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騎士様は魔女を放さない
魔女の求めるもの
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「最近なかなか共に過ごす時間が取れなくて、すまないと思っている」
「謝らないでください。元はと言えば、私が引き起こしたような事件でーーこちらこそ、申し訳ないです」
「ニーナこそ、謝らないでくれ」
エルートたちはあれから、事件の収集に追われていた。カルニックの証言を得て、森の中から患者を救い出している。残念ながら全員ではないが、発見された人々は、今は王都で療養しているそうだ。
エルートやレガットは、実際に現場を目撃した者として、捜索に加えて報告書にも追われているという。
その他にも、魔獣が瘴気から生まれることを前提にした対応策の模索など、私にはよくわからないが、とにかくやることが山積みなのだそうだ。
「はあ……美味い。悪いな、これもわざわざ取り置いてもらって。片付けが面倒だろうに」
「明日の朝、朝食の食器と合わせて洗うから大丈夫ですよ」
エルートは、すっかり冷えてしまった肉を切り分けて食べる。
最近のエルートは帰りが遅いので、食堂の空いている時間に戻って来られないのだ。アテリアに頼んで取り置いてもらったものを、私がエルートの部屋に運んでいる。
アテリアの料理は冷えても美味しいけれど、脂が強く舌に残るのが惜しい。だから、薬草を多めに振りかけている。
無言で食べている間も、エルートから放たれる匂いは、あちらこちらに飛んでいる。難しい顔をして、仕事のことを考えているのだ。そんな真面目な顔もーー好きだ、と思う。
自覚すると胸がときめき、何だか彼の顔を直視できない。つい視線を逸らしてしまう。
「ニーナ」
名を呼ばれてそちらを見ると、皿の上はもう空っぽだった。口元を手巾で拭い、エルートが真っ直ぐに見つめてくる。
「俺は不誠実な恋人だ」
恋人、という単語を聞くだけで、胸がきゅんと狭くなる。エルートは、私の恋人なのだ。私も、彼の。
それは確かなのだけれど、なんだかまだ実感が伴わなくて、ただふわふわと嬉しい気持ちになる。
「正式な婚約もまだなら、家も買っていない。結婚の算段もついていない。こんな体たらくでは、殴られても仕方ない」
「殴りませんよ」
「君は心が広すぎる。甲斐性なしと殴って然るべきだ」
「……殴られたいと仰っても、殴りませんよ?」
求められたからと言って、全て応えるのはやめると決めたのだ。私が言うと、エルートは口元を緩める。笑ってくれて、少しほっとした。
「そうだな。俺だって、君に殴られたいわけではない」
「私も殴りたくはありません。甲斐性なしだとも思っていませんし……エルートさんはお忙しいのですから、先のことを、急がなくても」
言いながら、自分は何を言っているのだ、と恥ずかしくなる。「先のこと」って、いったい何を指しているのだと。まるで、彼の言う正式な婚約や結婚が、既定路線みたいじゃないか。奢っているようで、恥ずかしい。
多くを求めるつもりはない。彼と気持ちが通じ合っただけで、私は充分に幸せだ。
「俺が急ぎたいんだ」
「……あ」
その瞬間、エルートの匂いがふっと消えた。
匂いが消えるという、現象。その原因を私はもう知っているから、だからこそ、鼓動が余計に高鳴った。
今、彼が求めているものは。
「どうした、急に驚いたような顔を……まさか」
エルートが、自分の騎士服の襟元を引き、鼻に当てる。そんなことをしても、彼にはわからないのに。
ただ、「私が気づいた」ということに、彼が気づいたのはわかった。頬が熱い。目が合った彼は、困ったように眉尻を垂らしていた。
「……俺の匂いが、消えたんだな?」
「すみません、変な反応をして……」
「いや、すまない……すまない、やましいことを考えたわけではない。君が欲しいというだけで……いや、それも変な意味では」
こんな風にまとまらないことを言うエルートも珍しい。私だけでなく彼も動揺しているのだと思うと、今度はおかしさが込み上げてきた。
「ふふ……嬉しいです、エルートさん」
「嬉しい、のか」
「はい。エルートさんが私を求めてくださるのは……嬉しい、です」
エルートは目を見開き、それから、「俺も嬉しい」と呟いた。
嬉しい。
彼の気持ちも嬉しいし、私の気持ちを、素直に受け止めてもらえることも嬉しい。自覚した感情は、胸の奥から広がり、全身を幸福に満たしてくれる。
