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「ミリオネア!誕生日おめでとう!」
「あっ!ロイ兄様!ありがとう」
色々な人からの挨拶や、息子の売り込みを躱しながら私はちょっと一息ついていた。
お兄様が飲み物を取りに行ってくれている時、ロイ兄様が声を掛けてくれる。
生きて動いているロイ兄様に会えて、思わず涙ぐみそうになってしまいそうだ。
ロイ兄様は、私が18歳になってすぐに、魔獣に殺された。
レベルの高い魔獣討伐にロイ兄様も行っていたからだ。
剣の実力はあるが魔法があまり得意ではなかった兄様が、どうして参加したのか未だにわからないが、毒のある爪で背中を引き裂かれて即死だったらしい。
私はしばらく落ち込んだが、明るい兄様に顔向け出来ないと思って前を向く事が出来た。
その直後に、ジャスティンがアイラと浮気してまた落ちたんだけど。
今となってはフリだったとわかってはいても、思い出せばやっぱり良い気はしない。
「ミリオネアいつの間にあんな挨拶出来るようになったんだ?こないだまでロイ兄様抱っこって言ってたのに」
「いつの話よ、それ。抱っこは言ってないでしょ、最近は」
「あはは!そうだっけ?1週間前はロイ兄様と結婚するって言ってたけどな」
「嘘っ!?そんな事言った!?」
「言ったよ、覚えてないのか?薄情な奴だな!」
「こ、恋多き10歳なのよ…」
待て待て私。
ロイ兄様は確かに好きだけど。
かっこいいけど、そりゃもう抜群に。
紳士だし、優しいし、強いし…あれ?もうこれ完璧男子じゃない?
ジャスティンよりロイ兄様の方が良くない?
明るい性格だから、歪んだ愛情生成しないだろうし。
妬かすためだけに他の女とイチャイチャしないだろうし!
「まぁ、18になっても貰い手が無かったら貰ってやるよ」
「さすがにその頃には婚約者くらいいるわよ」
多分。
いるはずよ、多分ね。
ジャスティンと10歳で婚約したから、正直恋愛経験なんてないに等しいのよね。
ジャスティン以外見えてなかったし。
勿体無いと言えばそうよね、それこそロイ兄様なんてかなりいい婚約者候補だもの。
今日、ジャスティンに会わないって事はそれもアリなのかも!
「ロイ兄様もいいかもね…」
「ん?何?」
「何でもないわ。…あ」
私はさっき気になったパンみたいな子を見つけた。
親といる様子でもない彼は、ふらりと庭園に行ってしまった。
1人で大丈夫かしら?とふと思った私は、ロイ兄様に断りを入れて彼を追いかける。
もしかしたら、未来の旦那様かも知れないしどこの子か気になるし。
「…あれ…どこ行っちゃったんだろ…」
こっちにはバラ園があるけど…人影はない。
迷ってたら困るしなぁ…ともう少し探す事にして前に進んだ。
「あ…いた…」
庭園の奥に、ちょっとしたガセボがある所がある。
そこにはベンチが置かれていて、そこから見る花々も中々いい感じだ。
彼は、そのベンチに座りじっと庭園を見ていた。
ただ、それだけなのに何故か目を引くのは何でだろう。
前の時にもあったかしら?こんなの。
「あの…楽しまれていますか?」
私はそっと近寄り声を掛けた。
彼ははっとした顔でこちらを向き、また庭園に視線を戻す。
話しかけられたくなかったのかしら…。
だったら悪い事をしちゃったわね。
私が離れようとしたのがわかったのか、彼はチラリと視線をこちらに向けた。
「いい庭園だね」
少し高めの子供の声。
でも言動は大人びていて、まさか庭園を褒められると思ってなかった私は、少し驚いた。
「うちの自慢なんです。庭師が頑張ってくれていて」
「うん、庭師の思いが伝わってくるよね。特にあの辺とか」
彼はさっと指を刺して、アーチになっている木をじっと見ている。
「庭師にご紹介しましょうか?」
「あぁ…、嬉しいけど、もう時間だから行かなきゃ。君、誕生日なんだよね、おめでとう。これあげるよ」
「え!?あ、ありがとうございます。お名前をお聞きしてもいいでしょうか?」
「あー…、アダムだ。またね、ミリオネア嬢」
「あ、アダム様!これ頂いてしまっても?」
「いーよ、あげる」
アダム様はふと微かに笑い、さっさと庭園から出て行ってしまった。
私は固まってしまった。
何っだあのイケメン!!
