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騎士様は魔女を放さない
魔女の薬学
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朝食の支度を終え、温泉で汗を流したあと、私は外に出た。湯に浸かって火照った肌を、木枯れる季節の乾いた冷風が、一瞬のうちに冷やしていく。舞い上がるベールの端を押さえ、口元を冷気から守るようにして、そのまま騎士団本部の裏手へ向かった。
薬師団の建物へ続く、細い道。左右に野原の広がるここは中庭と呼ぶべきものらしいが、その割に人の手が入っていない。自然のままの草木が、あるがままにぼうぼうと生えている。庭というよりは、単なる広場だ。もしくは空き地。
昨日カルニックが私に見せた大量の薬草は、全てここから採ったものだという。あの中には、食べると美味しいものがいくつも混ざっていた。これだけ生い茂っているのなら、少しくらい採っても構わないだろう。そう見込んで、私は草の中に分け入る。
屈み込むと、地面から大地の香りが立ち上る。ベールの放つ香りと相まって、濃い土の香りが鼻まで届く。空気は冷たいけれど、地面に近いところは、何となく暖かい気がした。
手近な薬草に、手を伸ばす。乾燥させて砕くと、良い風味をもたらすものを選んで摘み取った。
木枯れる季節は、草木が枯れ始める季節だ。今はまだ、中庭の薬草は葉を伸ばしているものの、いずれ枯れてしまう。枯れる前、今のうちにたくさん摘んでおかないといけない。
必要な薬草を摘み取っては、アテリアから借りて来た籠に入れる。籠をいっぱいにするには、まだ時間がかかりそうだ。
その時、ざあっ、と音がした。風に煽られ、四方に生えた草が一斉に頭を揺らす。屈んで薬草を採っていた私は、空を見上げた。透明感のある淡い水色の空に、薄雲がぼんやりとかかっている。
ただでさえ弱々しい陽射しは、雲によって遮られ、温もりをすっかり奪われている。その弱い光が、さっと翳った。
「あら?」
背後から、長い影が私にかかっている。獣の臭いを感じて、私は青い石に触れた。胸元の石は、揺れていない。
悪意のある何かではない。魔獣でもない。だから、恐れる必要はない。ゆっくり振り向くと、私の背後にいたのは、美しい毛並みを有した黒馬であった。
逃げる素振りもなく、落ち着いた雰囲気だ。黒馬は、柔らかな鼻を動かすと、ばふ、と溜息に似た音を立てた。
私はつい、その悠然とした姿に見惚れる。
陽射しを受けてたゆたう毛皮は、水面のように綺麗だ。ふわりと靡くたてがみは、この寒風の中にあって、寒さを微塵も感じさせない。透き通った、澄んだ湖面のようなガラス玉の瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめている。永遠にも感じられるような、静かな一瞬だった。
もう一度、溜息に似た音がして、私ははっとする。黒馬が真っ直ぐに見つめているのは、どうやら私自身ではなく、両腕に抱えた籠であった。どこか物欲しげに見てるのは、気のせいだろうか。籠の中には、今しがた摘み取ったばかりの薬草が、ちょっとした山となっている。
馬って、薬草を食べてもいいのだろうか。
彼らの生態に詳しくない私は暫し迷ってから、美味しそうに見える薬草を手に取った。スオシーもよく下草を食んでいるから、食べられないということはないだろう。それに、害のあるものなら、警戒して口にはしないはずだ。
差し出した薬草に鼻を近づけ、香りを嗅ぐ素振りをしてから、馬は長い舌で巻き取るようにして口元に運ぶ。もしゃもしゃと唇を蠢かせてから、またその鼻をこちらに近づけてくる。薬草を向けると、同じように口に運んだ。
エルートの乗る黒馬、スオシーも穏やかだが、それに似てこの馬もずいぶんと穏やかだ。毛皮が黒く美しく、体躯が整っていることもスオシーに似ている。違うのは、その瞳に宿す光くらいだろうか。ひたすら優しげなスオシーのものに比べると、幾分か、力強い光をたたえているように見える。
盛った薬草が半分に減った辺りで、黒馬は薬草を食べるのを止めた。その巨大な体躯を思うと、私の差し出した量なんて微々たるものだろうが、満足したのだろうか。
疑問に思っている間に、黒馬は巨躯をゆらりと傾げ、そのまま地面に体を横たえる。何が起きたのかと驚く私の傍に、馬の頭が置かれた。透き通った丸い目が澱み、とろんとしたまどろみの目つきになる。目蓋が下されたのを見て、漸く、この馬は寝ているのだとわかった。
