ」
心の声を見透かしたように大上さんがそう言った。
「こうしていると落ち着くなぁ」
僕を抱きくるめたまま、大上さんはうなじの辺りに鼻を寄せてすぴすぴと匂いを嗅ぐ。湿った鼻先の冷たい感触に一瞬身体を強張らせるが、すぐに全身を包む温かさでそれも解れていった。
まずい、勃ってきた……
勃起を悟られまいと腰を引きながら、拘束から逃げ出そうと身体をよじってみるも思いのほか僕を捕らえるその力は強い。
「ごめん、嫌だった?」
「そうじゃなくて、その、えと」
僕の顔は今、茹蛸のように真っ赤になっているだろう。耳の先にひりひりとした疼痛。
「花房くんは元気だね」
目ざといオオカミの声に心臓が大きく跳ね上がる。ちんぽは痛いくらいに勃起して、先端からとろりと蜜が垂れる。穴があったら入りたい。このまま昨日のように……浮かんだよこしまな考えを頭を振って追い払う。
「しゃ、シャワー、浴びてきますっ!」
そう言って勢いよく身体を起こすと、鎖を断ち切って浴室へと向かう。背後からは大上さんが少し不満そうに鼻を鳴らす音。歩くたびに股間のちんぽが揺れて、カーペットに先走りが零れた。
大上さんへの罪悪感と、ちょっぴりの期待をかき消すように無心でシャンプーを泡立てた。
『こんばんは。今日はだいぶん暖かかったですね』
晩御飯を食べた後、スマートフォンのメッセージングアプリを開いてテキストを打ち込む。
『そうだね、僕らみたいなのはそろそろ半袖でもいいぐらいかな』
さすがにまだ4月初旬。冗談のつもりなのだろうか。でもあれだけ毛に覆われている獣人の事だから、本気で言っている節もある。どう返したものか考えあぐねた挙句、話題を変えることにした。
『大上さんはまだお仕事ですか?』
あれから、連絡先を交換した僕たちは時々こうして他愛のない話をする。初めのうちは、お互いの趣味だとか出身地、好きなテレビ番組の事なんかを夜遅くまで話したものだけど、最近は天気だとかニュースだとか、当たり障りのない会話になっていた。それでも、大上さんは律儀に返事を返してくれるのだった。
『今日はもう家だよ。花房くんもお家かな?』
『はい、ご飯も食べてベッドでゴロゴロしているところです』
その発言が既読になった後、会話が途絶えた。こういう時、もっと上手く話しを広げられればいいのだけれど。このままアプリを閉じて寝てしまうのもやぶさかでは無かったが、頭の中で大上さんを、あの日の出来事を思い出すと、欲望が鎌首をもたげ始める。
アレはお互いに勢いで、なんというか変な空気に飲まれてそういう事をしただけだ。獣人は全身毛に覆われているから裸になる事にそこまで抵抗も無いと聞くし、男同士のノリというのもあるだろう。だから、別に大上さんは性的な感情でああいう事をした訳では無いだろう。
だから、もしかしたら気持ち悪がられるかもしれない。スルーされるかもしれない。それでも、指先から滲み出た欲望が震えながら送信ボタンを押した。
『暇な時ってムラムラしちゃったりしますよね』
これぐらいなら普通、普通の会話のはずだ。
『あーわかる。授業中に立ったりしちゃったりね』
若かりし頃の大上さんが、勃起を隠そうと腰を引いている姿を想像すると少し可笑しかった。
『休みの日なんて1日3回抜くとかザラだったなぁ』
その追撃に、じわりと下腹部が疼いた。ただの下ネタ、よくある話ではあるけど大上さんが言っているのだと考えると鼓動が早くなる。
『僕も十代の頃はそれぐらいでした』
緊張で胃酸が過剰に分泌されてむかつきを覚える。
『今もちょっとムラムラしちゃって、これから抜こうかななんて』
その言葉に偽りは無い。現に僕のちんぽはズボンを押し上げて、恐らくはパンツに染みを作っている。しかしいくらなんでも、これからオナニーをするなんて宣言は不味かっただろうか。
今ならまだ、ただの冗談、バカ話にできる。引き返すことができる。その考えとは裏腹に、僕はやおらズボンを脱ぎ去ってトランクス一枚となる。押し上げられた布地に腫れあがった亀頭が張り付いてその形を強調している。
『さすが元気だね ^_^』
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大上さんはいい人だ。年の離れた知り合いというよりかは、友人のような。僕のくだらない世間話やちょっとした悩みにも真摯に向き合ってくれる。きっと大人から見ると、僕みたいな若造の悩みなんてくだらない事なんだろう。誰もが一度は通る道を、まるで自分だけが味わう苦難のように騒ぎ立てる僕に、否定するでも叱咤する訳でもなく同じ目線で向き合ってくれる。この半月にも満たない短い期間だけれども、僕の中で彼の存在は着実に大きくなっていた。だからこうして、大上さんを自分の欲望のために、性のはけ口として利用しようとしている事に罪悪感を感じる。
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カシャッ
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無限の時間が経過した後、既読という文字が小さく表示された。その瞬間頭からサアッと血の気が引いていく。嫌悪の言葉を投げつけられるだろうか、それともこのままブロックされるだろうか。
『こんなになってます』
この期に及んで言い訳にもならない言葉を並べた。また既読という文字が表れて、世界が凍り付く。瞬きの仕方を忘れてしまって角膜が乾燥していく。視界が滲んでぐるりと回転し始めた頃、画面が僅かにスクロールした。