パンとか言ってごめん!!
真正面から見た彼の顔は思わず固まるくらいの美形で、今頃じわじわ顔が赤くなる。
「ジャスティンと張るくらいのイケメンだわ…!!今まで何で会わなかったのかしら!!」
いくら婚約しててもアレは見るわ、会ってたら。
あぁ…アダム様って名前だけでも知れて良かったわ!!
もう一度会えるかしら!!
お父様に聞いてみよう。
「あっ…これ…」
あげる、とくれたネックレス…?
シャランと鎖が手から落ちる。
よく見て無かったけど、金色の鎖に小さな指輪型のトップがついている。
「……あれ?」
指輪の先に石がありそうなデザインなのに、石は何も嵌っていない。
取れちゃったのかな…。
小さな物だから、もちろん地面を見てもわからないんだけど。
私はキョロキョロと辺りを探してみたがやはり見つからない。
もしかしたら最初から付いてなかったのかも知れないな、と思って私はみんなのいる所に戻った。
お父様が私を探していたようで、目が合うなり手招きをされてそちらに向かう。
「ミリオネア、こちらは宰相のキンダーソン様だよ。ご挨拶しなさい」
お父様が私にそう言うが、この2人はそんなに仲が良かったかしら?
仕事上よく関わる相手だったとは思うけれど。
「初めまして、宰相キンダーソン様、ミリオネアです」
すっとカーテシーをして挨拶をした。
私的にはあまり嫌いではなかった人だから、丁寧に対応したい所だ。
「おぉ…ハーヴェスト侯爵!ミリオネア嬢は才女だな!まだ10歳とは到底思えない!ぜひ殿下の婚約者候補の件受けて頂きたい!」
「はは…ミリオネアはお転婆でして、殿下の婚約者なんてとてもとても…とんでもないことです」
「侯爵はいつもそうやって躱してしまう!ミリオネア嬢、王太子妃になりたいとは思わないかね?殿下は見た目も中身も素敵だぞ?」
「ふふふ…私には荷が重すぎますわ…」
「あぁ!ミリオネア嬢まで!」
荷が重すぎるのよ、立場がじゃなくてジャスティンが。
あ、そういえば…。
「お父様、今日アダム様という私と同じくらいの歳の方からプレゼントを頂きました」
「アダム…?招待した方の中に居たかな…?」
「このネックレスを頂きましたの…」
シャランとネックレスが鳴り、私はお父様にそれを見せた。
お父様は「誰だろうね?でも可愛いデザインだね」と知らない感じだった。
「ミリオネア嬢…そのネックレスを渡した子はどんな子だった?私はその子を知っているかもしれない」
「え…茶色い髪に茶色い瞳のとんでもなくイケ…いえ、整ったお顔の方でした。時間がないとかで、どこかに行ってしまわれて…家名は聞けておりません」
キンダーソン様はふと真剣な表情になり、すぐに笑顔に戻る。
キンダーソン様のお知り合いならやっぱり貴族なのよね。
どこの家の方なのかしら。
また会いたいけれど、機会はないかも知れないわね。
「なるほど…少し知り合いのお子さんに似てるから聞いてみるよ。わかったらまた知らせるからね」
「あ、はい!お礼もしたいですし、また会いたいですわ」
「うんうん、礼儀正しいいいお嬢さんだ。侯爵、考えは変わらないかい?」
「…変わりませんね」
「そうか、じゃあ、諦めよう。私も仕事に行くとするよ。じゃあね、ミリオネア嬢。また会おう」
「はい、本日はありがとうございました」
キンダーソン様は手を振り帰って行った。
わかればいいのだけど。
「お父様のお知り合いじゃないの?」
「うーん…似た歳のお子さんがいる人はいるけど、茶色い髪ではなかったんだよなぁ…」
「誰だったのかしら…」
「誰でも入れる訳じゃないから、招待客のお連れ様かも知れないね」
「そうね。すっごいイケメンだったのよ…」
「ミリオネアが言うなら相当だよね。お父様も会ってみたいな」
「お母様にも聞いてみましょう」