手を差し出して、そっと毛並みに触れる。耳をぴくりと反応させた程度で、黒馬はうとうとと浅い眠りに浸っていた。
淡い日の光の下で、穏やかに眠る美しい馬。それはほんの少しの間であったが、永遠にも感じられるほど尊くて、幸せな時間であった。
颯爽と去る黒馬の尾を見送ってから、私は薬草摘みを再開した。馬に与えてしまったぶん、摘みなおさないといけない。
視界の奥で揺らぐ美しい毛並みの記憶を楽しみながら、黙々と薬草を摘んだ。元々、こうした静かで単調な作業は苦手ではないのだ。午後の鍛錬の時間までに、満足のいく量を摘むことができた私は、それらを一旦厨房へ運んだ。
「あら! こんな時間に来るなんて珍しいね」
「食後に水洗いしたいので、ここに置いておいても良いですか?」
「もちろん、構わないよ。皆の喜ぶ顔が楽しみだねえ」
「はい、楽しみです」
アテリアはいつでも、肯定的な反応を返してくれる。
彼女の笑顔を嬉しく思いつつも、そんなに上手くいかないだろう、と心の中で呟いた。私の摘んだ薬草を捨てた、アイネンの苦々しい顔を思い出す。庶民である私の摘んできた、得体の知れない薬草。そんなものを食べたがる騎士は少ないだろう。顔を顰めて嫌がられるか、無視されるか、それとも。
否定的な反応を想像しながら、私は笑顔を作って同意した。多くの人が求めていないからといって、したいことを、止める必要はない。エルートとアテリアが喜んでくれるなら、それで満足だ。そう、自分に言い聞かせる。
「あとは、入れ物をいくつか頂きたいのですが」
「そこに瓶があるよ。もっと必要なら言っておくれ、買ってもらうから」
「ありがとうございます」
アテリアの示す先には、小振りな蓋つきの瓶が並んでいた。彼女は大雑把に見えて、道具の扱いは丁寧だ。瓶はひとつひとつ洗われ、華麗に拭かれている。水洗いして乾かせば、薬草入れにちょうど良さそうだ。
瓶を手に取って観察していた私は、アテリアがこちらを見ているのに気づいた。目が合うと、彼女はいつものように、にかっと屈託のない笑みを浮かべる。
「あんたも、騎士団の生活に慣れてきたみたいだね。何よりだ」
「そうでしょうか?」
「ああ。そんな風に自分から何かすることなんて、今までなかったじゃないか」
慣れてきた訳じゃない。
私が自分から何かしなかったのは、「求められたら応える」という姿勢のせいだ。裏を返せば、求められないことはしないということ。
行動が変われば、気持ちが伝わる。それは遠い道のりだと思っていたが、アテリアは早速、私の変化に気づいてくれた。
「……そうですね。嬉しいです、ありがとうございます」
彼女がわかってくれるのなら、エルートにも、近いうちに私の変化を気づいてもらえるだろう。
「なあに、そんなことで。大袈裟だよ」
アテリアはそう笑って流したが、私には大切なことだった。
ちなみにその日の鍛錬で、私はまた両腕を疲弊させた。薬草を干す作業も遅々として進まず、見かねたアテリアが手伝ってくれたことを言い添えておく。アテリアは本当に、気が良くて、優しい人だ。
翌朝目覚めると、鼻の奥に青い香りが染み込んでいた。昨夜から干しておいた薬草の香りである。自宅を思わせる香りに、朝からほっとした。
「何だかすっきり目覚めた気がするよ」
「薬草の香りは、心を落ち着けるので」
「へえ。便利なもんだねえ」
アテリアは目を閉じ、丸い鼻をすんすんと動かす。部屋に満ちた香りは、頭の中を爽やかにしてくれる。私の好きな香りだ。
厨房で慌ただしく食事の準備をし、合間に片付けも行う。いつもの手順が、だんだんと身に染みついてきた。
下膳棚から、汚れた食器を取り出す。「あ」と声がしてそちらを見ると、食器の間に緑の瞳が見えた。銀の巻髪。レガットである。
「魔女さん。今日、頼むよ」
切なさを含んだ作り笑顔。その表情だけで、何のことかすぐにわかる。
今日は、王宮薬師のカルニックの元へ行き、先日の続きを行う予定だ。レガットはエルートとの会話から、私の予定を知ったのだろう。昨日レガットから、王宮薬師であるカルニックに、妹の病を治す薬について聞くよう頼まれた。「頼む」とは、その念押しである。
レガットは妹の話になると、その悲痛な気持ちが顔に出るのだ。普段の軽薄さとの落差に、妹にかける思いの強さを感じて、私はつい同情してしまう。
「わかっています」
「良かった。また聞きに来るから」
あからさまに表情を緩め、レガットは去った。
私は、レガットの頼みを受け入れた。もしカルニックが何か知っていれば、レガットの妹の命が助かる。レガットも、自分の人生を、自分のために捧げられるようになるかもしれない。