「……でも、困りますね。匂いがわからないと、エルートさんのお仕事をお手伝いできません」
「そう、だな」
「何か満たされれば、匂いが戻ってくるのでしょうか。エルートさん、今したいことはありますか?」
「したい、こと……」
エルートは暫く硬直し、ぶんぶんと勢いよく首を左右に振った。
「駄目だ。俺たちは婚前だからな」
「……? 例えばこの間みたいに、その、手を繋ぐ……とか。駄目ですか?」
「すまないニーナ、今俺が口走ったことは忘れてくれ」
視線が泳ぎ、あからさまに動揺しているエルートは、いきなり立ち上がった。私の背を押し、椅子から立たせる。
「匂いが戻るまで、俺と共に討伐に向かうのは避けるよう申し出よう。大丈夫だ、今俺はそれどころではないからな。きちんと手順を整えて、君にも必ず伝える。君を求めるのは、その後にする」
私に言っているようで、なんだかエルートは、自分に言い聞かせているみたいだ。歩かされた私は、エルートの部屋の扉までたどり着く。
「遅くまでありがとう、ニーナ。今日のところは休んでくれ」
「はい。また明日、夕食をお持ちしても?」
「やめておこう。……いや、やはり頼む」
「良かったです。エルートさんと話せないのは、寂しいですから」
見上げた彼の顔は、嬉しそうで、困っているようで、複雑な表情だ。彼のこんな顔を見られることも、嬉しい。何もかもが嬉しくて、浮かれた自分の心に戸惑うくらいだ。
「……俺も、君に会えないのは寂しい」
「ふふ、そうですよね」
言ってから、今のはちょっとずるいな、と思った。私には匂いがわかるから、彼の言葉が真実だとわかってしまうのだ。
「おやすみなさい、エルートさん」
「おやすみ、ニーナ」
ぱたんと扉が閉まり、私は自分の部屋に向かって、薄暗い廊下を歩き出す。
辺りは暗いけれど、気持ちは明るかった。相手の気持ちを信じられること。自分の気持ちを、信じてもらえること。求めていたものが、私自身の手の中にある。
このあと、忙殺されているはずのエルートがとんでもない早さで婚約の準備をし、家を手配することになるのだけれど、それはまた別のお話だ。
「謝らないでください。元はと言えば、私が引き起こしたような事件でーーこちらこそ、申し訳ないです」
「ニーナこそ、謝らないでくれ」
エルートたちはあれから、事件の収集に追われていた。カルニックの証言を得て、森の中から患者を救い出している。残念ながら全員ではないが、発見された人々は、今は王都で療養しているそうだ。
エルートやレガットは、実際に現場を目撃した者として、捜索に加えて報告書にも追われているという。
その他にも、魔獣が瘴気から生まれることを前提にした対応策の模索など、私にはよくわからないが、とにかくやることが山積みなのだそうだ。
「はあ……美味い。悪いな、これもわざわざ取り置いてもらって。片付けが面倒だろうに」
「明日の朝、朝食の食器と合わせて洗うから大丈夫ですよ」
エルートは、すっかり冷えてしまった肉を切り分けて食べる。
最近のエルートは帰りが遅いので、食堂の空いている時間に戻って来られないのだ。アテリアに頼んで取り置いてもらったものを、私がエルートの部屋に運んでいる。
アテリアの料理は冷えても美味しいけれど、脂が強く舌に残るのが惜しい。だから、薬草を多めに振りかけている。
無言で食べている間も、エルートから放たれる匂いは、あちらこちらに飛んでいる。難しい顔をして、仕事のことを考えているのだ。そんな真面目な顔もーー好きだ、と思う。
自覚すると胸がときめき、何だか彼の顔を直視できない。つい視線を逸らしてしまう。
「ニーナ」
名を呼ばれてそちらを見ると、皿の上はもう空っぽだった。口元を手巾で拭い、エルートが真っ直ぐに見つめてくる。
「俺は不誠実な恋人だ」
恋人、という単語を聞くだけで、胸がきゅんと狭くなる。エルートは、私の恋人なのだ。私も、彼の。
それは確かなのだけれど、なんだかまだ実感が伴わなくて、ただふわふわと嬉しい気持ちになる。
「正式な婚約もまだなら、家も買っていない。結婚の算段もついていない。こんな体たらくでは、殴られても仕方ない」
「殴りませんよ」
「君は心が広すぎる。甲斐性なしと殴って然るべきだ」
「……殴られたいと仰っても、殴りませんよ?」
求められたからと言って、全て応えるのはやめると決めたのだ。私が言うと、エルートは口元を緩める。笑ってくれて、少しほっとした。
「そうだな。俺だって、君に殴られたいわけではない」
「私も殴りたくはありません。甲斐性なしだとも思っていませんし……エルートさんはお忙しいのですから、先のことを、急がなくても」
言いながら、自分は何を言っているのだ、と恥ずかしくなる。「先のこと」って、いったい何を指しているのだと。まるで、彼の言う正式な婚約や結婚が、既定路線みたいじゃないか。奢っているようで、恥ずかしい。
多くを求めるつもりはない。彼と気持ちが通じ合っただけで、私は充分に幸せだ。
「俺が急ぎたいんだ」
「……あ」
その瞬間、エルートの匂いがふっと消えた。
匂いが消えるという、現象。その原因を私はもう知っているから、だからこそ、鼓動が余計に高鳴った。
今、彼が求めているものは。
「どうした、急に驚いたような顔を……まさか」
エルートが、自分の騎士服の襟元を引き、鼻に当てる。そんなことをしても、彼にはわからないのに。
ただ、「私が気づいた」ということに、彼が気づいたのはわかった。頬が熱い。目が合った彼は、困ったように眉尻を垂らしていた。
「……俺の匂いが、消えたんだな?」
「すみません、変な反応をして……」
「いや、すまない……すまない、やましいことを考えたわけではない。君が欲しいというだけで……いや、それも変な意味では」
こんな風にまとまらないことを言うエルートも珍しい。私だけでなく彼も動揺しているのだと思うと、今度はおかしさが込み上げてきた。
「ふふ……嬉しいです、エルートさん」
「嬉しい、のか」
「はい。エルートさんが私を求めてくださるのは……嬉しい、です」
エルートは目を見開き、それから、「俺も嬉しい」と呟いた。
嬉しい。
彼の気持ちも嬉しいし、私の気持ちを、素直に受け止めてもらえることも嬉しい。自覚した感情は、胸の奥から広がり、全身を幸福に満たしてくれる。
「……でも、困りますね。匂いがわからないと、エルートさんのお仕事をお手伝いできません」
「そう、だな」
「何か満たされれば、匂いが戻ってくるのでしょうか。エルートさん、今したいことはありますか?」
「したい、こと……」
エルートは暫く硬直し、ぶんぶんと勢いよく首を左右に振った。
「駄目だ。俺たちは婚前だからな」
「……? 例えばこの間みたいに、その、手を繋ぐ……とか。駄目ですか?」
「すまないニーナ、今俺が口走ったことは忘れてくれ」
視線が泳ぎ、あからさまに動揺しているエルートは、いきなり立ち上がった。私の背を押し、椅子から立たせる。
「匂いが戻るまで、俺と共に討伐に向かうのは避けるよう申し出よう。大丈夫だ、今俺はそれどころではないからな。きちんと手順を整えて、君にも必ず伝える。君を求めるのは、その後にする」
私に言っているようで、なんだかエルートは、自分に言い聞かせているみたいだ。歩かされた私は、エルートの部屋の扉までたどり着く。
「遅くまでありがとう、ニーナ。今日のところは休んでくれ」
「はい。また明日、夕食をお持ちしても?」
「やめておこう。……いや、やはり頼む」
「良かったです。エルートさんと話せないのは、寂しいですから」
見上げた彼の顔は、嬉しそうで、困っているようで、複雑な表情だ。彼のこんな顔を見られることも、嬉しい。何もかもが嬉しくて、浮かれた自分の心に戸惑うくらいだ。
「……俺も、君に会えないのは寂しい」
「ふふ、そうですよね」
言ってから、今のはちょっとずるいな、と思った。私には匂いがわかるから、彼の言葉が真実だとわかってしまうのだ。
「おやすみなさい、エルートさん」
「おやすみ、ニーナ」
ぱたんと扉が閉まり、私は自分の部屋に向かって、薄暗い廊下を歩き出す。
辺りは暗いけれど、気持ちは明るかった。相手の気持ちを信じられること。自分の気持ちを、信じてもらえること。求めていたものが、私自身の手の中にある。
このあと、忙殺されているはずのエルートがとんでもない早さで婚約の準備をし、家を手配することになるのだけれど、それはまた別のお話だ。
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ありがとうございます
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あけましておめでとうございます!
捕捉していただけて嬉しいです!お正月休みの間はどんどこ更新しておりますので、ぜひお楽しみください!