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 あの後、動ける様になった殿下はノックスさんの事をハルトに話して帰った。
 嵐のような人だ。いきなりやってきて全部ひっくり返していなくなる。

 でも、必要だからそうしてるってちゃんとわかってるから、憎めないんだよなぁ。


「殿下は優しいなぁ…」


 ハルトにちゃんと私を知ってもらえって背中押されたんだよね、これは。結果的にいい感じに纏まって。
 ハルトを信じきれてなかった事も、自分の弱さもちゃんと理解ができた。
 やっぱりあの人は王族なんだなぁ。人の上に立つ人だ。
 私は自室のソファーで、ぼーっとそんな事を考える。


「殿下が優しいって、惚れてんじゃねーだろうな」
「あ、ハルト。着替え終わった?」
「終わった。ヴィーが着替えさせてくれるのかと期待してたのに」
「ばっ馬鹿!するわけないでしょ!!」
「婚約者なんだからいいだろ?」


 口を尖らせて拗ねている。
 可愛いなぁ。


「殿下と浮気したら許さないからな」
「しないわよ!」
「じゃあ証明して」
「どうやって?」
「んー、ヴィーからキスして」
「は!!?」


 ぶわぁっと顔が熱くなる。
 私から…キス!!私から!!?


「ほら、証明」


 ハルトは私のすぐ隣に座り、腰を抱いてくる。
 ぐっと引き寄せられて芸術品のような顔が至近距離にあって。


「ヴィー」
「う、わ、わかったわよ」
「ん」


 ちゅ、とハルトの唇に私の唇が触れた。


「ほ、ほら!証明したわよ!」


 恥ずかしくて顔を逸らす私の顔をハルトはついっと元に戻す。


「足りね」
「な、んぅ」


 ちゅ、ちゅ、と啄むキスから、だんだんと深いキスに変わっていく。


「ん…は…むぅ…」
「ヴィー、舌絡ませて」
「ん…出来な…んん…」


 ハルトの熱い舌が私の口内でくるりと回り、逃げる私の舌を捕まえてすりすりと擦り合わせてくる。
 ぴちゃぴちゃと鳴る水音が耳に響いて腰が抜けそうになった。


「ヴィー可愛い…」
「あ…ハルト…好き…」
「俺の方がもっと好き…」


 ぎゅっと抱き締めながら、腰を撫でてくる。
 背中から腰にかけてぞわぞわした後、腰の奥がじくじくしてくる。


「ハルト…腰…撫でないでぇ…」
「何で?」
「ぞ、ぞわぞわする…からぁ…」
「その声…やべーな…」
「ん、ハルトぉ…」


 ぢゅうっと舌を吸われ、上顎と歯列をなぞられて。
 離れては繋がる唇に、どちらのかわからない唾液の糸が引いてとてもいやらしい。


「は…ヴィーすげぇやらしい顔してる」
「なっ…ハルトのせいでしょ…」
「ははっ…!確かに」
「も…馬鹿…」
「ヴィー、お前がどんなに強くても、俺が絶対守るから」
「ん…」
「お前を泣かすのは俺だけだからな」
「うん…!」


 ぎゅうっとしがみついた。
 ハルトの言葉がすっと心に入ってきて、空っぽのグラスから溢れるくらい満たされていく。


 私は、守ってもらいたかったんだ。

 ハルトに。


「ありがと…ハルト…」
「ま、泣かすのも啼かすのも俺だけだからな」
「…………」


 色々台無し。私の乙女心はパリンと割れた。
 ささっと箒ではかれて、今はゴミ箱にさようなら。


「私の感動を返せ…」
「何だよ、本当の事だろ」
「ハルトの馬鹿!!」
「ぐぁっ!!」


 お腹に1発お見舞いしてやる!!
 謝っても許してやらない!!!


「う…ぐぅ…」
「ハルト?」

 顔を歪め、お腹を抑えて唸るハルトが凄く苦しそうにしていた。


「え、ハルト?やだ、力加減強かった?ハルト!?大丈夫」
「うぅ…」
「ハルト!?」


 内臓破裂とかしてないよね!血も吐いてないし!
 でも苦しんでるしどうしよう!!
 やってしまった!!私はなんて事を…!!
 じわりと涙が浮かんでくるけど、今は治療だ!!


「ハルト死なないで!!侍医呼んっんうぅ」


 ぐるんと視界が反転して見開いた視界にはハルトの顔が。
 目がしっかり合った状態で、深く口付けられている。


「ん…んっ…」


 動き回るハルトの舌についていけずに、口の端から唾液が溢れる。ハルトの濃紺の瞳は欲を隠さずに揺れていた。






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