彼のやり方は好きではないが、悪いのは人間性ではなく、置かれた環境である。私は温泉で汗を流しながら、頭の中で、レガットから聞いた質問内容を反芻した。
「ニーナ。送っていく」
騎士団本部の建物から出ると、鍛錬場にいたエルートがこちらに気付いた。
木枯れる季節の淡い光の下で、彼の柔らかな金髪がきらきらと輝く。口元を緩める彼からは、相変わらず、ほのかな花の匂いしかしない。私はこの淡い匂いを感じる度に、エルートが私のことを思ってくれていると実感する。
そして、彼の気持ちに応えたい自分自身を、再確認するのだ。
「本当に行くのか? 一昨日は疲れただろう。嫌なら断って良いんだ」
「疲れましたが、誰かの役に立てるならいいんです。あと少しのことですから」
エルートは何度も、配慮に満ちた言葉をかけてくれる。その裏からは、私に行って欲しくないという彼の願いをひしひしと感じる。エルートは、カルニックのことが苦手なのだ。
その願いに応えないのは、私が、誰かの助けになりたいと思っているから。カルニックに協力することが、ゆくゆくは誰かのためになるのなら、本望だ。
「ニーナは、本当に……自己犠牲的だな」
「そんなことありません」
否定してみたものの、エルートは浅く息を吐き、軽く笑うのみだった。やはり、言葉だけでは信じてもらえない。
気持ちを彼に伝えるには、行動を積み重ねるしかない。自分を押し殺して求めに応じているのではなく、自分のしたいことをするように変わったのだと、わかってもらえるまで。
アテリアにはその変化が伝わったようだが、エルートにはうまく伝わっていない。行動の積み重ねは、まだまだ足りないようだ。
「お待ちしていましたよ」
「おはようございます、カルニックさん」
療養室に入ると、濃い薬草の香りに出迎えられる。朝の自室を思い出して、私は鼻から香りを吸い込んだ。やはり薬草の青く爽やかな香りは、気持ちを安らげてくれる。
カルニックの、片方の口角だけが上がった、引き攣った笑顔に出迎えられる。側にいるエルートが、ぶわ、と警戒の気配を色濃く発した。
「ニーナに無理をさせるなよ」
「させませんよ。嫌だと言われたら辞めますから」
エルートは小さく溜息をつき、そして出て行った。あの溜息の理由は、何となく推測がつく。「ニーナはそれが言えないのに」と、思っているのだろう。求められたら応える。母の教えに固執していた私を、エルートはよく知っている。
一昨日と同様に椅子に腰掛け、カルニックの差し出す薬草の効能を口ずさむ。私は薬草の名前は知らないが、効果は母に教わったのだ。
「この、ガムロッドルは?」
「絞り汁を傷口に塗ると、薄い膜のようになって血を止めます」
「へえ。これは、先程のレッテと一緒に煮詰めると薄緑色の粘液になるのです。火傷に効きますよ」
いつしかカルニックとのやりとりは、一方的な情報伝達ではなく、情報交換になっていた。私が知っていることを話すと、カルニックは薬草の名前と効果を教えてくれる。すり潰したり乾燥させたりするだけではなく、混ぜて煮詰めたり、熱してから冷やしたり、複雑な工程を経て効能を引き出す方法があることを知った。
「それにしても魔女さんはお詳しいですね。勉強になります」
「いえ。私のは、母の受け売りですから。カルニックさんこそお詳しくて、いろいろ教えてくださってありがたいです」
「あはは、僕はまだまだですよ。知らないことが沢山ありますから。それにしても、薬草の話をここまでできる薬師はそういません。あなたは変わっていますね」
声を上げて爽やかに笑うので、少し驚いた。満足げな彼の笑みは、やはり片方の口角だけが引き攣るようにして上がっている。この見た目で損をしているのだろうと思わせる、卑屈に見える表情だ。
彼からは相変わらず、匂いがしない。私はそれを無欲だからだと思っていたが、それにしては、カルニックの知識欲は凄まじい。匂いがしないのは、恐らく、彼が今求めるものは私の知識だからだ。
まさか王宮薬師に求められるなんてあり得ないと思っていたが、彼にとっては、未知のことは全て興味の対象なのだろう。私の知ることは彼の知識と重なるものも多かったけれど、知らないことがある限り、知らずにはいられないのだ。爛々と輝く黒い目は、そう納得するのに十分すぎるほどの欲望を湛えていた。
彼ほどではないが、私も同様に、カルニックとのやりとりに知識欲を刺激されていた。全ての情報が頭に入ったわけではないものの、今まで知らなかったことを知ると、試してみたくなる。
カルニックが薬草を再度差し出し、私が口述する流れが再開された。今回は薬草茶が十分すぎるほど用意されていたから、喉が渇く前に飲み、潤すことができた。それにカルニックが話す時間もあるので、前回ほどには疲労を感じないで済みそうだ。
