35 / 82
第二章
二人の明け方
しおりを挟む
「青木さん、よかったら召し上がってください。」
青木の目の前にそっと置かれたのは、レアチーズタルトだった。飾りはなくシンプルなものであったが、均一に塗られたクリームチーズは、まだ誰にも踏み荒らされていない初雪のように美しかった。
「ありがとう。これはアオくんが?」
「ええ。あの、先日は雅史さんへの誕生日ケーキをありがとうございました。」
今日はすんなりと通してもらえた彼らの食卓に、花が咲く。アオが言っているのは、佐伯へのプレゼントとして青木が贈った、フルーツケーキのことだった。しかし青木は青木で、「ケーキはアオくんが用意するかもしれない!」と渡した後に気づき焦っていたのだった。
毎年、何かと佐伯には誕生日近くにケーキを贈ることは青木の習慣となっていた。それが、誕生日ケーキだと認識されたことが一度もなかったことを彼は知らない。しかし今年は、佐伯にはアオがいた。初めてパートナーと祝う誕生日ということや、アオのこれまでの細やかな気遣いを知っている青木だからこそ、無粋なことをしてしまったと後悔していた。
「いえ、俺こそ気遣いが足りずにすみませんでした。アオくん、ケーキを用意されていたでしょう?」
「実は、雅史さんの誕生日プレゼントのことばかり考えていて、ケーキを買うことをすっかり忘れてしまっていて・・・・」
目の前で恥ずかしそうに俯く青年を見て、青木は自然と笑みが溢れた。こんなに暖かな存在に心を砕かれたのならば、あの堅物な担当作家も柔らかくなるのは必然だったのだろう。
「来年からは、ケーキではなく原稿用紙を先生には贈りますから。」
冗談めいて言えば、アオはぎょっとして青木を見たのだった。
「二人で楽しそうだな。」
凍てつく空気を背後から感じて、青木は思わず席から立ち上がった。目の前には、彼が担当する人気作家、佐伯雅史が薄らと微笑んでいた。もちろん、その目は据わっていた。
「せ、先生っ!!」
「青木、待たせて悪かった。原稿だ。」
ひょいと渡された原稿のタイトルに、はっとする。少しだけ顔を上げれば、佐伯と目が合う。
「今回も長編にするつもりだ。できれば2年後の1月に合わせて発表したい。」
今は12月。つまり丸々2年かけて書くという宣言でもあった。
「わかりました。諸々スケジュールを調節いたします。対談などはなるべく断るかたちでよろしいでしょうか?」
「ああ。できれば、あまり関わりたくない。」
佐伯雅史は佐伯財閥の長子であり、おまけに容姿端麗なアルファである。そんな有名作家をメディアが放っておくはずもなく、年に何回かエンタメ的なインタビューが企画されていた。佐伯はもちろん乗り気ではなく、これまでは渋々と付き合ってくれていた。しかし、今受け取った原稿を見れば、そんなことに時間を割かせるわけにはいかない、と青木は覚悟したのであった。
「アオ、これはきみが作ったケーキなのかな?」
一時緊迫した空気が流れたが、それも穏やかな佐伯の声音によって途端に柔らかくなる。
「はい!雅史さんも食べますか?」
「是非、頂戴したいな。」
「あ!青木さんも座ってくださいね。」
未だに立ち上がったままの青木にも、アオは声をかけた。それからパタパタとキッチンの方へと向かって行く。その華奢な後ろ姿を、青木の担当作家は優しく見守っていた。
◇◇◇
「それではまた。アオくん、ケーキのお土産もありがとう。」
3人でアオの手製のケーキを食べて、更に2切れケーキをもらい、青木は佐伯とアオの家を出た。今日はこのまま会社には戻らず、嘉月のところへ向かう予定だ。
(もし、目が覚めていたら、ケーキを一緒に食べたいな。)
3日前、目の前のシーツがみるみるうちに真っ赤に染まった時、青木は階下に控えている医師を呼ぶだけで精一杯だった。良成が呼んだ医師は「救急車を!」と叫んだ。必死に嘉月の細い手を握ると、それは弱い力で握り返された。
都内近郊にある大学病院に運ばれた嘉月に、僅かな動揺の色を見せたのは、一色隆文という外科医だった。青木と一緒に救急車に同乗した良成は「隆文くん、彼をよろしくお願いします。」と小さく頭を下げたのだった。その時青木は、初めて自身の従兄弟に出会った。
ソファに腰掛けて、まだ彼の温もりと感触が残っている自身の両手を見つめた。確かに、握り返してくれた。その行為が、とてつもなく嬉しくて、哀しかった。
「隆文くんは優秀な外科医だから、安心しなさい。」
青木の隣に腰掛けた良成が口を開いた。彼との確執は深いが、今はその励ましが力強く聞こえた。