私達は笑って、その場の話で終わらせていた。
夕食時にお母様も「そんなイケメン私も見たいわ!」と言いながら、明日の魔力測定の話で盛り上がった。
「お嬢様、明日は魔力測定の日ですね」
「そうね、どうなるのかしら」
「お嬢様もリチャード様と同じ土と火なんですかね?」
「さぁねぇ…水晶に色が出るまでわからないわね」
…と言いつつ、お見事!正解よ、ダリ。
私もお兄様と同じよ。
魔力量が多いと神官が騒いで、次の日から魔力コントロールの訓練が始まるの。
お兄様の意味不明な説明で。
「お嬢様、今日は疲れたでしょうから早めにお休みになって下さいね」
「確かに疲れたわ。もう眠いもの…」
「あの可愛いネックレスは、ジュエリーBOXに入れておきますね」
「えぇ、お願いね」
私は早々にベッドに入り、うとうととしていた。
前の時は緊張で眠れなかったけれど、今日はすぐに眠れそうだわ。
「では、おやすみなさいませ、お嬢様」
「おやすみなさい、ダリ」
パタンとドアが閉まり、暗くなった部屋で今日のイケメンを思い出した。
あのネックレスには、近々何か石を嵌めようと思っている。
部屋に帰ってゆっくりとあのネックレスを見ていた。
指輪の先にある石留めは完全に開いていて、折れた様子もないから元々石はなかったんだとわかったのだ。
「何の石にしようかしら…」
濃紺色以外の石にしたいわ。
私に似合う色…可愛いピンクとかは似合わないのよね…。
どうしても寒色系になってしまう。
だから、黙ってると怖いとか言われるのよね…理不尽だわ。
「暖かい色合いにしたいわね…」
そんな事を考えているうちに、私は眠ってしまっていた。
その日はアダム様とお茶をしながら笑い合って、楽しげにしている夢を見た。
「あっ!ロイ兄様!ありがとう」
色々な人からの挨拶や、息子の売り込みを躱しながら私はちょっと一息ついていた。
お兄様が飲み物を取りに行ってくれている時、ロイ兄様が声を掛けてくれる。
生きて動いているロイ兄様に会えて、思わず涙ぐみそうになってしまいそうだ。
ロイ兄様は、私が18歳になってすぐに、魔獣に殺された。
レベルの高い魔獣討伐にロイ兄様も行っていたからだ。
剣の実力はあるが魔法があまり得意ではなかった兄様が、どうして参加したのか未だにわからないが、毒のある爪で背中を引き裂かれて即死だったらしい。
私はしばらく落ち込んだが、明るい兄様に顔向け出来ないと思って前を向く事が出来た。
その直後に、ジャスティンがアイラと浮気してまた落ちたんだけど。
今となってはフリだったとわかってはいても、思い出せばやっぱり良い気はしない。
「ミリオネアいつの間にあんな挨拶出来るようになったんだ?こないだまでロイ兄様抱っこって言ってたのに」
「いつの話よ、それ。抱っこは言ってないでしょ、最近は」
「あはは!そうだっけ?1週間前はロイ兄様と結婚するって言ってたけどな」
「嘘っ!?そんな事言った!?」
「言ったよ、覚えてないのか?薄情な奴だな!」
「こ、恋多き10歳なのよ…」
待て待て私。
ロイ兄様は確かに好きだけど。
かっこいいけど、そりゃもう抜群に。
紳士だし、優しいし、強いし…あれ?もうこれ完璧男子じゃない?
ジャスティンよりロイ兄様の方が良くない?
明るい性格だから、歪んだ愛情生成しないだろうし。
妬かすためだけに他の女とイチャイチャしないだろうし!
「まぁ、18になっても貰い手が無かったら貰ってやるよ」
「さすがにその頃には婚約者くらいいるわよ」
多分。
いるはずよ、多分ね。
ジャスティンと10歳で婚約したから、正直恋愛経験なんてないに等しいのよね。
ジャスティン以外見えてなかったし。
勿体無いと言えばそうよね、それこそロイ兄様なんてかなりいい婚約者候補だもの。
今日、ジャスティンに会わないって事はそれもアリなのかも!