「このサンフィードは、体の免疫──つまり、病に対抗する力を高めます。経口でないと意味がありませんが、味は最低ですね」
病に対抗する力を高める。
カルニックがさらりと述べた効能が、頭の片隅に引っかかった。病にかかりやすく、重くなりやすいから、外出も控えなければならない薄命の少女。レガットの妹のことが、頭を過ぎったのだ。
「そのサンフィードは、一般的な薬草ですか?」
次の薬草を籠から選び出したカルニックに問うと、彼は前髪から覗く目を僅かに見開いた。私から質問したのは、これが初めてだ。
「いえ、そうでもありません。味が悪いし、量もさほど採れませんから。風邪の治療なんかに使われるのは、オグマの木の実が一般的ですね」
「なるほど……実は、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが」
私は、レガットの妹について話し始める。もちろん、彼の名前は伏せて。知人の妹が──という切り出しで始めた説明は、興味がないと切り捨てられることを覚悟していたが、カルニックは真剣に聴いてくれた。
「なるほど。稀にある不憫な体質ですね。その体で大人になれたのなら、ずいぶん丁寧に育てられたのでしょう」
顎に手を当て、カルニックは言う。私は頷いた。レガットが妹の命を長引かせるため、細心の注意を払って生活させていることは聞いて知っている。
カルニックの色のない薄い唇が、はあ、と溜息をついた。
「僕の知識では、それは治せません。医師にかかっているのでしょう? オグマの木の実を処方されているのでしょうが、サンフィードに変えたところで根本的な改善は見込めません。さて、こちらの薬草は?」
白い繊毛の生えた葉の効能を答えながら、私は内心、落胆した。こうもあっさり無理だと言われてしまうなんて。王宮薬師でも治せない病は、誰にも治せないに違いない。レガットが聞いたら、さぞがっかりするだろう。
次いでカルニックが差し出したのは、見知らぬ薬草であった。
「それは……初めて見ました。わかりません」
「そうでしょう。高山にしか自生しない、貴重な薬草です。やはり魔女さんの知識は、森や草原の植物に限られているのですね」
「申し訳ありません」
「気にすることはありませんよ。この薬草の用途は、ごく限られていますから」
薬草の葉の表面は、信じられないほどに真っ黒だ。小ぶりで丸みを帯びた葉の裏が見えるように、くるりと返される。すると、隠された裏面は鮮やかな赤に染まっていた。息を呑むほどに美しいコントラストに見入ると、彼はくすくすと喉奥で笑う。
「美しいでしょう? この黒と赤に、見覚えはありませんか?」
闇のように深い黒と、目を奪われるほど鮮やかな赤。はっ、と思わず息を呑んだ。
「……魔獣の」
「そう。不思議なもので、魔獣の心臓をこの薬草で──もちろん、これだけではありませんが──煮出すと、あの宝玉になるのですよ」
カルニックがくるくると薬草を回す度に、表面の漆黒と裏面の深紅が入れ替わる。魔獣の体毛と、凶悪な瞳。心臓と、宝玉。恐ろしい記憶がいくつも甦り、頭の中で再生される。
ぞわ、と二の腕に微かな震えが走った。私は思わず、胸元の青い石に触れる。石が震えないことは、安全の証。石の硬い感触を手中に収めると、少し安心した。
「珍しい加工をしていますね」
気付くとカルニックの黒い瞳は、私の胸元に向けられていた。手のひらを開くと、青い石は僅かに揺れる。
「なぜそれを?」
「母に貰ったものです。悪意のある人に近づくと震える、お守りみたいなもので」
「……ふうん?」
カルニックは、その細い顎に手を添え、何か考え込む目つきをした。
ぶわ、と風が前髪を揺らした気がした。
私は瞬きをする。この部屋は締め切られており、風なんて吹かない。風のように感じたのは、カルニックから放たれる匂いであった。
冷たい石を思わせる、清潔で硬質な匂い。今まで何の匂いもしなかった彼から、強い匂いの流れが放たれている。
カルニックの黒い瞳は、既に私を見ていない。私を通り抜けるような透き通った眼差しが、どこかに向けて注がれていた。
カルニックが尋常ではない知識欲を有していることは、わかっている。それが、私も持つ「魔女の薬学」という、未知の知識に向けられていたことも。
匂いの流れが生まれたということは、私への関心よりも強い興味が生じたということだ。
石の話を聞いて? その理由がわからない。
「……どう、されたんですか?」
