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第2章 永遠の夏
31.本来の姿
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「……そうしたら、テーブルのところで待っていた汐里ちゃんがいたの。それで、自分も絵の外に行きたいから連れていってくれって言われて。でもあの子は海ちゃんの記憶が創り出したものだと思ったから、そんなことしたら消えてなくなるかもしれないわよって伝えたの。それでも、どうしてもセージという人に会いに行くんだっていうのを、止められなくて。あたくしの後をついてきてしまったの」
そんな、まさか……
「床を見たらこの写真が落ちていたの。試しに向こうに持ち帰ってみたけれど、写真のままで元に戻ることはなかった。たぶんこれが、本来の姿なんだと思うわ」
なんでこんなに笑顔なの?
辛抱強く待っていれば、たとえ短くても好きな人と一緒にいられる時間を過ごせたのに。
もう一緒にしゃべったり笑ったりできないんだ。そうまでして、こっちに来ようとしたんだ。あたしにも話してくれたらよかったのに。
もともと海のことを知るために近づいたんだし、この人が海にとってどんな存在だったのか想像しなかったわけじゃないけれど。気づいたらけっこう仲良くなっちゃって、海の向こうにいる唯一の相棒みたいな、変な親近感がわいてた。あたしは今どんな感情でいるのが正解なのか、わからない。
「千夏ちゃん、大丈夫? ごめんなさい、あたくしがもっと強く説得していれば……」
「いいんです。謝らないでください。きっと誰にも止められなかったと思います。それによく考えたら、あたしは海が嫌がることしてたかもしれない。海を助けるつもりで行ったのに、海を傷つけたかもしれない人と楽しく笑ってた。最低だ。こんな写真に気を取られてないで、もう一度気を引き締めます。あたしのこと、向こうに連れていってください。お願いします!」
「でも……」
「お願いします」
千代子さんは「わかったわ」と小さくうなずいた。
そんな、まさか……
「床を見たらこの写真が落ちていたの。試しに向こうに持ち帰ってみたけれど、写真のままで元に戻ることはなかった。たぶんこれが、本来の姿なんだと思うわ」
なんでこんなに笑顔なの?
辛抱強く待っていれば、たとえ短くても好きな人と一緒にいられる時間を過ごせたのに。
もう一緒にしゃべったり笑ったりできないんだ。そうまでして、こっちに来ようとしたんだ。あたしにも話してくれたらよかったのに。
もともと海のことを知るために近づいたんだし、この人が海にとってどんな存在だったのか想像しなかったわけじゃないけれど。気づいたらけっこう仲良くなっちゃって、海の向こうにいる唯一の相棒みたいな、変な親近感がわいてた。あたしは今どんな感情でいるのが正解なのか、わからない。
「千夏ちゃん、大丈夫? ごめんなさい、あたくしがもっと強く説得していれば……」
「いいんです。謝らないでください。きっと誰にも止められなかったと思います。それによく考えたら、あたしは海が嫌がることしてたかもしれない。海を助けるつもりで行ったのに、海を傷つけたかもしれない人と楽しく笑ってた。最低だ。こんな写真に気を取られてないで、もう一度気を引き締めます。あたしのこと、向こうに連れていってください。お願いします!」
「でも……」
「お願いします」
千代子さんは「わかったわ」と小さくうなずいた。
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