『先っちょ濡れちゃってるね』
思わず射精したのかと思う程の電撃が背中を貫く。脳に過剰に送り込まれた酸素が視界を狭めて暗闇を作る。豚のように鼻の穴を広げ、荒い息を吐きながら僕は熱に浮かされたようにトランクスを脱ぎ去った。空気に晒されたちんぽはビクビクと脈動し、トランクスに散々先走りを吸い取られたというのに次から次へと先走りを垂らして先端を光らせる。
2回目のシャッター音。1200万画素で記録された赤黒い勃起ちんぽ。もし、これを送ったらもう言い逃れは出来ない。深呼吸をして、冷蔵庫から取り出したお茶を一口飲んで、またベッドに腰掛ける。目をつぶって神託を待ち望む群衆の気持ちでそのボタンを押した。
『またちんちん見せてくれるんだね』
その言葉が腹を撫でる。僕が犬だったら、尻尾を千切れんばかりに振って涎を垂らしていただろう。
『すみません、こんなもの見せてしまって』
悪いなんて微塵も思っていない、上っ面の謝罪。大上さんならきっと僕の欲望を受け止めてくれる。そんな放漫な考えで信頼を汚していく。
『綺麗なちんちんだよ』
無意識のうちに左手でちんぽをしごきだす。先走りがローションとなってチュクチュクと音を立てる。大上さんにちんぽを見られている。きっと今までそんなモノを映した事が無いであろう、大上さんのスマートフォンの画面が勃起したちんぽで埋め尽くされている。
気を抜けば射精してしまいそうな快楽をこらえながら、今度はスマートフォンをちんぽの正面に置く。インカメラに切り替えてから、位置とピントを調整してからシャッターを切る。ちんぽを正面から見上げるようなアングルで、目の前に先走りの垂れる亀頭が迫る構図。
もはや送信に躊躇は無かった。僕は目をつぶり、僕の前に跪いてちんぽを見上げる大上さんを想像した。つう、と垂れた先走りが大上さんの真っ黒な鼻に落ちる。ちんぽから発せられる焼けるような熱で気化したものも相まって、大上さんの嗅細胞はちんぽの匂いで支配されているだろう。
『わ、すごいエッチだね』
くんくんとちんぽを嗅いでから、恍惚の表情で大上さんが呟いた。上目遣いに僕を見るその目は、欲望にギラつきながらも寛容さを持って僕を受け入れる。ちんぽを扱き上げる度に先走りが白く泡立つ。
『ちんちん気持ちいいです』
大上さんの目に僕の腫れあがったちんぽを焼き付けたい。ちんぽを扱いて気持ちよくなっている所を見られたい。目の前で射精したい。そして、もし、もし可能なら……
『大きくてエッチなちんちんだね』
思わず喘ぎ声が漏れる。大上さんのスマートフォンの予測変換すらも汚していくことに背徳と悦びを感じる。指先は粘度の高い液体に濡れ、ちんぽは根本までそれにコーティングされている。
僕は空いた方の手で大上さんの後頭部を掴み引き寄せる。抵抗も無くちんぽに導かれた鼻先が亀頭にピタリと触れる。その冷たさに一瞬腰を引くものの、更に押し付けるようにして大上さんのマズルの上を滑らせるようにちんぽを乗せる。
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『いきそうです』
そう送った後、ちんぽを擦る手の動きが加速させる。快楽の波が身体を上り、秒読みの段階に入る。僕は素早くビデオモードを起動させて録画アイコンを押した。ポンという小さな音とともに、画面の左上で時間が刻まれていく。
ちゅこちゅこちゅっ、くちゅ
「あぁ、いっちゃう……」
にゅち、くちゅっちゅぴっ
「大上さん……ちんちんいっちゃうっ」
びゅっ、ぷびゅっ
「あっ、あ、イクとこ見られてる」
びゅびゅっ、びゅーっ、ぱたたっ
深呼吸を繰り返していると、頭の中に理性が徐々に帰ってくる。背筋に張り付いた悪寒を押しとどめながら、録画を停止して思い切って送信ボタンを押すと、電源ボタンを軽く押して画面を消す。
ベッドのシーツの上で大きな水たまりを作る精液を眺めながら、僕は死にたい衝動に駆られていた。萎えたちんぽから糸を引くように精液が垂れる。ため息を吐いてから、ティッシュを4、5枚手繰り寄せて精液の池に被せると急速に水分が吸い取られていく。シーツは明日洗濯しよう……
すっかり萎え切ったちんぽをティッシュで拭くとまるで恥垢のように張り付いて、萎えたちんぽを一層情けなく見せた。僕はなんて事をしでかしたんだろう。こんなの丸っきり変態じゃないか。
このまま何もかも忘れ去って眠りたい気持ちと、大上さんに一言謝りたいという気持ちがぐるぐると回る。謝るなら早いほうがいい。このまま気まずくなって疎遠になるなんて嫌だ。意を決してスリープを解除する。画面を見るのが怖い。
『すごい、たくさん出たね!』
その言葉に続いて画像が一枚。
大きな手のひらの上でだらりと萎え切ったオオカミのちんぽと、肉球まで染め上げる精液。
『僕も出ちゃった』
簡素なメッセージと、それに続く照れた顔のスタンプ。
自分でも驚くくらいに素早い動きで画像を保存した後、もう一度画像を開く。ちんぽに血流が送り込まれて芯を持っていくのがわかる。
『保存しました』
『もう、恥ずかしいから……』
拒否はしないんだな。思わず顔がにやけてしまう。
それから、大上さんの射精画像をオカズにしてもう一発抜くと、結構いい時間になっていた。
『そろそろ寝ますね』
『うん、おやすみ』
少しだけ迷った後、最後にもう一言メッセージを送る。
『もしよかったら、今度の休みに会いませんか?』
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