恐る恐る聞いてみたが、難しい顔をして石のように固まった彼は、何も言わず静止していた。止まったまま、強い匂いを垂れ流している。
結局、エルートが現れるまでカルニックはそのままだった。私が部屋を出る時も、カルニックはこちらを一瞥もしなかった。
「挨拶くらいすれば良いのに。失礼な奴だ」
エルートは、療養室を出るとそう毒づいた。
薬師団の建物へ続く、細い道。左右に野原の広がるここは中庭と呼ぶべきものらしいが、その割に人の手が入っていない。自然のままの草木が、あるがままにぼうぼうと生えている。庭というよりは、単なる広場だ。もしくは空き地。
昨日カルニックが私に見せた大量の薬草は、全てここから採ったものだという。あの中には、食べると美味しいものがいくつも混ざっていた。これだけ生い茂っているのなら、少しくらい採っても構わないだろう。そう見込んで、私は草の中に分け入る。
屈み込むと、地面から大地の香りが立ち上る。ベールの放つ香りと相まって、濃い土の香りが鼻まで届く。空気は冷たいけれど、地面に近いところは、何となく暖かい気がした。
手近な薬草に、手を伸ばす。乾燥させて砕くと、良い風味をもたらすものを選んで摘み取った。
木枯れる季節は、草木が枯れ始める季節だ。今はまだ、中庭の薬草は葉を伸ばしているものの、いずれ枯れてしまう。枯れる前、今のうちにたくさん摘んでおかないといけない。
必要な薬草を摘み取っては、アテリアから借りて来た籠に入れる。籠をいっぱいにするには、まだ時間がかかりそうだ。
その時、ざあっ、と音がした。風に煽られ、四方に生えた草が一斉に頭を揺らす。屈んで薬草を採っていた私は、空を見上げた。透明感のある淡い水色の空に、薄雲がぼんやりとかかっている。
ただでさえ弱々しい陽射しは、雲によって遮られ、温もりをすっかり奪われている。その弱い光が、さっと翳った。
「あら?」
背後から、長い影が私にかかっている。獣の臭いを感じて、私は青い石に触れた。胸元の石は、揺れていない。
悪意のある何かではない。魔獣でもない。だから、恐れる必要はない。ゆっくり振り向くと、私の背後にいたのは、美しい毛並みを有した黒馬であった。
逃げる素振りもなく、落ち着いた雰囲気だ。黒馬は、柔らかな鼻を動かすと、ばふ、と溜息に似た音を立てた。
私はつい、その悠然とした姿に見惚れる。
陽射しを受けてたゆたう毛皮は、水面のように綺麗だ。ふわりと靡くたてがみは、この寒風の中にあって、寒さを微塵も感じさせない。透き通った、澄んだ湖面のようなガラス玉の瞳が、真っ直ぐにこちらを見つめている。永遠にも感じられるような、静かな一瞬だった。
もう一度、溜息に似た音がして、私ははっとする。黒馬が真っ直ぐに見つめているのは、どうやら私自身ではなく、両腕に抱えた籠であった。どこか物欲しげに見てるのは、気のせいだろうか。籠の中には、今しがた摘み取ったばかりの薬草が、ちょっとした山となっている。
馬って、薬草を食べてもいいのだろうか。
彼らの生態に詳しくない私は暫し迷ってから、美味しそうに見える薬草を手に取った。スオシーもよく下草を食んでいるから、食べられないということはないだろう。それに、害のあるものなら、警戒して口にはしないはずだ。
差し出した薬草に鼻を近づけ、香りを嗅ぐ素振りをしてから、馬は長い舌で巻き取るようにして口元に運ぶ。もしゃもしゃと唇を蠢かせてから、またその鼻をこちらに近づけてくる。薬草を向けると、同じように口に運んだ。
エルートの乗る黒馬、スオシーも穏やかだが、それに似てこの馬もずいぶんと穏やかだ。毛皮が黒く美しく、体躯が整っていることもスオシーに似ている。違うのは、その瞳に宿す光くらいだろうか。ひたすら優しげなスオシーのものに比べると、幾分か、力強い光をたたえているように見える。
盛った薬草が半分に減った辺りで、黒馬は薬草を食べるのを止めた。その巨大な体躯を思うと、私の差し出した量なんて微々たるものだろうが、満足したのだろうか。
疑問に思っている間に、黒馬は巨躯をゆらりと傾げ、そのまま地面に体を横たえる。何が起きたのかと驚く私の傍に、馬の頭が置かれた。透き通った丸い目が澱み、とろんとしたまどろみの目つきになる。目蓋が下されたのを見て、漸く、この馬は寝ているのだとわかった。
手を差し出して、そっと毛並みに触れる。耳をぴくりと反応させた程度で、黒馬はうとうとと浅い眠りに浸っていた。
淡い日の光の下で、穏やかに眠る美しい馬。それはほんの少しの間であったが、永遠にも感じられるほど尊くて、幸せな時間であった。
颯爽と去る黒馬の尾を見送ってから、私は薬草摘みを再開した。馬に与えてしまったぶん、摘みなおさないといけない。
