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28 シャリエ視点
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「シャリエ様、リュダール殿が面会を申し込んで来ました」
「は?アタシにかい?」
「はい」
アタシはちょっと面食らった。まさかアタシの所に先に来るなんて…てっきりティアラに突撃していくと思っていたのに。ちょっとは考えてんのかね?
「あ、ちょうど良い。マリアーヌにも声を掛けておくれ」
「はい」
どうせなら、義母とも腹を割った話をした方がいい。マリアーヌを味方に付けるか、敵に回すかはお前次第だ、愚か者が。
「じゃ、行こうかね」
よっこいせ、と重い腰を上げる。全く…考えなしの相手は疲れる。だが、奴にとってティアラは心臓だ。どう出てくるか、見てやろうじゃないか。
「あら、お義母様!私も参加して構いませんの?」
「面白いかと思ってね」
「うふふ…どうしてやろうかしら?」
アタシらは応接室に入り、ゆったりと奴を待つ。
アーノルドの声が聞こえる、もうそこにいるのだろう。二人揃っているのを見て、どんな顔をするんだろうね?
「失礼します…っ!?」
「あらぁ、浮気野郎のリュダール君じゃなぁい」
「おやおや、そんな糞野郎は海に沈めてやらないとねぇ」
リュダールは一瞬目を見開いたが、すぐに冷静な顔になった。あぁ、これは本気の顔だ。アタシの口角が自然に上がる。きっとマリアーヌもそうだろうさ。
「シャリエ様、お義母さん、この度は私の浅はかな行動によりティアラを深く傷付けてしまった事、誠に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げたリュダールを見て、昔よりは成長したか…としみじみ思う。
「あら、近々婚約解消するんだから呼び捨てはやめて下さる?」
「…ティアラ嬢との婚約は継続したいです」
「だって、あなた隠れてアリーシャと会ってたんでしょ?肩まで抱いて?何なの?恋人なの?」
「それに関しましても、アリーシャを慰める為とはいえ軽はずみで愚かな行為だと反省しております」
「本当にねぇ、愚かで最低でとんでもないわね」
マリアーヌがここぞとばかりにわざと嫌味ったらしく言っている。これで腹を立てるようなら海に投げ捨てようかね。
「全て私に責がある事です。大変申し訳ありませんでした」
未だに頭を上げないリュダールをマリアーヌも面白そうに見ている。この男は幼い頃からティアラにしか興味がなかった。だから、アリーシャを好いているというティアラの言葉に疑問しかなかったのだが。まぁ、人生のほぼ全部をティアラに突っ込んでいるのに、未だに信用されてない姿を見ると哀れと言えば哀れか。
「殿下に頼まれてやった事なのか?」
「…いえ、私が殿下の想いを伝える事を買って出たのです。殿下は悪くありません」
「主君を思う気持ちはご立派だが、ティアラの事は思えなかったのか?」
「…ティアラなら…信じてくれると…甘い考えを持っていました」
後悔と悔しさが入り混じった表情を浮かべながらも、リュダールはアタシの目を真っ直ぐに見る。
「あの子は我慢してるだけよ、いつも。それをあなたはわかってくれていると思っていたけれど、間違いだったわね」
「…わかっているつもりでした。でも…俺は自分の欲を優先させてしまった。本当に、恥ずかしいです」
ぎゅうと拳を握りながら、絞り出すように告げるこの男にふと疑問が湧いた。
「お前は何をアリーシャから渡されていた?」
「…っ!!…それは…」
マリアーヌの目が興味津々な物に変わる。どうやらそれは明かされていなかったらしい。
「ティアラ以外に欲しい物があったのか?」
「そ、れは…その…」
「言えないような物なのか」
「いやっ…あの…ティ…ティアラの…」
「ティアラの?」
もごもごとバツの悪そうな様子で言い淀むと言う事は、あまり言えない物…。まさか…。
「ティアラの下着じゃないだろうな!?」
「ち、違います!!それは神に誓ってないです!!」
「じゃあ何だ?男らしくハッキリ言いな!!!」
「ティアラの失敗したクッキーとか!!ティアラの刺繍の失敗作とか!!」
「「………は?」」
アタシとマリアーヌの時が止まった。こいつは何を言ってるんだ?何で失敗作がそんなに欲しい?趣味か?それとも他に癖でもあるのか?
「その…俺にくれる物はいつも…完成品じゃないですか…。でも、そこに辿り着くにはいっぱい練習したり、失敗したりするでしょう?それも俺は欲しいって言うか…俺の為に努力してくれたって思うと…その…嬉しくて…」
ぽっと頬を染めてすらすらと話し出すこいつを気持ち悪いと思ってしまった事は謝ろう。昔からティアラ馬鹿だとは思っていたけど、まさかここまでとは。
「は…、じゃあ…アリーシャに渡されていた物は全部…ティアラの失敗した物って事…?」
「う…そう、です。アリーシャが捨てられた物を取っておいてくれたり、失敗したクッキーを半分くれたり、あと…ティアラが使い終わった香水の瓶とか…熱心に見ていたカタログとか…」
「待って、頭が追いつかないわ。あなた…かなりの変態ね?ちょっと気持ち悪いわ」
「……すみません…」
あぁ、マリアーヌ…本人に言ってしまったか。わかるけどな…良くわかるけどな…!
