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「意思がない私が嫌で、ノックスさんみたいな感じがいいらしいわよ、そっちとくっつけばいいのに」
「あー、脳筋男子は騙されるかぁ。でもアンタのは意思がないんじゃなくて、面倒だから肯定、でしょ?」
「ふふ…。もともとあぁいうのが好みなんでしょ、守ってあげたい精神?やなんかで」
「あんたは熊相手に向かっていくからねぇ…正反対ね…。うまく隠してるけど」
「うふふ、明日は熊狩りよ!!燃えるわ!!」
「うわ、宵闇の鬼神が降臨した…」
「ちょ、それ言わないで!恥ずかしい…」
そう、私が熊を狩っている姿を見て、キャンベル侯爵家の騎士団の人達が妙なあだ名をつけた。なんでも、黒髪を靡かせ、深紫の目が鋭くなり、戸惑いなく剣を振り下ろす姿が鬼神のようだと。神は神でも鬼神って。もはや人でもない。マリアに知られた時には2時間くらい爆笑された。
「明日はランチの日だったわよね?確か」
「そこに合わせたのよ、ちなみにチキンのハニーソテーをご所望だったけど、他の子に作ってもらったらと提案しといたわ」
「満足出来ないでしょうね、ヴィオの料理食べてたら」
「蜂蜜かけて焼けばできるわよ」
「違うのよね、何かが。私も食べたくなってきた…」
「明後日作ってきてあげるわ」
「わーい!!」
マリアとの会話はとても落ち着く。気も使わないし、リズムが丁度いい。
淑女はもっとまったり、ゆっくりだもんね。
「明後日の模擬戦はどうするの?」
「マリアは?」
「ヒューが出るから見に行くよ」
「じゃあ、一緒に行こうかな。うるさいし」
マリアの婚約者のヒューバート様は紳士でカッコいい。ジークハルト様よりいいと思うんだけど、寡黙だからか女子に囲まれたりもしない。まぁ、マリアに挑もうなんて子はいないか。マリアはモテる。めちゃくちゃモテる。顔も可愛いし、スタイルもいい。性格もあっさりしていて優しいから、恐ろしく人気が高いのだ。対して私は化粧もほとんどしないし、全体の色味が地味だからあんまり目立たない。マリア曰く、元が美人なんだから飾れと年中叱られている。
「周りに見せびらかしたいだけでしょ。ヴィオ綺麗だから」
「いやいや、マリア様には敵いませんわ。それにアイツは私の髪と目の色が嫌いだって言ってた」
「知らないの?アンタ人気高いのよ?美人で淑女の鑑って。実際は淑女どころか…アレだけど」
「人気ねぇ…人気が金貨に変わるなら興味あるけどねぇ…」
「出たー。お金の話」
「あるに越したことはないでしょ」
「現実的ねぇ」
そりゃそうだ。私は将来、領地の隅っこで暮らすんだ。
お金はあった方がいいに決まってる。
程なくして授業が始まり、明日の熊狩りの段取りを考えていたらいつの間にか放課後だった。
マリアはヒューバート様とデートだと言うことで、先に帰った。私は図書室に本を返しに行き馬車乗り場まで行く所だった。
そこで見たのだ。
ジークハルト様と、ノックスさんが腕を組んで庭園を歩いて来るのを。
面倒だから避けたい所だが、今後の慰謝料に繋がる可能性もあるなとあえて気付いていない風を装う。
向こうも気付いてないだろうから、あと10歩程でお互いが見える位置になる。
私は仔猫を何匹か被り、敵を迎え撃つ。
あと3歩。
あと2歩。
あと1歩。
「まぁ、ジークハルト様、ご機嫌よう」
「あっ!ヴィオレット…こんな時間に珍しいな」
バツの悪そうな表情を浮かべ、慌ててノックスさんの腕を外そうとしている。
ふむ、一応ダメな事は解ってるのか。残念。解らない馬鹿ならもっと証拠が集まりやすいものを。
「図書室に寄っていたのです」
言いながらチラリと2人の距離感を見ると、近い。
あらあら、隠しきれてないわよ、2人とも。
「そうか、馬車乗り場まで送って行ってやるよ」
「え、ジーク!?」
「婚約者だからな、俺は」
「そんな…」
ジークハルト様がこちらに慌ててやってきたので、私はにこりと微笑み、そっと耳元に顔を寄せる。
「大切なノックスさんお1人にしては可哀想ですわ、私は1人で大丈夫ですから」
「っ!いや、ヴィオレット!送っていくから…」
「馬車乗り場はすぐそこですから、ノックス様をエスコートなさって?では、ご機嫌よう」
「ありがとうございますヴィオレット様!ジーク、早くカフェに行きましょ!」
「え!?おい、ヴィオレット!?」
耳を押さえて赤くなったジークハルト様は、私を呼んでいたけど無視して立ち去る。
カフェでお茶かぁ…人目もばっちりあるし証人には困らないわね。