視界の奥で揺らぐ美しい毛並みの記憶を楽しみながら、黙々と薬草を摘んだ。元々、こうした静かで単調な作業は苦手ではないのだ。午後の鍛錬の時間までに、満足のいく量を摘むことができた私は、それらを一旦厨房へ運んだ。
「あら! こんな時間に来るなんて珍しいね」
「食後に水洗いしたいので、ここに置いておいても良いですか?」
「もちろん、構わないよ。皆の喜ぶ顔が楽しみだねえ」
「はい、楽しみです」
アテリアはいつでも、肯定的な反応を返してくれる。
彼女の笑顔を嬉しく思いつつも、そんなに上手くいかないだろう、と心の中で呟いた。私の摘んだ薬草を捨てた、アイネンの苦々しい顔を思い出す。庶民である私の摘んできた、得体の知れない薬草。そんなものを食べたがる騎士は少ないだろう。顔を顰めて嫌がられるか、無視されるか、それとも。
否定的な反応を想像しながら、私は笑顔を作って同意した。多くの人が求めていないからといって、したいことを、止める必要はない。エルートとアテリアが喜んでくれるなら、それで満足だ。そう、自分に言い聞かせる。
「あとは、入れ物をいくつか頂きたいのですが」
「そこに瓶があるよ。もっと必要なら言っておくれ、買ってもらうから」
「ありがとうございます」
アテリアの示す先には、小振りな蓋つきの瓶が並んでいた。彼女は大雑把に見えて、道具の扱いは丁寧だ。瓶はひとつひとつ洗われ、華麗に拭かれている。水洗いして乾かせば、薬草入れにちょうど良さそうだ。
瓶を手に取って観察していた私は、アテリアがこちらを見ているのに気づいた。目が合うと、彼女はいつものように、にかっと屈託のない笑みを浮かべる。
「あんたも、騎士団の生活に慣れてきたみたいだね。何よりだ」
「そうでしょうか?」
「ああ。そんな風に自分から何かすることなんて、今までなかったじゃないか」
慣れてきた訳じゃない。
私が自分から何かしなかったのは、「求められたら応える」という姿勢のせいだ。裏を返せば、求められないことはしないということ。
行動が変われば、気持ちが伝わる。それは遠い道のりだと思っていたが、アテリアは早速、私の変化に気づいてくれた。
「……そうですね。嬉しいです、ありがとうございます」
彼女がわかってくれるのなら、エルートにも、近いうちに私の変化を気づいてもらえるだろう。
「なあに、そんなことで。大袈裟だよ」
アテリアはそう笑って流したが、私には大切なことだった。
ちなみにその日の鍛錬で、私はまた両腕を疲弊させた。薬草を干す作業も遅々として進まず、見かねたアテリアが手伝ってくれたことを言い添えておく。アテリアは本当に、気が良くて、優しい人だ。
翌朝目覚めると、鼻の奥に青い香りが染み込んでいた。昨夜から干しておいた薬草の香りである。自宅を思わせる香りに、朝からほっとした。
「何だかすっきり目覚めた気がするよ」
「薬草の香りは、心を落ち着けるので」
「へえ。便利なもんだねえ」
アテリアは目を閉じ、丸い鼻をすんすんと動かす。部屋に満ちた香りは、頭の中を爽やかにしてくれる。私の好きな香りだ。
厨房で慌ただしく食事の準備をし、合間に片付けも行う。いつもの手順が、だんだんと身に染みついてきた。
下膳棚から、汚れた食器を取り出す。「あ」と声がしてそちらを見ると、食器の間に緑の瞳が見えた。銀の巻髪。レガットである。
「魔女さん。今日、頼むよ」
切なさを含んだ作り笑顔。その表情だけで、何のことかすぐにわかる。
今日は、王宮薬師のカルニックの元へ行き、先日の続きを行う予定だ。レガットはエルートとの会話から、私の予定を知ったのだろう。昨日レガットから、王宮薬師であるカルニックに、妹の病を治す薬について聞くよう頼まれた。「頼む」とは、その念押しである。
レガットは妹の話になると、その悲痛な気持ちが顔に出るのだ。普段の軽薄さとの落差に、妹にかける思いの強さを感じて、私はつい同情してしまう。
「わかっています」
「良かった。また聞きに来るから」
あからさまに表情を緩め、レガットは去った。
私は、レガットの頼みを受け入れた。もしカルニックが何か知っていれば、レガットの妹の命が助かる。レガットも、自分の人生を、自分のために捧げられるようになるかもしれない。
彼のやり方は好きではないが、悪いのは人間性ではなく、置かれた環境である。私は温泉で汗を流しながら、頭の中で、レガットから聞いた質問内容を反芻した。
「ニーナ。送っていく」
騎士団本部の建物から出ると、鍛錬場にいたエルートがこちらに気付いた。