それからは、特に会話を交えることもなく、オペが無事に終わるのを待ち続けた。それは途方もなく遠い時間であった。ドラマのように「手術中」のランプでも見えればよかったのだろうか。しかし現実は、手術室の扉など見えるはずもなく、家族のために用意された待合室で、彼の無事を祈り続けることしかできなかった。
「良成さん、青木さん。」
控えめな音と共に、既にスクラブに着替えた隆文が待合室に入って来た。
「手術は終わりました。暫く発熱はあるでしょうが、命に別状はありまんよ。・・・・彼の、嘉月のご家族は来ませんでしたか。」
隆文は、やや諦念した口調で言った。
「嘉月さんにつきましては、わたくしの方でも少々調べさせてもらいました。彼のご家族は既に彼を勘当しているようです。今回の件も、いっさい無関係だと連絡が来ました。」
「そんな!!!」
青木は良成の言葉に酷く動揺した。仮にも自分の子どもが大変な目に遭っている中で、無関係とはどういうことだ。抑えきれない怒りと嫌悪が沸き上がり、口に手を当てる。
「隆文くん、我々もまた、嘉月さんにとって赤の他人ということなのでしょうな。彼の詳細を隆文くんから聞きだすことできないのだね。」
「・・・・申し訳ありません。本来は、嘉月には番がいるので、その番に言うべきなのでしょうが・・・・今回の件は、嘉月の番によって引き起こされたものですから。まずは嘉月本人に伝えます。」
(それは、そうだろうな。俺は嘉月さんにとって、まだ何も形のある繋がりを持っていない。)
そんな無力な自分にも腹が立ち、床を見下ろす。すると、ぽんと肩を叩かれた。顔を上げれば、隆文が真剣な眼差しで青木を見つめていた。
「成界くん。俺はきみと会えて嬉しいよ。それに今回だって、嘉月を危機から救い出してくれたのは、きみだったと知っている。本当にありがとう。これからきみにお願いすることは、医師としてではなく、嘉月の友人である俺個人からのものだと思ってくれ。」
「えっ・・・・?」
「嘉月を、どうか、支えてやって欲しい。あいつ、この前、倒れたんだ。その時に、ずっときみの名前を呼んでいた。・・・・きみは、嘉月にとっての、特別なんだと思う。」
嘉月先生が、俺を?
「きみにとっての嘉月は、ただの他人でしかないか?」
悲しげに笑う従兄弟に、青木は首を横に振った。
「いいえ。嘉月先生は、俺の特別です。」
これで嘉月に拒絶されたら、元も子もないが。自分を呼んでくれた彼を、そして、手を握り返してくれた彼を、信じてみたいと思った。
◇◇◇
「ふぅ・・・・」
個室の扉の前で深呼吸をして、ノックをしようとした時だった。
「何してるの?」
少し掠れていたが、ずっと聞きたかった透明な声が後ろから響いた。振り返ると、記憶より小さくなった嘉月が立っていた。
「嘉月、先生・・・・?」
「俺に会うの、そんなに緊張するの?」
カラカラと点滴スタンドを転がして、嘉月はゆっくりと歩き出す。青木は急いで個室の扉を開けた。
「えっ、あの、もう歩いて大丈夫なんですか?」
「まあ、トイレに行くくらいはね。・・・・それより、入らないの?」
ベッドに腰掛けた嘉月は、未だに扉を押さえたまま立ち尽くすしている青木を見て、クスクスと笑った。そして盛大に顔を顰めて「いてて・・・・」と呟いた。
「わっ!大丈夫ですか?!ナースコールしましょうか?!」
「もう、大袈裟ですよ。開腹したから、ちょっと痛いだけ。折り畳みで悪いのだけど、そこに椅子があるから座って。」
慌てて駆け寄れば、青木の心配をよそに、嘉月は更に笑った。
青木の目の前にそっと置かれたのは、レアチーズタルトだった。飾りはなくシンプルなものであったが、均一に塗られたクリームチーズは、まだ誰にも踏み荒らされていない初雪のように美しかった。
「ありがとう。これはアオくんが?」
「ええ。あの、先日は雅史さんへの誕生日ケーキをありがとうございました。」
今日はすんなりと通してもらえた彼らの食卓に、花が咲く。アオが言っているのは、佐伯へのプレゼントとして青木が贈った、フルーツケーキのことだった。しかし青木は青木で、「ケーキはアオくんが用意するかもしれない!」と渡した後に気づき焦っていたのだった。
毎年、何かと佐伯には誕生日近くにケーキを贈ることは青木の習慣となっていた。それが、誕生日ケーキだと認識されたことが一度もなかったことを彼は知らない。しかし今年は、佐伯にはアオがいた。初めてパートナーと祝う誕生日ということや、アオのこれまでの細やかな気遣いを知っている青木だからこそ、無粋なことをしてしまったと後悔していた。