その調子で頑張って下さい、ノックスさん。
「あー、脳筋男子は騙されるかぁ。でもアンタのは意思がないんじゃなくて、面倒だから肯定、でしょ?」
「ふふ…。もともとあぁいうのが好みなんでしょ、守ってあげたい精神?やなんかで」
「あんたは熊相手に向かっていくからねぇ…正反対ね…。うまく隠してるけど」
「うふふ、明日は熊狩りよ!!燃えるわ!!」
「うわ、宵闇の鬼神が降臨した…」
「ちょ、それ言わないで!恥ずかしい…」
そう、私が熊を狩っている姿を見て、キャンベル侯爵家の騎士団の人達が妙なあだ名をつけた。なんでも、黒髪を靡かせ、深紫の目が鋭くなり、戸惑いなく剣を振り下ろす姿が鬼神のようだと。神は神でも鬼神って。もはや人でもない。マリアに知られた時には2時間くらい爆笑された。
「明日はランチの日だったわよね?確か」
「そこに合わせたのよ、ちなみにチキンのハニーソテーをご所望だったけど、他の子に作ってもらったらと提案しといたわ」
「満足出来ないでしょうね、ヴィオの料理食べてたら」
「蜂蜜かけて焼けばできるわよ」
「違うのよね、何かが。私も食べたくなってきた…」
「明後日作ってきてあげるわ」
「わーい!!」
マリアとの会話はとても落ち着く。気も使わないし、リズムが丁度いい。
淑女はもっとまったり、ゆっくりだもんね。
「明後日の模擬戦はどうするの?」
「マリアは?」
「ヒューが出るから見に行くよ」
「じゃあ、一緒に行こうかな。うるさいし」
マリアの婚約者のヒューバート様は紳士でカッコいい。ジークハルト様よりいいと思うんだけど、寡黙だからか女子に囲まれたりもしない。まぁ、マリアに挑もうなんて子はいないか。マリアはモテる。めちゃくちゃモテる。顔も可愛いし、スタイルもいい。性格もあっさりしていて優しいから、恐ろしく人気が高いのだ。対して私は化粧もほとんどしないし、全体の色味が地味だからあんまり目立たない。マリア曰く、元が美人なんだから飾れと年中叱られている。
「周りに見せびらかしたいだけでしょ。ヴィオ綺麗だから」
「いやいや、マリア様には敵いませんわ。それにアイツは私の髪と目の色が嫌いだって言ってた」
「知らないの?アンタ人気高いのよ?美人で淑女の鑑って。実際は淑女どころか…アレだけど」
「人気ねぇ…人気が金貨に変わるなら興味あるけどねぇ…」
「出たー。お金の話」
「あるに越したことはないでしょ」
「現実的ねぇ」
そりゃそうだ。私は将来、領地の隅っこで暮らすんだ。
お金はあった方がいいに決まってる。
程なくして授業が始まり、明日の熊狩りの段取りを考えていたらいつの間にか放課後だった。
マリアはヒューバート様とデートだと言うことで、先に帰った。私は図書室に本を返しに行き馬車乗り場まで行く所だった。
そこで見たのだ。
ジークハルト様と、ノックスさんが腕を組んで庭園を歩いて来るのを。
面倒だから避けたい所だが、今後の慰謝料に繋がる可能性もあるなとあえて気付いていない風を装う。
向こうも気付いてないだろうから、あと10歩程でお互いが見える位置になる。
私は仔猫を何匹か被り、敵を迎え撃つ。
あと3歩。
あと2歩。
あと1歩。
「まぁ、ジークハルト様、ご機嫌よう」
「あっ!ヴィオレット…こんな時間に珍しいな」
バツの悪そうな表情を浮かべ、慌ててノックスさんの腕を外そうとしている。
ふむ、一応ダメな事は解ってるのか。残念。解らない馬鹿ならもっと証拠が集まりやすいものを。
「図書室に寄っていたのです」
言いながらチラリと2人の距離感を見ると、近い。
あらあら、隠しきれてないわよ、2人とも。
「そうか、馬車乗り場まで送って行ってやるよ」
「え、ジーク!?」
「婚約者だからな、俺は」
「そんな…」
ジークハルト様がこちらに慌ててやってきたので、私はにこりと微笑み、そっと耳元に顔を寄せる。
「大切なノックスさんお1人にしては可哀想ですわ、私は1人で大丈夫ですから」
「っ!いや、ヴィオレット!送っていくから…」
「馬車乗り場はすぐそこですから、ノックス様をエスコートなさって?では、ご機嫌よう」
「ありがとうございますヴィオレット様!ジーク、早くカフェに行きましょ!」
「え!?おい、ヴィオレット!?」
耳を押さえて赤くなったジークハルト様は、私を呼んでいたけど無視して立ち去る。
カフェでお茶かぁ…人目もばっちりあるし証人には困らないわね。
その調子で頑張って下さい、ノックスさん。
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