「ロイ兄様もいいかもね…」
「ん?何?」
「何でもないわ。…あ」
私はさっき気になったパンみたいな子を見つけた。
親といる様子でもない彼は、ふらりと庭園に行ってしまった。
1人で大丈夫かしら?とふと思った私は、ロイ兄様に断りを入れて彼を追いかける。
もしかしたら、未来の旦那様かも知れないしどこの子か気になるし。
「…あれ…どこ行っちゃったんだろ…」
こっちにはバラ園があるけど…人影はない。
迷ってたら困るしなぁ…ともう少し探す事にして前に進んだ。
「あ…いた…」
庭園の奥に、ちょっとしたガセボがある所がある。
そこにはベンチが置かれていて、そこから見る花々も中々いい感じだ。
彼は、そのベンチに座りじっと庭園を見ていた。
ただ、それだけなのに何故か目を引くのは何でだろう。
前の時にもあったかしら?こんなの。
「あの…楽しまれていますか?」
私はそっと近寄り声を掛けた。
彼ははっとした顔でこちらを向き、また庭園に視線を戻す。
話しかけられたくなかったのかしら…。
だったら悪い事をしちゃったわね。
私が離れようとしたのがわかったのか、彼はチラリと視線をこちらに向けた。
「いい庭園だね」
少し高めの子供の声。
でも言動は大人びていて、まさか庭園を褒められると思ってなかった私は、少し驚いた。
「うちの自慢なんです。庭師が頑張ってくれていて」
「うん、庭師の思いが伝わってくるよね。特にあの辺とか」
彼はさっと指を刺して、アーチになっている木をじっと見ている。
「庭師にご紹介しましょうか?」
「あぁ…、嬉しいけど、もう時間だから行かなきゃ。君、誕生日なんだよね、おめでとう。これあげるよ」
「え!?あ、ありがとうございます。お名前をお聞きしてもいいでしょうか?」
「あー…、アダムだ。またね、ミリオネア嬢」
「あ、アダム様!これ頂いてしまっても?」
「いーよ、あげる」
アダム様はふと微かに笑い、さっさと庭園から出て行ってしまった。
私は固まってしまった。
何っだあのイケメン!!
パンとか言ってごめん!!
真正面から見た彼の顔は思わず固まるくらいの美形で、今頃じわじわ顔が赤くなる。
「ジャスティンと張るくらいのイケメンだわ…!!今まで何で会わなかったのかしら!!」
いくら婚約しててもアレは見るわ、会ってたら。
あぁ…アダム様って名前だけでも知れて良かったわ!!
もう一度会えるかしら!!
お父様に聞いてみよう。
「あっ…これ…」
あげる、とくれたネックレス…?
シャランと鎖が手から落ちる。
よく見て無かったけど、金色の鎖に小さな指輪型のトップがついている。
「……あれ?」
指輪の先に石がありそうなデザインなのに、石は何も嵌っていない。
取れちゃったのかな…。
小さな物だから、もちろん地面を見てもわからないんだけど。
私はキョロキョロと辺りを探してみたがやはり見つからない。
もしかしたら最初から付いてなかったのかも知れないな、と思って私はみんなのいる所に戻った。
お父様が私を探していたようで、目が合うなり手招きをされてそちらに向かう。
「ミリオネア、こちらは宰相のキンダーソン様だよ。ご挨拶しなさい」
お父様が私にそう言うが、この2人はそんなに仲が良かったかしら?