「いえ、俺こそ気遣いが足りずにすみませんでした。アオくん、ケーキを用意されていたでしょう?」
「実は、雅史さんの誕生日プレゼントのことばかり考えていて、ケーキを買うことをすっかり忘れてしまっていて・・・・」
目の前で恥ずかしそうに俯く青年を見て、青木は自然と笑みが溢れた。こんなに暖かな存在に心を砕かれたのならば、あの堅物な担当作家も柔らかくなるのは必然だったのだろう。
「来年からは、ケーキではなく原稿用紙を先生には贈りますから。」
冗談めいて言えば、アオはぎょっとして青木を見たのだった。
「二人で楽しそうだな。」
凍てつく空気を背後から感じて、青木は思わず席から立ち上がった。目の前には、彼が担当する人気作家、佐伯雅史が薄らと微笑んでいた。もちろん、その目は据わっていた。
「せ、先生っ!!」
「青木、待たせて悪かった。原稿だ。」
ひょいと渡された原稿のタイトルに、はっとする。少しだけ顔を上げれば、佐伯と目が合う。
「今回も長編にするつもりだ。できれば2年後の1月に合わせて発表したい。」
今は12月。つまり丸々2年かけて書くという宣言でもあった。
「わかりました。諸々スケジュールを調節いたします。対談などはなるべく断るかたちでよろしいでしょうか?」
「ああ。できれば、あまり関わりたくない。」
佐伯雅史は佐伯財閥の長子であり、おまけに容姿端麗なアルファである。そんな有名作家をメディアが放っておくはずもなく、年に何回かエンタメ的なインタビューが企画されていた。佐伯はもちろん乗り気ではなく、これまでは渋々と付き合ってくれていた。しかし、今受け取った原稿を見れば、そんなことに時間を割かせるわけにはいかない、と青木は覚悟したのであった。
「アオ、これはきみが作ったケーキなのかな?」
一時緊迫した空気が流れたが、それも穏やかな佐伯の声音によって途端に柔らかくなる。
「はい!雅史さんも食べますか?」
「是非、頂戴したいな。」
「あ!青木さんも座ってくださいね。」
未だに立ち上がったままの青木にも、アオは声をかけた。それからパタパタとキッチンの方へと向かって行く。その華奢な後ろ姿を、青木の担当作家は優しく見守っていた。
◇◇◇
「それではまた。アオくん、ケーキのお土産もありがとう。」
3人でアオの手製のケーキを食べて、更に2切れケーキをもらい、青木は佐伯とアオの家を出た。今日はこのまま会社には戻らず、嘉月のところへ向かう予定だ。
(もし、目が覚めていたら、ケーキを一緒に食べたいな。)
3日前、目の前のシーツがみるみるうちに真っ赤に染まった時、青木は階下に控えている医師を呼ぶだけで精一杯だった。良成が呼んだ医師は「救急車を!」と叫んだ。必死に嘉月の細い手を握ると、それは弱い力で握り返された。
都内近郊にある大学病院に運ばれた嘉月に、僅かな動揺の色を見せたのは、一色隆文という外科医だった。青木と一緒に救急車に同乗した良成は「隆文くん、彼をよろしくお願いします。」と小さく頭を下げたのだった。その時青木は、初めて自身の従兄弟に出会った。
ソファに腰掛けて、まだ彼の温もりと感触が残っている自身の両手を見つめた。確かに、握り返してくれた。その行為が、とてつもなく嬉しくて、哀しかった。
「隆文くんは優秀な外科医だから、安心しなさい。」
青木の隣に腰掛けた良成が口を開いた。彼との確執は深いが、今はその励ましが力強く聞こえた。
それからは、特に会話を交えることもなく、オペが無事に終わるのを待ち続けた。それは途方もなく遠い時間であった。ドラマのように「手術中」のランプでも見えればよかったのだろうか。しかし現実は、手術室の扉など見えるはずもなく、家族のために用意された待合室で、彼の無事を祈り続けることしかできなかった。
「良成さん、青木さん。」
控えめな音と共に、既にスクラブに着替えた隆文が待合室に入って来た。
「手術は終わりました。暫く発熱はあるでしょうが、命に別状はありまんよ。・・・・彼の、嘉月のご家族は来ませんでしたか。」
隆文は、やや諦念した口調で言った。
「嘉月さんにつきましては、わたくしの方でも少々調べさせてもらいました。彼のご家族は既に彼を勘当しているようです。今回の件も、いっさい無関係だと連絡が来ました。」
「そんな!!!」
青木は良成の言葉に酷く動揺した。仮にも自分の子どもが大変な目に遭っている中で、無関係とはどういうことだ。抑えきれない怒りと嫌悪が沸き上がり、口に手を当てる。
