命知らずの騎士様は、鼻の利く魔女を放さない。

三歩ミチ

文字の大きさ
上 下
15 / 52
魔女、騎士に出会う

ニーナの選択

しおりを挟む
 立とうとすると、膝ががくがくする。俯き気味の妙な中腰で、私は長く息を吐いた。寄せられたスオシーの鼻を、ぷにぷにと掴む。生温かな吐息と柔らかな感触が、気持ち悪さを和らげてくれる。

「うぅ……」
「酷い有様だね」
「昨日もこうだった。ニーナは我慢強いんだ」

 レガットとエルートのやりとりが、どこか遠く、ぼんやりとして聞こえる。私はすがるように、スオシーに頬を寄せた。
 今日の移動は、昨日より絶対に長かった。しかも。私はこの、悪夢のような道中を思い返す。

 荷物袋に入って、スオシーにぶら下げられた。ゆっくりと歩き出すスオシーの足取り。袋の中だと動きが予測できず、気分が悪くなるのだが、既に体験済みの私にとっては、耐えられないものではなかった。聞こえる音や漂ってくる匂いからはできるだけ意識を逸らし、自分の体勢と、顔につけたベールの香りに集中していれば気を紛らわせることはできる。
 そんな小手先の対策が通用したのは、スオシーが歩いている間だけだった。今はもう王都からかなり離れたところにいるから、あれは、王都を出たところだったのだろう。スオシーが走り出したのだ。当然、荷物の私も、ぐわんぐわんと尋常でなく揺られた。

「走るなら、先に言ってほしかったです……」

 わかっていれば、心の準備ができたのに。

「ああ……済まない」

 エルートは申し訳なさそうに眉尻を垂れる。
 彼に悪気はないのだ。それも重々、わかってはいる。やはりエルートは、言葉が足りない。先回りして聞いておくべきだった。私は項垂れ、息を整える。

「……よし。大丈夫です」
「無理はするなよ」

 私は頷いた。
 馬上から私を見下ろす、レガットとアイネン。彼らを待たせるわけにはいかない。
 体調が万全という訳ではないが、これ以上立ち止まっているのも、それはそれで落ち着かない。

 エルートが下から押してくれて、私はまたスオシーに乗る。乗ってしまえば、爽やかな風が顔に当たり、少しさっぱりした気持ちになる。青臭い草の香り。柔らかくて青い風。スオシーに乗って草原を走ると、最高の気分になれる。
 人目はないけれど、どこで誰が見ているかわからない。私はフードを目深にかぶり、顔を隠した。それ以外は、昨日と同じ。エルートに腹部を支えられ、重心の移動を合わせつつ、カプンの町へ向かう。

 ぱからっ、ぱからっ。駆ける馬の足音は小気味良く、軽やかだ。どの馬も、尾とたてがみをなびかせて、気持ちよさそうに走っている。なんて美しい生き物なんだろう。無駄のない筋肉が、一歩ごとに躍動する様は、美しいとしか言いようがない。
 カプンの町が遠くに見えてくるまで、そんなに時間はかからなかった。馬たちに見惚れていたら、時間を経つのを忘れていたのだ。まだ1日しか離れていないのに、カプンの町は妙に懐かしい。

「魔女さんとエルートは、森で待っているんだよな?」
「ああ。ニーナはカプンの者だ。俺たちと一緒にいるのを見られたら、何かと不都合だろう」

 レガットとエルートの会話を聞いて、私はなるほど、と頷いた。
 普通の騎士がやってきた時ですら、町の女性たちは盛り上がっていた。ましてや今回は、王宮騎士団である。一般人が御目通りすることなど普通なら叶わない、高貴な方々。女性たちだけでなく、今度は町人が沸くことが容易に想像できる。
 そんなところに私が紛れていたら、大事件だ。出迎えてくれるルカルデとエマには直ぐ気づかれるだろうし、エマに知れたら一瞬で吹聴される。私は、そんな悪目立ちはしたくない。

「君はそれでいいの? 僕たちの手伝いをするなんて至上の名誉、自慢できるのに」

 目を丸くしたレガットの問いに、私は首を振って否定した。

「至上の名誉は嬉しいですが……私の身に余るものです。自慢なんて、おこがましい」
「ふうん」

 彼の相槌が、急に熱を失った。その温度差が引っかかる。
 今の無関心さが、レガットの「素」なのだろうか? エルートのように、彼もいろいろと取り繕っているはずだ。職や国の評判を背負っているなんて、返す返す、騎士とは窮屈な立場である。

「俺たちは先に予定の場所へ向かっている。町への挨拶は任せた」
「僕に任せれば完璧だよ。お前とは違うんだ」

 口角を片側だけ上げる挑発的な笑みを残して、レガットたちはカプンの町の入り口へ向かった。

「行くか」

 スオシーと私たちは方向転換をする。目の前には、カプンの森。森の端から、樹々の間を通って奥へ入って行く。
 スオシーが落ち葉を踏み締めるガサガサと乾いた音。広がった枝や蜘蛛の巣を、払ったり避けたりしながら、ゆっくりと進む。懐かしい森の香りだ。私は胸いっぱいに、土の香りを吸い込む。
 吸い込んだ香りによって、鼻の奥から胸の奥まで、ごちゃごちゃになっていた匂いの残滓が一掃される。長く息を吐いた時、私の背中からも、はあ、と溜息が聞こえた。

「……体調は、大丈夫か?」
「はい、お陰様で」

 スオシーに乗っているうちに、吐き気はすっかり和らいだ。耳の近くで聞こえるエルートの声も、周りの静けさに合わせて抑えられている。柔らかな声の響きが森の音と合わさって、穏やかな雰囲気だ。

「もう君には、魔獣のいる場所がわかっているんだよな」
「はい。場所というか……方向が、わかっています」
「そうだった。方向、だな」

 エルートの放つ花の匂いは、今日も森の奥へ一直線に向かっている。あの先に、魔獣がいるのだ。彼の望みは、全くぶれない。

「素晴らしい能力だ。探し物を見つける力、だったか……魔獣の居場所を見つけることなど、どんな手練れの騎士にもできないと言うのに」
「……身に余るお言葉です」
「余らないよ、ニーナ。君の力は、騎士団が求めて止まないものなんだ」

 いつものお飾りとは違う、真剣な声色。エルートが腹部に添える手に、心なしか力がこもった気がする。

「……だからこそ。辞めるなら今しかないぞ、ニーナ。今なら、魔獣はやはり見つけられなかったと言うことができる。魔獣が見つけられるというのは俺の勘違いで、君にはそんな能力はないということにすれば、今なら辞められる」

 スオシーが立ち止まる。足音が止み、森特有の、しっとりした静寂が訪れる。聞こえるのは風の音、鳥の鳴き声だけ。

「そうすれば、君は危険な目に遭わなくて済む」

 エルートの声が、その静けさの中に、はっきりと響いた。

「危険な目、ですか」
「そうだ。魔獣は危険だ。今までは俺が相手を見極めて、確実に君を守ることができた。もしこのまま騎士団に手を貸すことになれば、そうはいかない。俺たちと違って、君は魔獣に身を晒す必要のない人間だろ、ニーナ」

 心配してくれているのだ。
 私はエルートの言葉を受け止めた。彼の優しさが、心にひとつの光を灯す。温かくなった胸に、手のひらを添える。

 エルートの言葉の、意図はわかった。
 私が本当に魔獣を見つけられると知るのは、今はまだエルートだけだ。団長のガムリでさえ、探し物を見つけたことは知っているけれど、本当に魔獣を見つけられるかどうかは知らない。
 彼の助言に従い、何らかの理由で魔獣を見つけられなかったことにすれば、私は何もできない一般人で居られる。エルートが口添えしてくれるなら言い逃れも叶うだろう。

 魔獣は危険だ、という、エルートの言葉を脳内で反芻する。魔獣の、あの禍々しく赤い瞳を思い出す。凶暴な爪と牙を。最後に残る、心臓の気味悪さを。魔獣は怖い。肉食の魔獣にはまだ遭遇したことがないが、エルートがこれほど言うのだから、余程危険なのだろう。想像するだけで、怖気が走る。
 死ぬかもしれない。死ぬほどでなくても、怪我を負うかもしれない。魔獣に対面するというのはその危険を負うことだと、エルートは言っているのだ。
 答えは考えるまでもなかった。胸元のネックレスは震えていない。エルートに、悪意はない。もちろん、他の騎士たちにも。

「……求められるのなら、応えることにしているんです」

 求められたら、応えなさい。懐かしい母の声が蘇る。

 人の役に立ちたい。そう願ってきた。 私は、母のように人の役に立てる存在になりたいのだ。母は故郷で、たくさんの人の心を救っていた。彼女の助言はいつでも的確だった。母の言いつけを破って上手くいったことは、未だ嘗てない。
 騎士団が私の鼻を求めるのであれば、応えるべきだ。彼らは、人々を守る英雄。私の働きによって守られる命があるのなら、それこそまさに「人の役に立った」と言えるだろう。

「私が魔獣の居場所を見つけて、それでカプンの人たちの安全が守られるなら、嬉しいです」
「……そうか」

 エルートが呟くように言ったとき、ガサ、と落ち葉を踏む音がした。

「待たせたね」
「ああ、レガット。悪いな、任せて」
「いいんだよ。僕の方がお前よりずっと、人当たりは良いからね」

 レガットはいちいち、エルートよりと自分が優れているという言い方をする。まだ彼と少ししか接していない私でも、はっきりとわかるほどに。けれどエルートは、挑発的な物言いにも嫌そうな顔ひとつしない。

「そうだな」

 そう肯定だけして、エルートはスオシーから降りた。彼の手を借りて、私も地面に降り立つ。
 心の広い人なのだ。嫌味を言う同僚に腹も立てず、私のような一般人の身を案じてくれる。スオシーの瞳に宿る優しい光と同じものを、エルートの焦げ茶の瞳にも感じる。

「案内頼むよ、魔女さん」
「……はい」

 エルートの放つ、花の匂い。その先にいる、魔獣に向かって。私は一歩を踏み出した。

 彼の匂いは、真っ直ぐ森の奥へ向かう。それを追えば良いから、簡単な話だ。匂いを追いながら、私は不思議な気持ちでいた。
 他人の個人的な事情には首を突っ込みたくないのだが、私の鼻は勝手にそれを捉えようとする。エルートの匂いに集中していても、時折レガットや、アイネンの匂いも、感じ取ってしまう。
 アイネンの匂いは、森の奥へほんのりと淡く向かっている。レガットに至っては、匂いは私たちの進行方向と逆に向かっていた。思いの強さは、匂いの強さ。騎士なら誰しもが、魔獣の討伐を強く願っているわけではないらしい。エルートが魔獣を求める気持ちの強さは、騎士の中でも特別なのだ。

 広場を通り過ぎ、森に分け入り、道なき道を行く。落ち葉を踏む音に、踏んだ小枝の折れる音が加わる。ぱき、ぱき。森に深く入るほど、土と湿った香りが増す。

「本当に、こんな奥にいることがわかるのか……?」

 ついにレガットが、疑いの声を上げる。私が何か言う前に、エルートが小さく咳払いをした。隣を歩く彼を見上げると、黒いフードの奥で、焦げ茶の瞳は案じるようにこちらを見ている。
 できないと言えば、この役目から逃れられる。危険な目に遭わずに済む。エルートの忠告を思い出した。もし「やっぱり私にはできない」と言うとしたら、それは今なのだ。

 私は、立ち止まる。目の前には、以前エルートが切り分けた草むらがあった。緑盛る季節だからか、あの日ふくらはぎ辺りまで切ったはずの草は、もう腰下まで伸びている。
 レガットを見上げた。疑うような緑の瞳。私の答えは、決まっている。

「私には、わかります」

 答えてからエルートに視線を移す。彼は、その眉尻をぐっと下げた。悲痛とも見える、複雑な表情。
 優しい人だ、と改めて思う。

「皆さんがお探しのものは、この奥です」

 草木の向こうにいるはずの、魔獣の方向を指差す。私は、私の求められていることを果たすのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

五宝剣物語

水原渉
ファンタジー
かつて王国と魔法使いの間で争いがあり、10年にも及ぶ戦いの末、王国が勝利した。 それ以来、王国では魔法は禁忌とされ、その戦で作り出された魔法の剣も封印された。 それから70年。 王国中を旅するリスターら三人が、王国を揺るがす事件に巻き込まれていく── /* 2002年 */

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

処理中です...