木枯れる季節の淡い光の下で、彼の柔らかな金髪がきらきらと輝く。口元を緩める彼からは、相変わらず、ほのかな花の匂いしかしない。私はこの淡い匂いを感じる度に、エルートが私のことを思ってくれていると実感する。
そして、彼の気持ちに応えたい自分自身を、再確認するのだ。
「本当に行くのか? 一昨日は疲れただろう。嫌なら断って良いんだ」
「疲れましたが、誰かの役に立てるならいいんです。あと少しのことですから」
エルートは何度も、配慮に満ちた言葉をかけてくれる。その裏からは、私に行って欲しくないという彼の願いをひしひしと感じる。エルートは、カルニックのことが苦手なのだ。
その願いに応えないのは、私が、誰かの助けになりたいと思っているから。カルニックに協力することが、ゆくゆくは誰かのためになるのなら、本望だ。
「ニーナは、本当に……自己犠牲的だな」
「そんなことありません」
否定してみたものの、エルートは浅く息を吐き、軽く笑うのみだった。やはり、言葉だけでは信じてもらえない。
気持ちを彼に伝えるには、行動を積み重ねるしかない。自分を押し殺して求めに応じているのではなく、自分のしたいことをするように変わったのだと、わかってもらえるまで。
アテリアにはその変化が伝わったようだが、エルートにはうまく伝わっていない。行動の積み重ねは、まだまだ足りないようだ。
「お待ちしていましたよ」
「おはようございます、カルニックさん」
療養室に入ると、濃い薬草の香りに出迎えられる。朝の自室を思い出して、私は鼻から香りを吸い込んだ。やはり薬草の青く爽やかな香りは、気持ちを安らげてくれる。
カルニックの、片方の口角だけが上がった、引き攣った笑顔に出迎えられる。側にいるエルートが、ぶわ、と警戒の気配を色濃く発した。
「ニーナに無理をさせるなよ」
「させませんよ。嫌だと言われたら辞めますから」
エルートは小さく溜息をつき、そして出て行った。あの溜息の理由は、何となく推測がつく。「ニーナはそれが言えないのに」と、思っているのだろう。求められたら応える。母の教えに固執していた私を、エルートはよく知っている。
一昨日と同様に椅子に腰掛け、カルニックの差し出す薬草の効能を口ずさむ。私は薬草の名前は知らないが、効果は母に教わったのだ。
「この、ガムロッドルは?」
「絞り汁を傷口に塗ると、薄い膜のようになって血を止めます」
「へえ。これは、先程のレッテと一緒に煮詰めると薄緑色の粘液になるのです。火傷に効きますよ」
いつしかカルニックとのやりとりは、一方的な情報伝達ではなく、情報交換になっていた。私が知っていることを話すと、カルニックは薬草の名前と効果を教えてくれる。すり潰したり乾燥させたりするだけではなく、混ぜて煮詰めたり、熱してから冷やしたり、複雑な工程を経て効能を引き出す方法があることを知った。
「それにしても魔女さんはお詳しいですね。勉強になります」
「いえ。私のは、母の受け売りですから。カルニックさんこそお詳しくて、いろいろ教えてくださってありがたいです」
「あはは、僕はまだまだですよ。知らないことが沢山ありますから。それにしても、薬草の話をここまでできる薬師はそういません。あなたは変わっていますね」
声を上げて爽やかに笑うので、少し驚いた。満足げな彼の笑みは、やはり片方の口角だけが引き攣るようにして上がっている。この見た目で損をしているのだろうと思わせる、卑屈に見える表情だ。
彼からは相変わらず、匂いがしない。私はそれを無欲だからだと思っていたが、それにしては、カルニックの知識欲は凄まじい。匂いがしないのは、恐らく、彼が今求めるものは私の知識だからだ。
まさか王宮薬師に求められるなんてあり得ないと思っていたが、彼にとっては、未知のことは全て興味の対象なのだろう。私の知ることは彼の知識と重なるものも多かったけれど、知らないことがある限り、知らずにはいられないのだ。爛々と輝く黒い目は、そう納得するのに十分すぎるほどの欲望を湛えていた。
彼ほどではないが、私も同様に、カルニックとのやりとりに知識欲を刺激されていた。全ての情報が頭に入ったわけではないものの、今まで知らなかったことを知ると、試してみたくなる。
カルニックが薬草を再度差し出し、私が口述する流れが再開された。今回は薬草茶が十分すぎるほど用意されていたから、喉が渇く前に飲み、潤すことができた。それにカルニックが話す時間もあるので、前回ほどには疲労を感じないで済みそうだ。
「このサンフィードは、体の免疫──つまり、病に対抗する力を高めます。経口でないと意味がありませんが、味は最低ですね」
病に対抗する力を高める。
カルニックがさらりと述べた効能が、頭の片隅に引っかかった。病にかかりやすく、重くなりやすいから、外出も控えなければならない薄命の少女。レガットの妹のことが、頭を過ぎったのだ。
「そのサンフィードは、一般的な薬草ですか?」
次の薬草を籠から選び出したカルニックに問うと、彼は前髪から覗く目を僅かに見開いた。私から質問したのは、これが初めてだ。
「いえ、そうでもありません。味が悪いし、量もさほど採れませんから。風邪の治療なんかに使われるのは、オグマの木の実が一般的ですね」
「なるほど……実は、ちょっとお尋ねしたいことがあるのですが」
私は、レガットの妹について話し始める。もちろん、彼の名前は伏せて。知人の妹が──という切り出しで始めた説明は、興味がないと切り捨てられることを覚悟していたが、カルニックは真剣に聴いてくれた。
「なるほど。稀にある不憫な体質ですね。その体で大人になれたのなら、ずいぶん丁寧に育てられたのでしょう」
顎に手を当て、カルニックは言う。私は頷いた。レガットが妹の命を長引かせるため、細心の注意を払って生活させていることは聞いて知っている。
カルニックの色のない薄い唇が、はあ、と溜息をついた。
「僕の知識では、それは治せません。医師にかかっているのでしょう? オグマの木の実を処方されているのでしょうが、サンフィードに変えたところで根本的な改善は見込めません。さて、こちらの薬草は?」
白い繊毛の生えた葉の効能を答えながら、私は内心、落胆した。こうもあっさり無理だと言われてしまうなんて。王宮薬師でも治せない病は、誰にも治せないに違いない。レガットが聞いたら、さぞがっかりするだろう。
次いでカルニックが差し出したのは、見知らぬ薬草であった。
「それは……初めて見ました。わかりません」
「そうでしょう。高山にしか自生しない、貴重な薬草です。やはり魔女さんの知識は、森や草原の植物に限られているのですね」
「申し訳ありません」
「気にすることはありませんよ。この薬草の用途は、ごく限られていますから」
薬草の葉の表面は、信じられないほどに真っ黒だ。小ぶりで丸みを帯びた葉の裏が見えるように、くるりと返される。すると、隠された裏面は鮮やかな赤に染まっていた。息を呑むほどに美しいコントラストに見入ると、彼はくすくすと喉奥で笑う。
「美しいでしょう? この黒と赤に、見覚えはありませんか?」
闇のように深い黒と、目を奪われるほど鮮やかな赤。はっ、と思わず息を呑んだ。
「……魔獣の」
「そう。不思議なもので、魔獣の心臓をこの薬草で──もちろん、これだけではありませんが──煮出すと、あの宝玉になるのですよ」
カルニックがくるくると薬草を回す度に、表面の漆黒と裏面の深紅が入れ替わる。魔獣の体毛と、凶悪な瞳。心臓と、宝玉。恐ろしい記憶がいくつも甦り、頭の中で再生される。
ぞわ、と二の腕に微かな震えが走った。私は思わず、胸元の青い石に触れる。石が震えないことは、安全の証。石の硬い感触を手中に収めると、少し安心した。
「珍しい加工をしていますね」
気付くとカルニックの黒い瞳は、私の胸元に向けられていた。手のひらを開くと、青い石は僅かに揺れる。
「なぜそれを?」
「母に貰ったものです。悪意のある人に近づくと震える、お守りみたいなもので」
「……ふうん?」
カルニックは、その細い顎に手を添え、何か考え込む目つきをした。
ぶわ、と風が前髪を揺らした気がした。
私は瞬きをする。この部屋は締め切られており、風なんて吹かない。風のように感じたのは、カルニックから放たれる匂いであった。
冷たい石を思わせる、清潔で硬質な匂い。今まで何の匂いもしなかった彼から、強い匂いの流れが放たれている。
カルニックの黒い瞳は、既に私を見ていない。私を通り抜けるような透き通った眼差しが、どこかに向けて注がれていた。
カルニックが尋常ではない知識欲を有していることは、わかっている。それが、私も持つ「魔女の薬学」という、未知の知識に向けられていたことも。
匂いの流れが生まれたということは、私への関心よりも強い興味が生じたということだ。
石の話を聞いて? その理由がわからない。
「……どう、されたんですか?」
恐る恐る聞いてみたが、難しい顔をして石のように固まった彼は、何も言わず静止していた。止まったまま、強い匂いを垂れ流している。
結局、エルートが現れるまでカルニックはそのままだった。私が部屋を出る時も、カルニックはこちらを一瞥もしなかった。
「挨拶くらいすれば良いのに。失礼な奴だ」
エルートは、療養室を出るとそう毒づいた。
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