「隆文くん、我々もまた、嘉月さんにとって赤の他人ということなのでしょうな。彼の詳細を隆文くんから聞きだすことできないのだね。」
「・・・・申し訳ありません。本来は、嘉月には番がいるので、その番に言うべきなのでしょうが・・・・今回の件は、嘉月の番によって引き起こされたものですから。まずは嘉月本人に伝えます。」
(それは、そうだろうな。俺は嘉月さんにとって、まだ何も形のある繋がりを持っていない。)
そんな無力な自分にも腹が立ち、床を見下ろす。すると、ぽんと肩を叩かれた。顔を上げれば、隆文が真剣な眼差しで青木を見つめていた。
「成界くん。俺はきみと会えて嬉しいよ。それに今回だって、嘉月を危機から救い出してくれたのは、きみだったと知っている。本当にありがとう。これからきみにお願いすることは、医師としてではなく、嘉月の友人である俺個人からのものだと思ってくれ。」
「えっ・・・・?」
「嘉月を、どうか、支えてやって欲しい。あいつ、この前、倒れたんだ。その時に、ずっときみの名前を呼んでいた。・・・・きみは、嘉月にとっての、特別なんだと思う。」
嘉月先生が、俺を?
「きみにとっての嘉月は、ただの他人でしかないか?」
悲しげに笑う従兄弟に、青木は首を横に振った。
「いいえ。嘉月先生は、俺の特別です。」
これで嘉月に拒絶されたら、元も子もないが。自分を呼んでくれた彼を、そして、手を握り返してくれた彼を、信じてみたいと思った。
◇◇◇
「ふぅ・・・・」
個室の扉の前で深呼吸をして、ノックをしようとした時だった。
「何してるの?」
少し掠れていたが、ずっと聞きたかった透明な声が後ろから響いた。振り返ると、記憶より小さくなった嘉月が立っていた。
「嘉月、先生・・・・?」
「俺に会うの、そんなに緊張するの?」
カラカラと点滴スタンドを転がして、嘉月はゆっくりと歩き出す。青木は急いで個室の扉を開けた。
「えっ、あの、もう歩いて大丈夫なんですか?」
「まあ、トイレに行くくらいはね。・・・・それより、入らないの?」
ベッドに腰掛けた嘉月は、未だに扉を押さえたまま立ち尽くすしている青木を見て、クスクスと笑った。そして盛大に顔を顰めて「いてて・・・・」と呟いた。
「わっ!大丈夫ですか?!ナースコールしましょうか?!」
「もう、大袈裟ですよ。開腹したから、ちょっと痛いだけ。折り畳みで悪いのだけど、そこに椅子があるから座って。」
慌てて駆け寄れば、青木の心配をよそに、嘉月は更に笑った。
0
お気に入りに追加
127
あなたにおすすめの小説
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
さよならの向こう側
よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った''
僕の人生が変わったのは高校生の時。
たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。
時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。
死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが...
運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。
(※) 過激表現のある章に付けています。
*** 攻め視点
※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。
※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。
扉絵
YOHJI@yohji_fanart様

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

捨てられオメガの幸せは
ホロロン
BL
家族に愛されていると思っていたが実はそうではない事実を知ってもなお家族と仲良くしたいがためにずっと好きだった人と喧嘩別れしてしまった。
幸せになれると思ったのに…番になる前に捨てられて行き場をなくした時に会ったのは、あの大好きな彼だった。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる