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「ヴィー、どうした?」
「あ、ハルト…」
「身体ツラいか?」
「違うの、皆に大切にされてるなって、嬉しかっただけなの」
「そりゃな。侯爵家が公爵家に条件つけるとか思ってなかったからな。お前を手に入れるのは大変だった」
「ん、ごめんね?なかなか素直になれなくて」
「そこも可愛いから困る」
「ハルトったら…」
にやりと笑うハルトに思わず見惚れてしまう。
婚約破棄しようなんて何で思ってたのか、今はもう思い出せないくらい好きだ。
「はいはい、イチャイチャするのは2人の時にしてね。俺はまだ婚約者いないんだから」
「あ、すみません。お義兄さん」
「まだ早いんじゃない?お義兄さんは」
お兄様が顔を顰めてハルトを見る。
ハルトはにこにこと笑顔を絶やさずに私を抱き寄せた。
「実は、お義父さんから結婚の承諾を貰いまして」
「え!?」
「学園を卒業するまで子は作らない事を条件に、今すぐにでも結婚出来るんです」
「え?え?」
「式は卒業してから盛大にするとして、先に神殿に婚姻の届けを提出したいと思ってます。ヴィーはどう思う?」
「え!?」
ぽかんとした表情のお兄様、言われている事が理解できずに慌てる私。
「俺は、今すぐに結婚したい」
呼吸をするのを、忘れた。
濃紺の瞳が、真っ直ぐに私を見据えている。
真剣な表情の中に固い決意が見えた。
「俺はヴィーを絶対に幸せにする」
自信に満ちたこの笑顔。私が逆らえるはずがない。
この男にどっぷり惚れているのだから。
「私も、ハルトを絶対幸せにする」
一生に一度の誓いをあなたにあげる。
「じゃ、決まりだな!」
屈託なく笑うハルトに、私もつられて笑ってしまう。
この人を好きになって良かったと心から思った。
「全くこの子達は手に負えないな」
お兄様が呆れたように笑った。お父様もお母様も笑っている。
「じゃ、飯食ったら早速神殿行くか!」
「え、今日!?」
「何だよ、嫌なのかよ」
「嫌じゃないけど、早くない?」
「早くない。俺は1年以上待ってる」
「んー、じゃあ帰りに街歩きしたい!」
「いーねー」
きゃっきゃと弾む会話のテンポが心地いい。
これからハルトと私は夫婦になる。
お父様とお母様みたいな仲のいい夫婦になれたらいいな。
「帰って来たら訓練だな!」
「そうね!気分がいいからとことんやりましょ!」
「今日こそAコース制覇する!今の俺なら出来る!」
「じゃあおまけで痺れ薬仕込むわね!」
ほんわかムードだった我が家の食卓に呆れた溜息が聞こえたのは気のせい、きっと。
お父様が頭を抱えているなんて、見えないわ、私!
「では行ってきます。お父様、お母様、お兄様」
「気を付けてな。ジークハルト君、うちの娘をくれぐれも宜しく頼むぞ」
「はい、お義父さん」
私達は身支度を終えて、馬車に乗り込む。
通路には私の騎士団メンバーがズラリと並んで、騎士の礼を取っていた。
「ヴィオレット様、お幸せに!!」
「ありがとう」
馬車が走り出した瞬間、「我々は一生付いていきます!もちろん新居にも!!」と、叫ばれてハルトが頭を抱えていた。
私達の新居は既に用意されているらしく、騎士団が来ても問題ないくらいの広さはあるらしい。
「新婚なのに、早速邪魔が…」
ハルトがぽつりと呟いたが、「ま、訓練できるしいっか」と笑ったのでよしとしよう。
「新居ってどこにあるの?」
「ん?すぐそこ」
「え!?あの新しく建築してたとこ!?」
「そ、親父が張り切って建ててた。最新の訓練所が併設されてる」
「うわぁ…」
私はその建物を知っている。侯爵家からちょっと離れた場所に1年くらい前から建設し出して最近完成した屋敷。
とても大きくて広い敷地だったから、一体誰の屋敷なのかと思っていたら、私達の新居とは!!!
「あ、ハルト…」
「身体ツラいか?」
「違うの、皆に大切にされてるなって、嬉しかっただけなの」
「そりゃな。侯爵家が公爵家に条件つけるとか思ってなかったからな。お前を手に入れるのは大変だった」
「ん、ごめんね?なかなか素直になれなくて」
「そこも可愛いから困る」
「ハルトったら…」
にやりと笑うハルトに思わず見惚れてしまう。
婚約破棄しようなんて何で思ってたのか、今はもう思い出せないくらい好きだ。
「はいはい、イチャイチャするのは2人の時にしてね。俺はまだ婚約者いないんだから」
「あ、すみません。お義兄さん」
「まだ早いんじゃない?お義兄さんは」
お兄様が顔を顰めてハルトを見る。
ハルトはにこにこと笑顔を絶やさずに私を抱き寄せた。
「実は、お義父さんから結婚の承諾を貰いまして」
「え!?」
「学園を卒業するまで子は作らない事を条件に、今すぐにでも結婚出来るんです」
「え?え?」
「式は卒業してから盛大にするとして、先に神殿に婚姻の届けを提出したいと思ってます。ヴィーはどう思う?」
「え!?」
ぽかんとした表情のお兄様、言われている事が理解できずに慌てる私。
「俺は、今すぐに結婚したい」
呼吸をするのを、忘れた。
濃紺の瞳が、真っ直ぐに私を見据えている。
真剣な表情の中に固い決意が見えた。
「俺はヴィーを絶対に幸せにする」
自信に満ちたこの笑顔。私が逆らえるはずがない。
この男にどっぷり惚れているのだから。
「私も、ハルトを絶対幸せにする」
一生に一度の誓いをあなたにあげる。
「じゃ、決まりだな!」
屈託なく笑うハルトに、私もつられて笑ってしまう。
この人を好きになって良かったと心から思った。
「全くこの子達は手に負えないな」
お兄様が呆れたように笑った。お父様もお母様も笑っている。
「じゃ、飯食ったら早速神殿行くか!」
「え、今日!?」
「何だよ、嫌なのかよ」
「嫌じゃないけど、早くない?」
「早くない。俺は1年以上待ってる」
「んー、じゃあ帰りに街歩きしたい!」
「いーねー」
きゃっきゃと弾む会話のテンポが心地いい。
これからハルトと私は夫婦になる。
お父様とお母様みたいな仲のいい夫婦になれたらいいな。
「帰って来たら訓練だな!」
「そうね!気分がいいからとことんやりましょ!」
「今日こそAコース制覇する!今の俺なら出来る!」
「じゃあおまけで痺れ薬仕込むわね!」
ほんわかムードだった我が家の食卓に呆れた溜息が聞こえたのは気のせい、きっと。
お父様が頭を抱えているなんて、見えないわ、私!
「では行ってきます。お父様、お母様、お兄様」
「気を付けてな。ジークハルト君、うちの娘をくれぐれも宜しく頼むぞ」
「はい、お義父さん」
私達は身支度を終えて、馬車に乗り込む。
通路には私の騎士団メンバーがズラリと並んで、騎士の礼を取っていた。
「ヴィオレット様、お幸せに!!」
「ありがとう」
馬車が走り出した瞬間、「我々は一生付いていきます!もちろん新居にも!!」と、叫ばれてハルトが頭を抱えていた。
私達の新居は既に用意されているらしく、騎士団が来ても問題ないくらいの広さはあるらしい。
「新婚なのに、早速邪魔が…」
ハルトがぽつりと呟いたが、「ま、訓練できるしいっか」と笑ったのでよしとしよう。
「新居ってどこにあるの?」
「ん?すぐそこ」
「え!?あの新しく建築してたとこ!?」
「そ、親父が張り切って建ててた。最新の訓練所が併設されてる」
「うわぁ…」
私はその建物を知っている。侯爵家からちょっと離れた場所に1年くらい前から建設し出して最近完成した屋敷。
とても大きくて広い敷地だったから、一体誰の屋敷なのかと思っていたら、私達の新居とは!!!
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