仕事上よく関わる相手だったとは思うけれど。
「初めまして、宰相キンダーソン様、ミリオネアです」
すっとカーテシーをして挨拶をした。
私的にはあまり嫌いではなかった人だから、丁寧に対応したい所だ。
「おぉ…ハーヴェスト侯爵!ミリオネア嬢は才女だな!まだ10歳とは到底思えない!ぜひ殿下の婚約者候補の件受けて頂きたい!」
「はは…ミリオネアはお転婆でして、殿下の婚約者なんてとてもとても…とんでもないことです」
「侯爵はいつもそうやって躱してしまう!ミリオネア嬢、王太子妃になりたいとは思わないかね?殿下は見た目も中身も素敵だぞ?」
「ふふふ…私には荷が重すぎますわ…」
「あぁ!ミリオネア嬢まで!」
荷が重すぎるのよ、立場がじゃなくてジャスティンが。
あ、そういえば…。
「お父様、今日アダム様という私と同じくらいの歳の方からプレゼントを頂きました」
「アダム…?招待した方の中に居たかな…?」
「このネックレスを頂きましたの…」
シャランとネックレスが鳴り、私はお父様にそれを見せた。
お父様は「誰だろうね?でも可愛いデザインだね」と知らない感じだった。
「ミリオネア嬢…そのネックレスを渡した子はどんな子だった?私はその子を知っているかもしれない」
「え…茶色い髪に茶色い瞳のとんでもなくイケ…いえ、整ったお顔の方でした。時間がないとかで、どこかに行ってしまわれて…家名は聞けておりません」
キンダーソン様はふと真剣な表情になり、すぐに笑顔に戻る。
キンダーソン様のお知り合いならやっぱり貴族なのよね。
どこの家の方なのかしら。
また会いたいけれど、機会はないかも知れないわね。
「なるほど…少し知り合いのお子さんに似てるから聞いてみるよ。わかったらまた知らせるからね」
「あ、はい!お礼もしたいですし、また会いたいですわ」
「うんうん、礼儀正しいいいお嬢さんだ。侯爵、考えは変わらないかい?」
「…変わりませんね」
「そうか、じゃあ、諦めよう。私も仕事に行くとするよ。じゃあね、ミリオネア嬢。また会おう」
「はい、本日はありがとうございました」
キンダーソン様は手を振り帰って行った。
わかればいいのだけど。
「お父様のお知り合いじゃないの?」
「うーん…似た歳のお子さんがいる人はいるけど、茶色い髪ではなかったんだよなぁ…」
「誰だったのかしら…」
「誰でも入れる訳じゃないから、招待客のお連れ様かも知れないね」
「そうね。すっごいイケメンだったのよ…」
「ミリオネアが言うなら相当だよね。お父様も会ってみたいな」
「お母様にも聞いてみましょう」
私達は笑って、その場の話で終わらせていた。
夕食時にお母様も「そんなイケメン私も見たいわ!」と言いながら、明日の魔力測定の話で盛り上がった。
「お嬢様、明日は魔力測定の日ですね」
「そうね、どうなるのかしら」
「お嬢様もリチャード様と同じ土と火なんですかね?」
「さぁねぇ…水晶に色が出るまでわからないわね」
…と言いつつ、お見事!正解よ、ダリ。
私もお兄様と同じよ。
魔力量が多いと神官が騒いで、次の日から魔力コントロールの訓練が始まるの。
お兄様の意味不明な説明で。
「お嬢様、今日は疲れたでしょうから早めにお休みになって下さいね」
「確かに疲れたわ。もう眠いもの…」
「あの可愛いネックレスは、ジュエリーBOXに入れておきますね」
「えぇ、お願いね」
私は早々にベッドに入り、うとうととしていた。
前の時は緊張で眠れなかったけれど、今日はすぐに眠れそうだわ。
「では、おやすみなさいませ、お嬢様」
「おやすみなさい、ダリ」
パタンとドアが閉まり、暗くなった部屋で今日のイケメンを思い出した。
あのネックレスには、近々何か石を嵌めようと思っている。
部屋に帰ってゆっくりとあのネックレスを見ていた。
指輪の先にある石留めは完全に開いていて、折れた様子もないから元々石はなかったんだとわかったのだ。
「何の石にしようかしら…」
濃紺色以外の石にしたいわ。
私に似合う色…可愛いピンクとかは似合わないのよね…。
どうしても寒色系になってしまう。
だから、黙ってると怖いとか言われるのよね…理不尽だわ。
「暖かい色合いにしたいわね…」
そんな事を考えているうちに、私は眠ってしまっていた。
その日はアダム様とお茶をしながら笑い合って、楽しげにしている夢を見た。
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