偽りの魔女様は静かに暮らしたい ~魔力0なのに伝説の大魔女あつかいされて困ってます~

奇怪GX

文字の大きさ
上 下
12 / 32

第12話 レベルが上がらなくて困ってます(前編)

しおりを挟む
 最近何かと面倒ごとに巻き込まれそうになりがちなアリアは、いざというときのために箒の魔導具を扱う練習を行っている。
 そして今日もアリアは、その練習のために箒を振り回して風のマナをかき集めている模様。

「よし、マナはこれくらいでいいかな。さて、今日はどんな魔法を試そうか、うーん……」

 アリアは箒を眺めながら考えこんでいる。
 そして、何かを思いついた模様。

「これ、いけるかな?」

 アリアは横向きにした箒の上に腰かけた。
 そしてその状態で箒から風を噴出させる。

「えいっ!」

 するとアリアを乗せたその箒は、勢いよく空中に飛び上がったのである。

「わあぁぁっ! ……と…飛べた? だめもとで試してみただけなんだけど、ほんとに飛べちゃった?」

 どうやらアリアは、魔導具の箒で空を飛ぶ魔法を編み出してしまったようである。

「わぁぁ、すっごーい。いつまでも飛んでいられる……。そっか、箒で飛んでいると自動的にマナがかき集められるから、ずっと飛んでいられるのかも」

 そう、大気中に含まれる風のマナは高度の高い場所ほど濃い傾向があるため、一定以上の高さ、一定以上のスピードで飛んでいる間は、飛行に必要な風のマナが切れることはないのである。

 そしてしばらくの間、魔女の館の上空をぐるぐると飛び続けていたアリアは、だんだんこの箒で飛ぶことが楽しくなってきて、せっかくだからちょっと遠出でもしてみよう…などと思いいたってしまった模様。

「ええっと、どこに行こうかなー…」

 そんなことを言いながらアリアは空中で辺りをぐるっと見回す。
 すると、アリアの目にあるものが映り込んでしまった。
 それは、リッカがユヅキを連れて行ってしまったと思われる、強い魔物がうようよといる山。

「あー……」

 アリアはその山を目にしてしまったことで、先ほどまでの楽しい気持ちが一気に失せてしまった。
 そしてそれと同時に、ユヅキへの心配の気持ちが大きくなってくる。

「ユヅキさん、大丈夫かな。町に戻って来てる様子もないし、ちょっと様子を見に行ったほうがいいのかな」

 こうしてアリアは、その山のほうへと向けて箒を飛ばすのであった。


 魔女の館から例の山までは、普通に歩けば結構な距離であるものの、箒に乗って飛んでいるアリアにとってはあっという間。
 こうして山の近くまでやってきたアリアは、さっそくユヅキを探すために辺りを見回した。

「ユヅキさん、まだここにいるのかな。もう帰ってくれてればいいんだけど……」

 だが、ユヅキはまだ帰ってはいなかった。
 今ちょうど山から下りてきたところで、何かから逃げるように必死に走っている模様。

「きゃあぁぁぁっ!」
「ブゴォォォッ!」

 必死に走るユヅキの背後に見えるのは、豚の獣人系魔物、オーク。
 オークはたとえ異種族であっても異性に対してはひどく興奮し追い回してくる習性があるため、一度見つかってしまったら逃げ切るのは困難。

 この状況を切り抜けるためには、もうオークを倒す以外にないのだが、ユヅキがここまで必死に逃げている…ということは、まだオークを倒せるほどのレベルにはなっていないということ。
 そしてリッカの姿も近くには見当たらない。

「あわわわわわわっ! どうしてリッカさん、ユヅキさんを一人にしてるんですかっ!」

 さすがにこのままではまずいと思ったアリアは、箒をユヅキのそばまで寄せていった。

「大丈夫ですか?ユヅキさん」
「アリアさんっ! 私もう、これ以上は足がっ…」
「ユヅキさん、つかまってください!」

 すでに足が限界に達しているユヅキを助けるために、アリアは箒の上から手を伸ばした。
 そして、ユヅキはその手を取って箒に飛び乗った……が、この箒で集めたマナは人の持つ魔力に触れると霧散してしまう。

 ユヅキは魔法の存在しない世界から来た人間であるため、元々は魔力を持っていなかったが、勇者としてのレベルを一つ上げてしまっているため、そのときにわずかばかりの魔力を獲得している。
 つまり…

「えっ? あわっ…わわわっ!」
「アリアさ…」
「きゃあぁぁぁっ!」
「わあぁぁぁっ!」

 箒の中にたまっていた魔力は全て消し飛んでしまい、二人は地面に墜落することになるのであった。

「ブゴゴゴゴゴゴ……」

 アリア&ユヅキ、絶体絶命。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

無能鑑定人のムューラ

ファンタジー
そう、私は無能力者!国お墨付きの魔力皆無認定、つまり捜査を荒らさない前提とした無魔力者としての捜査を可能とする特殊職! 通称は特無官、呼び方は様々。国政機関である。 浮世離れというのだろうか。どこか変、そんな彼女がさまざまな魔術的介入のない難事件を解決していく!

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...