アタシは呆れて特大の溜息を吐いた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
地味に仕事が忙しいので、頂いた感想になかなか返事が書けません。
それがそわそわするので、しばし感想欄を閉じます。
我儘言ってごめんなさい…。
「は?アタシにかい?」
「はい」
アタシはちょっと面食らった。まさかアタシの所に先に来るなんて…てっきりティアラに突撃していくと思っていたのに。ちょっとは考えてんのかね?
「あ、ちょうど良い。マリアーヌにも声を掛けておくれ」
「はい」
どうせなら、義母とも腹を割った話をした方がいい。マリアーヌを味方に付けるか、敵に回すかはお前次第だ、愚か者が。
「じゃ、行こうかね」
よっこいせ、と重い腰を上げる。全く…考えなしの相手は疲れる。だが、奴にとってティアラは心臓だ。どう出てくるか、見てやろうじゃないか。
「あら、お義母様!私も参加して構いませんの?」
「面白いかと思ってね」
「うふふ…どうしてやろうかしら?」
アタシらは応接室に入り、ゆったりと奴を待つ。
アーノルドの声が聞こえる、もうそこにいるのだろう。二人揃っているのを見て、どんな顔をするんだろうね?
「失礼します…っ!?」
「あらぁ、浮気野郎のリュダール君じゃなぁい」
「おやおや、そんな糞野郎は海に沈めてやらないとねぇ」
リュダールは一瞬目を見開いたが、すぐに冷静な顔になった。あぁ、これは本気の顔だ。アタシの口角が自然に上がる。きっとマリアーヌもそうだろうさ。
「シャリエ様、お義母さん、この度は私の浅はかな行動によりティアラを深く傷付けてしまった事、誠に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げたリュダールを見て、昔よりは成長したか…としみじみ思う。
「あら、近々婚約解消するんだから呼び捨てはやめて下さる?」
「…ティアラ嬢との婚約は継続したいです」
「だって、あなた隠れてアリーシャと会ってたんでしょ?肩まで抱いて?何なの?恋人なの?」
「それに関しましても、アリーシャを慰める為とはいえ軽はずみで愚かな行為だと反省しております」
「本当にねぇ、愚かで最低でとんでもないわね」
マリアーヌがここぞとばかりにわざと嫌味ったらしく言っている。これで腹を立てるようなら海に投げ捨てようかね。
「全て私に責がある事です。大変申し訳ありませんでした」
未だに頭を上げないリュダールをマリアーヌも面白そうに見ている。この男は幼い頃からティアラにしか興味がなかった。だから、アリーシャを好いているというティアラの言葉に疑問しかなかったのだが。まぁ、人生のほぼ全部をティアラに突っ込んでいるのに、未だに信用されてない姿を見ると哀れと言えば哀れか。
「殿下に頼まれてやった事なのか?」
「…いえ、私が殿下の想いを伝える事を買って出たのです。殿下は悪くありません」
「主君を思う気持ちはご立派だが、ティアラの事は思えなかったのか?」
「…ティアラなら…信じてくれると…甘い考えを持っていました」
後悔と悔しさが入り混じった表情を浮かべながらも、リュダールはアタシの目を真っ直ぐに見る。
「あの子は我慢してるだけよ、いつも。それをあなたはわかってくれていると思っていたけれど、間違いだったわね」
「…わかっているつもりでした。でも…俺は自分の欲を優先させてしまった。本当に、恥ずかしいです」
ぎゅうと拳を握りながら、絞り出すように告げるこの男にふと疑問が湧いた。
「お前は何をアリーシャから渡されていた?」
「…っ!!…それは…」
マリアーヌの目が興味津々な物に変わる。どうやらそれは明かされていなかったらしい。
「ティアラ以外に欲しい物があったのか?」
「そ、れは…その…」
「言えないような物なのか」
「いやっ…あの…ティ…ティアラの…」
「ティアラの?」
もごもごとバツの悪そうな様子で言い淀むと言う事は、あまり言えない物…。まさか…。
「ティアラの下着じゃないだろうな!?」
「ち、違います!!それは神に誓ってないです!!」
「じゃあ何だ?男らしくハッキリ言いな!!!」
「ティアラの失敗したクッキーとか!!ティアラの刺繍の失敗作とか!!」
「「………は?」」
アタシとマリアーヌの時が止まった。こいつは何を言ってるんだ?何で失敗作がそんなに欲しい?趣味か?それとも他に癖でもあるのか?
「その…俺にくれる物はいつも…完成品じゃないですか…。でも、そこに辿り着くにはいっぱい練習したり、失敗したりするでしょう?それも俺は欲しいって言うか…俺の為に努力してくれたって思うと…その…嬉しくて…」
ぽっと頬を染めてすらすらと話し出すこいつを気持ち悪いと思ってしまった事は謝ろう。昔からティアラ馬鹿だとは思っていたけど、まさかここまでとは。
「は…、じゃあ…アリーシャに渡されていた物は全部…ティアラの失敗した物って事…?」
「う…そう、です。アリーシャが捨てられた物を取っておいてくれたり、失敗したクッキーを半分くれたり、あと…ティアラが使い終わった香水の瓶とか…熱心に見ていたカタログとか…」
「待って、頭が追いつかないわ。あなた…かなりの変態ね?ちょっと気持ち悪いわ」
「……すみません…」
あぁ、マリアーヌ…本人に言ってしまったか。わかるけどな…良くわかるけどな…!
アタシは呆れて特大の溜息を吐いた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
地味に仕事が忙しいので、頂いた感想になかなか返事が書けません。
それがそわそわするので、しばし感想欄を閉じます。
我儘言ってごめんなさい…。
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